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[SIGGRAPH ASIA]東大出の研究者が解説。「FFXV」における物理シミュレーションの仕組みと,ゲーム業界の楽しいところ
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印刷2015/11/04 19:05

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[SIGGRAPH ASIA]東大出の研究者が解説。「FFXV」における物理シミュレーションの仕組みと,ゲーム業界の楽しいところ

講演を担当したWitawat Rungjiratananon氏(アニメーションR&Dエンジニア,スクウェア・エニックス)
 兵庫県・神戸コンベンションセンターで開催されている「SIGGRAPH ASIA 2015」の初日である11月2日,ゲーム開発に特化した「R&D in the Video Game Industry」ワークショップの中で,「FINAL FANTASY XV」(PS4 / Xbox One以下 FFXV)の物理シミュレーションを解説するセッション「Physics Simulation R&D at SQUARE ENIX」が開かれた。
 講演者は,スクウェア・エニックス アニメーションR&DエンジニアのWitawat Rungjiratananon(ウィッタワット・ルンチラタナーノン)氏である。本稿では,セッションの概要をレポートしよう。
 なお,本稿で掲載しているセッションスライドは,SIGGRAPH ASIAメディア事務局の撮影許可を受けて掲載していることをお断りしておく。

 Rungjiratananon氏は,東京大学を経てスクウェア・エニックス アドバンスドテクノロジーディビジョンに合流し,現在は,Luminous StudioやFFXVにおける物理シミュレーションの設計と開発に関わっている人物だ。氏は,東京大学でも物理シミュレーションやアニメーション技術を専門としてきた研究者という経歴の持ち主であり,同じテーマであっても,学術界とゲーム業界では勝手が違う部分が多かったようだ。そのため講演も,学術界からゲーム業界に飛び込んで感じた感想を交えながら,FFXV開発プロジェクトで自身が携わった技術を紹介するという,ユニークな構成で進められた。


学術界とゲーム業界〜研究に対する文化の違い


 まず,Rungjiratananon氏は,学術界とゲーム業界とでは「研究開発のあり方」がまったく異なっていることから話を始めた。
 学術界は,なにか研究したい,解決したいテーマを選択し,その研究結果を論文として発表するという「モチベーション主導」の世界であると,Rungjiratananon氏は述べる。

学術界は,モチベーション主導で研究開発が行われる
FINAL FANTASY XV

 一方のゲーム業界は,開発中のゲームで表現したいテーマがまずあって,それを実現するために既存の論文を参考にしながら新たな技術を開発し,ゲームやゲームエンジンに搭載していく「成果物主導」の世界であると,Rungjiratananon氏は感じたという。ゲーム業界における研究成果が論文として発表されることもあるものの,論文を発表することが目的ではなく,あくまでもゲームに実装することが目的というわけだ。

ゲーム業界では,成果物主導で研究開発が行われる
FINAL FANTASY XV

 Rungjiratananon氏は,ゲーム業界特有の研究開発の特徴のひとつに「デザイナー(アーティスト)の存在」を挙げる。
 ゲーム業界の場合,いくら素晴らしい技術が開発できたとしても,成果物を制作するのはアーティストであり,エンジニアチームが開発した新技術をアーティストが使いやすいようにしなければ,それを結果(=ゲーム)に反映できない。そのため,開発した新技術を使うためのユーザーインタフェース(の使いやすさ)にも気を配る必要があり,アーティストの要望に応えていく努力も必要であると述べていた。

開発した新技術は,アーティストに使われることによって初めて生きる
FINAL FANTASY XV

 また,物理的に正しくないことでも,表現したい表現ができればそれが“正義”となる点も,学術界とは異なる部分だとRungjiratananon氏はいう。
 ゲームにおいては,それっぽく見せるためにインチキやフェイクを導入しても許されるのだ。物理的な正しさだけがすべての学術研究分野とは,そこが大きな違いであると,Rungjiratananon氏は語っていた。

 リソースに対する制限の厳しさという問題も,ゲームにおける技術には付いて回る。ゲームは,開発した技術をリアルタイムで動作させる必要があるわけだが,CPUやGPUの演算リソースは,その技術のためだけに使えるわけではない。AIやグラフィックスなど,他の要素と演算リソースを共有しながら使う必要がある。つまり,開発した新技術は,演算リソースを使う他のゲーム要素と同時に動かしても,実用できるものでなければならないということだ。

ゲーム業界での「新技術開発」は,物理的な正確さを探求しているわけではなく,説得力があったり,格好良く見えれば十分とされる
FINAL FANTASY XV

 こうして話を聞いていると,ゲーム業界における新技術開発は,いろいろな制限がある中で取り組まなければならないことが,改めて見えてくるだろう。


FFXVにおける布シミュレーションと毛髪シミュレーション


 続いての話題は,FFXVに導入された物理シミュレーションについてだ。まず,Rungjiratananon氏は,FFXVにおける「布シミュレーション」(Cloth Simulation)を説明した。

布シミュレーションは,頂点ベースにするか,ボーンベースにするか。FFXVでは後者を選択した
FINAL FANTASY XV
 布シミュレーションを実現する手法としては,対象となる布モデル――たとえば衣服――の低ポリゴン版モデルを生成しておき,その頂点単位でシミュレーションを行わせるといったやり方がある。しかしFFXVでは,キャラクターの動きに翻弄される布の挙動を,物理的な正確さは多少犠牲にしつつ,アーティストがイメージするとおりの動きにするために,布モデルにボーンを仕込んで「ボーンベースの物理シミュレーション」を行わせる手法を採用したそうだ。
 この手法を選んだ理由には,「スクウェア・エニックスのアーティストは3Dモデルにボーンを仕込むことに慣れていた」(Rungjiratananon氏)という点もあるという。

アーティストが動かしたいように動かせる要素も,用意しておかなければならなかったという
FINAL FANTASY XV

シミュレーション結果と,アーティストの手による仕込み演出とのバランスを取るための仕組みも導入された
FINAL FANTASY XV
 実際のFFXVでは,物理シミュレーションによるリアルな結果と,アーティストの演出主導のフェイクな動きのバランスを取りながら表現できるように,ボーンの動き制御パラメータに「0.0:ソフト」「1.0:ハード」といった正規化パラメータを導入しているそうだ。また,事前に用意した手付けのアニメーションに,ボーンベースの物理シミュレーション結果を合成できるような工夫も盛り込んでいるという。

 毛髪シミュレーションにも,アーティストの演出意図が反映されやすい仕組みが導入されている。
 毛髪シミュレーションの場合,風に髪がなびいたり,激しい戦闘アクションで翻弄されたりするような,柔らかい毛髪の動きを実現したくなる。一方で,「キャラクター固有のアイコン」でもある派手な髪型を崩したくないという「ヘアスタイルの維持」も要求されたため,布シミュレーションと同様に,ボーンベースで毛髪の挙動をシミュレーションする仕組みを実装した。

毛髪は物理シミュレーションでリアルに揺らしたいが,キャラクターの髪型は崩しすぎたくない。FFXVでは,アーティストからの相反する要求に応える必要があった
FINAL FANTASY XV

 シミュレーションによる毛髪の動きとヘアスタイルの維持の両立は,毛髪に対して,「毛髪を柔らかくする拘束条件」と「毛髪を硬くする拘束条件」を臨機応変に制御できる仕組みを導入することで対応したと,Rungjiratananon氏は説明している。

毛髪を柔らかくしたり硬くしたりを,臨機応変に変更できるシステムを実装した
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 このシステムを使うと,キャラクターが静止している状態に近ければ,ヘアスタイルを維持できるように毛髪は硬くなり,派手に動いているときは,ヘアスタイルが崩れて毛髪がシミュレーションに従いやすくなるといった制御が行えるのだ。現実であれば,毛髪は荷重移動や風によって,髪型などお構いなしに動いてしまうわけだが,ゲームの場合はキャラクターとしての見栄えが重要視されるので,見栄え優先で毛髪の動きが物理法則を無視できるようにしたほうが適切ということだろう。

キャラクターの都合によって毛髪は「ヘアスタイルが維持される硬い髪」になったり,「揺れる柔らかい髪」になったりする
FINAL FANTASY XV FINAL FANTASY XV


FFXVにおける風と草木の表現


 FFXVは,オープンワールドを舞台にしたゲームであるため,「風」も重要な表現要素となる。そこでFFXVでは,「影響範囲」「3Dの向き」という要素を持った波動関数を,レベルデザイナーがゲーム世界の任意の場所に設定して「風」を吹かせることが可能な仕組みを実装した。

FFXVでは,プロシージャルっぽく見えないような風の表現を目指した
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 「波動関数を設定する」といっても,そのままではアーティストが設定データを作るのは難しい。そこで最終的には,レベルエディタ上で風の吹き具合をグラフィカルに作り出せるインタフェースをエンジニアチームが開発して,アーティストに提供したそうだ。

波動関数を設定しろといっても,そのままではアーティストが作業できない
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風パラメータを,グラフィカルUIでアーティストが直観的に設定できるような仕組みを開発した
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 さて,このような仕組みによって実現された風でなびく草木は,一見すると枝葉や茎があるように見えるが,実際には板ポリゴンに草木テクスチャを貼り付けたビルボード(書き割り)のようになっているという。
 では,ビルボードでどうやって「なびく」表現を実現したのか。Rungjiratananon氏は,「風の影響を受けて曲がる度合い」を色の濃淡で表せるようなインタフェースを作成して,視覚的に設定できるようにしたと説明する。設定の単位は頂点単位で,頂点カラーとして設定しているという。具体的には,濃い色が設定された頂点ほど,風の影響を受けて動きやすくなるというようなイメージだ。
 また,ビルボードが風でなびいたときに,どれくらい伸縮するかの上限も設定できるという。いくら風が強いからといって,草木はびよーんと伸びはしないので,伸びすぎないようにする抑制の仕組みを設けたわけだ。

板ポリゴンで表現されている草木ビルボードのなびき具合や伸び抑制を,グラフィカルに設定できるようにした
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 なお,風による動きが規則的すぎるとウソっぽいことがバレるため,波動関数から生成される風の強弱や向きなどに,ノイズを付加する仕組みを導入したり,風の強弱を「ひと固まりのテクスチャ」として与えられるようにしたりもしたそうだ。たとえば,「V字状に分布する濃淡テクスチャ」を与えて風を広大な草原で吹かせると,草原がV字型になびいていく表現が可能となる。

波動関数にノイズを与えることで,風の吹きかたが規則的になりすぎないようにした。だが,それでも不十分な局面はあるとRungjiratananon氏
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そこで,風の強弱を立体的に表すために,濃淡テクスチャで強弱を設定できるようにした。これにより,テクスチャで与えたボリューム形状で草木をなびかせることが可能に
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 繰り返しになるが,草木はビルボード表現になっているので,枝があるように見えても実際は板ポリゴンだ。傾いてなびくといっても,板ポリゴンが傾いて揺れるだけなので,草木による陰影の出方に変化はない。そこでFFXVでは,風でなびいて傾く草木ビルボードをライティングするときに,草木ビルボードの法線ベクトルを回転,摂動させるアニメーションも盛り込んでいるという。

風になびく草木の陰影が複雑に変わる表現を,法線の摂動や回転で実現した
FINAL FANTASY XV
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 手法としては完全なフェイクなのだが,風で揺れるたびに法線の向きが摂動するので,そのたびに草木ビルボードのライティング条件が変わることになり,陰影が変化する。これを遠目に見ると,枝葉が複雑に向きを変えて動いているかのように見えるのだ。なかなかうまいやり方である。


研究者から見た「ゲーム業界の楽しいところ」


 セッションの最後にRungjiratananon氏は,スクウェア・エニックスでのFFXVの開発を通じて「ゲーム業界の楽しいところ」を総括した。

Rungjiratananon氏が考える,ゲーム業界の楽しいところ
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 ひとつは,異種混合環境での開発が行えること。最新の大作ゲームは,物理や数学,AIに光学など,さまざまなコンピュータサイエンスが組み合わさって成り立っており,研究テーマとして非常に挑戦のしがいがあるというのだ。
 また,下地には硬派な科学技術がありながら,そこにさまざまなフェイクやトリックを織り重ねることにより,リアルを超越した「高い説得力のある仮想世界を作り出す」ことに,ゲーム開発ならではの魅力を感じるとも述べていた。

 そのほかにも,「トップアーティストが制作した高品位なキャラクター3Dモデルを使って,さまざまな技術的実験が行えることも楽しい」「あらゆる分野の優秀な人が,それぞれの専門分野の知恵を出し合って,ひとつのコンテンツ制作に力を合わせていく過程も楽しい」など,スクウェア・エニックスで働くことの楽しさを熱く語って,Rungjiratananon氏は講演を締めくくった。

FINAL FANTASY XV 公式Webサイト

SIGGRAPH ASIA 2015 公式Webサイト


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