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スクウェア・エニックスの和田洋一会長と投資家の山本一郎氏が,ゲームビジネスの現状と今後についてのトークを繰り広げた「黒川塾(十六)」レポートを掲載
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印刷2014/01/27 16:54

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スクウェア・エニックスの和田洋一会長と投資家の山本一郎氏が,ゲームビジネスの現状と今後についてのトークを繰り広げた「黒川塾(十六)」レポートを掲載

 メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が主催するトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(十六)」が,デジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスで2014年1月23日に開催された。
 本イベントは,さまざまな業界からゲストを招き,音楽/映画/ゲームなどすべてのエンタテインメントの原点を見つめ直し,未来へのあるべき姿をポジティブに考えるという主旨で実施されている。
 16回目となる今回のゲストは,スクウェア・エニックス 取締役会長の和田洋一氏と,イレギュラーズアンドパートナーズ 代表取締役でブロガー/投資家の山本一郎氏だ。
 そのテーマは「ゲームビジネス潮流観測〜混迷の時代に新たな萌芽を探す」というもので,2014年のゲームビジネスやコンテンツ,あるいはデバイスのあり方にまつわるトークが,近年の事例を交えつつ繰り広げられた。
 本稿では,トークの主な内容をまとめたレポートをお届けしよう。

メディアコンテンツ研究家 黒川文雄氏(写真左)
スクウェア・エニックス 取締役会長 和田洋一氏(写真中央)
イレギュラーズアンドパートナーズ 代表取締役 山本一郎氏(写真右)

 最初の話題となったのは,任天堂が2013年4月から2014年3月までの通期業績予想を修正し,当期純利益が250億円の赤字になると発表したことについて(関連記事)。
 山本氏は,任天堂が経営難に陥ったケースは過去にも何度かあったが,現在の任天堂の財務状況からすると,仮に今後40年ほど同様の状況が続いてもまだピンピンしているはずなので,いくらでも取り返しはつくだろうと述べた。
 和田氏は,その意見には同意しつつも,かつて一世を風靡したファミコンのブームが去って任天堂の経営が思わしくなくなったときには,ゲームボーイが登場して再び市場を席巻する,という流れがあった。今回のケースではそのような事例が見受けられないので,任天堂にとっては,ある意味,正念場なのではないかという見解だ。

 和田氏は,任天堂がWiiとニンテンドーDSで開拓した新しいユーザー層は,この3年ほどでソーシャルゲームやスマートフォンアプリにほとんど持って行かれてしまったと語る。今後は,任天堂ハードとスマートフォンのユーザー層に被りがあることを前提に,どう戦っていくかという課題を設定する必要があると述べていた。
 山本氏は,任天堂の市場シェアで,とくにゲームを長く遊ぶユーザー層のシェアが落ち込んでいることを指摘し,失ったものは大きいとコメント。アドホック通信でマルチプレイができる,スマートフォンアプリ「モンスターストライク」Android/iOS)が中高生層を中心にウケていることを例に挙げ,このようなことこそ,任天堂が本来やるべき仕事だったのではないか,と述べていた。

 次に,和田氏がスクウェア・エニックス社長だった時代の,ゲーム開発の資金調達に関するエピソードが披露された。
 和田氏が社長着任後に認識したのが,ゲームメーカーという企業が投資を受けることの難しさだ。その理由として和田氏は,「基本的にゲーム好きの投資家にしかアピールできない」「完成保証や納期保証のハードルが高い」「開発の大規模化・長期化などに伴うキャッシュフローの問題が大きい」という3つを挙げていた。
 和田氏は自身の在任中に,オンラインゲームのサービスによる定期的な収益の確保と,アイテム課金制の導入に伴う顧客単価の上昇を達成したことで,キャッシュフローの問題がなんとか解消されたという。これにより,投資を受けられるスタートラインにようやく立てたのではないかとコメントしていた。

 続いて和田氏は,現在のスクウェア・エニックスにおける社内の体制についても言及。現在のスクウェア・エニックスは,社外の人間から見るとスマホアプリに注力しているように見えるが,実は必ずしもそうではないのだという。
 たとえば,スマートフォンアプリの開発では,ネイティブアプリとブラウザゲームを開発する部署を並行して配置するというように,「方向性」を分散させる手法を採用しているとのこと。
 これは,仮に一つのプロジェクトが失敗した場合,その方向性ごと潰してしまうと未来がなくなってしまう,という判断によるものだ。ただ,「失敗しても大丈夫」という“保険”があると,いつまで経っても成功できない側面もあるので,マネージメントが難しいと和田氏は語っていた。
 なお方向性の分散については,異なる部署から似たような企画ばかり出てきたり,とりまとめる人材がコンテンツの優先順位を勝手に付けたりすることを避けるため,当初は部署ごとにそういった判断を任せていたそうだ。
 しかし,そのような状況が長く続くと関係各社の混乱を招くため,1年ほど前から情報を共有して経営判断を一本化したそうだが,やはり似たような企画が増えてしまっているという。現在は,その打開策を模索しているところだと和田氏は話していた。


和田氏が語った,「ファイナルファンタジーXIV」のトップ交代劇やHDリメイク作品を出し続ける理由


 続いて,「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」PC/PS3)や,スクウェア・エニックスがリリースするタイトルは,シリーズやリメイク作品が中心のラインナップになっているという話題が取り上げられた。

 まず山本氏が提示した話題は,旧「ファイナルファンタジーXIV」の開発体制に関して,トップを交代させた件について。
 同作では,抜本的な改善を行うために,運営を続けながら“ゲームを作り直す”という異例の判断がなされ,それが実行された。2010年12月にその発表が行われた際,開発/運営チームを全面刷新することが明らかにされて大きな話題となった(関連記事)。
 和田氏はこの件について,作り直すということはこれまでの実績すべてを否定することになるため,開発トップの交代は必然だったと述べた。
 仮に,陣頭指揮を取っていた人物を続投させた場合,それまで何年間もやって来たことを自らに否定させて,スタッフにもまったく違う指示を出させることになる。クリエイターにとってかなりむごい仕打ちであり,そのままにしておいたら逆に厳しいことになっただろうとコメントした。

 山本氏は次に,スクウェア・エニックスに限った話ではないが,最近はシリーズ作品や過去作のリメイクへの依存が強く,新規IPが少ないのではないかと指摘。これに対し和田氏は,スクウェア・エニックスにおける状況を説明した。
 和田氏が社長就任直後は,スクウェア・エニックスの経営体質が弱っていた。まず何をすれば業績を伸ばせるのか考えた結果,開発スタッフに自信を持って作らせたゲームを出すことが業績向上につながるだろうという結論に至った。そこで,まずは既存IPの続編やリメイクを作らせて,そのあとに新規IPを増やしていくという算段だったとのこと。
 これが5年ほど前の話で,スクウェア・エニックスではさまざまなチャレンジをしてきたものの,PlayStation 3/Xbox 360向けゲーム開発の出遅れなどもあって,新IPの立ち上げに難航してしまう。さらに,ディレクタークラスの人材の多くを「FFXIV」の開発に参加させることになって,新規IPプロジェクトのいくつかをクローズせざるを得ず,新規IPの大きなヒット作を出せなかったのだと,その裏事情を明かした。

 和田氏は,そこまでしてハイエンドにこだわる必要があるのか疑問に感じるかもしれないが,ハイエンドゲームの開発からいったん手を引いてしまうと再開は困難なため,厳しくても続けていかないといけないと述べる。
 そのため,時間はかかるが定期的に確実な収益が見込める月額課金制オンラインゲームのサービスをベースに,短期間でも顧客単価の増加が見込めるソーシャルゲームなどのアイテム課金制サービスで,キャッシュフローを確保することで経営的な基盤を安定させる。そうしてリスク分散をしたうえで,ハイエンドの新規IP開発に臨むという体制を構築しているという。
 なお和田氏は,スクウェア・エニックスでは,従来のパッケージセールスによる回収型ビジネスモデルだけに頼らない新しいモデルを生み出すべく,現在もチャレンジを続けていると述べていた。

 和田氏の話は,2009年のEidos買収にも及んだ。氏によれば,その狙いは欧米市場への展開だけでなく,当時のスクウェア・エニックスがRPGジャンルに特化しすぎていたという社内事情もからんでいたのだとのこと。
 スクウェア・エニックスに限らず,RPGというジャンルではゲームデザインの基本的な構造が同じになってしまいがちだと和田氏は述べる。それを感じさせず別物に見せる技術は素晴らしいが,それ以外のソリューションもあることを念頭に置くことも重要だと話していた。
 また,ゲームのメカニズムはハードウェアに依存する部分があるため,たとえばRPGに特化するなどメカニズムを絞りすぎていると,ハードウェアが世代交代したときなどに,技術的についていけなくなってしまう危惧があるという。そこで,多様なジャンルのゲーム開発を手がけ,自社IPを所有していたEidosに目を付けたというわけだ。
 当時,Eidosが作るジャンルのゲームは,世間が抱いていた「RPGのスクウェア・エニックス」というブランドイメージとはかけ離れていたわけだが,これについて和田氏は,同じ屋根の下でうまくやれるように折り合いを付けるしかないと考えていたという。


今後のゲーム業界はどうなっていくのか


 最後の話題は,今後のゲームビジネスについて。
 山本氏は,ゲーム黎明期から続く人気シリーズやガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」Android/iOS)を引き合いに出し,それらのヒットコンテンツが長期にわたるヒット作品になるという予想のもと作られたわけではないとコメント。それを踏まえると,今後10年のビジネスを支えるヒットを狙えるような参考事例はないと述べる。
 また山本氏は,昨今のゲームを取り巻く状況が新しいユーザーエクスペリエンスを提供できているのかどうか自信がないと話していた。たとえばFPSでは,技術的に行き着くところまで行ってしまい,細かな部分のリアリティでしか差異を作り出せなくなっている状況下にある。スマートフォンやタブレットといった新しいデバイスが登場しても,本質的な部分はあまり変わっていないのではないかというのだ。
 これについて和田氏は,カプコンの「モンスターハンター」シリーズがアドホックモードでの協力プレイを軸にヒットしたことを例に挙げ,新たなユーザーエクスペリエンスのキーになるのは,コミュニケーション機能の発展だろうと,自身の見解を述べていた。

 和田氏は,ゲームがヒットするかどうか,ロジカルに説明することは不可能であり,いわば博打を打っているようなものだと表現。何が当たるかは分からないので,まずは広範囲にコンテンツを分散させ,当たったところを狙い打つアプローチが有効だと述べる。
 和田氏はそれを,最初は散弾銃を撃ち続け,当たったときにスナイパーライフルに持ち替えるようなものだと表現。最初からスナイパーライフルを持っていてはそもそも当たらないし,最後まで散弾銃を使っていたらビジネスは効率化していかないと話していた。
 また和田氏は,このアプローチでは他者の成功を真似てもうまくいかないことが多いと続ける。自分で当てて狙い打つことが重要なので,最初の一発が当たるまでは耐えしのぐしかないと述べていた。
 山本氏もソーシャルゲーム市場の例を出してこれに同意。二番煎じでは本家のクオリティにかなわないし,トレンドが8か月程度で移り変わる市場では,でき上がった頃には旬が過ぎているとコメントしていた。


 近年のゲーム業界では,AppStoreやGoogle Playをはじめとしたプラットフォームを介して,作り手がコンテンツを顧客にダイレクトに提供できる時代になってきている。いわばゲーム業界は現在過渡期にあるといえるのだが,その方向性が明確になるのはいつ頃だろうか。

 和田氏は,スマートフォンやタブレット端末の普及,PS4やXbox Oneといった新世代のゲーム機の登場により,開拓できるゲーム市場が拡大しているのは確実だとコメント。それを本気で追いかけ始めたのはほんの2〜3年前のことなので,その練度が高まってきて,2014年から2015年頃には,ビジネスモデルも含めた「新しい芽」が出てくるのではないかと話していた。
 また,ゲーム機のプラットフォーマーがインディーズに目をかけはじめたり,新しい資金調達手段としてクラウドファンディングが登場したり,あるいはゲーム新興国が台頭してきたりといった近年の傾向から,数年後には開発者の層が世界的に厚くなっていくだろうと展望を語った。

 山本氏は,この1〜2年でゲーム企業が東南アジア方面に進出するようになり,ここ数か月で,ようやく現地で得たノウハウを生かせるようになってきたと述べる。そのため,方向性がはっきりしてくるのはもう少し先で,2015〜2016年頃だろうと予想。
 和田氏は,それに同意するとともに,2013年頃から業界全体の意識が「日本と海外」という大雑把な区分から,各地域の特徴を踏まえたものに変化していると補足する。
 また,今後のパブリッシャでは,小売店に商品を置いて顧客に向けたプロモーションを行うといった施策の重要度は下がると和田氏は予測。ゲームの方向性,ゲームエンジンの情報提供,あるいは特定分野に特化したゲームスタジオのアテンドなど,デベロッパのサポートを手厚くしていく役割がより求められるようになると述べていた。

 さらに山本氏は,ネット上で各国のクリエイターが交流し一つのゲームを作る「クラウドワークス」のような試みも,今後増加していくだろうと予想する。
 山本氏は,クラウドワークスのようなゲーム開発においても,物語性などを付与して人々を夢中にさせるような仕掛けを作り出す点では,日本のクリエイターの独壇場になるだろうと話す。
 ただ,それは最後の砦のようなものであり,「妙にこだわりのあるコンセプトワークを手放したとたん,日本は没落するんじゃないかと思う」と警鐘を鳴らす山本氏の言葉で,今回のトークは締めくくられた。

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