― レビュー ―
GALAXYのクロックアップ版GeForce 7600 GSは上位モデルを超えるか?
GF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIE
Text by 宮崎真一
2006年6月16日

 

GF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIE
メーカー:GALAXY Technology
問い合わせ先:MVK(販売代理店)
support@mvk-japan.com

 GeForce 7600シリーズのグラフィックスカードは,サードパーティ各社がそれぞれ個性を主張したカードを投入する“戦場”になっている。そんななか,人気を集めつつあるのがGALAXY Technology製のGeForce 7600 GSカード「GF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIE」(以下GF 7600GS-Z)だ。
 GF 7600GS-Zは,GPU(グラフィックスチップ)にGeForce 7600 GSを採用しながらも,メーカーレベルでのクロックアップが行われているのが特徴。しかも,さらにそれ以上のオーバークロック動作が可能というのが,人気の理由である。
 スペックを見てみると,コアクロックはリファレンスの400MHzから100MHz高い500MHz。メモリクロックに至っては,リファレンスが800MHz相当のところ,GF 7600GS-Zでは1.4GHz相当に設定されている。

 

 

搭載するメモリチップは1.6GHz以上の動作に対応

 

搭載するメモリチップ。512Mbit×4で,容量256MBを実現する

 GeForce 7600 GSのリファレンスデザインでは,グラフィックスメモリはDDR2(GDDR2)SDRAMが利用されることになっている。しかし,GDDR2で1.4GHz相当というメモリクロックを実現するのは困難だ。そこでGF 7600GS-Zでは,Samsung Electronics製の1.2ns品メモリチップ「K4J52324QC-BJ12」を採用する。
 K4J52324QC-BJ12がサポートする最高クロックは800MHz。データレートは1.6Gbps(クロック換算で1.6GHz相当)なので,マージンとしては100MHz(200MHz相当)ある計算だ。もっといえば,1.2ns品なので,理論上の最高クロックは833MHz(1.66GHz相当)。このあたりのスペックが,「クロックアップバージョンで,しかもオーバークロックマージンがある」とされる理由の一つだろう。

 

 また,注目したいのは,外観上の特徴となっているチップクーラーだ。これは冷却能力で定評のあるZalman Tech製GPUクーラー,VF700シリーズのカスタム品。フルアルミのフィンと,負荷によって回転数の変わるファンが一体型になっている。製品版のVF-700シリーズは,互換性への配慮などから,専用の固定用金具を利用してカードに固定する必要があり,それが“出っ張り”となって,特定のマザーボードと干渉する場合があるのに対し,GF 7600GS-Zのそれはカスタム品なので,そういった心配はない。
 なお今回,騒音レベルは計測していないが,GeForce 7600 GTのリファレンスクーラーよりは,かなり静かな印象を受けた。

 

言うまでもないことだが,GF 7600GS-Zのチップクーラーは大型で,隣接するスロットを占有する。一方,カード裏面に目立った突起はないので,ほとんどのマザーボードに問題なく取り付けられるはずだ

 

付属のアダプタ類。このほか,マニュアルとドライバCD-ROMも同梱されている

 外部インタフェースはデジタル/アナログRGB(DVI-I)×2,高解像度テレビ対応の汎用出力端子×1。アナログRGB(D-Sub)出力用に,DVI−D-Sub変換コネクタが一つ付属する。汎用出力端子は,付属のアダプタ,もしくはケーブルにより,コンポーネント出力かSビデオ出力が可能だ。
 一方,コストダウンのためか,無料のバンドルゲームタイトルは一切付属していない。このあたりは,オマケ程度のものが付属するよりはいいと考えるか,何もないのはつまらないと考えるかは,価値観次第だろう。

 

 

試用した個体のオーバークロック耐性は高め

 

 今回,比較対照用には,リファレンスクロックで動作するGeForce 7600 GTとGeForce 7600 GS搭載のグラフィックスカードをそれぞれ用意した。前者はNVIDIAのリファレンスカード,後者はASUSTeK Computer製「EN7600GS SILENT/HTD/256M」(以下EN7600GS SILENT)だ。GeForce 7600 GTリファレンスカードについては,表やグラフ中において,スペースの都合上「GeForce 7600 GT(Ref.)」と表記する。

 また,GF 7600GS-Zの場合は,前述したように,オーバークロックの話を避けて通れない。メモリチップのマージンと,Zalman Tech製クーラーの冷却能力を考えると,かなりのオーバークロック状態でも,安定して動作する可能性が(少なくともリファレンスカードよりは多分に)ありそうだ。

 

GF 7600GS-Zで動作クロックの変更を試みたところ。840MHzというのは,ForceWareの設定上限だったりする

 というわけで今回は,レジストリエディタで「CoolBits」エントリーを作成し,ForceWareからクロック変更を行うという,定番の手段でオーバークロックを試みることにした。
 結果,「安定動作して,4Gamerの標準ベンチマークテストをすべて問題なく実行完了できる」と確認できたのは,コアクロック630MHz,メモリクロック1.68GHz相当(840MHz DDR)。
 もちろん,これはあくまで「入手した個体がこのクロックで安定動作した」に過ぎない。4Gamerとしても,オーバークロック動作の保証は一切行わないが,今回入手した個体の示す「コア630MHz,メモリ1.68GHz相当」は,GeForce 7600 GTのリファレンスクロックを上回る値だ。GeForce 7600 GTとGeForce 7600 GSの間に,シェーダユニット数などの違いはないため,オーバークロック状態では,リファレンスのGeForce 7600 GTを上回るパフォーマンスが期待できそうである。

 そこで,このオーバークロック状態(以下「GF 7600GS-Z(OC)」)においても,スコアを取得することにした。クロックアップ版のGeForce 7600 GTカードである,Leadtek Research製品「WinFast PX7600GT TDH 256MB Extreme」を用意し,比較してみたいと思う。
 なお,ここまでに挙げたグラフィックスカードの主な仕様は表1にまとめておいたので,参考にしてほしい。

 

 

EN7600GS SILENT/HTD/256M
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ コーポレーション(販売代理店)
news@unitycorp.co.jp
WinFast PX7600GT TDH 256MB Extreme
メーカー:Leadtek Research
問い合わせ先:アスク(販売代理店)
TEL:03-5215-5650

 

 テスト環境は表2のとおり。以後本稿では,ForceWareから垂直同期のみオフに変更した状態を「標準設定」,同じくドライバ側で強制的に8xのアンチエイリアシングと16xの異方性フィルタリングを適用した状態を「8x AA&16x AF」と呼ぶ。

 

 

 

基本性能は良好。オーバークロック時は順当にGeForce 7600 GTを上回る

 

 まずグラフ1,2は,「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)の結果である。GeForce 7600 GTとGeForce 7600 GSの違いは,リファレンスカードとEN7600GS SILENTを見ると分かるようになっている。
 では,GF 7600GS-Zはどうかというと,GeForce 7600 GSを搭載しつつ,GeForce 7600 GTリファレンスカードに迫るスコアになっているのが分かるだろう。同時に,オーバークロック動作させたGF 7600GS-Z(OC)は,PX7600GT Extremeも上回るスコアを叩き出す。

 一方,高レベルのエフェクトをかけた状態では,解像度が高くなるに従って,オーバークロック/クロックアップの効果は薄くなる点も,傾向としては押さえておきたい。

 

 

 

 次に,「3DMark06 Build 1.0.2」(以下3DMark06)の1280×1024ドットにおける総合スコアを見てみる(グラフ3)。一言でまとめると,傾向は3DMark05とまったく同じだ。
 ただし,ここで一つ報告しておきたい。理由は不明だが,3DMark06では,ForceWareからオーバークロック設定しても,実際のテスト時にはリセットされるという現象に遭遇したのだ。このため,GF 7600GS-Z(OC)のテストに当たっては,3DMark06においてだけ,汎用グラフィックスユーティリティソフト「PowerStrip」を用い,オーバークロック設定を行っている。

 

 

 続いて「Quake 4」。Quake 4では,マルチスレッドに最適化されたVersion 1.2パッチを適用し,この状態でシングルプレイのストリーモードで記録したリプレイデータを用いて,Timedemoから平均フレームレートを取得した。
 その結果がグラフ4,5である。標準設定の1024×768ドットでは,EN7600GS SILENT以外の3枚でスコアがほぼ横並びになっている。
 Quake 4(というかDOOM IIIエンジン)は,パフォーマンスがCPUの性能に依存しやすいのだが,これは逆にいうと,グラフィックスカードの負荷が相対的に低めということになる。その状態では,ある程度描画負荷が高まってこないと,動作クロックによる差は付きにくいというわけだ。今後,マルチスレッドに対応して,CPU側の処理を重視するようなゲームが増えてくると,Quake 4のような傾向のグラフが多くなってくるかもしれない。

 

 

 

 そういう意味でQuake 4は(現時点では)やや特殊な傾向を示したといえるが,「F.E.A.R.」ではどうだろうか。
 F.E.A.R.においては,テスト時の最新版となる1.04パッチを適用した状態で,トップメニューからベンチマークモードを選択して,平均フレームレートを計測した。その結果をまとめたものがグラフ6,7だが,GF 7600GS-ZやGF 7600GS-Z(OC)が低負荷時から順当に高いスコアを示しているのが分かるはずだ。一方,高負荷時になると,ゲームにならないレベルにまでフレームレートが下がる場合もあり,こうなると各カード間の差は意味をなさなくなってくる。

 

 

 

 レースゲーム「TrackMania Nations ESWC」(以下TMN)のベンチマークテストに移ろう。TrackMania Nations ESWCでは,「I-1」のコースを5周する87秒のリプレイデータを用意。多機能ユーティリティソフト「Fraps 2.60」で,平均フレームレートを計測した。なおTMNでは,ミドルクラス以下のグラフィックスカードを利用すると,1920×1200ドット設定時に質の高くないテクスチャデータを自動的に選択する仕様になっており,同解像度のスコアが1600×1200ドット時を大きく上回るため,結果の掲載を省略している。

 さて,結果はグラフ8,9にまとめたとおりだが,TMNでは,動作クロックの違いがそのまま素直にスコアとなって出た。さすがに,高レベルフィルタリング適用時には差が縮まってくるものの,傾向は非常に分かりやすい。

 レースゲームは,FPSと異なり,数fps程度の差がゲームの体感速度を左右するわけではない。このため,オーバークロック動作のGF 7600GS-Z(OC)が,GeForce 7600 GTカードに付けている差を額面どおり受け取るわけにいかないのは事実だ。
 しかし,リファレンスクロックで動作するEN7600GS SILENTに対して,GF 7600GS-Zのスコアは十分に高く,これなら確実に,体感レベルでも差が出てくるはず。オーバークロックうんぬんは別にして,GF 7600GS-Zには十分な意味があると確認できるスコアといえるだろう。

 

 

 

 最後にMMORPGにおける性能を「Lineage II」で見てみる。Lineage IIでは,2006年6月12日時点の最新パッチを適用。7人のパーティが狭い建物内で戦闘を行うリプレイデータを用意し,1分30秒間の平均フレームレートをFraps 2.60で測定した。その結果がグラフ10だ。

 MMORPGでは,レースゲーム以上に,数fps程度の差が体感レベルの違いになることは少ない。だが,読者の多くが実際にプレイする現実的な解像度である,1024×768ドット,あるいは1280×1024ドットにおいて,GF 7600GS-ZがGeForce 7600 GSのリファレンスクロック動作(=EN7600GS SILENT)を大きく上回っている点は,評価していい。

 

 

 

Zalman製クーラー冷却性能が光る

 

 消費電力についてもチェックしてみる。
 OS起動後,30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark05の連続実行30分後を「高負荷時」として,システム全体の消費電力をワットチェッカーで計測した結果がグラフ11だ。

 アイドル時こそEN7600GS SILENTと大きな違いのないGF 7600GS-Zだが,やはり高負荷時には,GeForce 7600 GT並みの消費電力となった。さらに,オーバークロック動作させているGF 7600GS-Z(OC)はGF 7600GS-Zと比べて9W高い。大した差ではないと感じるかもしれないが,動作クロックの分,確実に消費電力が増しているのも,また事実である。

 

 

 また,アイドル時と高負荷時のそれぞれにおいて,GPUコアの温度をnTuneで測定してみた。測定時の室温は25℃で,テスト環境はPCケースに組み込んでいない,いわゆるバラック状態である。
 アイドル時は30分間の最低温度,高負荷時は同最高温度をスコアとして採用することにして,テスト結果をまとめたのがグラフ12だ。アイドル時はもちろんのこと,高負荷時においても,GeForce 7600 GTリファレンスカードよりコア温度は大幅に低く,搭載するZalman Tech製チップクーラーの優秀さが見て取れよう。なお,EN7600GS SILENTの温度が高いのはファンレスのパッシブヒートシンクモデルであるため。今回のテストにおいて,同製品のコア温度は参考程度に捉えておいてほしい。

 

 

測定部A,Cを赤色で囲んでみた

 さらに,今回はテスト用システムを,Cooler Master製のスチール製ミドルタワーケース「Centurion 530」へ組み込んで,GF 7600GS-ZとGF 7600GS-Z(OC)について,カード各所の温度を計測してみることにした。横河M&Cのデジタル放射温度計「53005」を用いて,以下に挙げるA/B/Cの場所を計測している。なお,計測に当たっては,サイドパネルを閉じておき,直前に開ける,という手段を採用している。

 

  • ヒートシンクのうち,GPUコアの真上部分
  • カード裏面,GPUコアの真裏部分
  • 外部インタフェースから最も遠いところにあるグラフィックスメモリチップのヒートシンク

 

 その結果は表3にまとめた。オーバークロック動作させると,カード上各所の発熱が懸念されるが,A/B/Cのどの部分でも,劇的な温度上昇は見られない。せいぜい3℃であり,この冷却能力が大きなオーバークロックマージンを生んでいるようだ。

 

 

 

コストパフォーマンス最重視ならアリ

 

GF 7600GS-Zのパッケージ

 GF 7600GS-Zのパフォーマンスは,間違いなくGeForce 7600 GTに迫るものだ。それでいて,GeForce 7600 GT搭載製品がおおむね2万円台後半で販売されている2006年6月中旬時点で,GF 7600GS-Zの実勢価格は2万円前後。この差を考えると,コストパフォーマンスは非常に高い。

 また,オーバークロック設定を行えば,GeForce 7600 GTに“迫る”どころか“抜き去る”可能性があるのも,GF 7600GS-Zの魅力だ。もちろん,オーバークロックには個体差の問題がついて回り,さらにメーカーの動作保証外になってしまうというリスクもあるが,「2万円でGeForce 7600 GT並みの性能」という点に惹かれる人は少なくないと思う。

 GeForce 7600 GTカードが欲しいが,価格面で躊躇していたという人にとっては,GF 7600GS-Zはかなり購買意欲をそそられるグラフィックスカードではないだろうか。

 

タイトル GeForce 7600
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2006/03/09 価格 製品による
 
動作環境 N/A

Copyright(C)2006 NVIDIA Corporation

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http://www.4gamer.net/review/galaxy_7600gs/galaxy_7600gs.shtml