― レビュー ―
大人気ネットマルチFPSシリーズの最新作がついに発売
バトルフィールド2
(原題 Battlefield2)
Text by 松本隆一
2005年7月11日

 

■バトルフィールド2へ,ようこそ

 

チームベースのマルチプレイFPSとして絶大な人気を誇る"バトルフィールド"シリーズに,待望の最新作「バトルフィールド2」が登場。戦場を現代に移し,アメリカ軍,中東連合軍,中国軍が,リアルなフィールドで激しい戦闘を繰り広げるのだ。現代兵器も続々登場し,かつてないゲームシステムも搭載。ミリタリーFPSファンなら見逃すことは無理無理
 筆者の年齢はたぶん大多数の読者のお父さんぐらいだと思うが,大学生なので「夏休み」というものがある。アメリカの大学の夏休みは2か月も続くうえ,私は友達もいなくてお金もないため,たいてい時間を持て余す。しかし,今年の夏はどうやら違うようだ。そう,待望の「バトルフィールド2」(原題 Battlefield2。以下,BF2)が,ついに発売されたのだ。これでもう,一人で窓辺に座り,道路を走る車の数を数えて過ごす必要はなくなった。ネットの向こうには無数の戦友と敵が待っているのである。のっけから結論めいて恐縮だが,この夏は(いや,その後もかなり)BF2三昧になりそうな雰囲気なのだ。

 思い起こせば,発売元のElectronic Arts(日本語版の発売はエレクトロニック・アーツ)から「バトルフィールドシリーズの最新作を,デジタル・イリュージョン(DICE)が開発中」とのアナウンスがあったのが2004年4月。翌月のE3で,すでに動いているバージョンが公開されてびっくりしたのは何を隠そうこの私だが,2005年3月発売予定が6月(日本では7月)に延期になったりはしたものの,業界的に見れば非常に順調に開発が推移してきた。まあ,筆者を含め,期待していたファンにとっては1年以上の待機期間だったわけだが,いやいや,どうやら待った甲斐はあったようだ。

 一応,お約束だから説明しておくが,このバトルフィールドシリーズとは,マルチプレイに軸足を置いたチームベースのFPS。戦場には戦車や装甲車,航空機などの各種兵器が用意されており,ネットを介して集まったプレイヤーは,それら兵器を自由に使って戦い,勝利を目指すわけだ。
 シングルプレイでも遊べるが,どちらかといえばマップと武器の使用法に習熟するための練習用モード……というのは前作までの話。「ちょっと頭,悪いかな?」というムードだった「バトルフィールド1942」(以下,BF1942)や「バトルフィールド ベトナム」(以下,BFV)のAI兵士に比べ,BF2はこのへんが大幅に改良されて,大局的な戦略眼はともかく,個々の戦闘では驚くほど人間っぽく立ち回るため,シングルプレイも非常に面白くなっている。
 と,ちょっと先走ってしまったようだ。それでは期待のシリーズ最新作BF2について,紙幅の許す限り細かめに見ていこう。

 

あの旗に向かってダーッシュ! コンクエストモードでは,いつもながら拠点を多く制圧したほうが勝ち BF1924とは少し扱いが違うものの,空母が登場するのが飛行機乗りにはたまらなく嬉しい。よーし着艦練習だ 部隊システムのおかげで兵士が集まりやすくなった。司令官次第では全部隊による一点集中攻撃も可能かも

 

トラック,装甲車,戦車を連ねて拠点から拠点へコンボイが移動。これも以前はなかなか実現が難しかった 我が中東連合軍が見事に勝利を収めた。グラフィックスは確実に大きく進歩し,全体的に緻密で美しい 戦闘ヘリからTV誘導ミサイルを撃つ。小さく見える歩兵を狙ったものだが,結果ははずれ。画面がかっこいい

 

 

■現代のスピーディで破壊的な戦場を徹底再現


頼りになる小隊長とともに。部隊(Squad)システムは,個人的にBF2最大のヒット。これによって,以前のように一人で後方のリスポーンポイントから前線に走り,息を切らせて三々五々撃ち合うという状況がなくなり,ゲームの面白さも増した。隊員の仕事は小隊長を守ることなので,本当は写真のように背後からついていったんじゃダメなのだ
 とっくのとうに知っているとは思うが,今度の戦場は「現代」である。プレイヤーはアメリカ軍,中東連合軍(MEC),中国軍のいずれかに属する兵士となって戦場に参加する。ちなみに,各マップについては詳細なブリーフィングが書かれているものの,そもそも,この三つの国と地域がなんで戦争しているのかについては,まったく触れられていない。うーむ,どうでもいいっちゃ,どうでもいいんだけど,なんでなんでしょうね?
 そのため,登場する戦場は中近東と中国東北部あたりをイメージしたものが多く,いくつか実在の地名も登場する。もっとも,これが現実に即した地形,地勢なのかどうかは,よく分からない。たぶん違うとは思うが,それでも全体のムードは非常に良好だ。大きな高低差のあるものや道路が複雑に入り組んでいるマップも多く,歩兵の目から見るとかなり広め。
 勘定してみたところ,マップの数は全部で12。それぞれに16人用,32人用,64人用のサイズがあり,戦場の有効範囲(この線から出ちゃいけないよ,ってやつ),施設,コントロールポイント(いわゆる拠点)の数,登場兵器(主として航空機)などが異なる。昨年のE3で「参加人数によってマップのサイズが自動的に変化します」と聞かされたとき,具体的にどんな風になるのだろう? と疑問に思ったものだが,こういう仕掛けだったのですね。
 どのマップも良くできているのだが,第二次世界大戦の,幼稚園児でも知っているような血まみれの有名戦場を集めたBF1942と比べると,やや訴求力や感情移入に欠けるかもしれない。まあ,このへんは仕方のないところだろう。

 マルチプレイのゲームモードは,それぞれのマップごとに決まっており,コンクエストが中心。これに,参加人数によってアサルトやヘッドオンという変化を持たせているわけだ。つまりは,どのマップも拠点の奪い合いによる,チケット戦である。前作までにあったデスマッチ,キャプチャー・ザ・フラッグ,オブジェクティブなどは採用されていないので,要するにコンクエストしかないわけだが,これは過去のシリーズのサーバー状況を見れば妥当かも。ただ個人的には,滅多に見ないCo-opが好きだったし,今回,AIの出来も非常にいいので,ちょっと残念な気がしないでもない。

 例によって,武器,兵器類は充実している。とくに現代を感じさせるのが最新鋭のハイテクジェット戦闘機だ。まだ現実には実戦配備されていない垂直離着陸機F-35Bジョイント・ストライク・ファイターをはじめ,F-18スーパーホーネット,Mig-29ファルクラムなどが次々に登場し,ソレ系にグッと来る人なら思わず腰を引いてしまうだろう。私は引いた。大戦中のレシプロ機とはまったく違う,パワフルで圧倒的なスピード感覚は,まるで自分が偉くなったような気分である。これはぜひ体験してもらいたいところだ。
 また,複座の戦闘爆撃機や攻撃ヘリコプターでは,兵器オペレーターである副パイロットがレーザー誘導ミサイルやTV誘導ミサイルを撃てるのだが,この誘導シーンでは画面がパッとモノクロになり,本物は撃ったことないけどリアルさ抜群だ(たぶん)。
 もっとも,ジェット機はめちゃくちゃ速いので,これら誘導兵器を目標にきちんと当てるにはパイロットの技量と,副パイロットとの息がぴったり合うことが必須で,それなりに練習して慣熟しなければならないだろう。もちろん,発売されてまだ3週間も経たないというのに,ネット上にはピンポイントでミサイルをジープに命中させる豪の者パイロットが続出しており,まったくもう,少しは休憩しとけよ,という雰囲気である。

 地上兵器も盛りだくさんで,アメリカ軍のM1エイブラムズはちゃんとA2仕様になっているし,ロシア製BTR-90,中国製WZ551など,渋いところもちゃんと押さえている。とくに対空車両は,その対空能力以上に地上部隊に対する効力が大きく,ツングースカの30ミリ対空砲の水平斉射などを食らうと,不気味な轟音とともに息をする間もなく部隊が殲滅されたりする。とはいえ,これら装甲/非装甲車両群は今回もやや虚弱体質で,トタンの塀一つ倒せないのは残念なところ。
 さらに,歩兵もまた火力の向上が著しく,各種誘導兵器,とくに個人携行式の誘導ミサイルの威力は侮れない。対戦車兵が持つSRAWなど,腕の立つ射手にかかればヘリコプターも落とすほどだし,ところどころにある対空ミサイルもヘリコプターの強敵になる。当然ながら,戦車や戦闘機に乗っているからといって,安心してはいけないのだ。

 総じて,こうした威力の高い兵器が数多く登場したことにより,BF2の戦場は「システムの戦い」という側面が強くなったような気がする。前作までは,ともかく銃をすばやく正確に撃てればなんとかなったが,今回は,各兵器の使用法や特長をよく知っていなければ不利になりそうだ。逆にいえば,それなりに練習すれば,素晴らしい反射神経を持ったお若い敵兵を中年兵の私がなんとかできそうなわけで,こ,これは燃えるかも!

 

司令官の命令で炎を吹き上げる重砲。砲撃支援は腕の見せどころ。敵は何が起きたのかも分からず全滅だ 全12枚のマップは,それぞれ参加人数によって3段階に広がる。いつも適正な人数で戦うことが可能なわけ 新搭載の司令官モードでは,プレイヤーの誰かが全軍の司令官となって戦略を練り,戦況を左右するのだ

 

戦闘結果。今回はKill数以外の要素もランキングに影響してくるので,撃ち合いに自信のない人も頑張れ 公式ランキングサーバー「BFHQ」にログインして,昇進への道を歩もう。いずれは将軍になるのが目標だ 今回の戦場には弾薬箱も医療品もない。補給が必要な場合,司令官に依頼して空から落としてもらうのだ

 

 

■数々の新システムが戦場の迫力をグレードアップ


現代兵器が次々に登場してくるところも,マニア的には好印象。最新兵器の圧倒的な破壊力を存分に感じられるはずだ。とくに,戦闘ヘリコプターと戦闘機は息を飲むほどの迫力。対空兵器もいくつか用意されてはいるものの,味方に腕の立つパイロットが一人いるだけで,戦況は大きく変わってくるはず。そんなのを敵に回すともう,悔しいのなんのって
 BF2におけるゲームシステムの最大の変更点といえば,やはり部隊(Squad)/司令官(Commander)システムだろう。事前の情報で,その内容はいろいろと漏れ承っていたとはいえ,実戦に供してこそ真価が問われるというもの。さて,どんな感じだろう?

 Squadとは小隊のこと。プレイヤーは最大6人までの小隊を編成,もしくは既存の小隊への参加ができる。小隊長は部下に対し,攻撃や防御,移動,破壊といった各種の命令を下せ,これにより,各兵員が有機的な戦闘行動を取れるという寸法である。何よりも重要なのは,「小隊長がリスポーンポイントになる」というところだろう。たとえ敵に倒されても,小隊長がご健在ならその傍にリスポーンできるため,これまでのように後方の拠点から,えっちらおっちら前線に駆けつけなくてもよくなったのだ。
 実際に戦ってみると,これはかなり有効なシステムだ。前作までのプレイヤーなら,最初は仲間同士で固まって行動していたのに,誰かが倒されるたびにグループがばらばらになり,やがて個人行動,などという経験を持った人も多いだろう。しかし,この小隊システムのおかげで常に部隊が一団で行動でき,戦闘力を維持することが可能になった。これはもしかして,「チケット」に続く,シリーズ2番めのノーベル賞級大発明かも知れないぞ。
 それだけに,小隊長の任務は重要だ。いくつもの小隊に参加してみたが,小隊長の最も大切な任務は「死なないこと」だと思った。うまい隊長なら,部下に的確に指示を出し,自分は敵にやられないような行動を取ってくれるのだが,何にも命令しないでどんどん前線に突入し,バタバタやられているような隊長ではシステムがちゃんと機能してくれないのだ。
 部下もまた「小隊長を護る」ことを最優先させないと,後方の拠点で隊長と一緒にリスポーン,なんてことになってしまう。ここは,個人の成績に涙を飲んでも,隊長の盾になってやられるべきなのであり,ああ,なんか,これって熱い友情とか生まれそう。

 BF2で初対応になったボイスチャットだが,これも実は小隊内でしか使えない。しかし,小隊長だけは司令官とボイスチャットが可能であり,司令部の命令を一兵卒に伝えるのも隊長の仕事のうち。かくして,ここに,美しい軍隊秩序が実現したわけである。

 さて司令官(Commander)だが,これはプレイヤーの一人が立候補して司令官となり,味方に各種の指示を出したり,まあ,そのほかいろんなことをして勝利を目指すというシステム。実際,司令官の任務は多岐に渡る。なにしろ,どこで何が起きているかの全体像を把握できるのは司令官だけなのだ。無人偵察機を飛ばしたり,衛星情報を見たりして敵の位置や拠点の状況を確認し,突破できそうなところに小隊を移動させたり,包囲されている部隊の救助に向かわせたり,敵部隊に砲撃を加えたり,補給品を投下したりと大忙しだ。
 本当に,一人だけ違うゲーム(例えばユニットが全員人間のRTS)をやっているような雰囲気で,もしかすると,ハマっちゃう人はかなりハマってしまう可能性大。しかし,司令官がどのくらい戦況に影響するのかは,今の時点ではちょっとよく分からない。
 もちろん,極めて有能な司令官なら戦況も有利に傾くだろうが,「お便利屋さん」という雰囲気もけっこうあるので,今後の動向を気にしていきたい。「連戦連勝の名司令官」なんてのが生まれて,「コマンダー世界大会」なんかが開催されるようになればいいなと思う。

 

さっそくヘリから地上攻撃。だが,ホバリングしていると撃たれるし,動くと当たらないしで,さっぱりわやや 重厚感満点のアメリカ軍主力戦車M1A2エイブラムズ。本当はブロック塀ぐらい突き破ってほしいんだけどなあ あれ? 対空ミサイルで敵機を追っていたら,森の向こうにすっと隠れてしまった。こういうところが腕の差か

 

これは珍しい中国製装輪装甲車WZ551。旧世代の脆弱な戦闘車両だが,ゲーム中ではかなりの活躍。うぬぬ 拠点の位置と距離が常に画面に表示されるので大変ありがたい。うるさく感じたら非表示にも切り替えられる 中国製95式対空車。20ミリ砲4門の一斉射撃は病みつきになる快感。しかし砲塔後部の「正規軍」がちょっと変

 

 最後にグラフィックスについて。この手のゲームでは,プレイヤーをいかにうまく乗せてくれるかが重要なポイントになるだろう。つまり,リアルなグラフィックスとサウンドによる,「ああ,オレは今,戦場にいます」感覚だ。筆者のPC環境(CPU:Pentium 4 2.8GHz,メモリ:PC3200 1GB,グラフィックスカード:X800 PRO 256MB)では1024×768ドットで画面設定を「High」にして,なんとかガタつかない状態だが,その設定で見る限りBF2は美しい。オブジェクトや武器,兵器類も今まで以上に細かく描き込まれ,「2005年発売のコンバットFPS」としては十分以上,まさにトップクラスだろう。爆発,発砲シーンも派手だし,物理エンジンによって兵士が中天高く吹き飛ばされるのもリアルなものだ。
 異国情緒いっぱいの中近東の戦場には砂嵐が吹き荒れ,中国の山岳地帯には霞がかかり,ヘリコプターの廃熱が陽炎を作り,海面はどっしりとたゆたう。ときどき,影のジャギーが変だな,と思うこともあるが,それほどは気にならない。BF2の開発目標の一つである「グラフィックスの向上」は間違いなく果たされていると思うので,無理してグラフィックスカードを新調した私としても,まずは安心だ。

 以上のように,いくつもの新機軸が実装されたシリーズ最新作,BF2。思うに,当面,最大のライバルは,やはり前作までのBFシリーズだろうか。発売されて3年以上経つというのに,今でも数多くのサーバーが立ち,日夜,熱心に戦いが繰り広げられている。まったくのところ,名作である。これに対し,グラフィックスの向上,部隊,司令官システムなどの数々の試みが,シリーズのベテランゲーマーにどれだけヒットするかが鍵となるはずだ。私としては,プレイしてみる価値は絶対に「ある」といえるが,どうですか? さらに,これまでBFシリーズを遊んだことのない人にも,ぜひプレイしてもらいたい。

 というわけで,個人的に待ちに待っていたBF2。日本でもついに発売となり,すでにプレイを開始している人も多いことだろう。私も,長い夏休みをこれで非常に有意義に過ごす予定なので,諸君,また戦場で相見えよう! あんまり激しく撃たないでね!

 

 

タイトル バトルフィールド 2
開発元 Digital Illusions CE 発売元 エレクトロニック・アーツ
発売日 2005/07/07 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.70GHz以上(Pentium 4/2.40GHz以上推奨),メインメモリ:512MB以上(1GB以上推奨),グラフィックスメモリ:128MB以上(256MB以上推奨)

(c) 2005 Digital Illusions CE AB. All rights reserved. Battlefield 2 is a trademark of Digital Illusions CE AB. Electronic Arts, EA, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMES is an Electronic Arts brand.