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VR市場は悲観的になる必要はなし。アメリカのリサーチ会社が明かした,カラーテレビ型の市場浸透とは
PCやモバイルの市場調査など,ゲーム産業で幅広く活動している印象の強いSuperdata。Llamas氏が率いるVR/AR部門は,プラットフォームホルダーや大手ゲームメーカーの協賛を得て,「VR Data Network」を発足させ,詳しい情報を各社と共有することで,依然として実態が掴みきれないVR産業の実像を調べている。
その成果の1つが,2017年2月に同社から発行された業界向けのホワイトペーパー「The Virtual Consumer 2017」で,今回の講演は,その一部が紹介された。その結論を言えば,2020年までに現状の20倍の産業へ成長するだろうとしている。
「VR元年」と言われた2016年だったが,デバイスの供給不足や,焦点の定めづらいマーケティングのためにVR市場は伸び悩んだとされる。そんな中でも,スマートフォンとの抱き合わせ販売という果敢な戦略によって,2016年中に500万台のセールスを達成したSamsungの「Gear VR」や,2017年2月末の時点で91万5000台のセールスがアナウンスされたSony Interactive Entertainmentの「PlayStation VR」など,よいニュースもあった。
Llamas氏によれば,2016年のVR関連産業の総収益は18億ドルに達したという。日本円で2000億円を超えるこの数字は,“失敗”とするには大き過ぎるものだ。また,このうちの,80%近い15億ドルがハードウェアによるものであり,VRをメインにしたテーマパークなどのサービスを含め,ソフトウェアは3億ドル。
これをどう捉えるかは難しいところだが,ソフトウェアをさらに細かく分けると,その44%がゲームソフト,35%が日本や中国を中心としたVRテーマパークなどによるものだったとLlamas氏は解説した。
ハードウェアとソフトウェア,収益の比率がいびつであることについてLlamas氏は,「ソフトウェアでどのようにマネタイズすべきか,その方法が理解されていない」のだろうと指摘する。ゲーム開発ツールが安価になったとはいえ,人件費を始めとして,ゲーム開発には数億円もの予算が必要だ。それが,映画などと同じように「2時間楽しめて20ドル」というビジネスモデルで良いのかどうか,というわけだ。Llamas氏は,「Free-to-Playが定着するのに時間がかかったように,マネタイズに関するノウハウが今後開発されていく」と断定した。
欧米のVRテーマパーク型のサービスについては,Starbreezeの「StarVR」を利用したIMAXシアターや,スイスのKenzan StudiosがSVVR2017でアナウンスした「Kenzan Arena」(関連記事)など,2017年以降は急速に成長していくであろうと分析している。
もちろん,現状のVRが深いゲーム性や没入度の高さを実現できるのかは保証の限りではなく,カラーテレビが白黒テレビを淘汰したように,VRが一般化するというのは楽観的に過ぎる気もする。しかし,VRテーマパーク型のサービスや,医療,教育,職業訓練,さらにはアダルト産業の分野はあまり開拓されてもおらず,VR市場の潜在成長性は間違いないだろう。1年後,もしくは3年後のSuperdataの分析がどうなるか,今後のVR産業を見守っていきたいところだ。
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