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印刷2011/08/30 00:00

インタビュー

“気持ちの良い嘘”が生み出す独特の浮遊感に注目。「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」インタビュー

 2011年6月に開催された世界最大級のゲームイベント「E3 2011」。“Wii U”や“PlayStation Vita”といった新型ゲーム機の発表もあり,例年以上の盛り上がりを見せた同イベントだが,その会場で展示されていた数あるゲームの中でも,筆者がもっとも興味を惹かれたタイトルが,SCEブースにあった「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」である。

GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動

「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」公式サイト


 フレンチコミックを彷彿させる幻想的なグラフィックスに,なんとも言えない独特の浮遊感を伴うプレイフィール。ジャイロセンサーを利用したゲームは,これまでにいくつも発売されてきているが,これほどまでに不思議なプレイ感覚を得られた作品は,少なくとも筆者の記憶にない。

 4Gamerでは,そんな本作のディレクターを務める,ソニー・コンピュータエンタテインメントの外山圭一郎氏と,プロデューサーを務める五十峯 誠氏にインタビューを行い,本作の概要や構想,そして制作にかける思いなど,さまざまな話を聞いてみた。

五十峯 誠氏
ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ JAPANスタジオ 制作部 プロデュースグループ シニアプロデューサー。「どこでもいっしょ」シリーズに関わり,トロを一躍人気キャラクターに押し上げた,SCEが誇る名プロデューサー。現在は「週刊トロ・ステーション」や「GRAVITY DAZE」のプロデュースを手がけるが,ほかにもいくつかの“コレカラタイトル”に関わっているようだ
外山圭一郎氏
同制作部 ゲームデザイングループ クリエイティブディレクター。ホラーゲームの名作「SILENT HILL」のゲームデザイン&シナリオ/ディレクターを務めたのち,SCEに入社。「SIREN」「SIREN2」「SIREN: New Translation」と立て続けに傑作ホラーを世に放ち,“ホラーゲームのエキスパート”として国内外のゲーマーから注目されている。PS Vita用タイトル「GRAVITY DAZE」はホラー作品ではないが,プレイヤーの感情を揺さぶるゲームデザインはしっかりと盛り込まれているようだ


外山氏が語る「独特の浮遊感」の秘密とは?


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。E3 2011で「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」(以下,GRAVITY DAZE)を初めてプレイしたときから,外山さんにインタビューできる日を楽しみにしていました。いろいろな意味で興味深い本作について,本日はあれこれと話をうかがいたく思います。

外山圭一郎氏(以下,外山氏):
 こちらこそ,本日はよろしくお願いします。

4Gamer:
 外山さんの人となりやGRAVITY DAZEの開発秘話については,PlayStation Vitaコミュニティサイトのインタビューでみっちりと紹介されていますが,4Gamerには初登場ということですので,多少の重複はご容赦ください。
 まず,GRAVITY DAZEにとっては本格的なお披露目の場となったE3 2011ですが,海外メディアからの反応はいかがでしたか?

外山氏:
 実は,出展するギリギリまで体験版を作っていたこともあって,個人的にはかなり不安でした。十分な告知もできず,試遊機の台数もかなり絞られていたので,果たしてちゃんとプレイしてもらえるのかと……。

4Gamer:
 確かに,さまざまなPS Vita向け新作タイトルが出展されている中で,GRAVITY DAZEが特別目立っていたという印象はありませんでした。しかし結果的には,世界中のメディアから注目を集めていましたね。

外山氏:
 はい。情報がほとんどない中で,メディアの方々に注目していただいて,しかもちょっとした“驚き”のようなものを持って受け入れられているな,という感触は得られました。

4Gamer:
 日本のゲーマーからすると,「SIRENの外山さんがホラーじゃない新作を作っている!」という驚きもあったと思うんですが,独特の浮遊感を感じさせるプレイ感覚には,確かに驚かされました。
 ジャイロセンサーを使ったゲームというなら,すでにいくつも存在します。けれど,GRAVITY DAZEのプレイ感覚は,今まであまり体験したことのないものでした。あのプレイフィールを表現するためのこだわりや,工夫があれば教えてください。

外山氏:
 おっしゃるように,ジャイロセンサーを使ったゲームはたくさんあるんですけど,そのほとんどが,方向キーやアナログスティックの代価操作だったと思うんです。

4Gamer:
 つまり,「ジャイロよりアナログスティックを使ったほうが操作しやすくない?」と思えてしまうような……。

外山氏:
 すべてがそうだとは思いませんが,まぁそういうことですね。GRAVITY DAZEでは,実際にゲーム世界の中を覗き込むような感覚でプレイできることを重要視して,センサーの調整や絵作りを行いました。ここ最近,スマートフォンの普及に伴って,ARをはじめとする「カメラの使い方」が上手いアプリが登場してきていますが,そういったものをかなり研究しました。

4Gamer:
 絵作りというと例えば,視野の広さや遠近感を,普通とは少し違った形でデザインするような? 何というか,これは実際にGRAVITY DAZEをプレイした人なら分かると思うんですけど,なぜああいう感覚が得られるのか,純粋に疑問なんですよね。

外山氏:
 うーん……実は,端的に説明できる「浮遊感の秘密」のようなものは,とくにないんですよね(笑)。

4Gamer:
 そうなんですか?

外山氏:
 例えば普通のゲームは,多かれ少なかれ重力に支配されている世界を舞台としていますけど,GRAVITY DAZEの場合は重力を自在に変換させられることで,底(地面)が流動的というか,常に変化していきますよね。つまり確固たる正位置の視点というものが,内部的には存在しないんですよ。

4Gamer:
 プレイヤーから見て,世界が傾いていたり,天地が逆転していたりする状況であっても,ゲーム的には特別な状況ではなく,「そういうものである」みたいな。

外山氏:
 ええ。一般的なゲームや現実世界で目にしたり,体験したりする視界とは大きく異なっているので,プレイヤー側が能動的に浮遊感を感じているのかもしれません。本当に,特別な映像表現なんかを使っているわけではないんですよ(笑)。あえて言うなら,重力という基本ルールからちょっとだけ離れたゲームデザインが,独特の浮遊感を生んでいるのかもしれません。

4Gamer:
 なるほど。GRAVITY DAZEをプレイしたときに感じる浮遊感や驚きみたいなものは,まさにプレイヤー自身が錯覚する“重力的眩暈”にあるのかもしれませんね。

外山氏:
 そう言われるとGRAVITY DAZEは,プレイヤーに意識改革みたいなものが起きてから,ようやく本領発揮するタイトルかもしれません。社内でテストプレイをしていたときも,最初は「正しい重力に戻したい」と感じるプレイヤーが多かったんですが,慣れてくるとだんだん気にならなくなるようで。

4Gamer:
 E3 2011の短い試遊時間で,多くの人にゲームの魅力が伝わったということは,ギリギリまでやっていたという調整作業はベストに近いチューニングだったのかもしれませんね。

GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動


ホラー以前に生まれ,PS Vitaと共に育ったGRAVITY DAZE


4Gamer:
 いろいろなところでお話しされているとは思うんですが,GRAVITY DAZEの着想や,開発の経緯について,あらためてお聞かせください。

外山氏:
 ご存じのとおり,僕は長年ホラーゲーム……最近では「SIREN」シリーズを作ってきたんですけど,GRAVITY DAZEの企画は,ホラーゲームを手がける前からずっと温めていたものなんです。「ゲームを作るなら,こういうものを作ってみたいな」と考えていたアイディアが,GRAVITY DAZEの原型になっているんですよ。

4Gamer:
 ホラーゲームを手がける前というと,「SILENT HILL」よりも前ということになりますよね。

外山氏:
 はい。アイディア自体は,学生の頃から温めていました。子供の頃からゲームが大好きで,学生時代もずっと,ゲームばかり遊んでいました。美術大学ではデザインを学んでいたんですが,当時のアナログな写植とかレイアウトが苦手なところもあって,ゲームのデジタルな表現にどっぷりハマりました。その後は自然な流れでゲーム業界に足を踏み入れた感じです。
 SCEに入社したあとは,SIRENシリーズを手がけていたんですが,PlayStation 3の発売前に,SIXAXIS(6軸検出によるモーションコントロールが可能なPS3用コントローラ)を使った企画を練る機会がありました。そこに,学生時代から好きだったフレンチコミック的な世界観と,重力をコントロールする要素を組み合わせて,GRAVITY DAZEの原型のようなものが生まれたんです。

4Gamer:
 土着的な恐怖を描いたホラーゲームで定評のある外山さん(※外山氏とホラーゲームの関係については「こちら」を参照)ですが,最初にやりたかったことは,ホラーとはあまり関係のない企画だったんですね……。

外山氏:
 はい(笑)。実際,GRAVITY DAZEの原型みたいなものを,PlayStation 3向けに提案していたんですが,その頃はちょうど「SIREN」の映画版や「SIREN:New Translation」で手一杯で,まずはそちらに注力することになりました。
 SIREN:New Translationの制作が終わり,PS3上での試作を始めて半年ちょっと経った頃に,新しいハード(PS Vita)が動き始めまして,そのタイミングでようやく,現在に至るGRAVITY DAZEの企画が本格化した形です。

4Gamer:
 ちなみに,ずいぶんと特徴的なゲームタイトルが付けられていますが,なぜ「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」というタイトルになったんでしょうか。

外山氏:
 “DAZE”のところは,SIREN時代から一緒にやっているシナリオ担当のアメリカ人スタッフがいて,彼と一緒に考えて,あまりゲームらしくない洒落た感じを狙ってみました。“GRAVITY”は,そのまんまですね。
 サブタイトルに関しては,とにかく印象的なものにしたいという思いがあって,スタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」を参考にしました。

4Gamer:
 なるほど,とにかく印象的なものになっていますね(笑)。
 そういえば先日,吉田修平さんにインタビューさせてもらったときに,PS Vitaの開発時にはクリエイターとの意見交換を重視したとお聞きしたんですが,具体的にはどのようなやりとりがあったんでしょうか。

外山氏:
 基本的には,PS Vitaの原型となるデバイスや,ゲームに使えそうな機能などを実際に触り,アンケートに答えるという形でした。僕達のような国内のクリエイターだけでなく,海外スタジオの人間も含めて,何度も何度もやりましたね。

五十峯 誠氏(以下,五十峯氏):
 何度もやりましたね。ジャイロセンサーや背面タッチパネルといった本格的な機能はもちろん,ボタンの配置や大きさについてもみっちりと。

外山氏:
 そういったモニター的立場からの意見交換もあったし,「あなただったら,この機能を使ってどんなゲームを作りますか?」という,ちょっと複雑な質問もありました。そこで「これ」というアイディアが上がらない機能については,ボツになったりもしていましたよ。

五十峯氏:
 例えば背面タッチパネルなんかは,ヨーロッパのスタジオが,今の「Little Deviants」の原型となるテックデモを作って,「これは面白い」ということで採用の理由の一つになったと聞いています。

4Gamer:
 それは興味深いお話ですね。しかし,これまでのハード開発だと,ハードウェアチーム主導のもとで試作機ができて,その制約の中でどんなゲームが作れるかを考えるのが,いわゆるクリエイターの仕事だったように思います。そういった意味でも,PS Vitaは特別なハードなんですね。

外山氏:
 いやぁ,時代は変わりましたねぇ。僕は中途でSCEに入社したわけですが,実は最初,PS Vitaの立ち上げ時のようなやりとりが,きっとあるんだろうなと期待していたんです。でもいざ入ってみたら,それこそ4Gamerさんのようなゲームメディアのほうが,新ハードの仕様に詳しかったりするわけで。PSP goが作られていることとか,僕は発売直前まで知りませんでしたもん(笑)。
 そういった意味では,PS Vitaの立ち上げ時の意見交換なんかは,単純に嬉しかったですね。忙しいときに「明日までにこのアンケートを全部埋めてください」とか,きついこともありましたけど。

4Gamer:
 外山さんをはじめとするクリエイターさんの,そういった努力の甲斐もあって,PS Vitaは発売前から,世界中のゲーマーに注目されていますね。

外山氏:
 ゲーマーさんだけでなく参入メーカーさんからも「いいよね」と言ってもらえているようで,凄く嬉しいですね。

4Gamer:
 「このハードで面白いゲームを作って」ではなくて,「面白いゲームを作るにはどんな機能が必要か」をきちんと考える必要があると,吉田さんもおっしゃっていました。個人的にも,ハードのスペックだけじゃなく,機能やデバイスを組み合わせて新しい遊びを作る。映像だけではない面白さのようなものが,ゲーマーからも求められてきているという印象を受けています。

外山氏:
 まったく同感です。

4Gamer:
 もちろんGRAVITY DAZEからも,これまでのゲームとは違う遊びを提供しようという意志が伝わってくるんですよ。箱庭世界があって,コントローラがあって,自由に遊ぶ。そこから一歩踏み出した何かを感じます。

外山氏:
 ちょっと私見が入るんですけど,僕自身は,ゲームに斬新なデバイスは必要ないと思っているんです。面白いゲームを考えて作る,という部分は僕ら制作側の人間が頑張るので,できるだけ普遍性の高い,ハードであり,インタフェースであり,インフラをください,という感じですね。
 そういう意味ではPS Vitaって,実はそんなに奇抜なハードではないんですよ。明らかに斬新だと思えるのは背面タッチパネルくらいですよね。

4Gamer:
 確かに,ジャイロセンサーにしても,カメラにしても,ツインスティックにしても,3G回線にしても,有機液晶にしても,それ単体なら今では一般的な機能/インタフェースですね。

外山氏:
 ええ。個人的には,そういった今では当たり前の機能の中でも,とくに3G回線に大きな可能性を感じます。これによって,PS Vitaは従来の携帯ゲーム機の範疇に留まらず,スマートフォンのようなビジネスプラットフォームとしても成立するようになった。これはゲームの売り方を根本的に変えうる機能なわけで,今後のゲーム作りにも大きな影響を及ぼすと思います。

4Gamer:
 自分が作ったものを,自分が届けたいと思っているユーザーに,ちゃんと届けられる環境が整うわけですね。

外山氏:
 そうですね。それはやりたいと思っていても,まず環境が成立していなければできないことです。それ単体でどこでもネットに繋がる3GモデルのPS Vitaであれば,既存のプラットフォームではやりたくてもできなかった,ソーシャル性の高いゲームなどにも対応できるようになり,ゲームの幅が大きく広がります。

4Gamer:
 スマートフォン向けのアプリやソーシャルゲームでは,スペックやインタフェースの関係で,ゲームらしいゲームを作るのは難しいでしょうし。

外山氏:
 スマートフォン向けのアプリで「壮大なゲーム作りました。5000円です!」と言っても,やっぱり相手にされないですよね。でもPS Vitaであればそれも成立する。その幅の広さが一番の大きな変化なのかなぁ。とりあえず,一人のクリエイターとして,PS Vitaには何の文句も不満もありません。


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