― レビュー ―
自作マップで「A列車で行こう7」をプレイしよう
A列車で行こう7 マップ コンストラクション
Text by UHAUHA
2005年9月2日

 

■A7の拡張キット第2弾は自分でマップを作れるのだ

 

「A列車で行こう7」のパワーアップキット第2弾「マップ・コンストラクション」。同じマップを繰り返しプレイし続けていたプレイヤーに朗報!! ついに自分で自由にマップを作れるようになるのだ。自分の住んでいる街の完全再現だって夢じゃない!?
 鉄道経営シミュレーションゲームの代名詞"A列車で行こう"シリーズの,2005年に発売された最新作「A列車で行こう7」(以下,A7)。そのA7を機能拡張するパワーアップキット第1弾「A列車で行こう7 トレイン・コンストラクション」が6月に発売されたばかりだが,早くもパワーアップキット第2弾「A列車で行こう7 マップ・コンストラクション」が登場した。
 これまで新マップについてはメーカーからの追加マップリリースを待つしかない状態だったが,これさえあれば自分でマップを作れるようになる。なお,本作をインストールするとマップエディットが可能になるほか,東京,横浜,名古屋,京都,大阪,神戸といった実在する都市をモチーフにした,A7ですぐにプレイ可能なマップが追加される。

 いうまでもないが,マップ・コンストラクションを動作させるにはA7本体が別途必要になる。またA7本体のバージョンをVer1.02以降に対応させておく必要がある(マップ・コンストラクションのCDに同梱)が,Ver1.02アップデートパッチを導入することで追加機能や不具合修正のほか追加車両(6種類)が使えるようになるため,A7本体を持っている人は必ずパッチを当てておこう。

 

A7でプレイできる六つの都市をモチーフにした追加マップは,それぞれ難度が異なり,やりごたえ十分 1000万人を超える人口を持つ大都市にはほど遠い東京マップ。腕を振るって現実同様の大都市に育て上げよう 都市発展の進んだ名古屋。今は商業都市だがプレイ次第でレジャー都市や工業地帯に塗り替えてしまったりも

 

 

■二つのエディタを使いこなしてマップを作ろう


地形編集は基本的に画面左側の白枠内にあるツールがすべてだ
 肝心のマップ作成作業は,地形編集モード(地形データ作成モード)と建物配置モード(ゲームデータ作成モード)の二つに役割分担されている。地形編集モードはゲームの土台となる地形を作成するモードで,建物配置モードは作成した地形に線路/道路/建物などを配置していくモードだ。
 エディタで最も基本的かつ重要な「地形編集」は,グラフィックスツールを扱うような感覚で簡単に使える。とはいえ,"遊べるマップ"を作るにはセンスとノウハウが必要だろう。

●地形編集モード
 「地形編集モード」は,画面左側の操作ウィンドウに用意されたブラシツール,指先ツール,頂点操作ツールの各ツールがタブメニューにまとめられている。これらのツールを使い,A7本体と同様の回転/拡大/縮小可能なインタフェースで,プレイ画面上に地形を作っていく。操作ウィンドウ上部にあるサムネイル画面での作業も可能で,広範囲におよぶ作業はサムネイル画面で,細かい作業はプレイ画面で使い分けるとよい。

 "ブラシツール"がメインのツールで,グラフィックスツールでいう"エアブラシ"と考えると分かりやすい。ブラシの半径,中心半径,濃度,間隔,現在の高さを設定して,平地,山,海などを書いていくイメージだ。ブラシの半径は塗りつぶされる範囲を表し,1回のクリックで塗られる大きさは濃度により変わるので,同じ場所を数回クリックすることで塗り重ねられていく。

 ブラシツールで作った地形はポリゴン剥き出しといった感じでゴツゴツしているが,気になる人は"指先ツール"で地形をなだらかにできる。これもブラシツールと同様に半径を設定してから,希望の場所をクリックすればよい。また部分的に高さを変更したいというときは"頂点操作ツール"の出番だ。グリッド交点単位,ブロック単位(グリッド枠4点)で頂点を指定して高さの変更を行える。一部分を平坦化したり,指定した高さで平地を揃えたりもできるので,山肌に列車を走らせたいなんて場合に便利だ。

・どんな画像データもマップに変換
 各ツールを使って手作業で進めていってもいいが,面白いのがビットマップ形式(BMP)の画像データを読み込ませると地形化される機能だ。「黒〜白」が「高さLevel-1〜高さLevel+10」に変換されるので,白黒の画像データ(できればグラデーションをかけたもの)を用意すれば,さまざまな形を簡単に地形化でき,実際に試してみると見事に地形化されて驚いた。地図画像はもちろん,自分で適当に描いた落書きや家で飼っている愛猫のスナップショットなど,なんでもかんでもマップにしてしまおう。

 

ブラシの有効範囲は,なぜかサムネイル画面上(白い丸の部分)でしか確認できず,使い勝手が悪い 頂点操作ツールはドラッグでの範囲指定のほか,Ctrlキー/Shiftキーを併用した複数か所の選択も可能だ ヒストリー(画面左下)には過去40回の操作履歴が残されてUndo/Redoできるので,失敗を気にせず作業できる

 

ビットマップ形式(.bmp)の画像を読み込むことで,地形変換されるのは面白い機能。左側から画像データ,読み込んだ状態,土地を作り全体にぼかし処理をした状態

 

 地形作成モードを使ってみて,ブラシ&指先ツールの使い勝手の悪さが少々気になった。半径を指定すると,どの程度の範囲になるのかは小さいサムネイル画面に表示されるだけで,実際のメイン画面上には表示されず,塗ってみたら予想と全然違ったということも多かったのだ。過去40回の操作は履歴として残されており,さかのぼってUndo/Redoはできるとはいえ,せめてカーソル位置に合わせて半径の輪郭くらいは表示してくれてもよかったと思う。ちなみに作成中のマップデータを保存すると履歴も含めて保存されるので,後日作業を再開したときも安心なのは嬉しい。

 三つのツールのほかには,マップ全体に作用する"高さの変換" "レベル補正" "ぼかし"といったフィルター機能が用意されている。高さの変換とレベル補正は入力値(変換前の数値),出力値(変換後の数値)を設定するとマップ全体の同じ高さの地形を一気に変換できる機能だが,この設定は高さ Levelではなく,コントロールポイント(Level-2が00,Level 0が08,Level+1は12など)で扱ううえに,単位すらなく,マニュアルやヘルプを見ても理解するのに時間がかかった。慣れるまでは苦労するだろう。


●建物設置モード
 建物設置モードは,マップに線路を敷いて電車を走らせたり(ダイヤ設定も可能),建物を配置したりするモード。一見すると普通のゲーム画面で,実際普通にゲームが進行していく。
 ただしゲームとは違い,建設に資金や資材は必要ないため,それこそお望みどおりの都市を作り上げられる。このモードは操作などを含めA7をプレイするのとまったく同じ(資金と資材が不要なだけ)なので,詳しく説明する必要はないだろう。ここで設置した建物は,実際のゲームではすべて自社物件として扱われる。

 このモードでは,道路も自由に敷設できるので,これだけで"買い"なプレイヤーがいるかも知れない。畑,木,住宅,雑居ビルなどは範囲指定して同じ建物を敷き詰めたり,ランダムに配置したりもできる(範囲指定で建てた物件は他社物件になる)。邪魔な建物は範囲指定で一気に撤去もできるので,活用して作業効率を上げたいところだ。高層ビルや超高層ビルは建設中の状態で設置されるが,そのあと建設段階を変更できるので,時間経過を待たずして高層ビル群も作れてしまう。

 作業中はゲームと同様に時間が経過しているが,作成したマップをA7でプレイできるようにする"ニューゲーム登録"を行うときに開始時間など細かい設定ができるので,ご心配なく。開始時間のほかゲーム名,都市名,鉄道会社名,資本金,天候,ゲーム解説を入力できるので,とくにほかのプレイヤーにマップを渡して遊んでもらうときには,気合いを入れて設定したいところだ。

 

本作では道路の敷設も自由にできるので,お望みの交通網を作ることも可能だ。池や沿岸パーツにも注目 高層/超高層ビルはビルごとにマウスホイール上下で階層設定ができる。一つずつ行うため数が多いと大変 畑,木,住宅,雑居ビルは範囲指定での同一建物の敷き詰め,同種建物のランダム設置ができるのが便利

 

― 既存のマップをいじりたい時 ―

 既存のマップデータ(A7本体に収録されているマップなど)はニューゲーム読込でしか読み込めず,建物配置モードしか使用できない。とはいえ,これらのマップに改良/修正を加えたいというプレイヤーも多いはず。そんな場合の対処方法を書いておこう。

 地形編集モードと建物配置モードを切り替える場合は,メニューから"閉じる"を選んで保存し,一度起動画面に戻る必要があるのだが,オプションにある"ダイレクトに作成モード切替を可能にする"をオンにすると,地形編集モードと建物配置モードの切り替えが即座に可能となる(ファイルメニューの中から選択)。これで既存マップであっても地形編集モードに入り,地形に手を加えることができるようになる。
 ただし,建物がある場合は頂点操作ツールの一部の機能しか使用できないため,オプションの"地形編集開始時に建物等を消去する"をオンにして,地形編集モードに切り替えたときに建物がすべて消去されるようにしておけば,既存マップに更地状態から手を加えられる。
 または,ごく普通に地形編集モードから「開く」で,拡張子「.a7d」のファイルを開ける。この場合も地形のみ更地のまま読み込まれる。

 

 

■A7本体よりも稼働時間は長くなるかもしれない


A7でゲームをプレイして都市を作るのも楽しいが,それとは違った面白さが本作にはある。住んでいる地域を再現するのもいいだろうし,超高層ビルで埋め尽くされたマップ内を列車がビルとビルの間を縫うように走る……そんな風景も面白いかもしれない
 やはり自由にマップを作れるというのは,ファンには嬉しいところだろう。とはいえ,ゲームとして遊ぶにはマップはどのくらいまで手を入れるのがいいのかが悩みどころだ。このあたりは追加されたマップや既存のマップを参考にしたり,いろいろと試行錯誤してノウハウを身につけたりする必要がある部分で,マップを作るうえで一番の難題かもしれない。

 筆者が一番気になったことは,「ゲームで遊ぶためのマップ作りをするプレイヤーはどれくらいいるのだろうか?」ということだ。自由に鉄道や建物を配置するといった,箱庭作りを重視して楽しんでいるA7プレイヤーが多いのではないだろうか。本作を導入すれば資金どころか資材も必要なく線路,道路,建物が自由に設置でき,列車を走らせてダイヤ設定もできるなど,A7本体でできる以上のことができてしまう。地域活性化による自動地域発展が機能しないくらいのものだろう。そのため,A7本体で遊ぶためのマップを作成するというよりは,本作で都市作りに専念する人が多く出現しそうだ。

 本作の使い途は,プレイヤーが何を求めるかに委ねられている部分が多いが,自分で作ったマップでA7をプレイしたい,道路も自分で設置して住み慣れた街を再現したいといった目的であれば,本作を購入する価値は大いにあるだろう。あるいはマップのデザインセンスを持った人がオリジナルの良質マップを作成し,一般のプレイヤーが公開されたものを入手して遊ぶ,といった形も生まれるだろう。何にせよ,「マップが少なくて飽きてしまった」という事態が,本作の登場で解決されることに期待したい。

 

大都会東京なのに哀愁漂うマップを少しばかり華やかにしてみた。高層ビル/超高層ビルを適当に建ててすべて完成状態にし,雑居ビルを範囲指定してランダム配置で埋め尽くすということを数回繰り返した結果である。約15分足らずでここまでできてしまうのだ

 

タイトル A列車で行こう7 マップ コンストラクション
開発元 アートディンク 発売元 サイバーフロント
発売日 2005/08/26 価格 4725円
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(DirectX 9.0c以上),CPU:Celeron/1GHz以上(Pentium 4/2GHz以上推奨),メインメモリ:512MB以上,グラフィックスメモリ:64MB以上(128MB以上推奨)

(C)ARTDINK 2005 (C)CYBERFRONT 2005