連載
インディーズゲームの小部屋:Room#269「The Bridge」
気づけば,今年もあっという間に2月が終わろうとしていることに驚きとまどっている筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第269回は,鉛筆で手書きしたような独特のグラフィックスと,エッシャーのだまし絵風のステージが特徴的なパズルゲーム「The Bridge」を紹介する。子供の頃の一年って,もっと長かったんだけどな……。
本作は,なぜかヘンテコな異次元空間になってしまった家の中を,一部屋ずつパズルを解きながら探検していくという内容。だまし絵風のパズルゲームといえば,本連載の第267回で「Antichamber」を紹介しているが,一人称視点のAntichamberに対し,本作は真横から見た2Dのアクションゲームになっている。おかげで3D酔いはしなくなったものの,パズルのややこしさは折り紙つきだ。
主人公はひげを生やしたおじさんだが名前は分からず,ストーリーも不明。タイトルに“The Bridge”とあるとおり,この不思議な空間は,さしづめ夢と現実の架け橋といったところかもしれない。何はともあれ,各部屋には一つ,出口となる扉があり,鍵を手に入れて主人公を扉のもとに導けばステージクリアとなる。
基本操作は,A/Dキーでキャラクターを左右に移動させるだけと簡単で,さらに方向キーの左右で画面(=ステージ)をぐるぐる回転できる。本作では基本的に画面下に向かって重力が働いているため,ステージを回転させると,それに伴って壁や天井だったところが床になるというわけ。これだけなら,比較的よくあるパズルゲームだが,ステージがエッシャーのだまし絵や,本作のアイコンのモチーフにもなっている“ペンローズの三角形”のように,現実には不可能な形でねじれているのが大きな特徴だ。
言葉では非常に説明しにくいが,例えるなら,画面を回転させながら床だと思っていたところをてくてく歩いていくと,いつのまにか構図の裏側の面に出てしまう,といったイメージだ。Antichamberでは,こうしたあり得ない図形を一人称視点で演出しているため,個人的にかなり3D酔いに悩まされたが,2D画面になった本作では,よりエッシャーのだまし絵っぽい雰囲気になり,遊びやすさも増している。しかし,画面は見やすくなったもののパズルの難解さは負けず劣らずで,画面を回転させながら,思わず自分の首まで傾けてしまう。いったい全体,どこがどうつながってるのさ!?
一部のステージには鍵と扉のほか,いかつい顔がついた大きな鉄球があり,これが本作におけるお邪魔キャラクターということになる。うかつにステージを回転させ,ゴロゴロ転がってきた鉄球に押し潰されたり,床がないところから主人公や鍵が落下したりするとミスになるが,こんなときはSpaceバーを押して時間を巻き戻し,失敗する前からやり直せるのが本作のもう一つの特徴だ。この巻き戻し機能はなかなか優秀で,Spaceバーを押し続けると,それまでの動きがどんどん逆回し再生され,そのままステージ開始時まで遡れる。
この巻き戻し機能を使っても一筋縄ではいかない本作だが,先のステージに進むにしたがって,吸い込まれると脱出できない重力の渦や,自分の動きを止めて鉄球だけに重力が働くようにする装置などの新たなギミックが登場するようになり,ますますややこしいことに。うう,もうダメ。頭パンクしそう……。とはいえ,じっくり考えてトライ&エラーを繰り返せば筆者でもどうにかクリアできたので,パズルゲーム好きの人はぜひ挑戦してみてほしい。そんな本作は公式サイトのほか,SteamとGamersGateで14.99ドルにて発売中だ。
■「The Bridge」公式サイト
http://thebridgeisblackandwhite.com/- この記事のURL:
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