俗に「アクションアドベンチャー」と呼ばれるジャンルが,よりアクション性の高いゲームへと進化していく一方,今年はポイント&クリック形式の古いタイプのアドベンチャーゲームも復活の兆しを見せている。より複雑なストーリーを重視した期待作が多く,かなり充実したラインナップとなりそうだ。今回ピックアップした作品はすべてヨーロッパで開発されているもので,これまた現在のトレンドを物語っている。
Alan Wake: A Psychological Thriller
開発元:Remedy Entertainment
発売元(米):未定
リリース時期:2006年内
「Max Payne」で知られるRemedy Entertainmentの新作は,悪夢と現実の交差を描いたサスペンスアクション「Alan Wake: A Psychological Thriller」である。本作では,日が暮れると闇から魔物が襲い掛かってくるため,夜は懐中電灯や車のヘッドライト,外灯や灯台の光までなんでも利用したサバイバルに挑み,昼間ゆっくりと謎解きに勤しむことになりそうだ。
ゲームプレイは自由度の高い「Grand Theft Auto」風のミッションベースで,アメリカ北西部の森林地帯の大自然を背景とした,広大な地域がフィーチャーされている。ほとんどの場合は車を使っての移動になるようだ。プレイヤーの行動の中心となる湖畔の街は寂れた雰囲気だが,太陽光による明暗の表現が美しく,時間や季節,天候によって風景が刻々と変化する様子が見事である。
本作はMax Payneのようなアクション重視ではなく,パズルやアドベンチャーの要素が色濃い作品となる模様。まだパブリッシャも決まっておらず,実際は完成にも程遠いようで,発売時期を含めて未定な部分も多い。しかし,次世代的な雰囲気と技術を十分に持ち合わせた作品だけに,今年中にはリリースにこぎ着けてほしいところだ。
Call of Cthluhu: Dark Corner of the Earth
開発元:Headfirst Productions
発売元(米):Bethesda Softworks
リリース時期:2月
H.P.ラヴクラフトのホラー小説をゲーム化した「Call of Cthluhu: Dark Corner of the Earth」は,開発が終わっていると言われながらも長い間お蔵入りの状態にあった。最近では多くのゲーマーのレーダーから消えかかっていた感もあるが,ようやくBethesda Softworksからリリースの運びとなりそうだ。
オープニングのムービーが不思議な内容で,主人公のジャック・ウォルターが精神病棟の暗い部屋に座っているところから始まる。ゲームを通して彼は気がふれてしまったという「エンディング」を冒頭でいきなり見せているのだが,その理由をジャックの視点で解き明かしていくのがプレイヤーの目的なのである。ゲームは一人称視点で,HUDのような情報は一切ない。FPSのようにアクションやステルスを駆使してストーリーの深部へと突き進み,画面に血飛沫がつくことでヘルスの下降を示すのである。
面白いことに,すでに「Call of Cthluhu: Destiny's End」「Call of Cthluhu: Beyond the Mountain of Madness」という,2本の続編が年内にリリース予定になっている。
Dreamfall: The Longest Journey
開発元:Funcom
発売元(欧):Funcom
リリース時期:Q2 2006
「Dreamfall: The Longest Journey」は,スマッシュヒットとなった前作「The Longest Journey」の成功に甘んじることなく,さまざまな面で新しい要素を組み込んだ作品となりそうだ。新しいキャラクターとなる主人公ゾイが,現実とパラレルワールドを旅する物語だが,ほかにも暗殺者のキーンや,ステルスを使って「世界の果ての世界」ウィンターで生きる前作の主人公エイプリルも絡み,三者三様の物語が複雑に絡み合っていくのである。
何か大きな異変が起こってアメリカやヨーロッパが没落し,代わりにアフリカが世界で最も裕福な地域になったというのが本作の設定で,ゲームの開始地点は未来のカサブランカである。かなり壮大なストーリーが予想され,ほかにもマーキュリアという北部ヨーロッパの中世都市も登場する。ゲームはアクションではなく,パズルを解きながら進んでいくというスタイルを前作から踏襲し,それぞれが得意のスキルを駆使して問題を解決していく。前半のカサブランカはバイオテクノロジーやロボット工学が発達しており,ゾイはそれらも含めたアイテムを駆使する必要がありそうだ。インタフェースはほとんど存在せず,ゲームはほぼクリックやボイスオーバーで進行していく。
Metronome
開発元:Team Tarsier
発売元(欧):未定
リリース時期:2006年内
昨年のE3での発表以来まったく新しい情報の出てこない,スウェーデンの有志によって制作中のアドベンチャーゲーム「Metronome」。独特のアートワークや音楽を主体にしたコンセプトで,かなりユニークな作品に仕上がりそうな気配だ。まだ分からないことも多いが,北欧らしい幻想的な雰囲気が漂っている。
ゲームの舞台となるのは,生きているのか死んでいるのか分からない精霊“Metrognome”が存在する街で,この精霊を音楽で操る方法を編み出した企業が,彼らを奴隷化することによって莫大な富を得ているという背景だ。ロボット達にも魂を吹き込み,彼らを警護に使うことで大きな権力を握っている。
そんな場所で,目深に帽子をかぶり,ズボンに録音機の入ったバッグというイデタチの少女が,この企業の陰謀を暴くことになる。「音」がゲーム全般にわたって重要な役割を持っており,プレイヤーは街に佇むMetrognomeを,付近にある機械や楽器を使ってうまく操ることでパズルを解いていくのだ。
音楽は主人公が背負った録音機に録っておき,マイクから音を発射させてロボットと戦ったりする。こうしてロボットから抜け出た魂は,プレイヤーが傷ついていれば癒してくれたりもする。
Paradise
開発元:Ubisoft Entertainment
発売元(欧):White Birds
リリース時期:2月
「Syberia」や「Amazone」など,良質なアドベンチャーゲームを生み出してきた開発者の新作は,お得意のポイント&クリック形式のクラシカルなアドベンチャーゲーム「Paradise」である。今回の舞台となるのはサハラ砂漠に横たわる架空の王国モーラニア。主人公は,国王と離縁したスイス人の母を持つアン・スミスで,国外でまかりとおる父の悪評とは裏腹に,彼との良い思い出を胸に秘めている。モーラニアが内乱へと突入する中,父の危篤を知ったアンが一人で危険地帯への旅に出るというのが,本作のストーリーである。
アンは,彼女の出生についてはほとんど知らず,ゲームを通して自分の家族の過去を知ることになる。ゲームの序盤はマダルゲインという戦禍の街に行き着くようだが,ここでレオパードに懐かれて,物語をとおしてのコンパニオンとなるようだ。ゲームでは,レオパードを操作する場面もあるという。
ゲームは2Dのプリレンダリング画像を背景に使っており,現実的なアフリカではなく,どこかおとぎ話の幻想的な雰囲気が組み合わさっている。ところどころのオブジェクトにアニメーションが用いられているのはほかの作品と同様で,さまざまなNPCと会話を進めながらの謎解きが楽しめそうだ。
Runaway 2: The Dream of the Turtle
開発元:Pendulo Studios
発売元(米):Anaconda
リリース時期:Q2 2006
日本やアメリカでは知名度が低いものの,前作「Runaway: A Road Adventure」は,フランスで2002年度のゲーム賞を受賞するほどの人気があったアドベンチャーゲームである。最近では少なくなったセルアニメ風の2Dグラフィックスが独特で,古参のファンには好評となった。舞台だったカリフォルニアの地勢にあまりにも無頓着だったり,Sushiという名のハッカーが登場したりと,真面目なのかジョークなのか分からないような場面が満載だったが,また今作でもマニア心をくすぐってくれるだろうか。
今回は世界各地が舞台となるようで,主人公ブライアンが前作で愛を勝ち取ったジーナとのハワイ旅行中に,離れ離れになってしまうところから始まる。本作もクラシカルなポイント&クリックタイプのもので,インタフェースもシンプルで,言語以外に詰まる要因はなさそう。ただし,パズルのでたらめさは前作どおりで,砂地獄を抜け出すのに周りで飛び跳ねているサルを追いやるといった,何の関連性があるのか分からないようなばかばかしい仕掛けが多いようだ。Sushiは本作にも再登場するとのことで,ヨーロッパ的なギャグについていけるファンにはオススメの作品といえる。
定点観測基地より
ほかには,情報が出ていない「Broken Sword: The Angel of Death」や「Tony Tough 2」のような,ヨーロッパで人気の続編が登場するだろう。LucasArtsがキャンセルした「Sam & Max」をヨーロッパで復活させようとする動きも見られる。ここのところ元気だったThe Adventure Companyは,2月にリリース予定の「Keepsake」以外の新作はまだ発表していない。
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