― レビュー ―
GeForce 7900 GSのクロックアップモデルには何を期待できるか
GF P79GS-Z/256D3/2DVI/PCIE
WinFast PX7900GS TDH Extreme
Text by 宮崎真一
2006年10月27日

 

GF P79GS-Z/256D3/2DVI/PCIE
メーカー:GALAXY Technology
問い合わせ先:問い合わせ先:MVK(販売代理店)
support@mvk-japan.com
実勢価格:2万9000円前後(2006年10月下旬現在)

 2006年秋の時点では,コストパフォーマンスの高さから,「GeForce 7900 GS」搭載グラフィックスカードの人気が高い。NVIDIAいわく,「エンドユーザーから『CPUにあるようなエンブレムのGeForce 7900 GS版を作ってください』という要望が直接NVIDIAに来るほど」だそうだ。
 当然,GPU(グラフィックスチップ)の出荷先となるカードメーカーからは,さまざまな趣向を凝らした搭載製品が登場している。そのなかでとくにユーザーの注目を集めている製品はというと,秋葉原ショップ筋の情報によれば,GALAXY Technology製「GF P79GS-Z/256D3/2DVI/PCIE」(以下GF P79GS-Z)のようである。

 「GeForce 7600 GS」を搭載したクロックアップモデル「GF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIE」などの成功で,国内でブランドイメージが高まってきたGALAXY Technology。そんな同社によるGF P79GS-Zは,今回もコア&メモリクロックがメーカー独自の保証とともに大きく引き上げられ,さらに冷却能力と動作音の静かさに定評のあるZalman Tech製クーラーを搭載するなど,非常に“分かりやすい”製品である。そこで今回は,同製品にどれだけのメリットがあるのかを確かめてみたいと思う。同時に,クロックアップモデルには,クロックを上げやすい“仕掛け”があるのを利用して,手動オーバークロックによる性能向上についても取り組んでみたい。

 

WinFast PX7900 GS TDH Extreme
メーカー:Leadtek Research
問い合わせ先:問い合わせ先:アスク(販売代理店)
TEL:03-5215-5650
予想実売価格:2万9000円前後

 ちなみに,リファレンスクロックのモデルとして人気を集めるのは,静音クーラーを搭載するLeadtek Research製カード「WinFast PX7900 GS TDH」だ。今回は同製品をベースに,やはりメーカーレベルでコアクロックを中心にかなりのクロックアップが行われている特別版「WinFast PX7900 GS TDH Extreme」を入手したので,こちらについても,併せて検証してみたいと思う。

 なお,言うまでもないことだが,カードメーカーレベルのクロックアップは,(NVIDIAはともかく)カードメーカーの保証内であるのに対し,手動でのオーバークロック設定はメーカーの保証外となる。オーバークロック設定は自己責任となるので,カードメーカーや販売代理店,もちろん筆者や4Gamer編集部も一切の責任を負わないので,この点は十分に注意してほしい。

 

 

スペックはかなり異なる
GALAXYとLeadtekの両製品

 

試用した個体でメモリチップを撮影した。確かに1.2品だ

 さて,両製品を概観してみると,まずGF P79GS-Zは,前述したGF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIEのGeForce 7900 GS版ともいえるモデルだ。GeForce 7900 GSのリファレンスクロックはコア450MHz,メモリ1.32GHz相当(660MHz DDR)であるのに対し,GF P79GS-Zのクロックはそれぞれ540MHz,1.5GHz相当(750MHz DDR)と,大幅に引き上げられている。1.5GHz動作に合わせて,グラフィックスメモリにはSamsung Electronics製の1.2ns仕様GDDR3チップである「K4J55323QG-BC12」を256MB分搭載。メモリチップそれぞれにはヒートシンクが貼られ,Zalman Tech製クーラーからの風が当たるようになっている。
 なお,ゲームソフトは一切付属しない。

 

GF P79GS-Zの外観(左,中央)。市販のZalman Tech製クーラーは,取り付けやすさへの配慮から,ドライバーレスでネジ留めできるよう,カード裏面にネジ留め用のつまみが“突起”として生じるのに対し,カスタムモデルを採用するGF P79GS-Zには,そのような心配は無用だ。右は付属品一覧だが,デジタル/アナログRGB(DVI-I)−アナログRGB(D-Sub)変換コネクタは一つしか付属しない点は気をつけたい

 

こちらも試用した個体が搭載していたメモリチップである

 一方PX7900GS Extremeはコアクロックが定格の450MHzから520MHzに,メモリクロックが1.32GHz相当から1.4GHz相当(700MHz DDR)へとそれぞれ引き上げられている。
 試用した個体はグラフィックスメモリはHynix Semiconductor製の1.4ns仕様GDDR3チップ「HY5RS537225AFP-14」をグラフィックスメモリとして256MB分搭載。GPU(グラフィックスチップ)の冷却機能には,Leadtek Researchオリジナルのクーラーを採用する。これは60mm角相当のファンを内蔵する1スロット仕様で,エンドユーザーの評価が高い静音モデルだ。

 付属のゲームタイトルは「Serious Sam II」と「SpellForce 2」の英語版フルバージョン。ゲームとは無関係だが,対応ディスプレイとの間で,著作権保護されたビデオコンテンツをやりとりするHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)にも対応している。

 

PX7900GS Extremeのカード裏面と付属品。カード裏面に突起はない。DVI-I−D-Sub変換コネクタはこちらも1個しか付属していないので,デュアルアナログディスプレイ接続を検討している人は要注意

 

 両製品の違いは表1にまとめたが,GF P79GS-Zは高い動作クロックに徹底してフォーカスした製品,PX7900GS Extremeは,高い動作クロックと豊富なフィーチャーをウリにした製品といったところだろうか。

 

GeForce 7900シリーズは,頂点/ピクセルシェーダユニットのクロックが異なる「マルチドメインクロックデザイン」を採用するが,本稿ではピクセルシェーダユニットのクロックを「コアクロック」とする

 

 今回は,両製品のパフォーマンスを見るにあたり,“すぐ上”となる上位モデル「GeForce 7900 GT」と,終息に向かう同GPUの後継となるグラフィックスメモリ256MB版「GeForce 7950 GT」,そしてシリーズ最上位の「GeForce 7900 GTX」,以上の3GPUを搭載する製品を比較のために用意した。ただし,機材調達の都合上,GeForce 7900 GTはクロックアップモデルとなるため,今回はCoolBitsフラグを有効にして,手動でダウンクロック設定を行い,リファレンスカード相当にしている。

 

WinFast PX7950 GT TDH(グラフィックスメモリ256MB版)(写真中央)
WinFast PX7900 GT Extreme(写真右)
メーカー:Leadtek Research
問い合わせ先:問い合わせ先:アスク(販売代理店)
TEL:03-5215-5650
なお,写真一番左はグラフィックスメモリ512MBのWinFast PX7950 GT TDH。今回はテスト対象に入れていないが,ご覧のとおり,基本的にはグラフィックスメモリ256MBと512MBで外観に違いはない

 

 そのほかのテスト環境は表2のとおり。ベースとなるリファレンスクロックのGeForce 7900 GSカードに関しては,GeForce 7900 GTと同じく,PX7900GS Extremeからのダウンクロック設定で疑似的に実現した。また,GF P79GS-ZとPX7900GS Extremeのオーバークロックも,CoolBitsフラグを有効にした状態でNVIDIAコントロールパネルから行っている。
 ベンチマークレギュレーションはバージョン1.1準拠。以後,GF P79GS-ZとPX7900GS Extreme以外の製品は,製品名でなくGPU名で表記する。

 

 

 

“256MB版”GeForce 7950 GTとの差は確実に縮まる
オーバークロックの効果も確実に存在

 

 パフォーマンスの話に移る前に,試用した個体におけるオーバークロックの限界について明記しておこう。
 今回は「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)および「3DMark06 Build 1.0.2」(以下3DMark06)のテストが無事完走した最高クロックを「安定動作した限界」と判断。この結果,試用した個体は以下の設定で安定動作すると確認できた。

 

  • GF P79GS-Z
    • コアクロック:633MHz(カードの定格クロック比で+17%)
    • メモリクロック:1.8GHz相当(カードの定格クロック比で+20%)
  • PX7900GS Extreme
    • コアクロック:564MHz(カードの定格クロック比で+8%)
    • メモリクロック:1.552GHz相当(カードの定格クロック比で+11%)

 

 ちなみにGF P79GS-Zのメモリクロックである1.8GHz相当というのは,NVIDIAコントロールパネルから設定できる限界の値であり,マージンとしてはもう少し高い可能性がある。これはなかなか衝撃的だ。
 以下に挙げるグラフには,このオーバークロック時のスコアを(OC)と断ったうえで記載してあるので,カードの定格クロック動作時のスコアと見比べてみてほしい。

 

左はGF P79GS-Z,右はPX7900GS Extremeのオーバークロックテスト結果。あくまで試用した個体およびテスト環境における結果であり,このクロックで安定動作することを保証するものではない。この点にはくれぐれもご注意を

 

 というわけで,まずはオーバークロックの動作確認に用いた3DMark05から見ていくことにしよう。グラフ1は標準設定,グラフ2は高負荷設定のテスト結果だ。
 GeForce 7950 GTのリファレンスクロックはコア550MHz,メモリ1.4GHz相当なので,クロックだけならいい勝負のGF P79GS-ZとPX7900GS Extremeだが,「GeForce 7950 GTと比べてGeForce 7900 GTはシェーダユニットが頂点1基,ピクセル4基少ない」という差はやはり埋めがたいようである。描画負荷が高まるとスコアの開きは大きくなり,下位モデルGPUの限界が見て取れる。

 

 ただし,リファレンスクロックのGeForce 7900 GSはおろか,GeForce 7900 GTに対しても有意な差を見せており,その点においてメーカーレベルのクロックアップは十分に効果があるといっていい。
 また,手動オーバークロックを行うと,GF P79GS-ZのスコアがGeForce 7900 GTXに迫る点も特筆すべきだろう。

 

 

 

 グラフ3は3DMark06のテスト結果だが,傾向は3DMark05と同じ。GF P79GS-ZとPX7900GS Extremeは,ともに定格動作でGeForce 7900 GTを上回り,オーバークロックの効果も確認できる。

 

 

 以上を踏まえ,「Quake 4」(Version 1.2)から順に,実際のゲームにおけるパフォーマンスをチェックしてみよう。
 グラフ4,5がその結果だが,標準設定と高負荷設定で,グラフの傾向が変わる点に注目したい。前者は3DMark05や3DMark06と似た傾向なのだが,後者では,フィルタリングによってメモリ負荷が高まるためか,メモリクロックがスコアを左右しているのが見て取れるのだ。
 最も特徴的なのは,オーバークロック動作するGF P79GS-Zが,GeForce 7900 GTXよりもスコアで上回ること。また,標準設定ではグラフィックスメモリ256MB版GeForce 7950 GTに及ばないオーバークロック動作のPX7900GS Extremeが,高負荷設定では完全に逆転するのも実に示唆的である。

 

 

 

 続いて「F.E.A.R.」(Version 1.05)の結果をグラフ6,7に示した。
 グラフの並びはQuake 4とよく似た印象だ。さすがにGF P79GS-ZがGeForce 7900 GTXを上回ったりはしないが,それでもかなり迫るスコアを見せている。また,高負荷設定でオーバークロック動作のPX7900GS Extremeがグラフィックスメモリ256MB版GeForce 7950 GTと互角の勝負に持ち込んでいるのも特筆しておきたい。

 

 

 

 描画負荷の軽いタイトルとして用意しているレースゲーム「TrackMania Nations ESWC」では,若干異なる結果が得られた(グラフ8,9)。
 といっても,描画負荷が軽いため,メモリパフォーマンスがQuake 4やF.E.A.R.ほど効かないというだけで,「クロックアップモデルはリファレンスクロックよりもスコアが大幅に高く,オーバークロックするとさらに伸びる」という点では変わらない。

 

 

 

 最後にMMORPG「Linage II」のスコアをグラフ10にまとめた。Lineage IIは,シェーダ負荷的にはそれほど高くないタイトルなのだが,標準設定でありながら,オーバークロック動作のGF P79GS-ZがGeForce 7900 GTXに迫るなど,Quake 4やF.E.A.R.の高負荷設定に似た印象を受ける。
 なぜこんなことになっているかについて,さすがにこれだけのデータで断言はできないが,メモリパフォーマンス……というより,フィルレートが影響している可能性は指摘できそうだ。Lineage IIの戦闘シーンでは,さまざまなエフェクトが重なり合うため,“フィルレート勝負”になって,オーバークロックが効いたと考えるのが,自然なように思われる。

 

 

 

大幅なクロックの引き上げは
消費電力の増大を生む

 

 クロックアップやオーバークロックとなると,消費電力も気になるところだ。そこで,ワットチェッカーを用意し,システム全体の消費電力を計測してみることにする。

 

BIOSチューニングツール「NiBiTor」でGF P79GS-ZのGPUコア電圧を調べてみると,リファレンスと同じ1.2Vだった

 OS起動後30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分間連続実行して,最も消費電力の高い時点を「高負荷時」とし,それぞれの時点における消費電力をスコアとしたのがグラフ11だ。
 それほど大がかりなクロックアップ設定が行われていないPX7900GS Extremeでは,目に見える形で消費電力が上がっていないのに対し,GF P79GS-Zの消費電力は明らかに高い。また,GF P79GS-Zの定格動作(コア540MHz,メモリ1.5GHz相当)とPX7900GS Extremeのオーバークロック動作(コア564MHz,メモリ1.552GHz相当)を比較すると,前者のほうが消費電力は上だ。これを根拠に,「GF P79GS-Zはカードレベルで動作電圧が高められている」と判断できそうだが,ワットチェッカーの測定には誤差が含まれることと,GF P79GS-Zのクーラーが大型であることを考えると,その可能性は半々といったところではなかろうか。

 

 

 なお,グラフ11の時点におけるGPUの温度を,参考までにNVIDIAコントロールパネルから計測した結果をまとめたのがグラフ12だ。ここでは,クロックアップやオーバークロックによる温度上昇がそれほど心配すべきではないことと,Zalman Tech製クーラーの優秀さを確認できれば,それで十分だろう。

 

 

 

コストパフォーマンスは抜群
ミドルレンジとして申し分ない

 

 PX7900GS Extremeは未発売なので,最終的な評価が変わってくる可能性は残されているものの,リファレンスクロックのGeForce 7900 GSを大幅に上回り,GeForce 7900 GTすら凌ぐスコアを,リファレンスクーラーよりも静かな動作音で実現するあたり,コストパフォーマンスは非常に高い。保証外となるオーバークロック動作をすれば,という留保がつくものの,場合によってはGeForce 7900 GTXにも迫るわけで,これは魅力的だ。

 

左はGF P79GS-Zの,右はPX7900GS Extremeの製品ボックス

 

 このところ,4Gamerではレビューのたびに繰り返しているが,海外ニュースサイトが連日のように報道していることからして,DirectX 10世代のGPUが登場する日は,おそらく,かなり近くに迫っている。とはいえ,DirectX 10世代のゲームがいきなり揃うわけではなく,まだまだ市場はDirectX 9を中心に展開するだろう。その意味で,ある程度先を見越しつつ,費用対効果に優れた製品を選ぶのであれば,リファレンス仕様の製品より“ちょっと高い”だけで,より高いパフォーマンスを提供するGF P79GS-ZやPX7900GS Extremeは,非常に有力な選択肢といえる。

 

タイトル GeForce 7900
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2006/03/09 価格 製品による
 
動作環境 N/A

Copyright(C)2006 NVIDIA Corporation

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/7900_gs_overclock/7900_gs_overclock.shtml