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「そうだ アニメ,見よう」第29回は本格SFアニメ「正解するカド」。野口プロデューサーが語るヤハクィザシュニナの人物像とは
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印刷2017/05/25 11:00

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「そうだ アニメ,見よう」第29回は本格SFアニメ「正解するカド」。野口プロデューサーが語るヤハクィザシュニナの人物像とは

画像集 No.026のサムネイル画像 / 「そうだ アニメ,見よう」第29回は本格SFアニメ「正解するカド」。野口プロデューサーが語るヤハクィザシュニナの人物像とは

 2017年7月からの夏アニメは,ufotableの「活劇 刀剣乱舞」が注目度ナンバーワン。「Fate」シリーズで評判の高かったハイクオリティの作画がどこまで反映されるのか期待したい。
 さて,第29回のタイトルは,「正解するカド」。東映アニメーション制作のオリジナルアニメで,同社のTVシリーズとしては,初のセル調フルCG作品となる。総監督は「翠星のガルガンティア」や「鋼の錬金術師 嘆きの丘の聖なる星」を手がけた村田和也氏,シリーズ構成・脚本を小説家の野﨑まど氏が担当している。


「正解するカド KADO:The Right Answer」


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 羽田空港の滑走路に,ある日突然,謎の巨大立方体が出現し,出現場所に居合わせた旅客機が252人の乗員乗客もろとも飲み込まれてしまった。1辺が約2000メートルという巨大立方体の名は「カド」。その中から姿を現した,謎の存在・ヤハクィザシュニナ(CV:寺島拓篤)は,人類との接触を試みようとする。
 たまたま旅客機に乗り合わせた,外務省の交渉官・真道幸路朗(CV:三浦祥朗)は,ヤハクィザシュニナと人類の間の仲介役を引き受けることになる。
 一方,日本政府も国際交渉官の徭 沙羅花(CV:M・A・O)を代表として現場へ送り込み,ヤハクィザシュニナとの会談に臨んだ。その席でヤハクィザシュニナは,自分は別次元“異方”の存在だと明かし,電力を無限に供給できる物体“ワム”を人類に与えると告げる。
 しかし,ワムが日本に供与されたと考えた国連安保理は,国連主導でのワムの厳重管理を主張,制裁をチラつかせ,日本にワムの即時提出を要求する。岐路に立たされた日本に,ヤハクィザシュニナはある提案をするが……。

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異方からの来訪者だと名乗るヤハクィザシュニナ
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巻き込まれた真道は異方存在と人類の間に立つことになる

 異次元からの来訪者と人類のファーストコンタクトという,今時珍しいほどの正統派SF作品となるのが本作「正解するカド」だ。SFというと難しい単語が山盛りで,理解に苦労するというイメージだが,本作は科学に対する知識よりも,ストーリー展開のほうにウェイトが置かれているので,誰でも物語を楽しめる作品となっていると感じた。
 物語では,異方存在・ヤハクィザシュニナによって,無限のエネルギー供与が人類に提示される。彼の真意は定かではないが,この事態に対する日本や世界各国の反応が,リアリティのある演出で描かれ,非常に面白い。
 実際には,熱排出のバランスが崩れることから利点ばかりではないのだが,それを置いても核エネルギーをはるかに超えるものを人類が手にしてしまったらどうなるのか? かつての名作SF「日本沈没」や「首都消失」のような,大規模な思考シミュレーション作品として,今期でもっとも目が離せない作品といえそうだ。

画像集 No.005のサムネイル画像 / 「そうだ アニメ,見よう」第29回は本格SFアニメ「正解するカド」。野口プロデューサーが語るヤハクィザシュニナの人物像とは
人類とヤハクィザシュニナの初会談
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全人類のエネルギーをまかなえる物体“ワム”

 さらに第5話で,そのワムの製法が明かされた。ワムの希少性を重視していた国連や一部の大国の驚愕をよそに,日本の学者・品輪彼方(CV:釘宮理恵)が会見で実施した,その製法によって,世界は一層混迷を深めることになる。
 次々に新たな展開がもたらされ,のんびりトイレに行っている暇もないと,うれしい悲鳴を上げそうになる本作だが,異方の技術を手に入れた人類はどうなっていくのか? 気になる今後の展開をプロデューサーである野口光一氏に聞いてみた。ストーリーに関するネタバレも含まれているので,まだ見ていないという人は注意してほしい。


プロデューサー・野口光一氏が語る
「正解するカド」誕生のエピソード


4Gamer:
 東映アニメーションとしては,TVシリーズ初のCGアニメとなりますが,この企画が立ち上がった経緯をお聞かせください。

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東映アニメーション 映像企画部
プロデューサー野口光一氏
野口光一氏(以下,野口氏):
 はじめに,(脚本の)野﨑まどさんを出版社の方から紹介していただいて,彼の作品「[映]アムリタ」(メディアワークス文庫)と「know」(ハヤカワ文庫JA)を読んだんです。非常に面白い作品だったので,ぜひ彼で作品を作りたいと思ったのがきっかけですね。それと,同時期に東映アニメーションで,セル調のフルCGキャラクター表現に挑むプロジェクトが立ち上がっていたので,2つの企画をくっつけたわけです。

 現在アニメ業界は,作品数が多く,どこもこなしきれていないのが現状です。東映アニメーションでもなんとかTVシリーズ1,2本をCGアニメーションにできないかという話が持ち上がり,その第1作となるのが「正解するカド」なんです。

4Gamer:
 CGを使うということは規定路線だったわけですね。

野口氏:
 そうです。ただ,野﨑さんに最初にアプローチしたときは,映画でお願いしたのですが,彼から「TVでやりたい」と言われまして。それならTVシリーズにしますかとなったわけです。

4Gamer:
 野﨑さんはなぜTVシリーズにこだわられたんでしょうか?

野口氏:
 やはり90分という短い枠で終わらせるよりは,長い物語が作りたかったんじゃないでしょうか。話していてそういう印象を受けましたね。

4Gamer:
 野﨑さんに脚本をお願いするにあたって,野口さんから提案したことはありますか?

野口氏:
 「know」を読んでいるときに,SFとCGはやはり相性が良いと思ったんです。しかし,「know」は電脳戦的な作品なので,映像で表現するのは難しい。そこで,SFと謎解き,そして天才少女が主人公という,彼の作風にあった野﨑路線ものを提案しました。ただ最終的に主人公は男性になりましたが。
 野﨑作品でいちばん面白いのは,やはり大団円の大どんでん返し,つまりオチなので,そこをうまく作品に入れ込んでほしいとお願いしました。だから,本作も最後の展開の反応が楽しみです。

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天才学者・品輪彼方は野﨑作品らしいキャラクターといえる

4Gamer:
 異次元からの来訪者とのコミュニケーションという,ちょっとレトロな内容が印象的な本作ですが,この題材を取り上げたのはなぜでしょうか?

野口氏:
 野﨑さんから作品のプロットを何本かいただいたんです。その中にはお願いした天才少女ものもあったのですが,異方存在“ヤハクィザシュニナ”と真道幸路朗の交渉という題材がアニメであまり見られないジャンルなので面白いなと思い,こちらに決めたんです

 前に手がけた「楽園追放 -Expelled from Paradise-」(以下,楽園追放)は,はるか未来の人類達による電脳世界のお話でしたが,もうその手の作品はやりつくしてしまった感がある。電脳世界のディストピアを描いたものはもう飽和状態といいますか。
 そう感じていたときに,異次元からの来訪者との“未知との遭遇”がかえって新鮮に感じられたんです。あえて生身の人間のほうが興味深いなと。

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4Gamer:
 いわゆる萌え系やバトル系,サイコパス系アニメといった最近の流行とはズレた内容になりますが,それに関しての不安感などはなかったのでしょうか?

野口氏:
 野﨑さんのプロットが面白かったので,それを製作委員会側に提示したら,あっさり通ってしまい制作が決定したんです。誰も止める人がいなくて(笑)。
 2014年ごろに企画がスタートしていたのですが,2015年あたりに「これ,売れるの?」って言われ始めて,自分でも「確かに……」と悩んでしまって。グッズやメディアの展開はどうしようかなと。だから,自分としてはその頃がいちばん内心すごく不安でしたね。
 誰も止めてくれなかったし,お金も集まったし,どうしようって。

4Gamer:
 ビジネスとしての不安があったわけですね。

野口氏:
 ただ,作家さんには自分の好きなことをやってもらいたいと思っています。自分がVFXをずっと制作してきた中で,やらされているものだとつまらない仕上がりになると思っています。
 野﨑さんと話したときに,これがいちばんやりたいと言っていて,しかもアニメっぽくない。自分の中では,海外ドラマのような感覚で見られて,新しいのではないかと考えました。それがいずれ視聴者の評価になればいいなと思いました。正直立ち上げたころは,ビジネス面などはそれほど考えていませんでしたね(笑)。

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 CGを使った作品としては,たしかにロボットものとかアクションもののほうが適していますが,それは他社のほうが得意だと思うので,東映アニメーションがやる必要はないと考えました。こうした新しい作品を提示して,他社を上回ればいいと思っています。技術面では今回革新的なものに仕上がってます。
 正直なところ,商売的な話でいうと,交渉劇がメインのためマーチャンダイジングが動くわけではないので,そこは困りました。しかも,パッケージとしてある程度の目算は立てていたのですが,ここ数年の業界の冷え込みのせいで,数字的な調整はかなり難しかったですね。

4Gamer:
 なるほど,プロデュース面ではかなり苦心されたのですね。野口さんは以前,VFX/CGスーパーバイザーとして活躍され,その後「楽園追放」を手がけられたと聞いています。2作目のプロデュースとなるわけですが,同じフルCG作品として,そのときの経験が生かされている部分はあるのでしょうか?

野口氏:
画像集 No.011のサムネイル画像 / 「そうだ アニメ,見よう」第29回は本格SFアニメ「正解するカド」。野口プロデューサーが語るヤハクィザシュニナの人物像とは
「楽園追放 -Expelled from Paradise-」
 映画は,けっこう根性で一気に作れると思うんです。90分の作品を1年半で作ればよかったのが,TVシリーズは組織的に作らないと途中で破綻します。まず制作する尺がぜんぜん違いますし,TVアニメの制作には独特のルールがありました。
 制作工程においてチェックポイントが各所にあり,次の工程に行くと後戻りは絶対できない。その都度のタイミングで判断し,1話1話完成して行きます。たとえばこのポイントを過ぎたらもう口を出せない,ここを過ぎたらもうチェックできない,というポイントがあるのは,映画と違うなと感じました。

 ただ,ビジネス的な部分でいうと,「楽園追放」での成功事例を踏襲して動いている自分がいます。VFXを制作していて感じていたのですが,うまい人は常にいいものを仕上げる。また,成功している人はいつも成功していると思っているんです。その成功している人はルーチンを持っていますよね。イチローが毎朝カレーを食べるように。

4Gamer:
 ベンチからグランドに入るのは右足からとかですね(笑)。

野口氏:

 そうそう(笑)。そんな感じで「楽園追放」のときのようにルーチンを踏めば,たとえ「正解するカド」が商売的に結びつかないとしても,お客さんに確実に届くんじゃないかなと思っています。自信はちょっとあって,2015年のころに,それを信じてやろうと進めてきたわけです。


「プリキュア」で培ったノウハウを転用


4Gamer:
 先日開催された「Unite 2017 Tokyo」で,「『魔法つかいプリキュア!』EDでのUnity映像表現の詳細解説」という講演が開催されました(関連記事)。本作でもこの技術は採用されているのでしょうか?

野口氏:
 Unityは本来ゲームエンジンですが,それが今アニメ業界に流れ込んできています。いずれリアルタイムでのレンダリングは必然になってくると思っています。
 東映アニメーションでは,Unityのテストがほぼ同時期に,「プリキュア」と「正解するカド」で始まりました。ある時点で開発の目処がたち本番で使ったのが「魔法使いプリキュア!」のEDです。それから「正解するカド」も継続して開発し実用に至ったわけですが,Unityを使わなかったらオンエアに間に合わなかったかもしれません。

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4Gamer:
 作業効率は従来のMayaよりもUnityのほうが上だったと?

野口氏:
 レンダリングに関してはまったく違いますね。昔はリアルタイムの表示だとどうしてもチラつきが出てしまい,オンエアでは使えなかったんですが,Unityなら問題なく表示できますね。
 本作ではHoudiniも使っていますが,どうしてもレンダリングの時間が1コマ2〜3時間かかってしまいます。しかし,Unityならほぼリアルタイムで描けるので,比べものにならないですね。

4Gamer:
 CGで手間のかかるものは,やはりカドになるのでしょうか?

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野口氏:
 はい,カドの登場は,当初からそれなりのカット数になることが分かっていました。そしてシリーズの後半になるとさらに増えくるということで,スタッフが改良を続け対応しています。カドは非常に細かい表現なので,表面のジャギー(エイリアシング)処理をカド専任のスタッフに対応してもらっています。
 「プリキュア」と本作でCG処理のノウハウがたまってきましたが,CGアニメの製作がUnityオンリーになる日は近いんじゃないでしょうか

4Gamer:
 そのカドですが,どういった経緯で生まれたのでしょうか?

野口氏:
 野﨑さんからのプロットの段階で,「正解するカド」というタイトルが提示されていました。ヤハクィザシュニナが,異方からやってくるためのゲートがカドだということですね。映像として,どう表現するかは総監督の村田(和也)さんと打ち合わせを重ねているうちに自然と,「カドだから四角がいいよね」ということになって(笑)。

4Gamer:
 非常に明確ですね(笑)。

野口氏:
 野﨑さんの中ではどう表現するかのイメージが固まっていたわけではないようでした。羽田空港にカドが現われ,その上にヤハクィザシュニナが立ちました,という流れでなんとなく四角であろうなというイメージを抱いたわけです。その場で村田さんが四角を描いてみて,異方からきた“人間が作ったものでない”設定なので3Dフラクタルを使えば,異次元っぽくなるのではないかということで,今の形になったんです。


 途中,一辺を2キロメートルにするか3キロメートルにするかもっと大きくするか議論になったんですが,アニメの表現としてカメラを置いてみると,大きすぎると全体が映らないんですよ。そこで2キロメートルに決まったんです。ちなみに1キロメートルだと,この作品の象徴としてはちょっと弱いということで却下されました。カドはこの作品の顔ですからね。


ヤハクィザシュニナの人物像とは?


4Gamer:
 異方存在“ヤハクィザシュニナ”とは,どういった人物なのでしょうか? 

野口氏:
 人物というよりも単純に“宇宙外生物”ですよね。人間を模しているだけなので,行動が突拍子もないのは人類の所作を知らないからだと思っています。その彼とのコミュニケーションが本作の面白いところであり,握手とはなんだとか,彼が人類の文化を教養として修得していくプロセスが作品の魅力になっていると思います。

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 それに,日本人であると日本人のことが分からないように,人類側の視点では分からないことを彼の視点で再発見できる,そういう機能を持った存在になっていると思うんです。
 また,ちょっと違う視点なのですが,うちのスタッフにアリを飼っている方がいまして……。アリを私達人類,ヤハクィザシュニナを人間として考えると,すごい上からの視点で見ていると思うんですよ。

4Gamer:
 神の視点ということでしょうか?

野口氏
 そうですね。アリの巣の上から水をジャーって流すとアリは右往左往しますよね。(ザシュニナからすると)ワムを与えられた人類はそんな感じなんじゃないでしょうか。こんな風に動くんだ,じゃあ,こっちに穴を掘っちゃおうって感じで(笑)。

4Gamer:
 手の平のうえで転がされてる感じですね(笑)。ただ,第6話の真道と彼の母親との会話に「一人だったら寂しいだろう」という,ヤハクィザシュニナの人間性に言及するセリフが登場しています。今後,彼が人類に近い存在になるということはありうるのでしょうか?

野口氏:
 はい,ありえます。真道とコミュニケーションをとることで,だんだん表情も柔らかくなり,人間とはこういうものだということを学習していくわけです。人間を理解していくのか,それともアリに対する人間の視点で終わってしまうのか。そこは今後の展開として重要な部分になりますね。第6話のセリフはそのことに対する投げかけになっていますし,今後のキーワードにもなります。

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4Gamer:
 作中に登場した“ワム”ですが,筑波大学の三谷 純教授の協力得ていると伺っています。どの部分を三谷教授にお願いしたのでしょうか?

野口氏:
 映画「シン・ゴジラ」に三谷教授の立体折り紙が登場していますが,本作の手作りのワムも立体折り紙を使用させて頂いています。演出とのデザインの会議で折り紙でやろうとまず決まりました。
 その後のリサーチする中で,三谷教授の球体折り紙と出会い,それをベースにして制作しようとなりました。そこで三谷教授に許可をいただき,さらに球体折り紙を6段にして潰したわけです。


4Gamer:
 第6話が放送されている現在,ヤハクィザシュニナは人類にワムを提供し,さらに睡眠さえも不要になると発言しています。人類の生活を一変させるようなギミックを提供する,彼の真意は?

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野口氏:
 ワムは「エネルギー問題」,その次の“睡眠が不要になるもの”は「労働問題」を提示しています。本作のテーマとして「考え続けなければいけない」というものがあって,その正解を考えてほしいという問いかけが作品には込められています。それが個々の正解として,海外の人たちには「休暇の時間を長く取れる」と受け止められ,日本人には「労働時間が長くなる」と受け取られているのは面白いですね。
 昨今,時短が叫ばれている中で,ブラック企業の取り締まりも強化がされつつありますが,人間の生活を個に戻すように動いているようにも感じます。

 私の知り合いに48時間スタンスで生活ができる人がいたんですよ。2日に1回寝るって言うんですね。その人は,「自分は48時間周期で生活していてるから,この(アニメ)業界は合っている」と。そういう価値観の違う人もいるわけです。
 生活スタイルとしても,昔は今と違って2食しかとらなかったとか,スペインではシエスタなど,生活リズムが違えば当然価値観も変わってきます。そうした価値観の違う人たち個々の正解をもう一度考えるべきなんじゃないかなと,私は感じました。

4Gamer:
 ヤハクィザシュニナの言う「人類よ,どうか正解されたい」には人類全体だけでなく,個々の正解も含んでいるということでしょうか?

野口氏:
 そうですね。いろいろな問題に対して「考え続けること」が本作のテーマになるので,その正解を人類に見つけてほしいんです。これから,このアニメ自体の正解に向かうことになると思うんですよね。しかし,それが正解なのかどうかは視聴者しだいということになりますが。

4Gamer:
 ヤハクィザシュニナは別として,野口プロデューサーのお気に入りのキャラクターはいますか?

野口氏:
 それは浅野ですね。

4Gamer:
 真道の友人の浅野修平(CV:赤羽根健治)ですか。ちょっと意外です。

野口氏:
 浅野の視点がいちばんこの一連の騒動を客観的に見ているんですよ。真道やヤハクィザシュニナは当事者ですし,巻き込まれた一般人は被害者です。浅野は当事者に近いんですが,一歩離れたところから見ている。その立ち位置が自分のプロデューサー的なところに近いなあと思ったんです。
 やはり当事者は監督やアニメーターさんで,それを浅野のような視点で,自分が後ろから管理するという図式が似ているなと。

4Gamer:
 共感できるということですね。

野口氏:
 はい,「あの野郎」とか「それ,なんなんですか?」とか「さぁ仕事仕事」というセリフに共感したりしています(笑)。登場回数は少ないですが,そういった部分が自分に近くてお気に入りです。

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警察庁長官官房 国家公安委員会 会務官補佐官という長い肩書きを持つ,浅野修平

4Gamer:
 この記事が掲載される時点で,第6.5話の放映が終了しています。第7話以降の見どころをお願いします。

野口氏:
 ワムのような,さらなるガジェットが出てきます。人類に対する問いかけがさらに加速するわけです。それに対する人類サイドの回答がどうなるか,という流れですね。

4Gamer:
 さらに追加されるんですか。睡眠が不要になるだけでも人類は大混乱だと思うのですが。

野口氏:
 はい。ヤハクィザシュニナは,まだ人類には足りないものがあると思っていて,それを人類に渡してあげたいと考えているんです。今は技術の進歩,人間の進歩の時間軸を短縮してあげているだけなのです。人類がこれから進むであろう未来100年を1年に圧縮して経験させているということです。

4Gamer:
 人類がついていけるか心配です。

野口氏:
 そうですね。じつは本作は当初,24話になる予定だったんですが,シナリオ開発の途中で12話に変更しました。圧縮してテンポをアップしたんですが,そのせいで描けない部分がかなりありました。人類の混乱などがそれに当たりますが,本当は政府の慌てぶりやカド移動による住民の混乱などもじっくり描きたかったんです。そこが悔やまれる部分ですね。

4Gamer:
 最後に読者へのメッセージをお願いします。

野口氏:
 野﨑まどさんが最後の結末をどうするか,それを楽しみにして観てほしいですね。それとじつはCGの技術も毎回進歩していて,人物の表情や映像表現が変化しています。それを見比べてみるのも面白いかもしれません。とくに10,11,12話はいろいろなものが登場するので,映像表現として非常に興味深いと思います。
 物語の面白さと映像の面白さが,これからどんどん加速していくので楽しみにしていてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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 フルCGアニメという映像的な挑戦だけでなく,さまざまな試みが盛り込まれた本作。ストーリーも視聴者の予想を裏切る展開が用意されているようだ。
 ヤハクィザシュニナはつぶやく。「人よ,どうか正解されたい」。人類が,その言葉通り正解を選ぶことができるのかが,今後の展開のポイントになってくるのだろう。
 ちなみに,本作のコミック化作品がモーニング・ツー(講談社刊)で,スピンオフコミック「正解するカド 青い春とレールガン」がWebコミック ぜにょんで連載がスタートしている。アニメ本編とはまた違った「正解するカド」が楽しみたいという人にオススメだ。

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「正解するカド KADO:The Right Answer」公式サイト


放映データ
2017年4月〜
全12話+総集編1話
キャスト
真道幸路朗:三浦祥朗 ヤハクィザシュニナ:寺島拓篤
徭 沙羅花:M・A・O 花森 瞬:斉藤壮馬
浅野修平:赤羽根健治 夏目 律:伊藤 静
品輪彼方:釘宮理恵 犬束構造:中 博史
羽深清鷹:斎藤志郎 笹内直己:菊池正美
言野 匠:桐本拓哉 歌丸:阪口大助
画美:菅沼久義 御船哲人:後藤哲夫
阿方篤彦:小山剛志 大石哲男:半田裕典
深水ソフィー:甲斐田裕子 由利縞子:白石涼子
ナレーション:上川隆也
スタッフ
総監督:村田和也
シリーズディレクター:渡辺正樹
脚本:野﨑まど
演出:りょーちも・齋藤昭裕・田辺泰裕
キャラクター原案:有坂あこ
キャラクターデザイン:真庭秀明
CG ディレクター:カトウヤスヒロ
キャラクタースーパーバイザー:宮本浩史
リードキャラクターモデラー:岩本千尋
リードアニメーター:安田祐也,牧野 快
グラフィックデザイン:鈴木夏希
色彩設計:岩沢れい子
美術監督:佐藤豪志(スマーチル)
撮影監督:石塚恵子
編集:福光伸一
音響監督:長崎行男
音響効果:今野康之(スワラ・プロ)
音楽:岩代太郎
アニメーションプロデューサー:小倉裕太
プロデューサー:野口光一
アニメーション制作:東映アニメーション
主題歌(オープニング):徭 沙羅花 starring M・A・O「旅詩」
エンディング:HARUCA「永遠のこたえ」

■Blu-ray/DVD情報

ブルーレイ/DVD
正解するカド Blu-ray Disc BOX 1 / DVD BOX 1


□発売日・収録話数
商品名:正解するカド Blu-ray Disc BOX 1 / DVD BOX 1
発売日:2017年7月26日(水)
収録話数:第0話〜第6話

□商品説明
野﨑まど脚本集,キャラクター原案・有坂あこ描き下ろしBOX,特典CD,特製ブックレットが付属するほか,地上波未放送の前日譚である第0話,オーディオコメンタリーを収録。特典CDにはオープニング主題歌「旅詩」フルバージョン,新作ドラマCDを収録。

□特典内容
・4枚組(本編ディスク3枚+特典CD1枚)
・野﨑まど脚本集(本編シナリオ『第0話〜第6話』収録)
・キャラクター原案・有坂あこ描き下ろし収納BOX
・特典CD(正解するカドOP「旅詩(徭 沙羅花 starring M・A・O)」,「旅詩(instrumental)」,ドラマCD収録)
・オーディオコメンタリー
・特製ブックレット

□品番・価格
BD-BOX  … ANZX-12331〜4 / 2万2000円+税
DVD-BOX … ANZB-12331〜4 / 2万1000円+税

□Viewcast対応商品
Viewcast(ビューキャスト)」とは,購入したBlu-ray&DVDの収録内容を,お手持ちのスマートフォンやタブレットで観られる新サービス!本編映像はもちろん,特典としてパッケージに収録される映像や音声,ブックレットなどもお楽しみ頂けます!

詳しい視聴方法は商品封入の「Viewcast用紙」,もしくは「Viewcast」公式HPにてご確認下さい。
[Viewcast公式HP:http://viewcast.jp]
(C)TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
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