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4K+HDR対応製品や超高速ストレージは将来のゲームやPCにも関係あり? ゲーマー視点で巡る「Inter BEE 2015」レポート
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印刷2015/12/01 00:00

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4K+HDR対応製品や超高速ストレージは将来のゲームやPCにも関係あり? ゲーマー視点で巡る「Inter BEE 2015」レポート

 放送と映像技術の展示会である「Inter BEE 2015」(国際放送機器展)が,去る2015年11月18日から20日にかけて,幕張メッセで開催されていたのをご存じだろうか。Inter BEE自体は,放送や映像の制作,配信に関する技術や製品を披露するプロフェッショナル向けのイベントだが,映像に関する技術や製品は,ゲームにも関わってくる面が多い。
 映像制作の世界では,「4K」はもちろんのこと,さらに高解像度な「8K」への移行も進んでいるため,映像制作用PCもハイスペックを求められるという過酷な世界になっている。また,4K映像のストリーミング配信では,大容量のデータをいかにさばくかという,サーバー側の技術にも関わってくる面があるのだ。

4Kが話題の中心だった2014年とは異なり,今回は多くの展示が「8K」に移行していた。右写真は,伊藤忠ケーブルシステムの「マルチコーデック対応8Kファイルプレイヤー」のデモ映像。4K対応デコーダーを4台連結して,8K解像度/60pの映像を表示するデモを行っていた。機器1台で8Kに対応する製品は数千万円クラスだが,4K×4台ならば,最安クラスになると300万円程度で済むという
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岡田太一氏(スタッド 代表取締役)。ヘヴィな自作PCユーザーで,2年ほど前には4Kベースの作業環境を自作しており,その様子をYouTubeで公開している
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 さて,そんなInter BEE 2015の会場で,筆者の友人であり,映像制作会社スタッドの代表取締役でもある岡田太一氏に遭遇した。映画「サマーウォーズ」の登場人物である「池沢佳主馬」を愛好する人物で,筆者は一緒に軍艦島へ取材に行き,FPSごっこをしていたりする。
 岡田氏は,テレビCMの制作に携わっており,PlayStation 4やさまざまなゲーム,そしてGoogleなどのCMを担当した実績がある人物だ。ゲームに関する造詣も深い。4Gamer向きの話もできる人物というわけで,映像制作に関わるハードウェアや映像制作の現状などを聞きながら,Inter BEE 2015会場を回ってみた。


映像制作は8Kのシフトが鮮明に


Solitonの携帯型H.265ハードウェアエンコーダー「Smart-telecaster Zao」。リアルタイム処理ではないが,オンエアに耐える処理速度でエンコードが可能なエンコーダーで,LTEや3G回線を最大7回線たばねて映像を送信できる
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 まずは,4Kや8Kにまつわる展示を見た雑感から。2014年に開かれた「Inter BEE 2014」では,専用サーバーを用意して,4Kの映像ソースをリアルタイムエンコード/デコードするデモが多く見られた。それから1年経った今回は,処理性能の向上によるシステムの小型化が進展しているようで,リアルタイム処理に対応するシステムが,マイクロタワー型PCほどの大きさに収まっていた。

NTTブースに展示されていた4K 4:2:2 Real-time H.265/HEVCデコーダー(左)。まだデカいが,マイクロタワーPC程度までは小型化された。右は4Kのリアルタイムエンコードが可能なプロセッサ「NARA」。詳細は公表されていなかった
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 4Kの制作環境が浸透し,低コスト化も進み始めたことを受けて,Inter BEE 2015で焦点が集まっていたのは,「8Kの制作環境をどう構築するか」であったようだ。
 制作現場で使われるビデオカメラは,現状では5〜6K程度の解像度に対応するものが主流である。据え置きゲーム機はフルHD(2K),PCゲームがウルトラハイエンドの環境でようやく4K映像を扱えるようになったのに比べると,かなり差がある。グラフィックスカード1枚で,6Kや8K解像度のゲームがプレイできるのは,いつのことやらといったところか。

共信コミュニケーションズのブースに展示されていた,Silicon Core製の4K対応260インチ超高精細LEDディスプレイシステム(左)。200インチ超で4K対応のイベント向けシステムはいくつか展示されていた。筆者としては,巨大なディスプレイでデレステのMV(主に楓さん)を拝めたら幸せだったのだが(※編注・現地で交渉をするも断られたとのこと)。右は背面の写真で,複数のユニットを並べた構造が分かる。設置場所に応じてユニット数を変えることも可能だ
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 ディスプレイ1枚で8Kは難しいとしても,複数台のディスプレイやプロジェクタを組み合わせたマルチディスプレイ環境であれば,現時点でも4Kを超える解像度でゲームをプレイできないわけではない。マルチディスプレイ環境で,FPSやフライトシミュレータをプレイしている人はいるだろうし,アーケードゲーム「機動戦士ガンダム 戦場の絆」のように,マルチディスプレイによる専用筐体でプレイするゲームもある。
 極めて高いグラフィックス性能が求められることを考えると,ごく近い将来に,家庭でのゲーム環境が4K解像度を超えるのは非現実的だろう。そうなると,8Kのような高解像度でのゲーム環境は,ハードウェアコストをかけられる大型筐体のアーケードゲームからやってくるのではないかと,筆者は考えている。その意味では,2016年2月に開かれる「ジャパン アミューズメント エキスポ2016」が楽しみだ。

CreateLED Electronicsにもイベント会場向けの大画面LEDディスプレイがあった(左)。こんな画面でゲームをしてみたいところだ。同社ブースにはほかにも,テーブル的な巨大なタッチパネルディスプレイもあった(右)。Linuxベースで,商材を表示したり,カンタンなゲームができるというもの
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 岡田氏が所属するスタッドの場合,現時点で4KやフルHDの映像を制作する場合,プロフェッショナル向けビデオカメラの専門メーカーであるRED製のカメラを使用し,5K/6Kで撮影している。そして,撮影映像をスタジオで処理したうえで,出力先に合わせて納品時にリサイズするという工程になっているそうだ。
 大きめに撮影しておき,リサイズして出力というのは,デジタル一眼レフカメラによる写真や映像撮影と同じである。「大は小を兼ねる」ではないが,工程にトリミングを含む場合,ソースは現時点で最大の解像度であるほうがいい。

 素材の解像度が高くなれば,それだけ制作システムに求められる処理能力も高くなる。たとえば,RED製のカメラ「EPIC DRAGON」の場合,解像度6144×3160ドットで最大100Hzの映像を記録できるというから,データ量は膨大なサイズとなる。こうした映像を記録するには,カメラとストレージに高い性能が求められるし,撮影後の処理を迅速にこなすには,PCそのものや機器と接続するインタフェースの性能が大きく影響するわけだ。
 岡田氏いわく,「感覚的には,ゲームのグラフィックス設定を最大にしたうえで,解像度を4K,フレームレートを120fpsに固定させた環境といったところ。そのうえで『実況配信もしたい』となったとき,どんなPC環境が必要なのか考えるのと似ているんじゃないか。きれいなな画面で,サクサク動く環境が必要というのは,ゲームでも映像でも同じ」とのことだ。


NVM Express接続SSDのRAIDは当たり前?

高速なストレージ製品に注目が集まる


 高解像度かつ高フレームレートの映像編集が主流になっているという背景があるためか,PC関連のデバイスでInter BEE 2015会場に多く展示されていたのは,高速で大容量のストレージ製品だ。
 コンシューマ向けのPCでは,Serial ATA接続のSSDでシーケンシャルリード(逐次読み込み),シーケンシャルライト(逐次書き込み)ともに500MB/s程度の性能を持つものが珍しくなくなってきた。スピード面では十分に思えるが,プロの映像制作用途では,巨大な無圧縮データを扱うための大容量と,接続インタフェースによる処理のもたつき回避を両立しなくてはならないそうで,まだまだ問題も多いようだ。

 そんな前提を踏まえたうえで会場を見回ってみたところ,映像制作向けのストレージは,SSDではなくHDDで構築されたシステムが多いことに気がついた。単純に,HDDのほうが低コストで大容量だからだが,速度性能面ではSSDに遠く及ばないため,その点はRAIDを構築してフォローするというわけだ。
 岡田氏によると,映像制作用の環境では高速なストレージに加えて,膨大なメインメモリを搭載することで,データの読み込み速度を確保しているという。4K 30Hzの映像を作るには,4K 30Hzを表示できないと仕事にならないので,岡田氏が常に重視している部分だそうだ。

これは,ティ・アイ・ディのThunderbolt 2接続対応ストレージ「A16T2-Share」(左)。ラックマウント型で最大16台のHDDを搭載できる。右は「CrystalDiskMark 5.0.3 x64」で性能を測定してみた結果
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コンテンツ制作者向けを謳うG-Technology製のRAIDストレージ。HDD 4台,または2台の製品がある。接続インタフェースとして,USB 3.0やIEEE 1394,eSATAに対応するそうだ
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HGST製のUltrastarシリーズは,ヘリウムを封入することでプラッタ枚数を増やしている。密閉性の高さを示すために,HDDをフロリナート漬けにしたデモを披露していた

 もうひとつ,注目に値するものとして,「Thunderbolt 3」対応製品があった。Thunderbolt 3は,データ転送速度が最大で40Gbpsになる高速なインタフェース規格である。
 データ転送速度が最大20Gbpsの「Thunderbolt 2」は,Macと映像機器で使われているものの,Windows PCで対応する製品は少なかった。しかし,Thunderbolt 3はUSB Type-C 3.1とコネクタ形状に互換性があること,Intelが対応コントローラ「Alpine Ridge」(開発コードネーム)をマザーボードメーカー向けに提供していることもあって,今後はPCでも普及が見込まれている。

Intel SSD 750の実機デモ機
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 そんなThunderbolt 3関連で目に止まった展示は,IntelとAdobe Systemsの共同ブースで見かけた,NVM Express(以下,NVMe)対応SSD「Solid-State Drive 750」(以下,SSD 750)を使ったThunderbolt 3接続型ストレージデバイスの参考出品だ。国内販売されるかどうかは分からないが,ちょっと面白い製品だ。

 現状ではストレージ接続用途がメインのThunderbolt 3だが,普及次第では,MSIやDellが取り組んでいた外付けタイプのグラフィックスカード拡張ボックスに利用されるなんてことがあるかもしれない。

SSD 750のThunderbolt 3版外付けストレージデバイス(左)。右は,PCI Express版(右写真左側)とThunderbolt 3版(右写真右側)の性能をCrystalDiskMarkで比較した結果
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左は,Mangstorのサーバー向けストレージ「NX6320」。NVMe接続のストレージを40Gb Ethernet経由で利用するというもの。右は,アスクブースで見かけたGB Labsのストレージ「HyperSPACE」。複数台のSSDでRAIDを組み,40Gb Ethernetで接続するという製品だ。岡田氏によると,スタジオ間をネットワークで結ぶことは多いため,ストレージをEthernetや光ファイバーでつなぐのは当たり前とのこと
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販売代理店のTooブースで見かけた。未発表のNVM Expressカードを発見(左)。2枚のQuadro搭載カードに挟まれたカードがそれで,複数のNVMe SSDをカード上でRAID構成にしているようだ。右はCrystalDiskMarkを実行してみた様子で,逐次読み込みは4GB/sを超えている
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4K Blu-rayとともにやってくるHDR対応製品


 近いうちに製品として登場する新技術に関する展示で,ゲーマーにも関係ありそうなものが「ハイダイナミックレンジ」(High Dynamic Range,以下 HDR)だった。
 ここでいうHDRとは,映像信号の輝度ダイナミックレンジを大幅に拡大した映像規格のこと。詳細はこちらの解説記事を参照してほしいが,要は従来よりも自然な明暗分布を表現できるようになると考えればいい。
 ゲームグラフィックスやスマートフォンのデジタルカメラ機能でも,HDRでレンダリングしたり撮影したりという機能が備わっているものもあり,それがHDRを規格に含む「ULTRA HD BLU-RAY」こと4K Blu-rayの登場によって,家電の世界にも広がろうとしているわけだ。

 筆者は,「HDRは制作段階で配慮するもの」と思っていたのだが,ソニーや東芝ブースでのHDRに関する展示を見聞きしたところ,ディスプレイ側の機能になり,制作段階では特別な処理はしないとのことだ。とはいえ,出力先のディスプレイがHDR対応であれば,それを考慮したカラーグレーディングは,制作段階でも必要になるという。

ソニーブースにあったHDRのデモ
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 さて,ゲームの場合,HDR映像を開発者の意図どおりに表現するには,ディスプレイやテレビ,PCやゲーム機,そしてゲームのグラフィックスエンジンが,HDRに対応する必要がある。
 このうち,グラフィックスエンジン側は,内部的にHDRでレンダリングするケースも増えているので,対応は比較的容易だろう。問題はハードウェアのほうで,とくにHDR対応のディスプレイやテレビに買い換えが必要となると,4K解像度の製品を買ったばかりという人は,買い換えをためらうかもしれない(関連記事)。

 グラフィックスカードや据え置き型ゲーム機がHDR出力に対応するのが,いつ頃になるのか筆者には分からないが,映像業界はすでにその準備に向けて進んでいるということは,覚えておくといいだろう。


プロ向けビデオキャプチャデバイスをゲーム実況に使ってみる?


 次の話題はビデオキャプチャデバイスだ。
 最近はゲーム実況配信が当たり前となり,PCやPlayStation 4(以下,PS4),Xbox Oneで実況や動画投稿を楽しんでいる人も多いだろう。筆者は昔から実況配信をしていたのだが,機材の用意だけでも大変だった当時と比べて,今ではボタンひとつで配信できるくらい洗練されてきているので,少し不思議な感じもしている。

Razerが開発中のゲーム実況用Webカメラ「Project Winona」。Intelの3Dカメラ技術「RealSense」を利用して,実況者の背景を自動で除去したり,身振り手振りの認識したりといった機能を備えるという
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 実況配信が簡単にできるようになると,今までよりも凝った表現を模索してみたくなる人もいるだろう。たとえば,カメラで手元を映したり,違う視点の映像を片隅に表示させたりといった,テレビ番組で見るような映像を作ってみたくなるものだ。実際,ゲーマー向け周辺機器でおなじみのRazerは,ゲームの実況映像にプレイヤー自身の姿を重ねられるというWebカメラ「Project Winona」を2016年初頭に発売するとしている。

 さて,実況配信は完全なリアルタイム映像ではないが,それをキャプチャする段階では,リアルタイムでの作業が必要になる。そうであれば,同じようにリアルタイムで作業を行う中継映像の制作現場で使われる製品は,そのままゲーム配信用の機材としてアリではないだろうか。機材を1つ追加するだけで,配信時の手間が減るのもよく体験している。
 そんな観点で,岡田氏に「お勧めの製品は?」と,控えめの価格で適当なものはないかと聞いてみたところ,「今はWindowsでもThunderboltが安定しているから,複数の映像ソースをまとめたいなら,Blackmagic Design製品がいいかも」(岡田氏)ということだった。

 Blackmagic Designは,ゲーマーの間で知名度の高い企業ではないが,ビデオキャプチャ製品のIntensityシリーズなら,知っているという自作PCユーザーもいるのではないだろうか。Inter BEE 2015会場では,「Intensity Pro 4K」という製品が展示されていた。この製品には,PCI Express(以下,PCIe)接続の拡張カードタイプのほか,USB 3.0またはThunderbolt接続に対応する外付けデバイスが存在している。
 PCIe拡張カードの製品が2万4980円(税別)と,プロフェッショナル向け製品の中では比較的低価格なので,ちょっと上を目指したい実況者なら,こういう機材を使ってみるのもよさそうだ。

Intensity Pro 4KのPCIe拡張カード版(左)と,Thunderbolt版(右)
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 もう1つ,岡田氏がプッシュしていたのが,Blackmagic Designの映像用スイッチャ「ATEM Television Studio」である。4系統のHDMI/SDI入力と,複数の映像を1つの画面上に分割表示する「MultiView出力」という機能を備えており,H.264リアルタイムハードウェアエンコーダを備える1Uラックサイズのスタジオみたいな機材だ。操作はPC用ソフトウェアで行え,放送局で使われるようなトランジション機能や,映像に重ねるグラフィック表示なども可能だ。

ATEM Television Studio(左)。サーバーラックに取り付けて使う製品であるため,こんな形をしているが,奥行きが小さいのでラックに取り付けなくても使える。操作はPC用ソフトウェアから行う(右)
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 プロフェッショナル向け製品ではあるが,HDMI出力がある点と,H.264リアルタイムハードウェアエンコーダーがある点で,ゲーム実況用途にもお勧めであるとのことだった。ちなみに,価格は12万1800円(税別)とのこと。

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PCの負荷を気にせずゲームを録画したいのであれば,Thunderbolt接続対応のビデオキャプチャデバイス「UltraStudio Express」がお勧めとのこと。PC側にThunderboltポートが必要になるが,価格は5万9980円(税別)。筆者はこれが欲しい
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手元や顔,会場などをよりキレイに見せたいのでれあれば,「Micro Cinema Camera」が良さそうだ。マイクロフォーサーズに対応する小型カメラで,SDカードへ記録するだけでなく,HDMI出力も備えている

こちらはBlackmagic Design製品ではなく,ローランド製のビデオスイッチャー「V-1HD」(左)。単体でも使用可能だが,PC用ソフトウェア(右)との連動にも対応しており,PCからオーディオミキサー機能などが使用できる。実勢価格は12万円前後とのこと
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ロック電源ケーブルは,プラグ差し込み口内にロック機構があり,赤いボタンを押すとロックが解除されるというもの。両端ともこの形状のケーブルもあり,対応する電源タップも販売されている
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小型PCをぶら下げられるほどロック機構は強力だ。電源ユニット側は無改造で利用できる
 そのほかに,PCユーザーに喜ばれそうな小物を紹介しておこう。
 それはエイム電子の「ロック電源ケーブル」(関連リンク)。デスクトップPCの電源ユニットにつないだ電源ケーブルの抜け止めを防ぐというものだ。コネクタ内にロック用のピンが用意されており,電源側の対応は不要。足にケーブルを引っかけて,電源が抜けてしまう悲しい事故を減らせる。
 この抜け止め防止機能が極めて強力で,小型のデスクトップPCをロック電源ケーブルでぶら下げるというデモが披露されていたほどである。後ほど購入しようと思う。
 ちなみに,エイム電子は高品質なHDMIケーブルも製作しており,PS4に同梱されているHDMIケーブルにも関わっているとのことだ。

 Inter BEE 2015レポートは以上となる。映像制作の業界は,8Kに突入しつつあるのがトレンドだが,ゲームの映像は当分4K〜フルHDといった状況が続くだろう。だが,いずれHDR対応の4K液晶ディスプレイや液晶テレビが普及してきたら,HDR出力対応のグラフィックスカードとセットで導入したくなりそうではある。
 RAID構成のストレージを個人で導入しようという人は少ないだろうが,OS用として,高速なNVMe対応SSDが気になる人はいるのではないだろうか。また,Thunderbolt 3が今後PCで普及するのかも,さまざまな周辺機器に関わってきそうなので,気になるところだ。Inter BEE 2015で披露された技術や製品が,すぐにゲーマーにも身近になるというわけではないが,少し先のPCや周辺機器を考える参考になれば幸いだ。

Inter BEE 2015公式Webサイト

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