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ドミネーションズ -文明創造-
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シド・マイヤー先生の教えとは? ついに配信が始まった「ドミネーションズ -文明創造-」の開発経緯や今後の展開を,ティム・トレイン氏に聞いてみた
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印刷2015/08/28 00:00

インタビュー

シド・マイヤー先生の教えとは? ついに配信が始まった「ドミネーションズ -文明創造-」の開発経緯や今後の展開を,ティム・トレイン氏に聞いてみた

 Big Huge Gamesが手がける初のスマートフォン向けストラテジーゲーム「ドミネーションズ -文明創造-」iOS / Android。以下,ドミネーションズ)の配信を,ネクソンが8月26日に開始した。

Big Huge Games CEO ティム・トレイン氏
画像集 No.001のサムネイル画像 / シド・マイヤー先生の教えとは? ついに配信が始まった「ドミネーションズ -文明創造-」の開発経緯や今後の展開を,ティム・トレイン氏に聞いてみた

 Big Huge Gamesといえば,PC向けリアルタイムストラテジーゲーム「Rise of Nations」(RoN)などの開発元として知られる会社だが,同社は2012年に当時の親会社が破産したことによって消滅している。しかしのちに,ティム・トレイン氏が知的財産権を競り落とし,同社名を受け継いだという経緯があるのだ(関連記事)。
 そのため現在のBig Huge Gamesは,厳密に言えばRoNなどを開発したBig Huge Gamesとはまったくの別会社。社歴だけを見れば去年に設立されたばかりの若いスタジオだが,RoNだけでなく「Civilization」や「Age of Empires」シリーズに関わったスタッフが多数在籍しており,開発チームは実力派揃いである。

 今回4Gamerは,そんな“新生”Big Huge GamesのCEOであるティム・トレイン氏に,ドミネーションズの開発経緯や今後の展開を聞いてみたので,ぜひ最後まで目を通してほしい。

「ドミネーションズ -文明創造-」公式サイト



数々の名作PCゲームで知られるBig Huge Gamesが

なんでまた,スマートフォン向けアプリを?


4Gamer:
 お会いできて光栄です。まず,コアなゲーマーなら誰もが考えるであろう質問ですが,スマホアプリの開発に至った経緯についてお聞かせください。

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トレイン氏:
 ドミネーションズの企画が生まれる前,歴史を本格的に扱ったスマホアプリは存在しなかったのですが,自分達がその最初の一歩を踏み出したいという思いが強くありました。そこで,ブライアン・レイノルズ氏と一緒にBig Huge Gamesを設立し,「Rise of Nations」「Civilization II」「Age of Empires」といったPC向けストラテジーの開発に関わったスタッフを集めて,ドミネーションズを開発し始めたんです。

4Gamer:
 「Clash of Clans」iOS / Android,通称クラクラ)を代表とする多くのストラテジーゲームが,スマホ市場でしのぎを削っている状況です。そんな中でリリースしたドミネーションズのアピールポイントとは,どういったところなんですか?

トレイン氏:
 「歴史」と「戦術」の2点に集約されます。世界各地で勃興した“文明”を題材としており,兵士や施設の見た目だけでなく,それぞれ効果も異なります。

4Gamer:
 カジュアルさが求められがちなスマホアプリで「歴史」という重いテーマを扱うことに対して,周囲から理解を得るのは難しかったのではないですか?

トレイン氏:
 パブリッシャやマーケティング担当者からはあまり前向きな反応をもらえませんでしたね。確かにビジネス的な観点では,挑戦的なテーマだと思われても仕方がないでしょう。
 しかし,PCゲームの開発で経験を培ってきた自分達が,スマートフォン向けに徹底したチューンを施し,完成度の高いアプリを開発すれば,きっと広く受け入れられると確信していました。

 すでに配信されている欧米圏では,現時点で1000万ダウンロードを記録しています。自分達が得意とするゲーム作りの手法は,スマートフォンという新たなプラットフォームで活かすことができたと,手応えを感じています。

4Gamer:
 ドミネーションズでは戦闘中,「ターゲット」ボタンでユニットを簡易操作できますが,こちらが「戦術」に該当する部分でしょうか。

トレイン氏:
 そうです。ターゲットを指定できる要素は,ドミネーションズにおける戦術の奥深さを象徴するシステムになっています。スマホ向けのストラテジーゲームは,ユニットを出撃させたあとは見ているだけというものが多く,ユニットがこちらの意図しない動きをしてもどかしい思いをするのは自分だけではないでしょう(笑)。
 しかし,これまでストラテジーゲームを手がけてきた自分達にとってユニットを指揮するのは当たり前のことなのです。その面白さをぜひ実現したいと考えて,盛り込んだ要素ですね。

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4Gamer:
 やはり自分の手でユニットを動かすというのは,スマホでやっても楽しいですね。

トレイン氏:
 ええ,この操作を盛り上げるべく演出にもこだわっています。ターゲットを指定するとユニットが短時間スピードアップするのですが,その瞬間,プレイヤーは全軍を指揮しているような万能感を味わえます。
 ただし,ターゲットにはクールタイムが設けられており,連続で使うことはできません。どのタイミングで使うかという判断が必要になっており,それがゲーム性の奥深さに結びついています。

4Gamer:
 戦術要素がありながら,操作自体は非常にシンプルで分かりやすいですよね。

トレイン氏:
 操作性やUIに関しては,とくに試行錯誤を繰り返しました。実はターゲットのシステムについては,各ユニットを個別に動かすか,それとも全ユニットをまとめて動かすかで深く悩みました。スマートフォンというプラットフォームであまり操作を複雑にしては厳しいだろうという考えから,後者を選んで今の形に至りました。


開発中に意識したシド・マイヤー氏の教えとは?


4Gamer:
 「Age of Empires:Castle Siege」ストアページ)というスマホアプリが2015年7月に日本でリリースされました。こちらもPC向けストラテジーの流れを汲むゲームとして個人的に注目しているのですが,ドミネーションズとの方向性の違いが面白いですね。

トレイン氏:
 そのタイトルは私も知っています。ちなみに,方向性の違いとはどういった部分でしょうか?

Age of Empires:Castle Siege
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4Gamer:
 Age of Empires:Castle Siegeは,従来のPC向けストラテジーゲーム──いえ,リアルタイムストラテジー(RTS)と言ったほうが通りが良いですね──に,近いプレイフィールになっているんです。各ユニットを個別に指揮できるシステムが採用されており,シンプルな操作性で戦術という要素を追求したドミネーションズとは,そういう意味で方向性が異なっていると感じました。

トレイン氏:
 どちらが正しいのか,というのは考え方の違いかと思いますが,自分達はドミネーションズの開発時に,「これはPCゲームではなくモバイルゲームだ」ということを常々意識していました。開発初期の段階では,複雑なゲームシステムで構築していったのですが,「モバイルデバイスだとかえって遊びづらいよ!」というフィードバックを多々受けてしまったんです。
 ゲームを遊ぶのは開発者ではなく,プレイヤーである。プレイヤーの視点で楽しめるかどうかを忘れてはならない。これは,私の師であるシド・マイヤーが口癖のように言っていたことなんです。

4Gamer:
 ここでシド・マイヤー氏のお名前が出ますか。

※画面にはモザイクをかけています
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トレイン氏:
 シドからの教えはたくさんありまして,ドミネーションズの開発にも大いに活かされています。(スマートフォンを取り出しながら)ほら,私が持ち歩いている端末の中に「Sid Meier's Lesson」というフォルダがあるでしょう。こうして頻繁に確かめているんですよ。

4Gamer:
 非常に興味がありますので,いくつか教えていただけますか?

トレイン氏:
 ええと,そうですねぇ。これなんてどうでしょう。

・“ゲーム”とは,面白さを感じられる意思決定の連続である。そのためには,1つ1つの選択に意味を持たせなくてはならない。プレイヤーが意思決定をするプロセスが,ゲームを面白くするときにとくに大切である。

 ターゲットの指定後にクールタイムが発生するのは,この教えによるものですね。

4Gamer:
 ほかにはどういった教えがありますか?

トレイン氏:
 では歴史をテーマとして扱ったうえで,守った教えを1つ。

・多くの人が知っていることを元にしてゲームをデザインしなさい。

 歴史を扱うからといってマニアックな情報を盛り込むのは,たとえそれが可能だとしても,良くないことです。

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4Gamer:
 そういえば,ドミネーションズに登場する日本の英雄は,豊臣秀吉や徳川家康ではなく,織田信長ですよね。

トレイン氏:
 私は大学生時代に光栄(現在コーエーテクモゲームス)の「信長の野望」にハマっていたので,日本の武将といえば真っ先に彼が思い浮かびます。多少なりとも知識があったほうが「あっ,この人は知っている!」と興味を持たれやすいですし,海外でも織田信長なら知っているという人は多いでしょう。

4Gamer:
 おっしゃるとおりです。

トレイン氏:
 そういった考え方もシドの教えからくるもので,

・素晴らしいゲームを作るためのコツは,シンプルとシンプルを掛け合わせて,奥深さや複雑さを生み出すことである。
・“ゲームの面白さ”と“歴史のリアルさ”が衝突したときは,迷わず“ゲームの面白さ”を優先すること。
・ゲームバランスを調整するときは,微々たる数値ではなく,2倍や半分といったように,とにかくパラメータを振り切ることで問題点が炙り出せる。


 これらがドミネーションズで活かされています。

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4Gamer:
 ちなみに,シド・マイヤー氏とは今でもよくお会いしているんですか?

トレイン氏:
 1年に2回くらいの頻度で会っていますよ。自宅のパーティーに招待して,シドと一緒に,シドが好きなフォークミュージックを歌ったりしましたね(笑)。
 確かそのときに「最近どんなゲームで遊んでいるの?」とシドにたずねたのですが,「今は自分でゲームを作ることが楽しい」と答えていました。彼は常にゲームのプロトタイプを3,4個並行して手がけているんですが,いずれも詳しくは教えてくれませんでしたけどね。


日本での配信にあたって変更された点はなし!


4Gamer:
 日本,韓国,台湾でドミネーションズの配信が開始されましたが,これらアジア地域に向けて特別なゲームバランスの調整などは行われていますか?

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トレイン氏:
 いえ,その点は安心してください。ドミネーションズのサーバーはグローバル形態になっており,海外のプレイヤーも対戦相手として選ばれます。そのため国ごとに異なるゲームバランスの変更などは行っていませんし,その必要性も感じていません。
 長く楽しく遊んでもらうためには,アップデートによるコンテンツの追加や継続的なバランス調整が大切だと考えており,現在はそこに注力しています。

4Gamer:
 各文明間のパワーバランスは調整が大変そうですね。

トレイン氏:
 今後のアップデートで新しい時代を実装する予定なので,その都度調整を行う必要があります。「StarCraft」などのゲームも長年にわたってアップデートが続いていますが,ドミネーションズも同様に,末永く付き合っていく心構えです。

4Gamer:
 ティム・トレイン氏にとって,ドミネーションズにおける完成形/理想形のイメージは,どういったものでしょうか。

トレイン氏:
 App StoreやGoogle Playのセールスランキングで1位をとることが,当面の目標です(笑)。しかし,それに向けてやるべきことはたくさんあるので,一歩ずつ進んで行きたいですね。
 長期間にわたってサービスを続けて,新しい文明や産業以降の時代を実装し,世界史を網羅できたらとても素晴らしいなと思っています。でも,仮にそこまでの成功を収められたら,さらにゲームを広げるためのアイデアを思いついているでしょうね。

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4Gamer:
 現時点では「宇宙時代」が到達地点として公開されていますが,ユニットや施設のバリエーションは数え切れないほどになりそうですね。

トレイン氏:
 宇宙時代に関しては,まだ具体的な開発作業に着手しているわけではなく,ホワイトボードにアイデアを書き出しているような状況です。「大陸間弾道ミサイル」や「人工衛星」を作ってみたいですねぇ。

4Gamer:
 今後実装を予定している内容で,今教えてもらえることはありませんか?

トレイン氏:
 ほかのプレイヤーと同盟を組んで戦う,いわゆる「クラン戦」の開発を進めています。鋭意開発中なので,期待してください。新たな文明や時代に関しても時期を迎えたら公開しますので,そちらも楽しみにしてほしいです。

4Gamer:
 ストラテジーゲームファンの古参としては,Big Huge Gamesが開発しているほかのタイトルの有無についても気になるところです。

トレイン氏:
 いやいや,ほかには何もないですよ(笑)。今はドミネーションズを成功させるために全力を尽くしています。

4Gamer:
 それでは最後に,ドミネーションズのプレイヤーや,これから遊ぶ人に向けてメッセージをいただければ幸いです。

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トレイン氏:
 ドミネーションズは,歴史に注力したストラテジーゲームをスマートフォンで楽しめるというタイトルです。こういったゲームは今までになく,自分達で作り出せたことを誇りに思っています。
 歴史やストラテジーゲームが好きな人であればきっと楽しめますし,初めての人でも遊べるように心がけて作っています。ぜひプレイしてフィードバックをもらえると本当に嬉しいです。そして「宇宙時代」まで共に歩んでくれたら,これに勝る喜びはありません。(日本語で)ヨロシクオネガイシマス!

4Gamer:
 本日はお忙しい中,ありがとうございました。


──2015年8月18日収録

「ドミネーションズ -文明創造-」公式サイト

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