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印刷2012/04/27 00:00

インタビュー

プレイヤーは可能性次元における別の自分――PS Vita「シェルノサージュ」の壮大な構想とチャレンジを土屋 暁ディレクターに聞いた

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
 ガストは,2012年4月26日,PlayStation Vita用ソフト「シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜」(以下,シェルノサージュ)を発売した。同タイトルは,“遙か七つの次元を超えた先に,本当に存在する世界”というコンセプトを元に,さまざまなジャンルとプラットフォームで展開する「サージュ・コンチェルト」シリーズの第1弾だ。

 今回,4Gamerでは,そのリリースに先駆けてシェルノサージュのディレクターを務めるガストの土屋 暁氏に,同タイトルの狙いと魅力,そしてシリーズの今後の展開について聞いた。

 土屋氏の代表作「アルトネリコ」は,その独創的な世界観でコアなファンから高い人気を得ている。インタビューではアルトネリコの話も聞けたが,中でも興味深いのは,土屋氏がゲームを量子論で捉えていたことだ。

 箱の中に猫を入れて蓋を閉めたら,蓋を開けた瞬間に猫がどうなっているかという,エルヴィン・シュレーディンガーの唱えた思考実験(シュレーディンガーの猫)と同じようなことが,実はゲームの中で常に起こっていると,土屋氏は主張する。

 そしてシェルノサージュは,そういうゲームの持つ特異性を世界観やシステムに取り入れて,さらに1歩先へと進めた作品になっているのだという。

「アルトネリコ」の精神を受け継いだまったく新しい挑戦


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずはシェルノサージュの世界観の構想がどうやって生まれたのかを教えてください。

シェルノサージュ ディレクター土屋 暁氏
土屋 暁氏(以下,土屋氏):
 バンダイナムコゲームスさんと協力して作り上げた「アルトネリコ」シリーズが大団円を迎え,いったん区切りがついたところで,心機一転,違った世界を作りたいという思いがありました。ありがたいことに,アルトネリコの世界観をまだまだ楽しみにしてくださるファンの声はたくさんいただいていたのですが,3作続けてきたなかで,同じ世界観で新しいサプライズを生み出すのが困難になりつつもあったんですよ。なので,この世界観を別の形で作ることで,もう一度ゼロから楽しんでいただこうと思ったんです。

4Gamer:
 アルトネリコファンに向けた気持ちからですか。確かに,「詩魔法」など共通するワードも多数登場しますね。それではシステム面の構想についてはいかがでしょう? オンライン専用にするなど,いろいろなチャレンジが見られますけれども。

土屋氏:
 これもアルトネリコから脈々と続く流れなのですが,私は,ゲームを作ってリリースしたら終わり,というのがすごく嫌なんです。ゲームを買って楽しんでくださった方が,ずっとその世界に浸っていられるようなものを作りたいと考えてきました。
 私自身,以前はプレイヤーとして今以上にRPGを遊んでいて,遊び尽くしたあともずっとその世界観を求めてCDや攻略本などを買って回りました。しかしそれも,関連商品を一とおり集めたら終わってしまいます。それってすごく残念なことだと思うんです。

4Gamer:
 たとえば小説でも,最後の3ページが読み進められない作品に出会うことってたくさんありますよね。終わらせたくない,もっとこの世界に浸っていたいと。

土屋氏:
 そうですよね。なので,アルトネリコではファンがずっと世界に浸っていられるよう,年間を通じて火を絶やさない計画を組んでいました。それがファンサイト「アルポータル」や,その中の「トウコウスフィア」,そして定期的なお祭りイベントの開催です。このほかに月1回,関連商品を発売していたんですが,これも当初から決めていたことだったんです。

4Gamer:
 なるほど。そして同じ流れを,シェルノサージュでも目指していると。

土屋氏:
 そうです。とはいえ,アルトネリコではサントラCDですとか,そういったゲームの外での試みばかりでしたので,ファンからは「ゲーム本編の続きや,ゲーム自体のスピンアウトがほしい」という声も挙がっていました。私自身,その気持ちは痛いほどわかりますが,そう簡単に作品を拡張することはできないんですよね。

4Gamer:
 やはりパッケージとして販売している以上,一回リリースしたところが区切りという構造は基本的に変えられませんからね。

土屋氏:
 しかし,今はインターネットが普及し,多くの人が何かしらのネットワークを使える状況になっていますよね。ですから今なら,プレイヤーの盛り上がっているときや,「これがほしい」という声が挙がったとき,それをゲームに反映できるようなシステムが作れるんじゃないかと考えたわけです。

4Gamer:
 アルトネリコでの試みを一歩進めて,ゲームそのものを長期にわたって提供していこうということですか。

土屋氏:
 ええ。より私の抱いている理想に近い状況にできるのではないかと思いました。そのために世界観を練り込み,キャラクターもRPG並みに登場させて,スピンアウトを含めていろんなものを提供できる基盤を作りました。そうやって年間を通じてプレイヤーに新しいコンテンツを提供し,“生きた世界,成長していく世界”を作っていこうというのが,シェルノサージュの,ひいてはサージュコンチェルトの根幹を成すものなんです。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

4Gamer:
 その具体的な表現の一つが,DLCという形で定期的に物語を配信していくことなんですよね。

土屋氏:
 はい。シェルノサージュの物語は,海外ドラマでいうところのシーズン制で構成されています。パッケージとして提供するのは試練編の第1章ですね。続く第2章は約1か月後に無料で,そして第3章からは有料で配信する予定です。そして一つのシーズンが終了したら,また新たなシーズンが始まる形になります。

4Gamer:
 シーズンが変わるにつれて,物語の中心人物も変わっていくんでしょうか。

土屋氏:
 基本的に物語は,ずっとイオンを中心に描かれ,シーズンが進むごとにステップが上がっていく感じです。全編をとおして一つの筋道はありますね。試練編はイオンとカノンの2人が皇帝を目指す3年間の過程を描いたもので,最終的にどちらが皇帝になるのか,あるいはならないのかという物語となります。

左がイオン,右がカノン。異なる派閥に属する二人は,皇帝の座をかけて対立している
シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜 シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

4Gamer:
 つまりシェルノサージュの物語は,どちらかが皇帝になって終わりというものではないわけですか。

土屋氏:
 まあ,詳しいことはプレイしてみてのお楽しみです(笑)。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
4Gamer:
 わかりました(笑)。
 ところで,アルトネリコもそうですが,土屋さん作品の世界観というと,ファンタジーにSF的な要素と昭和っぽいレトロな雰囲気を融合させているイメージがありますよね。

土屋氏:
 ええ。もともと私は生粋のファンタジーが好きだったのですが,今は魔法科学とかロストテクノロジーに惹かれているんです。なのでアルトネリコとシェルノサージュでは,まず魔法科学の世界を作りました。題材は魔法なんですけど,それが科学である以上は法則が必要になります。そこで,実際に法則から組み立てていくんですけど,そうするとどんどん魔法が神秘的なものではなく,技術的なものになっていきます。
 結果として,近未来SFとも,剣と魔法の王道ファンタジーとも異なる,いわば“ロストテクノロジーファンタジー”とでもいうような方向に広がっていったというわけです。

4Gamer:
 ロストテクノロジーとは,具体的にゲーム内の何を指しているんでしょうか。

土屋氏:
 アルトネリコで言えば,“塔”がそうです。今の人達には扱えないけれども,確実に動かすことのできる旧世代のテクノロジーという感じですね。

4Gamer:
 理屈は分からないけれども,今の世代の人も恩恵を受けられる過去の遺物,ということですかね。

土屋氏:
 そういうイメージですね。私は,リアル世界のピラミッドやクリスタルスカル(水晶髑髏),ストーンヘンジ,南米の地下坑道,ナスカの地上絵などもロストテクノロジーなんじゃないかと思っているんです。今は動かないけれど,もし動かし方が分かれば,何か使い道があるものだろうと。そして,そういったものが,アルトネリコやシェルノサージュの世界では実際に動いているわけです。

4Gamer:
 では,そこに昭和っぽさを組み合わせたのはなぜでしょう。

土屋氏:
 あのごちゃごちゃした雰囲気は,私の趣味です(笑)。それにプラスして,今回は人情味に溢れる世界にしたいという思いがありました。東京の下町にあったような近所付き合いや,普段は喧嘩ばかりしているけれども,何かあったときには一緒に力を合わせるというようなコミュニティを表現して,暖かさを出したかったんです。

4Gamer:
 アルトネリコでも似たような町並みが出てきますよね。土屋さん自身,下町に思い入れがあるんですか?

土屋氏:
 どうでしょうね。私は旧東海道のとある城下町の出身なんです。非常に近所付き合いの多い中で育ってきましたから,自然とそういう雰囲気に惹かれているのかもしれません。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜


描くのはイオンとの“鏡越しの恋愛”


シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
4Gamer:
 それでは,シェルノサージュで重要な役割を担うイオンについて教えてください。そもそも,彼女はどういう経緯で生まれたんでしょう。

土屋氏:
 私がゲームや世界を作るときは,まずシチュエーションが先に生まれるんですよね。つまり「こういうシーンを描けたら,すごく感動的になるんじゃないか」と考えるわけです。そして,シェルノサージュで表現したかったのは“鏡越しの恋愛”です。

4Gamer:
 鏡越し……ですか?

土屋氏:
 そもそも私達がゲームを通じて見るのは,画面の向こうの世界の出来事ですよね。そういった絶対に行き来できない世界にいる女の子と恋に落ちたらどうなるだろう,そのシチュエーションをうまく表現できたら,すごく切なくなるんじゃないか,と思ったんですよ。
 そこから,鏡の中に女の子が住んでいる世界を作っていったわけです。鏡を介してプレイヤーは女の子の世界を見られるし,逆に女の子もプレイヤーを見ている。そこで何ができるだろうかと考えていきました。

4Gamer:
 そうしてイオンが生まれた。

土屋氏:
 ええ。具体的にどんな女の子にしていくのかは,世界設定を作っていくのに合わせて決めていきました。

4Gamer:
 ちなみに鏡越しの恋愛の話を聞いて,「ロミオとジュリエット」を連想したのですが,そういった王道の純愛を目指しているんですか?

土屋氏:
 そういうものも表現したいですね。イオンといろんな方法でコミュニケーションを取っていく中で,イオンとの熱い恋愛と,私がもともと思い描いた切ない雰囲気のどちらも表現していきたいです。

4Gamer:
 なるほど,土屋さんの作品のファンなら期待が高まる部分ですね。
 ところで,イオンが生み出される過程には,FlightUNITのntnyさんが大きく関わっていると聞いたのですが。

土屋氏:
 はい,シェルノサージュは構想時点からFlightUNITと共同で作業を進めていまして,ntnyさんにはキャラクターデザインだけでなく,アートディレクターとして参加していただいています。それこそ,鏡越しの恋愛云々という段階から一緒にやっていました。私が説明したシチュエーションを元に,ntnyさんが何枚もイオンの絵を描いて,その中から,今のイオンのデザインが決まったんです。

4Gamer:
 ということは,イオンのデザインはかなり難産だったんですか?

土屋氏:
 うーん,世界観が固まるまでは何度もイメージが変わったので,その都度描いてもらいました。結局,今のデザインになるまで10か月くらいかかっています。

4Gamer:
 タイトルによっては,開発期間に相当する時間ですよ(笑)。

土屋氏:
 そうですよね(笑)。
 イオンのデザインについては,アルトネリコ3の開発が終わった直後から取り掛かっていました。……まだシェルノサージュがプロジェクトとして動く前の段階の話ですね。

4Gamer:
 では,そんな大切なキャラクターをイオンと名付けたのはなぜでしょうか。名前そのものに何か意味があるんですか?

キャスティ・リアノイト
シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
土屋氏:
 まず一つに,シェルノサージュでは多くのキャラクターに化学系の名前を付けています。たとえば,キャスの姓はリアノイトですが,○○ノイトというのは,土の中にある元素や物質の名前に使われるんです。
 イオンもその流れで付けた名前ですけれども,私自身,言葉の響きが好きだったというのも大きな理由です。……実はほかにも意味を込めているのですが,それはまだ明かせません。

4Gamer:
 何か重要な意味があるわけですね?

土屋氏:
 ええ,そういうことです。

4Gamer:
 癒し系のキャラですから,一時期盛んに取り上げられたマイナスイオン効果などのイオンなのかと思っていました。

土屋氏:
 ああ,そういう解釈も素敵ですね(笑)。
 今後続々と出てくるキャラクターは,もっと分かりやすい理科系の名前が多いですよ。あと,元素だけでなく,地学系の名前も出てきます。

4Gamer:
 では少しゲームのことに話を移して,イオンとのコミュニケーションについて教えてください。コミュニケーションを一つのウリとするタイトルなのに,実際にイオンと接する時間に制限があるのはなぜでしょう? たとえば,イオンが何かをしているときはスキップができないとか,ちょっとした制限のある仕様ですよね。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

土屋氏:
 あえてそうしています。繰り返しになりますが,企画の発端となったのは画面の向こう側に世界を作るというコンセプトです。現実だと,他人を自由に動かすなんて不可能ですから,それを再現しています。
 ゲーム開始当初,プレイヤーとイオンは初対面の関係ですから,時間の融通があまり利きません。そこから親密になるにつれて変わっていくところを楽しんでほしいですね。

4Gamer:
 親密になると,イオンと接する時間も増える,と。

土屋氏:
 ええ。関係が深まれば,イオンはよりプレイヤーのほうを向いてくれるようになります。イオンには彼女なりの生活サイクルがありますが,仲良くなればプレイヤーのサイクルに合わせてくれるようになりますよ。
 
4Gamer:
 ただ,普通のコミュニケーションゲームだと思って始めて,ちょっと期待した内容と違うと感じるプレイヤーもいるかもしれません。イオンとの暮らしに慣れるまで,プレイヤーが心がけるべきところというのはどのあたりでしょうか。

土屋氏:
 まずは,とにかくメインシナリオを進めていただきたいです。物語が進むと,イオンが徐々に記憶を取り戻して,いろいろな物を作れるようになっていきます。そういった物がきっかけとなって,デートに行けるようになったり,イオンが新しい服を着たりするようになります。そうなると,どんどんコミュニケーションが加速して,親愛度が上がり,プレイヤーが得られるものも増えていきますから。

4Gamer:
 普通に“ゲーム”を進めれば,自然にイオンとも親しくなれる,と。

土屋氏:
 そうですね。また,今回はオンライン専用タイトルということで,ネットワークを介したプレイヤー同士のコミュニケーション要素「シャール」を用意しました。シャールのコミュニティをWebと連動させて,アルトネリコの「アルポータル」のような遊びを展開していきます。その部分を楽しみながら,イオンとの親交を少しずつ深めていくこともできるでしょう。

シャール
シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜 シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

4Gamer:
 そのシャールについても少し教えてください。シャールはリアルのバーコードを使って生み出しますけれど,このアイデアはどこから生まれたのですか?

土屋氏:
 イオンは心が折れており,生命力も精神力もほとんどない状態です。シェルノサージュでは彼女に生命力を送るという行為が非常に重要な意味を持っています。そこでプレイヤー自身がリアルに行動して,イオンに生命力を送れるようにできないかといろいろ考えたんですよ。
 その中で一番分かりやすく,かつ面白いアイデアが,バーコードを使うことだったんです。世界観としては,バーコードを撮影することで,商品や物質に込められた思いやエネルギーを画面の向こうの世界に送ってあげるという設定になっています。
 そしてもう一つ,同じ商品なら,どのプレイヤーがバーコードを読み取っても同じシャールが生まれますから,それによってコミュニティが形成されることにも期待しています。

4Gamer:
 しかしそれだと,世に溢れる商品の数だけコミュニティが生まれてしまいますよね。さすがに多すぎませんか?

土屋氏:
 全貌は明かせませんが,いくつかシステム的に制限をかけていますので,その心配はありません。その上で,たとえばタイアップした商品に特別なシャールが生まれるような仕組みになっています。ちなみに,アルトネリコシリーズとシェルノサージュは一つのコミュニティになるようにしていますよ。

4Gamer:
 個々の商品ではなくて,もう少し大きな枠でのカテゴライズになるということですかね。
 では,シャールという名称自体に,何か意味はあるんですか?

土屋氏:
 もちろんです。世界の根幹に深く関わる意味があるんですが,最初は単なる妖精だと思ってもらっても構いません。

4Gamer:
 となると,シャールもただの妖精ではないわけですか。そのわりには,バストサイズによって名前が変わるとか,ちょっとイロモノ的な面もありますよね。

土屋氏:
 そこは……楽しんで作った部分です,としか説明できないですね(笑)。シャールにはそれぞれ学名があって,種族や体質,そして性格によって細分化されているんです。その中に胸の大きい体質と,そうでない体質があるということなんです。

4Gamer:
 学名とシャールの能力に関係はないんですよね。

土屋氏:
 それはありません。ただ,初期能力には,かなりばらつきがありますね。

4Gamer:
 まぁある程度能力差があったとしても,育成はできますし。

土屋氏:
 ええ。シャールはコミュニティ単位で育成していきますから,人数の多いコミュニティほどレベルアップも速くなります。それとは別に,プレイヤーが個人でスキルを覚えさせたり装備を変えたりして,自分好みに育てることもできます。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

4Gamer:
 シャールといえば,彼女(?)たちが使う言語も独特ですよね。なんだか理解不能な響きがあるというか。ヒュムノスもそうでしたが,土屋さんの作品のオリジナル言語には意味がありそうなので気になります。

土屋氏:
 これも,今はまだ謎のままにしておいてください(笑)。


イオンはすべてのプレイヤーの集合的無意識が生み出す存在?


4Gamer:
 シャールの話題のなかで,オンライン専用タイトルというお話がでましたが,こういうスタイルにしようと考え始めたのはいつ頃でしょうか。

土屋氏:
 アルトネリコ3の発売より少し前,SNSやTwitterが盛り上がってきたあたりですね。台頭してきたFacebookやmixiのソーシャルアプリを見て,「これの楽しみは何だろう?」と考えたのがきっかけです。ソーシャルアプリの“プレイヤー同士がコミュニティを作って交流すること自体がゲーム”という部分を,どうにかコンシューマでも生かせないかな,と。
 たとえば,アルトネリコにおけるアルポータルはゲームの外にあるコミュニティですが,それをゲーム内に作りたかったんです。

4Gamer:
 それなら,ソーシャルゲームとして実現させるという選択肢もあったと思うのですが。

土屋氏:
 私の中では,ソーシャルゲームと少し違った形で,コミュニケーションを楽しむゲームのスタイルを作りたいという思いがありました。あと,私の偏見もあるかもしれませんが,ソーシャルゲームには,私の作るような世界観の深さ,あるいは音楽とか物語は,まだそれほど求められていないとも思うんです。
 実際,アルトネリコのアンケート結果を見ても,スマートフォン所有者の割合は20%未満とかなり低かった。ソーシャルゲームとコンシューマゲームのプレイヤー層は,現状では似て非なものであるのかなと思い,結果的に私のやりたいことを120%実現するには,コンシューマゲームが一番いいという考えに至りました。

4Gamer:
 ソーシャルゲームやスマートフォンのアプリは,最初から視野に入っていなかったわけですか。

土屋氏:
 もちろん可能性を模索する意味も込めて,iOSでモックを作ったりもしています。しかし,映像のパフォーマンスや,DLCの配信データ量などを踏まえると,開発期間中に発表されたPS Vita向けのソフトとして作るのが最適だったんです。

4Gamer:
 ……DLCのデータは,そんなに大きくなる予定なんですか?

土屋氏:
 はい。物語と歌が入って,さらに全編フルボイスですから,かなり大きいです。

4Gamer:
 それだけの要素を配信していくとはいっても,DLCを含めてコンテンツを持続させていくためには,やっぱりある程度固まったコミュニティが必要ですよね。先ほどシャールはWebを介したアルポータル的な遊び方も可能というお話がありましたが,そのものズバリのシェルノサージュファンサイトは用意しないのですか?

土屋氏:
 うーん,用意しているといえばしているのですが……。今,確実に言えるのは,シェルノサージュはネットワークを重視して作っていて,そのために制限が生じることもありますが,プレイヤーがそれ以上の恩恵をネットワークから受けられるようにしている,ということです。そして,その恩恵はPS Vitaの内側と外側の世界双方が連動することで生まれます。

4Gamer:
 PS Vitaの内と外が連動する……具体的にどういうことですか?

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

土屋氏:
 まだ詳しくはお話できないのですが,PS Vitaの中でプレイヤーがイオンに何かアクションを起こすと,PS Vitaの外側からリアクションが返ってくるようなイメージです。
 ゲームでは,プレイヤーがイオンとのコミュニケーションの中で何をしたのか,すべて記録されています。どんな選択肢を選んだか,親愛度がどうなっているか,アイテムは何を作ったのか,というデータがすべてクラウド化されるんですよ。

4Gamer:
 そうなるとプレイヤーにはどんなメリットが生じるのでしょう。

土屋氏:
 たとえばPS Vita内のコミュニティで盛り上がった話題に対して,Web上からリアクションを返すといったことが可能になります。言ってしまえば,シェルノサージュとは単体のパッケージソフトではなく,そういったサーバーからWebを通じて,あるいはサーバーから別のアプリケーションを通じてプレイヤーが享受できるものすべてを指したゲームなんです。こういった話は,今後,段階的に明らかにしていきます。

4Gamer:
 楽しみですね。
 それにしてもお話を聞いていると“女の子とコミュニケーションを取りながら進めるゲームで,DLCによるシナリオ追加もあり”という,シェルノサージュの簡素な説明からイメージできるゲームとはかけ離れていきます。

土屋氏:
 構想を実現できたのは,プレイデータのクラウド化による部分が大きいですね。イオンは,プレイヤーのニーズだけでなく,ゲーム内のプレイヤーの傾向に応じて,成長の仕方を変えていきます。

4Gamer:
 そうなると,プレイヤー各自のゲーム内での行動が,自分自身のPS Vitaの中だけでなく,全プレイヤーのイオンのあり方にも影響を与えることになりますよね。
 
土屋氏:
 ……集合的無意識ってご存知ですか?

4Gamer:
 ええまあ,聞いたことがある程度ですけれども。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
土屋氏:
 シェルノサージュの世界では,4次元を「時間軸」,5次元を「可能性軸」と設定していますが,プレイヤーはまさに5次元的な存在──それぞれのプレイヤーは“可能性次元における別の自分”なんです。
 イオンは7次元の向こうにいるのですが,たとえば右手を上げたイオンと,左手を上げたイオンは,そのデルタ時間の瞬間から,別の存在になります。そしてプレイヤーは各自のPS Vitaを通じて,7次元上の異なる存在のイオンにそれぞれアクセスしているというわけなんです。

4Gamer:
 つまり,プレイヤーはゲームを遊んでいるつもりが,さまざまな可能性に分岐した7次元上のイオンに接しているというわけですか。

土屋氏:
 ええ。そして7次元上には,プレイヤーが除外してしまったイオンも無数に存在しているわけです。その一方で,多くのプレイヤーが選択したという一定の傾向も生じます。それが集合的無意識という形で,イオンの性格を形成していきます。

4Gamer:
 そう聞くと,イオンという存在がすごく曖昧模糊としたもののように感じるのですが。

土屋氏:
 イオンの根本的な部分というのは明確なんですよ。ただ,これから彼女がどのように成長していくかは,現状誰にも分からないということです。少し具体的に言いますと,どの選択肢が選ばれているか,親愛度の平均値がどれくらいなのかといったすべてのプレイヤーのデータによって,今後DLCとして配信されるシナリオ上のイオンの行動を決めていくのです。

4Gamer:
 ……ということは,DLCはすでに作ってある物を切り売りする形ではないんですか。

土屋氏:
 違います。配信1回分のDLCには,先ほどお話したシナリオとイオンのボイス,そしてボーカル曲が1曲入りますが,それらはすべて,これから作るものです。

4Gamer:
 それは,かなり大変じゃないですか?

土屋氏:
 身体を張っています(笑)。
 シェルノサージュでは,開発チームとプレイヤーがともにレスポンスを返しながら成長していくというゲームを作ってみたかったんです。今,プレイヤーがゲームやイオンに何を求めているのかを,その都度汲み取ったバージョンアップなり,シナリオなり,音楽なりを提供したいですね。もっともシナリオに関しては主幹は決まっていますから,ゲーム内で大きく盛り上がったキャラクターをクローズアップするような肉付け部分の変化になりますけれども。
 ともあれ,おっしゃるような,最初から全部作っておいて切り売りするDLCとは根本から考え方が違うんです。

4Gamer:
 確かに。どちらかといえば,オンラインゲームにおけるインゲームイベントの企画立案と実行に近いかもしれませんね。

土屋氏:
 ええ,これもソーシャルゲームの魅力をヒントにして考えたものです。
 言ってしまえば,毎週放映されるバラエティ番組みたいな感じかもしれません。視聴者からネタを募って,次の週でそれに絡んだコーナーなどを披露するような感じでしょうか。そういった,その都度のノリで作る楽しみ方をゲームでもやってみたいんですよ。

4Gamer:
 そしてそれを実現するための一因が,プレイデータのクラウド化にある,と。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
土屋氏:
 現実的な話をすると,プレイヤーは配信されたイオン以外の可能性を認識できないわけですから,そんな手順を踏まなくてもいいという意見もあると思います。でも,私としては,そういうことにチャレンジしたかったんです。

4Gamer:
 おっしゃるとおり,結果的に配信されるイオンは1つですから,プレイヤーにはそのイオンが構築されるまでの過程は伝わらないと思います。それでも,あえてそういう作り方をするのはなぜでしょう。

土屋氏:
 そもそも私は,ゲームソフトを量子論的なもの──まさに“シュレーディンガーの猫”だと捉えていているんです。仮に10万人が同じゲームを遊んだとしたら,そこに10万通りの世界ができる。そういう意味で,ゲームは5次元的なものである,と。シェルノサージュは,そういう考え方をさらに推し進めた作品なんですよ。

4Gamer:
 ……すみません。もう少し説明をいただいてもいいですか?

土屋氏:
 つまり,アニメや映画,小説でも漫画でもいいのですが,そういったメディアでは,物語やキャラクターにプレイヤーが介入する余地がありませんよね。物語は直線的なもので,これは1次元的な世界だと言えます。早送りや巻き戻しといった4次元的操作(時間軸の操作)は可能ですけど,それもあくまで物語の外側からの行為でしかない。

4Gamer:
 あ,言いたいことが少し見えてきました。

土屋氏:
 一方でゲームは,いろいろな可能性を分岐させられるメディアですよね。たとえ同じ結末を迎えたとしても,そこに辿り着くまでの経過が違えば,それぞれのプレイヤーが接したキャラクターは,5次元上(可能性軸上)の違う人物だと捉えることができます。シェルノサージュは,そういったゲームの持つ量子論的特異性に,さらにネットワーク機能を介した集合的無意識(6次元)の考え方を取り入れています。だからイオンは,7次元上に“実在”するんです。

4Gamer:
 なるほど。それで7次元がテーマになっていたというわけですか……。

土屋氏:
 ちなみに,この話はイオンの特殊能力とも関係があるんですよ。

4Gamer:
 特殊能力ですか。詩魔法ではなく?

土屋氏:
 ええ。パッケージに収録された夢セカイのシナリオ1章を最後まで見ると,なるほど,と思う方も出てくるでしょう。今後,そこがすごく重要になっていきます。イオンには,彼女にしかできないことがあって,それが次元の話と密接に関わっているんです。それをさらに飛躍させると,イオンの真の姿が分かる……かもしれません。
 実はアルトネリコシリーズにも,こういった選択の可能性によるifの世界を少しずつ盛り込んできたので,今の話でピンと来る方はいるかもしれませんね。



異なるジャンル/プラットフォームで展開していく

「サージュ・コンチェルト」とは?


4Gamer:
 それでは,今後のシリーズの展開についても教えてください。シェルノサージュは,サージュ・コンチェルトの第1弾という位置づけですよね。

土屋氏:
 そうですね。ここでのキーワードもまた,クラウドです。サージュ・コンチェルトは,先ほどの次元論で話したような事象を,さまざまな角度から表現することをコンセプトにしています。第1弾となるシェルノサージュではPS Vitaを介してイオンの世界を見ていますが,異なるプラットフォームや別の方法/手段で,同じ世界を見るソフト/コンテンツを提供していく予定です。つまり一つの世界で,多角的に展開していく一連の試みが,サージュ・コンチェルトというわけなんです。
 すごく簡単に説明してしまえば,今はPS Vitaでしかイオンの姿を見られませんが,ほかのプラットフォームからアクセスしても同じイオンの姿を違う形で確認できるようにしたい,ということなんですね。PS Vita上でイオンが生産したものは,クラウドでデータを共有していますから,同一プレイヤーがほかのプラットフォーム上から見ても当然存在するわけです。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜
4Gamer:
 シェルノサージュのプレイヤーは,可能性次元における別の自分の集合ということで,ゲームの主人公としてはかなり曖昧な存在ですが,サージュ・コンチェルトではそれも一貫しているのですか?

土屋氏:
 必ずしもそうではありません。そういった曖昧な存在も含めた,さまざまな視点からイオンの世界を見るという意味です。

4Gamer:
 プレイヤーが何かのキャラクターになることもある,と?

土屋氏:
 それはまだ教えられません。もちろん,プレイヤーの視点をどうするかはある程度固まっていますけれど,ここで言ってしまっては全部ネタバレになってしまいますから(笑)。

4Gamer:
 続編というか,シリーズとして作を重ねるわけですよね。

土屋氏:
 はい。おそらく2〜3作出してみないと,サージュ・コンチェルトがどういうシリーズなのか,よく分からないという人も多いんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 サージュ・コンチェルトでは,シェルノサージュとは異なるゲームスタイルのタイトルが出ることもあり得るんですか?

土屋氏:
 むしろ,シェルノサージュで使った視点やスタイルは,今回限りになります。次は違う視点,その次はまた違う視点という感じですね。同じ世界をどの側面から見るかによって,表現方法は変わっていきますから。

4Gamer:
 極論を言えば,戦闘システムが組み込まれたタイトルが出る可能性もあるわけですか。

土屋氏:
 もちろん,可能性はあります。

4Gamer:
 なるほど,期待が高まりますね。
 それでは,あらためてシェルノサージュを楽しみに待っている人に向けてメッセージをお願いします。

土屋氏:
 シェルノサージュは,一つの世界があって,それに対してさまざまなアプローチで展開していくというコンセプトから生まれた,サージュコンチェルトの第1弾です。PS Vitaの外側もゲームの一部なんだということが分かるようなサービスとサプライズを,いろいろお見せしていきます。そこまで含めて,一緒にこの世界を楽しみ,かつ成長させていっていただきたいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

 土屋氏の手がけるゲームは,作り込まれた世界観を特徴としており,そこに惹かれてファンになったというプレイヤーも少なくない。その根底には,“発売したら終わり”というパッケージソフトの限界を超えたいという氏の強い意志があるようだ。今回のシェルノサージュは,その意思を,氏の代表作であるアルトネリコとは違う形で表現した新たな挑戦と言えるだろう。

 また次元論のアイデアは,過去,何タイトルかのアドベンチャーゲームやRPGでも見受けられたが,シェルノサージュを含むサージュ・コンチェルトでは,整備されたインフラと最新ハードのネットワーク機能を生かし,さらに1歩進めたものになるようだ。こうした土屋氏の試みが,今後どのように展開していくのかにも期待が高まるところである。

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  • 関連タイトル:

    シェルノサージュ 〜失われた星へ捧ぐ詩〜

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