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誰もがみんな“FF病”だった――鉄拳・原田Pによる不定期連載「原田が斬る!」。第1回はスクウェア・エニックス田畑氏が「FFXV」流リーダー術を語る
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印刷2016/05/21 00:00

インタビュー

誰もがみんな“FF病”だった――鉄拳・原田Pによる不定期連載「原田が斬る!」。第1回はスクウェア・エニックス田畑氏が「FFXV」流リーダー術を語る

画像集 No.019のサムネイル画像 / 誰もがみんな“FF病”だった――鉄拳・原田Pによる不定期連載「原田が斬る!」。第1回はスクウェア・エニックス田畑氏が「FFXV」流リーダー術を語る

 鉄拳シリーズのプロデューサー・原田勝弘氏による対談企画「原田が斬る!」の第1回をお届けする。

 事の発端は,2015年12月に掲載した4Gamerの年末企画記事。クリエイターをはじめとするゲーム業界の著名人から寄せられたメッセージをお届けする記事にて,原田氏は「2015年に、個人的に注目している人物」として,スクウェア・エニックスの田畑 端氏の名前を挙げていた。

 田畑氏は,野村哲也氏の後を引き継ぐ形で,超大作RPG「FINAL FANTASY XV」PS4 / Xbox One)(以下,FFXV)のディレクションを担当している人物だ。「クライシス コア ファイナルファンタジーVII」「FINAL FANTASY 零式」PC / PSP)でもディレクターを務め,今でこそメディアの前に顔を出すことの多い同氏だが,彼のクリエイターとしての原点を知る人は,それほど多くないだろう。
 折しもFFXVは,2016年3月31日にロサンゼルスで開催されたイベント「UNCOVERED FINAL FANTASY XV」にて,9月30日に発売されることが発表となり,日本が世界に贈るAAAタイトルとして,ゲーマーから熱い注目を集めている。


 そこで4Gamerでは,今回のこの両者による対談という形で,FFXVと田畑氏について深く掘りさげることにした。話は田畑氏の来歴からFFXVの開発体制へとおよび,果てはかなりの“ぶっちゃけトーク”にもなっているので,ゲーマー諸氏はぜひご一読をいただきたい。ファイナルファンタジーシリーズのファンでなくとも楽しめること請け合いだ。

 なおこの対談企画は,不定期ではあるが,今後も続けていくつもりだ。原田氏をホストに,毎回さまざまなクリエイターをゲストに迎えた対談連載となる予定なので,お楽しみに

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「FINAL FANTASY XV」公式サイト



「FFXV」ディレクター田畑氏の持つ“アビリティ”


4Gamer:
 原田さんからのラブコールで実現した今回の対談ですが,そもそもお二人が知り合ったのは,どういった経緯なのでしょうか。

スクウェア・エニックス「FINAL FANTASY XV」ディレクター 田畑 端氏。テクモにて「ギャロップレーサー」「モンスターファーム2」などのプランナーを経たのち,スクウェア・エニックスに移籍。「クライシス コア ファイナルファンタジーVII」「ファイナルファンタジー零式」といったヒット作を手がける。現在は,野村哲也氏の後任として「FINAL FANTASY XV」のディレクションを担当している
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田畑 端氏(以下,田畑氏):
 FFXVの開発チームに,もともと鉄拳チームに所属していたシニアクラスのプランナーがいるんですよ。それが面白い人で,僕と原田さんを会わせたかったらしいんです。で,彼が食事会をセッティングしてくれて。原田さんとはそれ以来ですね。

原田勝弘氏(以下,原田氏):
 ただ,あの時は会う直前まで誰が来るのか知らされてなくってさ。「これ,いったい何の会合?」っていう(笑)。

田畑氏:
 そうそう(笑)。

4Gamer:
 そのとき初めてお会いして,「この人はスゴい!」となったわけですか。

原田氏:
 「この人スゴい」という予想はありましたが,それとも少し違うんですよ。僕に限らずこの業界で長く働いていると,どんなクリエイターにしろ,会ってみたらその人がどんな“アビリティ”を持った人か――「ものすごい感性を持ってるな」とか,「恐ろしい完璧主義者だな」とか――ある程度分かるじゃないですか。でも田畑さんと話して感じたのは……少なくとも,この人FFの人じゃないなって(笑)。

4Gamer:
 FFの人っていうと……やっぱり,野村哲也さんみたいな?

原田氏:
 いえ,特定の誰かってわけじゃないんですが。FFチームのリーダーっていったら,「繊細かつスタイリッシュな感性を持っている人」って先入観とかイメージがあると思うんです。でもこの人からは,それが見えなくて。小野さん(カプコン 小野義徳氏)みたいに,実はガチガチの理論武装をしてるってタイプでもないし,海外の一部のクリエイターみたいにものすごいオタクというわけでもない。強いて言えば,なんだかすごく無骨なゲームを作りそうってイメージなんですよ。

田畑氏:
 つまり,あいつFF作ってるのにぜんぜん繊細じゃねえぞ,と(笑)。

原田氏:
 いやでも,FFファンの中でも,なんとなく僕と同じことを感じてる方も多いと思うんですよね。「この人は一体どこから来て,どうしてFFなんて怪物タイトルの開発チームを率いることになったのか?」。そして,「本当に任せてしまって大丈夫なのか?」って。今日は,大変無礼とは知りながら,そこのところを明らかにしたいと思って来ました。

田畑氏:
 実は原田さんには,以前にもそのことを聞かれたんですよ。あなたのアビリティはなんなのかって。そのときは即答できなかったけど,今日はちゃんと考えてきました(笑)。僕はね,強力な組織を作るのがうまいんです。

原田氏:
 ……それは,もともと得意だったんですか? 学生の頃から?

田畑氏:
 いや,社会人になってからですね。
 人間同士のしがらみでチームのパフォーマンスが阻害されることって,よくあるじゃないですか。指揮系統とは違う方向から働いてくる力学とか,新旧のスタッフが混在することによって発生するボトルネックとか。そういう要因を日々見つけ出して,妥協せず容赦なく修正していく。それによって組織力を高めて,より高度な目標へのチャレンジを可能にする――そういうサイクルが,僕はすごく楽しいんです。

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原田氏:
 なるほど。じゃあその能力を買われて,FFチームのリーダーに抜擢されたんですか。

田畑氏:
 抜擢って感じではなかったですけどね。ただ,そういうチーム作りを続けてきた結果,これまでのスクウェア・エニックスでは作れないようなタイトルが作れるようになってきた。それで,改革とセットでFFを任されたんだと思います。

原田氏:
 反発はなかったんですか? FFくらい歴史あるタイトルで改革を行おうとすれば,絶対に反発って出てくると思いますが。

田畑氏:
 そりゃあ,ありましたよ。チームの中だけじゃなく,外からも。だって,もし僕のやり方で結果が出てしまったら,都合が悪くなる人だっているわけだから(笑)。ただ,そこまで強いものでもなかったんです。今の日本の状況を見たら,現状維持なんてできるわけがない。10年前ならまだしも,明らかに世界に対しては負けているわけで。そういう意味では,この状況は僕にとってラッキーだったと思います。

原田氏:
 時代の後押しがあったわけですね。じゃあFFのディレクターになることに,プレッシャーを感じることもなかった?

田畑氏:
 ほとんどなかったですね。

原田氏:
 ……ちょっと信じられないな。だって,FFだよ? 普通FFの開発者って言ったらさ,こんなTシャツとジーパンで出てくるんじゃなく……きっちりしたワイシャツを着てさ,こう,ちょっと暗めの照明で顔の半分だけ明るくしてとか,あるじゃない!

田畑氏:
 それはちょっと限定し過ぎなんじゃないですか(笑)。

原田氏:
 いや,茶化しているわけではないんです。真面目な話,それを求めてる人も多いはずなんですよ。ファンの中にも,あるいはスクウェア・エニックスの中ですら。それを崩すことに抵抗はなかったんですか?

田畑氏:
 ありません。そこは強がりでも何でもなく。

原田氏:
 これは僕が持っているFFのイメージだけど,FFって「これがカッコいいんだ,スタイリッシュってこういうことなんだ」っていうある種の美意識を,ユーザーの側に提示するものだったじゃないですか。その一方で,コミュニティと対話しながら,その反応をみて何かを変えるようなことはしてこなかった。ですよね?

田畑氏:
 そうですね。以前は「俺らが作る素晴らしいFFを,ファンは完成するまで待ってろ!」みたいな感じだったかも(笑)。

FFXVの公式Twitterアカウントより,例のクリアファイル
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原田氏:
 悪い意味ではなくてね。アンチに対しても,クオリティと物量で黙らせるみたいな熱量があった。僕もそれこそがFFだと思っていたし。ところがですよ。2014年の東京ゲームショウでFFXVのトレイラーが発表されたとき,「ホスト4人が高級車で疾走」というイメージがバズって,それに乗っかって公式でコラ素材を配布したじゃないですか。しかも,クリアファイルも作ってましたよね?

田畑氏:
 ああアレ,面白いんですよ。どんな書類を入れても,全部コラージュに見えるっていう(笑)。

原田氏:
 それで僕も思わずコラ画像を作ってしまったわけだけども(笑)。でも,こういうネタ方向の盛り上がり方って,今までのFFのスタイルでは,恐らく許されなかったと思えて。

田畑氏:
 うーん……そうかも知れないけど,それを破ることがタブーだとも思っていなかった。

原田氏:
 そこなんですよ。そこだけ聞くと,この人はひょっとして天然なのかとも思えるんだけど(笑)。

田畑氏:
 いやいや,天然じゃないです。あれはちゃんと意味があって,ローンチまでにファンを増やしていく,“線”のアプローチがしてみたかったんです(関連記事)。ああやって素材にして遊んだら,発売前なのに,自然とキャラに親しみが湧いてきますよね?

原田氏:
 その方法論は分かるんです。僕だってもう,あのホスト君達には親しみが湧いていますからね。でも,それを嫌がるファンだって確実にいます。あるいは口にこそ出さないまでも,これまでと違うやり方やファンとの接し方に対して,「大丈夫かな?」って不安に感じる人もいる。

田畑氏:
 ええ,ネガティブなフィードバックもいっぱい来ました。ああ,これがFFっていうIPの歴史なんだって,そのとき改めて思いましたね。ただそれと同時に,「FF病」にかかったままの人が,ファンの中にもいっぱいいるんだってことに気が付いた。

4Gamer:
 FF病,ですか?

田畑氏:
 スクウェア・エニックスの社内にいる,自分のFF観でしか物事を考えられなくなってしまった人達のことです。その根っこにあるのは強烈な自己肯定で,チームの勝利条件よりも,自分のFF観を優先してしまう。そのFF観を満たせてないと,FFとしてダメだと思い込んでいる。「FFは特別なゲームで,それを作っている自分達も特別なんだ。FFの新作が出たら皆が食い付くはずだ」って,どこかで思っている。でもそんな現実,あるわけないじゃないですか。

原田氏:
 なるほど,それでFF病。それは解りやすいですね。

田畑氏:
 それで,「俺たちは特別な存在じゃない。早く目を覚ませ」って,チーム内で諭していた時期があったんですけど。でも,FFXVの情報を世に出し始めたことで,それが社内だけじゃなかったことに気が付きました。みんながFF病だったんですよ。

原田氏:
 よく分かるお話ですね。僕がやってる鉄拳シリーズでも,システムやストーリー,キャラクターのラインナップなどで大きな改革を行ったら,やっぱり「こんなの鉄拳じゃない!」っていう反発が少なからず出てきます。

田畑氏:
 そういう現状維持を求める人達の声って,ものすごく強く大きいですよね。ディレクターの交代を発表したときとか,すごかったです(笑)。でもだからこそ,FFの現状に対する危機感を,より強く持つようになりました。ここでシリーズを近代化しておかないと,終わってしまうだろうと。

4Gamer:
 これまでの何度かのインタビューでも,田畑さんは「FFらしさとは何か」という質問に対して,「AAAタイトルであること」と答えてらっしゃいましたよね。その意図は,よく分かります。ただ,ファンが考える“FFらしさ”って,恐らくそういうことではない気がするんです。

田畑氏:
 きっと,そうなんでしょうね。FFXVはオープンワールドだって発表したときも,「オープンワールド? ふざけんな!」って言われまくりましたから。自身の思い出をベースとしたFF観と,ズレているということですよね。

原田氏:
 オープンワールドにするって聞いたとき,僕はすごいことやるなって思ったけどな。だって,FFシリーズのこれまでのウリって,物語だったわけじゃないですか。しっかりと構築された世界観の中に,一本スジの通ったストーリーがあるっていう。オープンワールドにするってことは,それを捨てるということじゃないですか? プレイヤーごとに体験に差が出てくるわけだから。勝手なイメージですが,いわゆる“JRPG”にとって,それはあってはならないことのように思えるんだけど。

田畑氏:
 ああ……この対談,面白いですね(ニヤリ)。

(一同笑)

田畑氏:
 まず,はっきりさせておきたいのは,FFXVは「完全なオープンワールドではない」ってことです。中心となるストーリーが失われたわけではなくて,その間をつなぐ部分にオープンワールドの技術を使っている。

原田氏:
 つまり,確固としたストーリーラインは用意されているけれど,遊び方には幅があると?

田畑氏:
 ええ。“誰が遊んでもまったく同じ体験になる”というのは,ゲームとしての発展性に欠けているように思うんです。ゲーム開発って,作る方は死にものぐるいで作ってるワケじゃないですか。せっかく世に出すわけだから遊び尽くしてほしいし,そのゲームでしか味わえない体験をしてほしい。

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原田氏:
 JRPGというキーワードについてはどうですか? 僕としては,「オープンワールドにするなんて,FFXVはJRPGへのアンチテーゼをテーマに掲げているのか?」とも思えたんですが。

田畑氏:
 まったく考えてなかったですね。僕にとっては,古典的な手法で作られたRPGってくらいの認識で,自分には関係のない言葉だと思っていました。そうこうしてるうちに,ウチの社長(松田洋祐氏)が「JRPGを増やしていく!」なんて言いだして,「もしかしたら俺が作ってるのもJRPGなのか」なんて思ったくらいです。

原田氏:
 なるほど。でもそれなら,田畑さんのRPGの原体験ってどこにあるんですか。今の話しぶりから,まずFFじゃないってことは分かったけど(笑)。

田畑氏:
 ドラクエです。ドラクエ大好き!

原田氏:
 いやいや,それはないでしょ? 田畑さんのイメージからして。

田畑氏:
 ちょっと! 勝手に決めないでくださいよ(笑)。まあ,作り手側が用意したもので埋めつくされたものよりは,もう少しプレイヤーに選ぶ余地があるほうが好きですね。「ウルティマ」とか「ウィザードリィ」とか。原田さんはVRやってますけど,ウィザードリィみたいなのってVRでできないんですか? 2Dの世界に入れるVRです。ちょー見てみたいんですけど!

原田氏:
 ちゃんとお金かけて作れば,面白いかもしれないですね。

田畑氏:
 ……っていうくらい,ウィザードリィは好きでした。あと,オープンワールド絡みで言うと「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が好きです。目的地に向かって移動するだけで世界が感じられる,それだけでゲームになることに気付かせてくれたタイトルです。

原田氏:
 じゃあそれを踏まえたうえで,田畑さんにとってのFFってなんなんです?
 
田畑氏:
 「常に挑戦者である」ってことですかね。そもそもFFって,ドラクエへの挑戦として生まれてきた作品じゃないですか。「本場のハイファンタジー要素を取り入れて,かつ大人向けに天野喜孝さんのイラストを持ってきて,サイドビューでモダンな戦闘もやっちゃいます」みたいな。

4Gamer:
 ああ,それは確かに。

田畑氏:
 だから,皆さんが言うようなスタイリッシュさとかカッコ良さって,全部まだそういうものが無い時に挑戦したから出来たものですよね。FFVIIだってそうです。あれは当時の最先端――3Dグラフィックスへの移行と未曾有の開発規模に挑戦したからこそ,海外で神格化されるまでに至ったわけで。

原田氏:
 かつてのFFVIIのような,皆が知っている姿に戻したいわけだ。

田畑氏:
 そうです。少なくとも,「FFって凄いよね。……でも,いまいくつまで出てるんだっけ?」って言われないようにしたいです。AAAタイトルを目指すということは,裏を返せば今はAAAのレイヤーにはいないってことですから。

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