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タブレットの性能テストにはゲームのテストが必要に。Intelが考える「タブレット時代のベンチマークテスト」とは
2014年12月9日,Intelの日本法人であるインテル(以下,Intel)は,報道関係者を対象に,タブレット端末を対象としたマルチプラットフォーム対応のベンチマークテストに関する電話会議を開催した。同社は定期的にこのような説明会を開催しており,最新のプラットフォームにおける性能計測に使えるテストツールにはどのようなものがあるかとか,どのような点に注意してテストを行うべきかという情報を,メディア向けに提供している。ただ,タブレットを前提にマルチプラットフォーム対応のベンチマークテストを説明するというのは非常に珍しく,もしかしたら国内では初めてかもしれない。
今回の説明を担当したのは,Intelにてクライアント機器向けベンチマークを担当するマネージャーのMatt Dunford氏だ。会議のテーマはタブレット向けベンチマークテストの紹介であったため,直接ゲーマーに関わる話は少ないのだが,Intelがタブレットの性能を測るためにどんなツールが必要だと考えているのかが見えてくるので,簡単にレポートしてみたい。
Android&Windows 8.1対応の「TabletMark v3」が登場
iOS版も将来登場の予定
先に説明しておくと,BAPCoという団体は一般的なアプリケーションを利用するシーンを想定した各種のPC用ベンチマークテストを開発,提供するための非営利団体である。ここにはIntel以外にも,Microsoftやソニー,LenovoやDell,東芝やSamsungといった有名企業が名を連ねている。だが,AMDやNVIDIAはかつては所属していたものの,現在では脱退してしまっているし(関連記事),PC用ベンチマークテストを開発する団体という由来から,ARMやQualcommといったARM系SoCで重要な企業も参加していない。Intelと競合する企業が参加していないというのは,多少気になる点ではある。
話をTabletMark v3に戻そう。そもそもTabletMarkというアプリケーションは,バージョン2世代まではWindows向けにのみリリースされていたとDunford氏は説明する。しかし,Windowsプラットフォーム以外のタブレット端末も計測できるようにと,大きくアップデートされたのがTabletMark v3というわけだ。
現在,TabletMark v3は,Android 4.3以降とWindows 8.1に対応するバージョンが,それぞれのプラットフォームにおける公式ストアにて無償で提供されている。iOS版は公開が少し遅れているとのことだが,遠からずiTunes Storeから入手可能になるだろう。
Dunford氏の説明によると,TabletMark v3はタブレットユーザーの利用頻度が高い3つの使い方(以下,シナリオ),すなわち「Webブラウジングとメール」「写真およびビデオの共有」「ビデオ再生」を再現して,タブレットの性能とバッテリー駆動時間を計測するようになっているという。
しかし現状のTabletMark v3は,ゲームや3Dグラフィックスの性能を測る機能を持っていない。とくに米国ではゲーム用途としてタブレットを利用するユーザーが増えていて,タブレット向けにリッチなグラフィックスを備えたゲームを開発,提供するゲームパブリッシャも増えているだけに,ゲームでの性能を測る機能がないのは物足りなく思える。Dunford氏も当然それを理解しており,今後のTab
それがどのようなものになるのか,たとえばタブレット向けグラフィックスベンチマークテストである「3DMark」や「GFX Bench 3」のような,ゲームをイメージする3Dグラフィックスのテストになるのか,それとももっと実際のゲームに近い,AIやユーザー操作のシミュレートも含めたものになるのかまでは分からない。だが,タブレットでゲームが盛んにプレイされている現状をIntelが正しく理解しており,それをベンチマークテストにも反映していくべきであると考えているのは歓迎できるだろう。
ブラウザベースのベンチマークは2015年版が開発中
Chrome OS専用ベンチマークという変わり種も
もう1つのタブレット向けベンチマークテストとして挙げられたのが,Principled Technologiesが開発した「WebXPRT 2013」(ウェブエキスパート)である。これは,Webブラウザ上で「Photo Effects」(写真加工),「Face Detect」(顔認識),「Stocks Dashboard」(株価表示),「Offline Note」(テキスト入力と編集)という4つのシナリオを実行することで端末の性能を計測するHTML5ベースのテストプログラムだ。対応プラットフォームは,Windows 8.1とAndroid 4.3以上,iOS 7以上,そしてChrome OSとされている。
HTML5ベースのテストであるため,日本で盛んなFlashベースのブラウザゲームにおける性能を測ることはできないが,タブレットの性能をさまざまな角度から把握したいという場合には役立つかもしれない。
なお,Principled Technologiesでは現在,次世代版の「WebXPRT 2015」を開発中とのことだ。
最後に取り上げられたのは,Chrome OS搭載PC向けのベンチマークテスト「CrXPRT」である。WebXPRT 2013と同じrincipled Technologiesが開発を手かげており,2015年の早い時期に登場するのではないかとDunford氏は述べていた。
CrXPRTはWebXPRTとは異なり,Chrome OS上で動作するアプリケーションとして提供される。WebXPRTと同じ4つのシナリオに加えて,「DNA Sequence Analysis」(DNA解析)と「3D Shapes」(3Dモデル表示),「Photo Collage」(写真の加工)というテストが加えられるという。また,バッテリー駆動時間テストには,HTML5ベースの横スクロールアクションゲームを模したテストも導入されるとのことだ。
あくまでもChrome OS専用のベンチマークテストであるため,ゲーマーの役に立つことはなさそうにも思えるが,ブラウザベースのテスト以外で性能を測る手段がなかったChromebookで利用できるテストという点では,貴重な存在といえるかもしれない。
今回の電話会議はタブレット向けベンチマークテストの紹介だけだったが,今までは一般的なWindowsアプリケーションにおけるPCの性能計測に重点を置いていた――つまり,ゲームに関わるテストはよそに任せていた――BAPCoのベンチマークテストにも,ゲームにおける性能計測を含めるべきだとIntelが考えていると分かったことは興味深い。
Intelがベンチマークテストの開発に関わる目的は,これらベンチマークテストを通じて自社のプラットフォームが性能面でも優位にあることをアピールすることにある。そして,Intelがゲーム分野で性能面の優位性をアピールするためには,当然ながらIntel製SoCやCPUが備える統合型グラフィックス機能を,より高性能なものへと進化させていく必要もあるだろう。
今回はタブレットに限った話ではあるが,Intelがタブレットでのゲームプレイを重要な要素だと理解しているということは,将来的にIntel製SoCのグラフィックス性能を高めるという動きにつながっていくかもしれない。ぜひそうなってほしいものだ。
Android版「TabletMark」ダウンロードページ
Windowsストアアプリ版「TabletMark」ダウンロードページ
BAPCo 公式Webサイト(英語)
Principled Technologies(英語)
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