インタビュー
ネクソンは海外ヒット作の投入や国内デベロッパとの協業で日本のスマホゲーム市場に攻勢をかける。モバイル事業本部のキーマンにその戦略を聞いた
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
また,この7月に発表された,山椒Studiosと戦略的パートナーシップ締結など,日本のゲーム開発会社と協業し,日本国内向けタイトルの開発を推し進めていくことが明らかにされている(関連記事)。
今回4Gamerでは,ネクソンのモバイル事業本部 本部長 金 起漢氏に,日本における同社のスマホゲーム市場展開について話を聞くことができたので,その模様をお伝えしよう。スマートフォン向け「ファイナルファンタジーXI」や「野生の地:Durango」など開発中のタイトルについても,少しではあるが進捗を聞くことができたので,最後まで目を通してほしい。
ネクソン コーポレートサイト
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
今回はネクソンのモバイル事業戦略に関する話をお聞きしたいのですが,その前にまず,2016年上半期の国内スマホゲーム市場をどのように分析しているのかを教えてもらえますか。
![]() |
多数のタイトルが各社からリリースされていますが,ヒットするジャンルやパターンは特定のものに偏っていて,市場全体が頭打ちになっているという印象です。
一方で,ユーザーからはクオリティの高いゲームを求められる傾向にあり,開発コストは高くなっています。小規模の新しい会社にとっては,成功できる可能性が低く,非常に厳しい状況だと言えるでしょう。
4Gamer:
そのような状況の中で,ネクソンとしては今後,日本市場でどのように展開をしていく計画なのでしょう。
金氏:
国内に関しては,2軸での展開を考えています。
1つは海外で成功したタイトルの中から,日本でもヒットしそうなものを選んで展開することです。ネクソンは各国に現地の市場を把握しているグループ会社を持っていますから,そうした現地法人やパートナー企業と綿密に連携し,検討を重ねています。
もう1つは,国内の優秀なデベロッパと提携して優れたゲームを展開していくことです。これは,現在日本で成功しているタイトルのほとんどが,国内で開発されたものであることが大きな理由です。
![]() |
先日開催された2016年度第2四半期決算説明会では,代表取締役社長のオーウェン・マホニー氏から,毎月1本のペースで新作スマホゲームを配信していくとの話が出ました。
中でも,「リネージュII」や「TERA The Exiled Realm of Arborea」を手がけたパク・ヨンヒョン氏率いるNAT Gamesが開発している「HIT」が,日本国内で2016年度下半期に配信されるというアナウンスがあったのが,大きなニュースだったと思います。
ただ,「HIT」が最初に韓国で配信されたのは2015年11月で,2016年7月にはグローバルバージョンもリリースされましたが,日本だけ展開が遅れている形になっています。これにはどのような理由があるのでしょうか。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
金氏:
先ほどお話ししたように,現在の日本市場は頭打ちに近い状態ですから,そのような中で成功するには,やはりゲーム本来の楽しさや面白さのクオリティを,これまで以上に追求していかなければならないと考えています。クオリティの中には,きちんとしたローカライズやカルチャライズを施し,万全な状態にすることも含まれます。
ネクソンでは,海外でヒットしたタイトルをいくつか扱っていますけれど,それをそのまま日本に持ってきても同じようにヒットするとは限りません。展開する国に適したビジネスモデルも踏まえてカルチャライズを行うので,結果として半年以上かかってしまうことが多いんです。
4Gamer:
カルチャライズをする際は,どのような部分を重視しているんですか。
![]() |
まずはユーザー属性ですね。日本のユーザーは,コンシューマゲームやアーケードゲームを遊んだ経験のある方が多いですが,韓国や中国ではMMORPGやPCゲームが中心なので,スマホゲームで求められるものが違ってきます。
例えば,韓国や中国のユーザーは効率重視の傾向があって,キャラクターの成長効率が高まるような有料サービスが好まれます。また,自分が本当に欲しいものだけに対価を払うことを好むので,ガチャのようなランダム販売形式は敬遠されがちです。
4Gamer:
根本となるビジネスモデル自体が日本とは異なっているわけですね。
金氏:
一方,日本のユーザーは,ゲーム自体の面白さや愛着のあるキャラクターにこだわる傾向が強いです。カプセルトイで子供の頃からガチャの文化に馴染んでいるので,「何が出るか分からない」というガチャの仕組み自体を楽しんでいる方も多くいます。
そういった違いを踏まえたうえで,日本で展開するタイトルを選別したり,カルチャライズを施したりしているわけです。
また,グラフィックスのテイストも国ごとに異なっていて,日本で受容されやすいグラフィックスというものがありますよね。その点において,ネクソンにはPCオンラインゲーム時代からグラフィックスのカルチャライズを行ってきた専門チームがおりますので,日本向けにきめ細かなカルチャライズをすることが可能です。
![]() |
![]() |
先日の決算説明会では,スマホゲーム12本の名前が挙がりましたが,その中で,日本で展開する予定があるタイトルを教えてもらえますか。
金氏:
開発中のものでいうと,「三國志曹操伝 Online」(iOS / Android)ですね。「メイプルストーリーM」(iOS / Android)や「アラド戦記モバイル」は弊社主力タイトルのIPを活用していますので,日本展開も検討していきたいと思っています。
4Gamer:
「アラド戦記モバイル」は2D版と3D版があって,国や地域に応じてどちらを重点的に展開するか変える戦略を取るそうですが,日本ではどうなるのでしょうか。
金氏:
2Dバージョンは中国向けサービスを予定していて,現地ユーザーにとってより親しみのある原作「アラド戦記」のグラフィックスと操作感が特徴です。一方の3Dバージョンは豪快な打撃感をお楽しみいただける内容で,韓国およびグローバル向けに開発を進めています。
まだ開発中でほかの国や地域でも配信していませんから,日本サービスについて決定するのはしばらく先になります。
![]() |
G-Star 2015でプレイアブル出展されていた「野生の地:Durango」は今,どうなっていますか。
金氏:
全世界同時ローンチにするのか,それとも国や地域で段階的に展開するのか,社内で検討している段階です。
Durangoはゲーム性が非常に独特ですから,どの国でも驚きを持って迎えられるだろうと期待しているのですが,カルチャライズが必要ではないかという意見も出ているんです。まだ結論が出ていないので,配信時期については,もうしばらくお待ちください。
4Gamer:
それでは,スマートフォン向け「ファイナルファンタジーXI」の進捗はいかがですか。2015年3月に発表されて以来,具体的な情報が出ていないので,気になっている人も多いと思います。
金氏:
こちらは鋭意開発中ですが,往年のIPをスマホゲーム化する際に誰もがぶつかる壁に直面しているところです。10年以上前から「ファイナルファンタジーXI」を楽しんでいる方に向けたほうがいいのか,それとも今のスマホゲームに慣れた方に向けたほうがいいのか,まだ方向性を決めきれていない感じです。
4Gamer:
「ファイナルファンタジーXI」もそうですが,最近は往年のMMORPGをスマホゲーム化する動きが活発になってきています。ネクソンでサービスしているPCオンラインゲームのうち,「テイルズウィーバー」や「マビノギ」がスマートフォンで遊べる日は来るのでしょうか。
金氏:
そうしたIPのスピンオフタイトルはさまざまな形で提供していますが,おっしゃっているのは,もともとのMMORPGをそのままスマートフォンで遊べるもののことですよね。
そういった話は社内でも議題に上がっていて,いろいろと検討を重ねています。現在の段階では,将来的には何かしら良いニュースをお伝えできるのではないか,という感触を得ている程度ですので,正式に発表できることになったらお伝えしたいと思います。
![]() |
日本のデベロッパがコンシューマゲームで培った経験と,ネクソンが持つオンライン分野のノウハウやパブリッシング力の融合を目指す
4Gamer:
次に,もう一つの軸である国内デベロッパとの協業について話を聞かせてください。その最初の事例として,山椒Studiosと戦略的パートナーシップを締結して,「Match&Slash(仮称)」のグローバル独占配信権を獲得したとの発表が7月にありました。そうした“国産”のタイトルは,現在何ラインくらい開発が進められているのでしょうか。
金氏:
「Match&Slash(仮称)」のほかにも数タイトルの企画がありますが,まだ検討中なので,実際に開発を進めるかどうかは未定です。可能であれば,1年に2〜3本のタイトルを展開したいと考えています。
4Gamer:
ちなみに「Match&Slash(仮称)」は,どんなゲームなのでしょうか。
金氏:
ジャンルとしては,パズル+αという内容になる予定です。ただのパズルゲームではなく,プラスαで新しいユーザー体験をもたらすようなゲームになると思います。
4Gamer:
山椒Studiosは,もともとカプコンで,バイオハザードシリーズやモンスターハンターシリーズなど,アクション性の高いゲームの開発に携わったメンバーで構成されているデベロッパですよね。それがなぜ,パズルゲームを作ることになったのでしょう。
![]() |
山椒Studiosさんが,たまたまパズルゲームの企画を練っていたからです(笑)。
現在,ネクソンのタイトルラインナップのほとんどが,コア層またはミドルコア層向けになっているので,我々としてはポートフォリオを拡大するために,ライト層向けのタイトルがほしいと考えていました。今回は,タイミングと両者の思惑が合致して協業に至ったという形です。
「Match&Slash(仮称)」に限った話ではないのですが,国内デベロッパとの提携タイトルでは,日本のデベロッパがコンシューマゲームで培った経験と,ネクソンが持つオンライン分野のノウハウやグローバルでのパブリッシング力を融合した内容にしていきたいですね。
4Gamer:
今後も日本のデベロッパとの協業を進めていくそうですが,山椒Studiosのように,コンシューマゲームのメーカーから独立した人達とパートナーシップを結ぶのが中心になっていくのでしょうか。
金氏:
それは,今のところ結果的にそうなっているというだけですね。
少し前まで,スマホゲームはライトユーザー向けのものが多かったのですが,ここ数年で,オンラインゲーム的な要素が強く作り込まれたタイトルが増えてきています。
日本ではコンシューマゲームが主流だった時代から,クオリティが高く独創性のある素晴らしいゲームを開発してきた企業が多いですが,その一方で,オンラインゲームのノウハウをまだ持ち合わせていない企業もあるかと思います。
そのような企業と,日本で10年以上にわたってPCオンラインゲームの運営と開発を行い,経験とノウハウを持つネクソンが手を組んで,スマホゲームの市場でシナジーを生み出せればと。
国内デベロッパとの協業は,そのようにお互いの長所を活かしていきましょうというスタンスなんです。
4Gamer:
なるほど。
金氏:
スマホゲームでは今後,世界のさまざまな国や地域で展開する機会がさらに増えていくでしょう。サービスにあたっては,それぞれの国や地域に合わせたローカライズおよびカルチャライズが必要になります。
ネクソンには,これまで数多くの国でPCオンラインゲームをサービスしてきたノウハウと同時に,海外での配信や運営のノウハウを持った現地法人と密に連携可能な体制がありますから,これらもスマホゲームの海外展開に役立ちます。
4Gamer:
海外展開も見据えられるというのは,日本のデベロッパにとって魅力的に映りそうですね。
細かい話になりますが,日本国内向けに企画開発されたタイトルを,海外で先行配信するようなことはありますか?
金氏:
タイトルの内容にもよりますが,可能性はあります。
ネクソンでは,企画開発したタイトルを,本来のターゲットである国や地域で配信を開始してからグローバルでの展開を検討する以外にも,ユーザー属性が似ていて市場規模が小さい国や地域で,テスト的に先行配信するような施策も実際に行っていますから。
4Gamer:
日本のスマホゲーム市場に注力する以上は当然,売上ランキングの上位を目指すのだとは思いますが,上位にランクインするには,何が重要だと思いますか。
![]() |
基本的なところになりますが,事前登録などで配信前にどれだけ認知を高められるか,会社やIPのブランド力をきちんと育てているかどうか,といったあたりが重要です。
ネクソンはスマホゲームの分野ではまだまだ認知度が低いですから,既存タイトルのサービスを丁寧に継続したうえで,新しいタイトルを続々と提供していく必要があります。ビジネスとして考えたとき,「面白い体験」を提供できないゲームは長続きしませんから,これからはゲームとしての面白さに「今までにない体験」をどうプラスしていくか,ということが重要になってくると思います。
4Gamer:
少し話が逸れますが,2016年3月に完全無料化された「けものフレンズ」(iOS / Android)は,現在でもサービスが続いていますよね。課金要素をなくして収益が出ないのに,サービスを続けているのはなぜですか?
金氏:
「けものフレンズ」は,スマホゲームだけでなくコミックでも展開していて,アニメ化も予定されているメディアミックスのプロジェクトです。IP全体を盛り上げる施策の一環として,現在も責任を持ってサービスを継続しています。
現在は,完全無料化に伴ってアップデートを止めていますが,今後アニメの展開が始まって人気が出れば,またコンテンツの追加などを行う可能性もあります。
また,複数の国や地域で展開しているタイトルの場合は,たとえある国で業績が思わしくなくとも,ほかの国や地域で盛況であれば,全体を鑑みてそのタイトルのサービスを継続するということもあります。これは,ワールドワイドでサービスを展開するネクソンならではの強みだと考えています。
4Gamer:
スマホゲーム事業に関して,中長期的にはどのような計画で展開していく予定なのかを教えてください。
金氏:
正直に言えば,3年後,5年後に,スマホゲーム市場が今の規模を保っているのかどうかは分かりませんが,現在の流れを見ると,スマホゲームはコアユーザー向けのものが主流になりつつあります。これは,もともとライトなゲームのユーザーだった方々が,次第にやり込み要素などの深みをスマホゲームに求めるようになっていった結果だと思います。
おそらくですが,本格的なMMORPGをスマートフォンで遊べるようになるのは,2016年から2017年にかけての時期になるでしょう。その頃には,ネクソンが持つオンラインゲームのノウハウが,より一層活用できると考えています。
また,人気タイトルやジャンルは,国ごとに細分化していくと予想しています。現在でも,ランキング上位のタイトルは日本,韓国,中国,アメリカでバラバラです。今後はさらに国ごとの特性が出たランキングになるでしょう。
ネクソンとしては,各国に合わせたローカライズやカルチャライズをしっかり行える体制や,各国向けのタイトルを企画開発できる体制を今以上に整えていく予定です。
2016年度下半期には,「HIDE AND FIRE(ハイド アンド ファイア)」や「HIT」など,海外で実績のあるタイトルを月1本以上のペースで配信していきますので,ぜひご期待ください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
![]() |
- この記事のURL:




































