NVIDIA Japanセールス本部長 斉藤道雄氏
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NVIDIA Japanは2010年4月25日,カフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店にてエンドユーザー向けイベント
「NVIDIA GeForce GTX 480/470 Debut」を開催した。
その題名から想像できるとおり,新世代GPUである
GeForce GTX 400(以下,GTX 400)シリーズのパフォーマンスをエンドユーザーに伝えるというのが今回のイベントの大きな狙いである。
技術解説を交えたデモンストレーションでGeForce GTX 400シリーズのパワーをアピール
斉藤氏がGTX 400シリーズの特徴を解説。テッセレーションを中心にGTX 400シリーズの性能をアピールした
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GTX 400シリーズに関しては,4Gamerでもこれまで,さまざまな角度から記事をお届けしてきた。DirectX 11世代のゲームには強いと評される同GPUだが,DirectX 11のフィーチャーをフルに使うゲームタイトルがほとんどないだけに,やや利点が分かりにくいGPUという面もあろうかと思う。そのため,今回のイベントでは,各種のデモを実際にユーザーに見せることで,GTX 400シリーズのパワーを理解してもらおうという趣旨のセッションが設定されていた。
セッションで使われたStone Giantのデモ
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これは3月の報道関係者向け説明会で登場したデモで,実のところ,筆者も初見。水しぶきや船の動きをPhysXを使ってリアルに表現すると同時に,テッセレーションを使って岩や水面を描いている
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冒頭のセッションでは,NVIDIA Japanの斉藤道雄氏がGTX 400シリーズの概要を解説。すでに何度も取り上げられている内容が主だったので詳細は省くが,このセッションでもいくつかのデモを動作させて,テッセレーションやPhysXといった,GTX 400シリーズが得意とするリアルな3Dグラフィックス表現を集まったユーザーにアピールしていた。
さらに,4Gamerの各種技術記事でもお馴染みの西川善司氏が「NVIDIA GeForce GTX 400シリーズが提供する最新グラフィックス」と題したセッションを担当。「GPUって何?」といった軽いテーマで話を始めつつ,最後は密度適応型テッセレーション,DirectX 11のドメインシェーダの応用例といったディープな内容にまで言及し,来場したPCユーザーには,かなり参考になったのではないのかと思う。
今年のGDCでは「ピクセルシェーダのタスクをドメインシェーダで行うというアイデアをNVIDIAが発表したが,個人的に非常に面白いと思っている」と西川氏。つまり,ピクセル単位で陰影処理を行う必要があるほどではない部分をドメインシェーダに任せることで負荷を減らそうというアイデアだ |
その例がこれ。水面の下にもやもやと見える輝線の描画にドメインシェーダが使われているという。もやもやとした光なので確かにピクセル単位で陰影をつける必要はなさそうだ |
これはマイクロソフトのDirectX 11 SDKに入っているデモで,密度適応型テッセレーションの実例である。傾斜が緩い部分のポリゴン分割数を減らすことでパフォーマンスを上げつつ,見た目のなめらかさと両立させている |
4Gamerでも紹介済みのHairデモ。数本の髪のデータをGPUに送り,ジオメトリシェーダを使って髪を増やしている。さらにテッセレータを使って髪の分割数を増やしPhysXを使ってリアルな動きを表現するという具合にGTX 400シリーズを使い切っているデモである |
西川氏のセッションの最後には,NVIDIA Japanのスティーブン・ザン氏に西川氏が「少し意地悪な」質問をして答えてもらうというコーナーも設けられていた。
注目の質問は「ミドルクラスの新GPUはいつ出るのか」だったが,これに対する答えは「(オフィシャルいえる時期は)今年中」とのこと。筆者が聞いている話ではそう遠くない将来だそうなので期待したいところだ。
西川氏がユーザーの立場でNVIDIA Japanに質問をぶつけるコーナーが設けられた。写真右側がNVIDIA Japanでテクニカルマーケティングを担当するスティーブン・ザン氏
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テレビで3D立体視対応ゲームをプレイできる
「3DTV Play」が日本でもスタート予定
会場の入り口脇に展示されていた3DTV Playのデモ。3D立体視に対応したパナソニック製50インチテレビ「TH-P50VT2」を使い,ゲームがプレイできるようになっていた。HDMIの仕様上の制限により解像度は720pとのこと。大画面の立体視はさすがに迫力がある
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新しい情報は少なかったイベントではあるが,3D立体視対応テレビで3Dゲームを楽しめる
「NVIDIA 3DTV Play」(以下,3DTV Play)が,時期は未定ながら日本でもサポートされると予告されていた点は注目しておきたい。
3DTV Playは日本でも家電各社の春モデルから続々と登場してきている3D対応テレビで,3D立体視対応ゲームをプレイできるようにするドライバとミドルウェアである。
PC用の3D立体視キット「NVIDIA 3D Vision」(以下,3D Vision)では,エミッタとメガネのセットが必要になるが,3DTV Playでは3D対応テレビ側が,そのテレビ用のメガネをコントロールするという違いがある。つまり,3D Vision用のセット製品は不要で,3D立体視対応テレビと,GeForce 8シリーズ以降を搭載したPCがあれば,3D Visionと同等の立体視環境を構築できるわけである。
3DTV Playは,現時点だとパナソニックとSamsungの3D立体視対応テレビに対応しているそうで,将来的にはさらに対応を増やしていくという。大画面のテレビで遊べるようになれば,立体視のゲームというのも案外,速いペースで普及していくかもしれない。
なお,3DTV Playは,北米だと39.99ドルで今夏販売開始予定。ただし,3D Visionキットのユーザーは,無料でダウンロードできる見込みになっており,日本でも,3D Visionキットのユーザーには無償提供する方向で動いているとのことだった。
次回イベントでは4-way SLIのデモも?
GTX 400シリーズは,DirectX 11にフォーカスしたGPUだけに,現時点では性能を生かし切れない側面があり,騒音や消費電力,発熱といったネガティブな部分に目がいきがちだ。だが,実際にデモを目の当たりにすればDirectX 11やGTX 400シリーズの意義といったものも見えてくるだろう。
例えば,Hairデモなども前提知識なしに普通に見ただけでは単に「へえ」と流すだけになりがちかもしれないが,何が行われているかしっかりと説明されれば,その凄さというのも分かりやすいはず。今回のイベントは,丁寧な解説付きでデモを見ることができる貴重な場になっており,NVIDIAにとってもゲーマーにとっても得るところは多かったのではないかと思う。
会場には4Gamerでも紹介したGTX 400シリーズのさまざまなデモがインストールされたPCが並べられていた
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3画面立体視「3D Vision Surround」を実現した「Battlefield: Bad Company 2」の試遊台が,会場に展示されていた
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Battlefield: Bad Company 2の3D Vision Surroundデモに使用されているPCの構成。スティーブン・ザン氏が組み立てたPCだそうだ
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これがそのPC。中を開けて説明してもらった。「ケースサイドのファンと,HDDベイに取り付けられたファンで十分なエアフローを確保した」(ザン氏)そうだ。「GTX 480の液冷ヘッドが入手できるようになったら4-way SLIもやりたい」と意気込んでいたので,次のイベントでは見ることができるかもしれない
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