― 特集 ―

PCゲーム新作ガイド2006

Text by 奥谷海人 

マンネリ化を打開できる作品が誕生するか!?

 2004年から2005年にかけて,アメリカや韓国を中心にMMORPGが量産される傾向にあった。しかし,不完全な課金システムやサービス形態の未熟さなどで失敗した例も少なくなく,結果的に数タイトルが勝ち組として市場を分け合う構図になっている。ハイファンタジー系のRPGに頼るなどマンネリ化も見られ,既存のファンにアピールしながらメインストリームへの浸透を模索するような,小規模な改革に留まる一年だろう。

 

 

Age of Conan: Hyborian Adventures

開発元:Funcom
発売元(欧):Funcom
リリース時期:冬

 

 「Age of Conan: Hyborian Adventures」は,ロバート・E・ハワードの小説「英雄コナン」シリーズの世界をライセンスした初のMMORPG。1980年代のシュワルツェネッガー主演映画「コナン・ザ・グレート」の世界が,MMORPGとして甦るのだ。
 ゲーム開始時,プレイヤーはCimmerian,Aquilonian,そしてStygianから出身部族を選択する。クラスは全員コモナー(Commoner)からスタートするが,そこからメイジ,プリースト,シーフそしてウォーリアの四つのベースタイプに枝分かれし,やがてはコマンダーやマスターなどという称号のつくヒーローへと成長していくのだ。
 ゲームの序盤は,サーバーには接続するものの他人とは世界を共有しないという珍しい方式が採用されている。これはコナンが王として君臨する世界を描いた,「ストーリー」を重視しているためと思われる。クリックだけのゲームにならないよう,アクションにはさまざまなアイデアが取り込まれており,「振り下ろし」や「突き」など剣技のパターンがリアルタイムで操作可能だ。ハイレベルになると,NPCの戦士達を雇ってフォーメーションを組むこともできる。やがてはプレイヤー達が街や城を形成し,ファクション同士で攻城戦も楽しめるようになるらしい。

 

 

Dark and Light

開発元:NP Cube
発売元(米):Farlan Entertainment
リリース時期:4月

 

 一つのサーバーで4万平方kmという,広大な世界を構築しているのがウリの「Dark and Light」は,エルフやオークなどが登場する中世ファンタジー世界を舞台とするMMORPGだ。プレイアブルな種族として,ヒューマンやエルフなどの定番種族のほかに,自然の保護者であるルティン,神との勾配による戦士ブレイブ,そして女性専用のフェアリーなど珍しいものが用意される。また移動手段として馬やドラゴンのような生物のほか,ケーブルカーやハンググライダーも登場する。
 レルムと呼ばれるゾーンは12種類あり,そのうち2か所がプレイヤーのスタート地点となる。「闇」と「光」の戦いが中核となっており,2属性による大規模なPvPはもちろん,郊外に徘徊するモンスター達も同じ属性なら襲ってこないなどの工夫がなされている。
 また詳細は不明だが,このゲームでは「祈り」がキーポイントとなっており,ギルド戦争中に祈りを捧げることで,レベル10程度のプレイヤーがレベル50のプレイヤーを倒すことも可能だという。
 本作ではクラフティング(アイテム作成)もクローズアップされていて,プレイヤーが望むのなら,戦闘には一切参加せずに街で生産作業に勤しむこともできるようだ。恋人を探し当てたり最初に未開地に踏み込んだりするといった行為には特別なボーナスポイントが与えられ,これが溜まると街の市長になれたりもする。すでにβテストも最終段階に入っている。

 

 

Dungeons & Dragons Online: Stormreach

開発元:Turbine Entertainment
発売元(米):Atari
リリース時期:2月

 

 「Dungeons & Dragons Online: Stormreach」は,正式サービスインを間近に控え,昨年末あたりから立て続けに巨大なパッチが当たってリファインされていって,評価がうなぎのぼりに上がっているオンラインRPGである。開発するのは「Asheron's Call」以来,古参MMOメーカーの一つTurbine Entertainmentである。「Dungeons & Dragons」の第3版ルールブックを中核に,ゲームでは扱われたことのないEberron一帯で,仲間達とのダンジョン攻略を楽しめる。
 テーブルトークを楽しむような雰囲気が最大限に生かされており,インスタンスゾーンによる小規模パーティ専用の大小クエストをプレイすることになる。クエストを与えてくれるNPCのいる街は多くのプレイヤー達で賑わっているが,クエストが始まるとエリアはプレイヤーと仲間達が独占し,キャンピングや団子状態での戦闘を回避できるのだ。
 プレイヤーが選択できるクラスはファイターやソーサラーなど9種類あり,さらにこれらのマルチクラスを狙える。また特殊能力「フィーツ」など,Dungeons & Dragonsの独自ルールが数多く用意されている。

 

 

Huxley

開発元:Webzen
発売元(韓):Webzen
リリース時期:Q3 2006

 

 RPG以外のMMO作品として紹介しておきたいのが,韓国で開発中のオンライン専用FPS「Huxley」である。アポカリプス(第三次世界大戦?)後の世界を舞台に,プレイヤーは「サピエン」もしくは「アルタネイティブ」のファクションを選んでプレイする。なお,プレイヤーは選択できないが,モンスター達を送り込んでくる「ハイブリッド」というファクションも存在する。これらの勢力が,Lunaritesと呼ばれる新しいエネルギー資源を求めて抗争するのだ。
 マップにはバトルフィールドと呼ばれる前線区域が点在しており,そこで数百人規模の戦闘が楽しめる。そこに行くには,ベースとなるファクションの中心都市から公共交通手段を使うのが一般的だが,戦闘報酬で得たお金で個人専用の乗り物を購入することもできるという。
 「Unreal Engine 3.0」をライセンスしており,人肌やメタルオブジェのテクスチャが細かく描かれているなど,未来的ながらも寂れた工業地帯の様子がうまく表現されている。MMOFPSでは「PlanetSide」が鳴かず飛ばずだっただけに,その壁を乗り越えるだけの魅力があるかが成功のカギとなるだろう。

 

 

Pirates of the Burning Sea

開発元:Flying Lab Software
発売元(米):Valve Software(Steam)
リリース時期:2006年内

 

 「Pirates of the Burning Sea」は,18世紀のカリブ海が舞台の,大航海時代以降をモチーフにしたMMORPGである。プレイヤーがロールプレイするのはもちろん海賊(もしくは海軍将校)であり,イギリス,フランス,そしてスペインの中から自分が庇護を受ける国を選ぶ。海戦だけでなく,街の探索や商品の輸出入を扱ったゲームプレイとなりそうだ。
 公開されている画面写真からも分かるように,街は細部まで描き込まれており,映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のような世界が堪能できそうだ。プレイヤーは,街に住むさまざまなNPCからクエストを得て,自分の船を操って旅に出る。カメラをズームインすると,実際に船の看板で作業するプレイヤーキャラや乗組員達,キャノンの煙も確認できる。帆船の種類は20種類,キャノンの弾丸も12種類がフィーチャーされており,ほかのプレイヤーキャラやNPCの海賊ばかりでなく,海や陸地に潜む伝説のモンスター達との戦闘も待っている。
 海戦では,最大で50人程度のプレイヤーキャラが入り乱れての砲撃戦を満喫できそうだ。レベルが上がるにつれて銃の照準が正確になったり,船員達の作業効率が上昇したりし,陸地では剣やマスケット銃を利用した戦いが想定される。

 

 

Tabula Rasa

開発元:NCsoft Austion
発売元(米):NCsoft
リリース時期:10月

 

 「Tabula Rasa」は,RPGの大家Richard Garriott(リチャード・ギャリオット)氏が関わる作品で,「Unreal Engine」に対応させるなどして開発が延期されたものの,古参のゲーマーからは依然として注目度の高いタイトルである。プレイヤーは,Benefactorというエンジェル種族の加護によって特殊能力を身に付けた人間として,惑星を侵略しはじめたBane達と戦っていく。
 ゲームは少数のパーティメンバーが専用クエストを攻略するミッションと,数十人規模が入り乱れて敵と戦うバトルフィールド・モードの2構造になっており,エイリアンやメカノイドらと戦うSF風のアクションRPGだ。バトルフィールドでは,Baneがドロップシップを使って仲間を増やしていくなどし,かなり速いペースでの展開となりそうだ。サテライトのビデオメッセージで仲間からクエストの救援を求められるなど,一風変わったコンセプトも多用されており,またほとんどの場所には瞬時に移動できるテレポートがある。
 日本のアニメのような画風からは,NCsoftの影響も感じられる。かつてのUltimaシリーズの開発者達が,未来的なエッセンスを盛り込んだオンラインRPGを,どのように料理しているのか楽しみだ。

 

 

定点観測基地より
 「Huxley」もそうだが,同じくWebzenの「All Points Bulletin」やNCsoftの「Auto Assault」など,非ハイファンタジー系のMMOゲーム開発で韓国がどれほどのものを見せてくれるか楽しみだ。欧米からは「The Lord of the Rings Online」「Star Trek Online」「Vanguard: Saga of Heroes」「Warhammer Online」,日本からも「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」が予定されているなど,今後の強豪参入にも注目したい。


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