米国スマホゲーム市場への参入には，詳細なデータ分析と明確な戦略の確立が必要。インモビ主催のイベントで行われたセッションの模様をレポート

　インモビは2015年10月15日，スマートフォンアプリの開発者やマーケティング担当者に向けたイベント「inDecode」を東京都内で開催した。インモビは，世界17か国にてモバイル広告マーケティングを運用する企業。本イベントでは，スマートフォンアプリの海外進出のノウハウや知見を紹介するセッションが行われた。

　本稿ではその中から，インモビ サンフランシスコオフィスにてビジネス・デベロップメント統括部長を務めるケリー・マクグラス氏が登壇した，米国のモバイルゲーム（スマートフォンゲーム）市場に関するセッションの模様をレポートしよう。

インモビ サンフランシスコオフィス ビジネス・デベロップメント統括部長 ケリー・マクグラス氏

　最初のテーマは，米国モバイルゲーム市場の現状について。米国のモバイルゲーム市場規模は年々拡大しているものの，その反面，優良なタイトル，優秀な開発チームを擁するパブリッシャやデベロッパであっても，新規プレイヤーの獲得が難しくなってきているという。そのため，各社とも有料コンテンツや広告収入に頼る傾向が強くなっていそうだ。


　たとえば北米市場でランキングのトップ10内を維持しようとするならば，1日平均10万ダウンロードが必要となり，そのための広告出稿費用は5000万から6000万ドルに及ぶ。その費用を抑え，かつプレイヤーを増やすために，知名度の高いIPを利用したタイトルも増えているとのことだ。

　では具体的に米国でどんなゲームが流行っているというと，マクグラス氏によれば，もっともポピュラーなジャンルはパズルゲームで，それに次ぐのがアーケードゲーム（ここでは主にカジュアルゲームという意味）となっており，世界的な傾向と違いはない。
　一方，個別のタイトルではSupercellの「ヘイ・デイ」（iOS / Android）など，ミドルコアゲームが長期にわたって継続的な人気を保っている。

　こうした状況の中，パブリッシャやデベロッパは，マネタイズにおいて上記のとおり有料コンテンツや広告収入を軸としているわけだが，マクグラス氏はタイトルそれぞれに戦略が異なると話した。その理由はタイトルごとにプレイヤーの傾向が異なっているためで，たとえば有料コンテンツを利用しないプレイヤー層には広告を提供したり，あるいはその逆を行ったりする必要があるからだ。そうしたマネタイズ戦略の効果的な打ち出し方には，プレイヤーデータの活用が必須であると氏は指摘した。

　また，広告を打つにしても，闇雲にやればいいというわけではない。たとえばテレビCMであれば，一般的に視聴者の多いゴールデンタイムに流すのが効果的と言われているが，ゲームにも同じようなセオリーがあるとのこと。昨今では以前よりも詳細なプレイヤーデータの取得が可能であり，特定のタイトルにおいてどの時間帯にもっとも多くのプレイヤーがプレイしているのか，そのタイトルに向けてどのような広告を打てば，自社のタイトルに誘導できるかといったことを分析できるようになっているという。
　なお，インモビも自社のサービスにこうした試みを取り入れており，各種の広告やキャンペーンの企画を広告主に提案しているとのことである。

　セッションのテーマは，アジアのモバイルゲームデベロッパが米国市場にて成功した事例にも及んだ。マクグラス氏は，最近コンシューマゲームからモバイルゲームにうまくシフトした企業としてバンダイナムコエンターテインメントを挙げ，ゲームとしてのクオリティはもちろんのこと，しっかりしたローカライズによって米国におけるプレイヤー獲得に成功したとの見解を示した。


　逆に米国市場で失敗する最大の要因は，市場参入を急ぎすぎることにあるとのこと。マクグラス氏は，ほかの国でヒットしたタイトルだからといってローカライズを疎かにするとうまくいかないケースが多いと説明。その国の市場をきちんと分析して，ターゲット層や価格，競合タイトルなどを明確にし，いかにして新規プレイヤーを獲得するかという戦略を練らなければならないとまとめた。

　最後にマクグラス氏は，米国市場参入に関心を持っているパブリッシャやデベロッパへのアドバイスとして，時間をかけてデータを上手に活用することの重要性を改めてアピール。モバイルゲーム黎明期とは異なり，スマートフォンが広く普及した昨今では，自社のタイトルの位置付けやプレイヤー層を明確化する必要があり，そのためには市場を入念に観察したり，場合によってはテストローンチを繰り返したりして，最適なローカライズを施す必要があると述べ，セッションを締めくくった。

会場では，インモビが取り組んでいるモバイル広告マーケティン事例を紹介するセッションも行われた