今年のシミュレーションジャンルは，フライトシムの本命が帰ってきてくれたおかげか一層華やかに感じる。また，レーシング系もますます技術力が向上し，驚くほど美しいグラフィックスや，充実のオンラインモードを満喫できるものが増えてきた。シミュレーションゲームと一口にいってもさまざまなものがあるが，ここではとくにストラテジー以外のものに限定して紹介する。

City Life

開発元：Monte Cristo
発売元（欧）：Deep Silver
リリース時期：4月

　「7 Sins」など，近年はシミュレーションゲームの開発に力を入れているフランスの古豪Monte Cristoが，「SimCity 4」の再来とも思えるような都市建設シミュレーションゲームを開発中だ。「City Life」は，プレイヤーが21世紀の大都市を目指して高級住宅地や高層ビル，繁華街などで賑わう街造りを行っていく。街には人々や車が溢れており，カメラは街全体が入るほどのズームアウトや，逆に住人の目線レベルまでのズームインが可能だ。すべてがリアルタイムで描かれ，住人達の幸福度や不満に合わせて，都市風景も多様に変化していく。
　City Lifeには，住宅地，工業地，商業地といった6種類の区画が存在し，総計では300種類ほどの施設が用意されるという。面白いのは，その地域に住む人々がまた6種類の階層に分かれており，共同体としての意思も表現するらしいこと。税金や公害，就職難などの欲求不満が高まれば大規模なデモを起こす，十分な警察官がいなければギャング抗争が始まるといった具合だ。
　ミッションモードもあり，ホームレスに囲まれた，エリートの住む高層ビルの周囲の改善にチャレンジするなどのミッションが用意される。時間によって違った顔を見せる都市空間の写真を撮ったりもできるのだそうだ。

Crashday

開発元：Moonbyte Studios/Replay Studios
発売元（欧）：Atari
リリース時期：2月

　シミュレーションゲームというよりはアクションゲームに近いが，ドイツで開発中の「Crashday」は，「Track Mania」のようなコースで「Destruction Derby」のように“いかに車を破壊するか”を楽しむゲームである。知る人ぞ知る「カーマゲドン」に熱中した開発者達が，コンシューマ用ゲームとして名高いWipe Outシリーズにヒントを得て制作。物理面などでシミュレーション性の高い作品となっている。
　本作には，衝突し合いながらゴールを目指す「Racingモード」をはじめ，6種類ものゲームモードがある。アリーナの中で動けなくなるまでぶつかり合う「Wrecking Match」や，自分でコースやオブジェクトを設置し，より派手なスタントで観客からの評価を受ける「Stunt Show」，一定の速度まで下がるとボディに装着された爆弾が炸裂する，映画「スピード」のような状況で競い合う「Bomb Run」といったモードが楽しそうだ。また，爆弾を相手に擦り付け合うタイプのゲームや，キャプチャー・ザ・フラッグなど，オンライン対戦向きのゲームモードもある。
　車種は12種類だが，基本的に銃やミサイルなどが搭載されており，また大破させるのが目的なため，実車のライセンスはまったく受けていない。MOD制作用のSDKも配布する計画だという。

Flight Simulator X

開発元：ACES Studio
発売元（米）：Microsoft Game Studios
リリース時期：2006年末

　前作「Flight Simulator 2004: A Century of Flight」以来，3年近くにわたって沈黙を保ち続けてきた人気フライトシムシリーズの最新作が，ついに発表された。「Flight Simulator X」は，年末にリリースされる予定の次世代OS「Windows Vista」のエンターテイメント部門を担うフラッグシップタイトルであり，DirectX 10などMicrosoftならではの先取り技術も期待される。
　本作では，雲の影も表現されるほど緻密なShader 4.0の照明効果で，操縦時に日光が目に入って視界が遮られるだけでなく，機体からの反射や窓ガラスへの映り込みなども描かれている。ゲーム内容はミッション制が採用されることになり，初心者でも親しみやすいゲームシステムとなりそうだ。
　マップの端が存在しない“球形の地球”仕様は前作どおりで，今回は2万4000にもおよぶ空港がフィーチャーされている。何より地上のオブジェクトも視覚で捉えられるのが特徴で，従来のような都市中心部のビルばかりではなく，住宅群や道路を走る自動車，海に浮かぶ船舶，大自然を駆け回る野生動物など，こと細かに描かれているのである。アフリカのサバンナやアラスカのような辺境の地でも，かなりプレイヤーを楽しませてくれるだろう。

GTR 2

開発元：SimBin Development
発売元（欧）：10Tacle Studios
リリース時期：2006年内

　「GTR - FIA GT Racing Game」「GT Legends」など，レーシングシミュレーションのマニアの間で静かなセンセーションを巻き起こしている，SimBin Developmentの最新作「GTR 2」が，2005年12月に行われたバーレーンGTで正式に発表された。
　緻密な物理処理やカスタイマイゼーションの豊富さで知られるシリーズだが，今回はDirectX 9.0cに完全対応させたグラフィックスエンジンに更新され，前作と比べ車体や風景のディテールが向上している。もちろんドライビングモデルや物理演算も改良されているほか，昼夜や気象の変化，金属と強化繊維の違いまでを表現したダメージ効果など，至れり尽くせりのこだわりが見られる。
　ヨーロッパでは今年からGT3シリーズが始まるが，GTR2でも前作と同様，2003〜2004年シリーズのみのエクスクルーシブライセンスを活用している模様。それでも，Nissan 350Z，Porsche GT3 RSR，BMW M3 GTR，Maserati MC12などの新車種に加え，デュバイやバレンシアなど計28種類のトラックでプレイできる。また詳細は不明だが，「Driving School」モードというものが追加される見込み。

Spore

開発元：Electronic Arts
発売元（米）：Electronic Arts
リリース時期：2006年内

　奇才Will Wright（ウィル・ライト）氏の最新作「Spore」は，単細胞生物から始まり銀河を征服する知的生命体に至るまでを体験するという，奇想天外なゲームである。ゲームには六つのフェーズが用意されており，顕微鏡で見る溶液の中で活動しているような微生物を操る「Tidepool」，複数細胞に進化して海中を動き回る「Evolution」，陸上で原始的な生活を営み始める「Tribal」，都市建設シムのように遊ぶ「City」，惑星のアチコチに勢力を広げていく「Civilization」，そして近隣の惑星を次々と掌握していく「Galactic」と，進化によってゲームの形態も変化していく。それぞれの遊び方はまったく異なり，“一つのゲームで6度おいしい”シミュレーションゲームなのだ。
　プレイヤーが進化させていく生物は，二足歩行かと思えば3本足になったり五つ目だったり，ゲーム中の出来事によって形態が多様に変化していく。これらは，あらかじめ各形態のアニメーションデータが用意されているのではなく，その形状によってプロシージャルに生成されるもので，プレイ次第で独自の複雑なデザインがなされていく。「The Sims」のようにデザインツールも用意されていて，のちのち建設できるようになる都市施設やユニットを自由に制作しては，ゲームで利用したりオンラインで公開したりする楽しみもある。

TOCA Racing 3

開発元：Codemasters
発売元（米）：Codemasters
リリース時期：2月

　これまで「Pro Drive Racer」や「Touring Car Challenge」など，実にさまざまなカテゴリのレースゲームをリリースしてきたCodemasters。それらをまとめて一つの巨大なレースゲームとして昇華させ，近日発売予定の「TOCA Racing 3」へと仕立て上げた。
　本作では，GTチャンピオンシップやフォーミュラ1，オフロード，ラリー，スプリントカーといった，実に豊富なレースがフィーチャーされており，歴史的なレースカーなどを含む35種類のレースカテゴリが存在するという豪華さをウリにしている。コーチからアドバイスを受けながら進めていく「World Tour」と「Pro Career」モードで体験できるチャレンジは，合計で116種類にも及ぶという。
　グラフィックスや物理モデルでは，それなりの経験と定評のあるCodemasters。Corvette C5Rなどのアメ車やNissan 360Z，Subaru Imprezza N10など72種類の車種がライセンスされており，それぞれ違ったハンドリングが堪能できるとのこと。中には砂漠地帯を爆走するオフロードレースで使用する，Baja Duneracerなどの変わり種もある。もちろんオンラインモードも実装している。