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こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾
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印刷2012/03/01 00:00

インタビュー

こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾

 PlayStation Storeで展開されている「ゲームアーカイブス」の配信タイトル総数が,2月23日に700本を突破した。これを記念し,ゲーム業界を代表するクリエイター7名に,「思い出に残る1本」をピックアップしてもらい,そのタイトルに関する話を聞いてみようというのが,先週スタートしたこの企画である。

○第1弾 北瀬佳範氏 (スクウェア・エニックス)※2月23日掲載 
○第2弾 須田剛一氏 (グラスホッパー・マニファクチュア)※3月1日掲載
○第3弾 水口哲也氏 (キューエンタテインメント)※3月8日掲載
○第4弾 馬場英雄氏 (バンダイナムコゲームス)※3月15日掲載
○第5弾 名越稔洋氏 (セガ)※3月22日掲載
○第6弾 小林裕幸氏 (カプコン)※3月29日掲載
○第7弾 小島秀夫氏 (コナミデジタルエンタテインメント)※4月5日掲載予定

「PlayStation Store」公式サイト


 今回は,角川ゲームスより5月に発売予定の「LOLLIPOP CHAINSAW」PlayStation 3 / Xbox 360)を開発している,グラスホッパー・マニファクチュアの代表取締役 須田剛一氏の登場だ。
 須田氏にとっての思い出の1本は,1995年にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売された,「デストラクション・ダービー」である。
 レースゲームの多くが,「いかにクラッシュせずに速く走るか」に主眼を置いているのに対し,この作品はクラッシュ上等……というか,車と車をぶつけ合い,壊し合うという,ある種の背徳感さえ伴う独特の爽快さを実現した作品だ。須田氏は,この作品のどこに魅力を感じたのだろうか?

須田剛一(すだ ごういち):グラスホッパー・マニファクチュア 代表取締役。1993年,ヒューマンに入社。1995年に「スーパーファイヤープロレスリングスペシャル」ではディレクターと脚本を担当。そのストーリーと結末は,当時のプロレスファンに大きな衝撃を与えた。同社ではほかに「ムーンライトシンドローム」などを手がけ,1998年にグラスホッパー・マニファクチュアを設立。以降,「シルバー事件」「花と太陽と雨と」「killer7」「NO MORE HEROES」「シャドウ オブ ザ ダムド」など,個性的な作品を世に送り出してきた。5月に角川ゲームスより発売予定の「LOLLIPOP CHAINSAW」でも,クリエイティブディレクターを務める
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○「デストラクション・ダービー」とは

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 1995年に発売された,PlayStation初の“洋ゲー”。開発を手がけたPsygnosisは,現在,SCEE Studio Liverpoolとなっている。
 登場する車体には,フロント,サイド,リアに合計10か所の破壊可能な部位が設定されており,車同士,あるいは壁にぶつけると,そこにダメージが蓄積されていく。その際,見た目と走行性能の双方に影響が生じるのが大きな特徴だ。
 通常のレースゲームのようにサーキットを走行するモードもあるが,特筆すべきはタイトルそのままの「デストラクション・ダービー」というモードだろう。円形のサーキット内で,とにかく車をぶつけあい,壊し合う……ただそれだけのルールだが,当然のことながら,自車をほかの車にぶつけると,自車にもダメージは及ぶ。
 そのため,いかに自車にダメージの少ない形で,ほかの車にぶつかれるかを突き詰めようとして,ついつい何度も繰り返し遊びたくなるという,不思議な魅力に溢れた作品なのだ。

ゲームアーカイブス「デストラクション・ダービー」紹介ページ



須田氏が感じた「デストラクション・ダービー」の凄さとは


4Gamer:
 本日はよろしくお願いいたします。
 PlayStation Storeで配信されている「ゲームアーカイブス」の中で,須田さんの心に残る1本が「デストラクション・ダービー」であるとうかがいました。まず,この作品を選んだ理由から教えてください。

画像集#003のサムネイル/こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾
須田剛一氏(以下,須田氏):
 もともと車のゲームは好きなんですが,ストイックにコース取りをして遊ぶようなレースゲームは苦手なんです(笑)。
 どちらかというと,タイムを縮めることよりも,乱暴に運転したり,思い切りスピードを出したりしながら,走ることの気持ち良さを味わえるゲームが好きで。

4Gamer:
 リアルなレーシングシミュレーションというより,現実には出来ないような走り方ができるゲームのほうが好きということですね。

須田氏:
 ええ。で,1995年にPlayStation用としてデストラクション・ダービーが発売されたときに,「凄いゲームが出た」という噂を聞いて,実際に遊んでみたら……想像以上に凄かったんですよ。
 何が凄いって,車をぶつけると,ぶつけた部位がちゃんと壊れるんですよね。しかもそれを生かして,ただひたすらぶつけ合って,破壊すれば勝ちという,プロレスのバトルロイヤルの概念が取り入れられているモード(デストラクション・ダービー)もあって,そこに衝撃を受けました。

4Gamer:
 デフォルメされたカートゲームのようなものではなく,当時としてはリアルに描かれた車が,円形のサーキットで前から横から後ろからぶつかり合う様は,確かに衝撃的でした。

須田氏:
 そう。そこに興奮したんですよ。
 ストーリーもエンディングもほとんどないし,爽快感だけのゲームなんですけど,そこが好きで。

4Gamer:
 ゲームだからこそ実現できる快楽というか。終わりらしい終わりもないので,遊べてしまう作品ですよね。

須田氏:
 ええ。当時,会社で夕飯を食べた後,ROM焼きの待ち時間にひたすらやっていましたね。徹夜のときなんかにもちょうどいいんですよ。
 それに,これを開発したPsygnosisという,UKのデベロッパが好きだったんです。それまでは,わりとおしゃれなゲームを作っていたPsygnosisが,こんな……言ってみればバカなゲームを作ったということにも驚かされました。

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4Gamer:
 かつての洋ゲーって,発想は尖ってるものの,大ざっぱなゲームも少なくなかったですよね。

須田氏:
 長い間そういう感じでしたね。ただ,スーパーファミコンの後期ぐらいから,きちんとチューニングされたゲームも増え始めて,大味で作りがヌルリとしたゲームばかりではなく,しっかり遊べるものが出てきました。
 PlayStation時代になると,海外のポリゴンゲームがローカライズされて日本で発売されることも増えて,日本のゲームファンにとって洋ゲーが身近なものになってきていたと思うんです。その一つの象徴が,デストラクション・ダービーでしょう。

4Gamer:
 デストラクション・ダービーって,ポリゴン数や色数,ユーザーインタフェースなんかは最新のゲームと比べるとさすがに見劣りしますけど,面白さの質は今でも通用するものですよね。

須田氏:
 そうなんです。こういうゲームって,日本人の発想では生まれにくいものだと思うんですよ。

4Gamer:
 車を思い切りぶつけてゲラゲラ笑うような文化が,そもそもないですし。

須田氏:
 ええ。こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力だと思うんです。
 ビデオゲームは日本のお家芸と信じて疑わなかったのですが,デストラクション・ダービーに触れたことで,当たり前のことですが,ビデオゲームは世界中で作られていることを痛感しました。

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メッセージではなく,余韻の残るゲームを作りたい


4Gamer:
 そういった海外の車を題材にしたゲームに触れて,当時の須田さんは,こういうものを作ってみたいとは思いませんでしたか?

画像集#005のサムネイル/こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾
須田氏:
 オープンワールドの作品は,作りたいとずっと思っていました。「グランド・セフト・オート III」の前後ぐらいにも,構想だけは持っていましたね。ただ,オープンワールドのエンジンや,概念や考え方そのものが日本から生まれにくいものだと思うんですよ。
 例えば,日本と海外では地図の描き方からして違うそうなんです。日本では道の幅をまず作って,その周辺をしっかりビルドしていくので,一本道のマップは得意であると。一方で海外は,大きい敷地に縦や横,斜めに線……つまりストリートを引いて目的用途を作っていくから,スタート地点をどこにでも置けるんですよね。
 どちらが良い悪いではなく,こういうマップの作り方やとらえ方でも,ゲームデザインの違いがあると聞いたことがあります。

4Gamer:
 何となく,日頃暮らしている環境の差というのも,大きく影響していそうですね。

須田氏:
 それはあるでしょうね。そして,その違いから生まれるものの差が,PlayStation時代になると目に見える形になってきたんじゃないでしょうか。
 ……1990年代後半から2000年ぐらいにかけての,デストラクション・ダービー,「Driver 潜入! カーチェイス大作戦」,「ダイハード・トリロジー」あたりは,GTA3前夜という印象のタイトルで,遊んでいるときに,何か違うものが来るんじゃないか? という,ザワッとした予感がありました。同じ職業に就く者として。

4Gamer:
 「NO MORE HEROES」の街並みが,オープンワールドっぽくなっているのは,そういった思いを形にしたということでしょうか。

須田氏:
 ええ。州ぐらいの広さのオープンワールドも作ってみたかったんですが,自分達のとっかかりとして,まずは主人公トラヴィス・タッチダウンが暮らしている生活範囲周辺だけを,オープンワールドで作るというのを試してみました。
 これは,オープンワールド自体が持つ遊びの魅力を取り入れようというより,風景や周辺に漂う生活のにおいを作り上げようという狙いでしたね。物語で直接的に語らなくても,街があり,景色があり,周辺環境が物語を雄弁に語ってくれます。それも,オープンワールドの持つ強みの一つだと思いますから。

「NO MORE HEROES」(Wii)
画像集#006のサムネイル/こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾
4Gamer:
 一方,「シャドウ オブ ザ ダムド」(PlayStation 3 / Xbox 360)のように,オープンワールドの対極にある,ルートマップの作品も手がけられていますが……プレイヤーとして,あるいは作り手としては,どちらがお好きなんでしょうか?

須田氏:
 プレイヤーとしては両方とも好きなんですけど,コンディション次第ですよね。自分の進むべき道,物語の目的そのものがしっかり見えているもので遊びたいときは,ルートマップのほうが快適に感じますし。
 作り手としては,予算さえ許せばオープンワールドに挑戦したいと思います。

4Gamer:
 オープンワールドで,ただ広いだけの空間ではなく,そこにさまざまな要素を詰め込んでいくとなると,相当な予算と期間が必要になりますし。

須田氏:
 ええ。あとは,最初の設計の段階も重要です。

4Gamer:
 それこそ,先ほどの地図のお話に繋がるわけですね。
 デストラクション・ダービーや,先ほど名前の挙がった作品以外にも,須田さんはさまざまなゲームに触れてきていると思うんですが,そういった経験がゲーム作りに役立つポイントなどはありますか?

画像集#007のサムネイル/こういう破壊力こそ,洋ゲーの持つ力。須田剛一氏が語る思い出の一本「デストラクション・ダービー」。――ゲームアーカイブス700本突破記念! 特別インタビュー第2弾
須田氏:
 具体的なシステムとかいうよりも,クリア後にプレイヤーとして感じた余韻は参考にしますね。
 ゲームでの冒険や経験の中で意識に残るものは,それ自体が貴重な体験で,遊びを超えたものだと思うんです。実際に違う世界に飛び込んで冒険したかのような,体験したかのような記憶としての感覚を受けられるゲームを遊ぶと,とても刺激を受けますし,そういったものを自分は作りたいと思っています。
 そういう意味では,エンディングを迎えたあと,現実へ繋がるゲームを作りたいというのが,僕の理想です。

4Gamer:
 須田さんが手がけた作品には,独特の余韻が残るものが多いと思っているんですが,やはりそういったものを目指していたんですね。

須田氏:
 ありがとうございます。
 エンディングも,そこまでの過程も,遊んでくれた人の心に何かが残るようなものを作りたいんです。エンディングで大団円を迎えて,その瞬間に綺麗さっぱり終わるものもありますし,それも大事なことだとは思うんです。
 でも自分が作るからには,明日に繋がるよう,生活に直結して,活力になるような余韻が残るものにしたいです。

4Gamer:
 具体的なメッセージを込めようということではなく……?

須田氏:
 やっぱり余韻なんですよ。ゲームをクリアしたときに,完全にゲームと現実が切れるのではなくて,ファンタジーでもハイパーリアリティの世界でもフォトリアリズムの世界でも,自分の描くものは世の中に繋がるものにしたい。それは,何らかの具体的なメッセージということではないんです。
 例えば,ブルース・リーの映画や「スーパーマン」なんかを見たあとって,自分が強くなったような気分になったりしますよね。

4Gamer:
 映画館を出たあとに,肩で風を切って歩きたくなるような。

須田氏:
 そうです。「ダークナイト」を見たら,しばらくバットマンの気分になって,自分の正義を問うなど,そういった感覚が沈殿するじゃないですか。

4Gamer:
 あくまでも,一つの感情なり感覚なりを引き起こすトリガーを作ろうということですね。
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