― 特集 ―

PCゲーム新作ガイド2006

Text by 奥谷海人 

アクション/FPS

FPSはまだまだPCゲームの花形ジャンル

 2004年度の「DOOM 3」や「Half-Life 2」の威光を引き継ぎ,「F.E.A.R.」や「Quake 4」などのビッグタイトルで沸いたのも,すでに昨年の話。しかしフタを開けてみると,2006年も期待できそうな作品がゾロゾロ登場する。定番シリーズから異色作まで取り揃えられた,かなり楽しみな1年となりそうだ。

 

 

Dark Messiah of Might and Magic

開発元:Arkane Studios
発売元(米):Ubisoft Entertainment
リリース時期:Q3 2006

 

 このところ存在感が失われつつあるRPG界の大物,Might and Magic(M&M)シリーズ。しかし,古参のゲーマーには「Ultima」や「Wizardry」と並ぶほどの名作シリーズとして心に残る作品だ。ストラテジー版の最新作「Heroes of Might and Magic V」も本年度リリース予定だが,こちらの「Dark Messiah of Might and Magic」は,M&Mシリーズの世界観を利用した,ファンタジー系の一人称視点シューティングだ。
 もちろんプレイヤーキャラが駆使するのは,銃器ではなく剣や魔法で,戦闘スタイルによってキャラクターの能力も変化していくという,RPG的な要素も含んでいるのが特徴である。ヘルスやマナのほか「アドレナリン」と呼ばれるパラメータも存在し,これが満タンになると「Fatality」(致命)モードへと突入して,並み居る敵をなぎ倒していくという。
 ゲームエンジンには,「Half-Life 2」でお馴染みのSourceエンジンがライセンスされており,剣と剣のぶつかり合いで生じる火花にいたるまで細かく描かれている。チーム戦を含む大規模なマルチプレイモードも標準装備されそうだ。

 

 

Enemy Territory: Quake Wars

開発元:Splash Damage
発売元(米):Activision
リリース時期:2006年内

 

 「DOOM 3エンジン」を採用したものとしては,ようやくまともなオンライン対戦が期待できそうな作品が登場する。開発元は,マルチプレイヤーFPSとして屈指の作品と名高い「Return to Castle Wolfenstein: Enemy Territory」を開発した,イギリスのSplash Damageである。
 本作は,ストロッグの大軍が襲い掛かってきた「Quake II」直前の地球が舞台で,プレイヤーはEDF(地球防衛軍)もしくはストロッグ軍に分かれて,五つのクラスの中からキャラクターの職業を選択し,大人数で繰り広げられる戦いに飛び込んでいく。二つの勢力には総計50種類ほどの武器や搭乗型兵器が用意される予定で,四輪駆動のバイクやタンク,ヘリコプターはもちろんのこと,映画「スター・ウォーズ」のウォーカーのようなものも登場する。
 砂漠,渓谷,ツンドラ地帯,森林などさまざまなマップが用意されており,Battlefieldシリーズもビックリなほどの広大なものになるようだ。一つの巨大な高解像度テクスチャで地形を覆うという「メガテクスチャ」技術が開発され,DOOM 3エンジンでも屋外での戦闘を遜色なく楽しめるようになったのである。

 

 

Prey

開発元:Human Head Studios/3D Realms
発売元(米):2K Games
リリース時期:2006年内

 

 3D Realmsの秘蔵作品として,1990年代末からその名だけは知られていた「Prey」が,「DOOM 3エンジン」によって復活することとなった。ストーリーは,チェロキー族の血を引くアメリカ先住民の若者トミーが,宇宙人に連れ去られて到着した「スフィア」と呼ばれる巨大な惑星生物から,脱出を試みるというもの。これまた,かなり異色な設定だ。
 Preyの独創性は,宇宙を舞台とすることから,無重力に近い状態でのアクションがふんだんに用意されていることだ。それがすべての位置や環境で可能かは未確認だが,公開されたムービーでは壁を縦横無尽に走り回るシーンが多用されている。もちろん,敵のAIも周囲の環境を理解しているようで,突然天井から襲い掛かってきて,プレイヤーを驚かせるというようなこともある。システム上,極度な「3D酔い」も心配されるものの,これまで階段やエレベータを移動手段として利用してきたFPSとは,一線を画している。
 3D Realmsらしく,ゲーム序盤に登場するバーに設置されたアーケードゲーム機で遊べたり,トイレ系の下ネタジョークなど笑える小道具があったりするかと思えば,かなりマニアックなロックナンバーもライセンスされているようだ。

 

 

S.T.A.L.K.E.R. - Shadow of Chernobyl

開発元:GSC Game World
発売元(米):THQ
リリース時期:8月

 

 一時期は「ロシア産の超美麗グラフィックスFPS」として持てはやされていた「S.T.A.L.K.E.R. - Shadow of Chernobyl」も,開発が遅れて多くのプレイヤーのレーダーから遠ざかりつつある。しかし,それでも「どんな作品であれ,プレイはしてみたい」と心待ちにしているゲーマーは,今でも健在なはず。
 原発事故の起こったチェルノブイリ一帯が,ミュータントがうごめく「ゾーン」と呼ばれる立ち入り禁止地域に認定された。主人公はここで,物資を輸送したり廃墟からお宝を探し当てたりする,「ストーカー」というモグリな職業に就く。特筆すべきは,RPGの「Ultima IX」やThe Elder Scrollシリーズのように,プレイヤーとは関係なくゲーム世界が常に変化しているということで,モンスター同士で戦い合っていたり,気象もリアルタイムで変わったりするのだ。その広大な一帯で,プレイヤーは好きなミッションを請け負っていくという,FPSには珍しく自由度の高いシステムが採用されている。
 1フレーム300万ポリゴンの表示というのは,現在でもトップレベル。壮大な企画であったために開発には苦労していたようで,実際どれほど期待に応えてくれるか楽しみだ。

 

 

TimeShift

開発元:Saber Interactive
発売元(米):Atari
リリース時期:3月

 

 昨年のガイドでも紹介したが,ロシアの「TimeShift」は,時間操作をテーマにした近未来派のFPSだ。銃器を撃ちまくる以外にも,時間を止めたり戻したりという,ほかのゲームでもあまり見られない珍しいプレイが可能になっている。プレイヤーの行動によっては周囲の世界に大きな影響を与えてしまうため,プレイヤーは四次元的に進行を考えなければならない,というゲームプレイになるらしい。
 ストーリーは,娘を交通事故で亡くしたアメリカ軍人マイケル・スウィストが,開発されたばかりのタイムマシーン「クロノミクロン」のテストパイロットに志願し,1911年のシークレットミッションに飛び立つことから始まる。Saber Interactive独自のゲームエンジンが利用され,どこかスチームパンク風な世界観も魅力の一つだ。
 “時間を止めて敵から銃を奪い取る”といった行動も可能なようで,時間に関するクリエイティブな発想がどこまで用意されているかが,TimeShiftの成功するカギとなりそう。マルチプレイモードもフィーチャーされているが,対人であれば困難であろう時間の操作は,いったいどのように処理されるのだろうか。

 

 

Unreal Tournament 2007

開発元:Epic Games
発売元(米):Midway Entertainment
リリース時期:2006年内

 

 もはや,「Unreal」フランチャイズのフラッグシップタイトルといえば,「Unreal Tournament」に間違いない。その最新版となる「Unreal Tournament 2007」が,いよいよ夏ごろにリリースされそうな気配だ。Epic Gamesが自ら開発するライセンス用ゲームエンジン「Unreal Engine 3.0」を使用し,マルコム軍曹やスコーピン機を使ったE3 2005でのデモ以来,業界内外で大きな話題となっている。
 前作「Unreal Tournement 2004」では,相手の進路を予想して狙い撃ちするというようなマニアックな仕様だったためか,本作ではそのあたりに大幅な見直しが図られている。BOTのAIも改良されて,状況を頻繁にチームに報告してくれるようになっており,対人戦をしているような気分になれるはずだ。
 本作では,前作の「Onslaught」に,途中さまざまなミッションをこなしていく要素を加えたような,「Conquest」呼ばれる新しいモードが装備されている。クランのランキング,同じレベルのプレイヤーのためのマッチメイキング,ローディング時間を短縮させるストリーミング技術など,プレイヤーコミュニティへの気配りも嬉しい。

 

 

定点観測基地より
 今後リリースされる予定のFPSで,忘れてならないのが「BioShock」だ。Irrational Gamesが開発中のようだが,画像を含めた情報は皆無で年内に発売まで漕ぎ付けられるかは望み薄。ほかにも女戦士Alyxでプレイする番外編「Half-Life 2: Aftermath」のように,Valve Softwareの「Steam」でリリースされる期待ソフトも多い。ロシアで開発中の「Vivisector: Beast Within」や「The Stalin Subway」「Precursors」「Neuro」など,2006年も混み合ったジャンルであるのは間違いないだろう。


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