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話題の立体視ディスプレイ続々,ゲームの未来とちょっと関係あるかもしれない「3D&バーチャルリアリティ展」レポート
ざっとした印象で述べても,出展数が増えて会場は賑わいを見せていた。昔はごく限られた業界のためのイベントだったので,ゆったり見て回れたものだったのだが,今年は朝から妙に人が多い。テレビを中心とした,立体視対応の流れは確実にあるようだ。この展示会について言えば,はるか昔からそういう分野を専門にしていたわけだが,展示会の名前から「産業用」という単語が落ちるくらいには一般化しつつある。
さて,名前が変わっても,内容は大きくは変わらない。立体視対応ディスプレイやモーションキャプチャ,地図情報,立体計測,代替現実系,シミュレータ系,各種オーサリングツールなどが中心だ。今年は,立体視対応テレビの影響か,立体視対応放送技術で,要するにどんなカメラを使うのか,どうやって編集するのかといった部分も少し目立っていた感じだ。
富士フイルムの立体デジカメFinePix REAL 3Dを使って,3D形状を入力するツール |
ソニーのハーフミラーを使った業務用立体視カメラ |
立体視ディスプレイあれこれ
デザイン用などでクオリティを求めてか,ディスプレイ2面の映像をハーフミラーで合成する方式を使ったTrue3Diをあちこちで見かけた。また,いくつかのブースでは,立体視表示でNVIDIA 3D Visionが使われていた(おそらくグラフィックスカードはQuadroなのだろうが)。現状ではコストパフォーマンスに優れた立体視ソリューションなのだろう。
ということで,不確定要素がまだまだ多いのだが,どんな見映えになるのかを撮影してきたので頑張ってご覧いただきたい。例によって裸眼立体視平行法である。
シャープブースの隣では,ニューサイトのディスプレイで立体視対応映画を一躍有名にした「AVATAR」のデモリールが流されていた。
展示されていたニューサイト製ディスプレイは8視差の表示に対応しており,要するに,7方向から見た映像が同時に表示できる製品だった。正面にいる人だけでなく,ちょっと斜めの位置にいる人にも立体で見える。しかもちゃんと斜めから見た状態の映像が再現されるというシステムだ。
しかし,今年の展示は,多方向視差を使ったものではなくて,2視差の立体映像を多くの方向で立体に見えるように表示するというものであった。
AVATARもそうであるが,最近制作される映画には立体視対応のものが増えてきたのは,ご存じの人も多いだろう。そのような映像ソースをニューサイト製のディスプレイで表示しても,実はあまり嬉しくない。映像は2視差分の情報しか入ってないので,8視差を扱えるディスプレイにとっては役不足である。ちなみに,2視差の映像を斜めから見た複数の映像に変換してやるという技術もあり,それは視差変換と呼ばれているのだが,今回展示されていたのは別のものだ。
見る角度に応じた映像が見えるというのが多段視差の醍醐味ではあるのだが,あえて同じ立体視映像を多方向で見えるようにするというのが,今回の展示であった。立体視対応映画を,メガネをかけずに,多くの人が同時に楽しめるディスプレイというのは,現状でもっとも求められている製品かもしれない。
とはいえ,2視差の映像を単純に8視差分に分配していくと,角度によっては左右が逆転してしまうことがありそうなのでちょっと確認してみたのだが,逆転は発生しないようになっているとのことだった。実際にディスプレイをいろんな角度から見ても,不思議なことにとくに破綻はない。途中の視差を間引いて6視差分で8方向に対応というのなら分からなくもないのだが,微妙な角度から見ても大丈夫だったような気もする。なかなか謎の技術であった。
ディスプレイ自体が,4色を使った色の鮮やかさをウリとしている最新のAQUOSクアトロンをベースにしており,とくに明るさが強調されていた。
4色化は,単位面積あたりの画素が3個から4個に増え,1画素あたりは小さくなるので,単純にやると暗くなるとのことなのだが,4色化以前の段階で液晶の開口率を大幅にアップしていたから実現できたのだという。通常の半分以下の明るさしか確保できない液晶シャッター方式の立体視表示システムでは,明るいということは無条件に利点となる。
液晶の反応速度には自信を持っているようで,クロストークの少なさは業界で一番だとの評価をもらっているとのこと。それでも左右画面のクロストークは,数%発生しているとしていたあたりは,なかなか正直だ。
それでも切り換え時に多少時間差は出るのか,そのあたりは黒画面を挟むとか液晶シャッター側の開放時間を調整するなど,各社それぞれの工夫はしているとのこと。
モーションキャプチャの新しい形
Stageは,背景のない専用の空間に14台のカメラを設置しておき,中に入った人に対してキャリブレーションを行えば,とくにマーカーなどを付けることなくモーションキャプチャができるというもの。おそらく人間以外の形だと認識してくれないのだろうが,画像認識で動きを解析する手法だ。
この機器はカメラレスかつワイヤレスなので,どこでも使用できるなど,通常のモーションキャプチャスタジオでは取れないようなモーションも記録できるのが最大のウリだ。ムービーでは,スカイダイビング中の動きやスノーボードやフィギュアスケートの動きを録る例が示されていた。
身体中に17個のセンサーを付ける必要があるのだが,それさえ付けてしまえば,上に服を着こんでも問題ない。面白い使い方のできそうな機器である。
時代の流れか,立体視関係が元気だ。立体視ディスプレイの普及という思いもよらないことが現実になりそうな昨今だが,あちこちの家電量販店に設置された立体視テレビの体験コーナーを覗くと,普及はまだまだ先かなという気配もある。たいていの体験コーナーでは長蛇の列になっており,興味を持っている人の多さを感じさせるものの,メガネなしではできないのかなどと聞いている人も多々見られた。そして,見終わったあとに,「目が疲れた」という人が多い。120Hz以上での液晶シャッター方式は目が疲れるほどにはちらつかないものの,こういった場所での立体視のデモでは,必要以上に立体感を出そうとしており,きつめの視差が設定されていることが多い。ある程度慣れてないと目に負担がかかるのはしかたがない。とはいえ,短時間ならさほど疲れないと思うのだが,こういうものは目が疲れるものだという思い込みのある人も多いのかもしれない。
ちなみに,今回の展示会では,シャープやソニーの展示などは控えめな視差で設定されていたように思うが,それで十分な効果なのだ。市販品だと,フジフイルムの立体デジカメも必要以上に視差が大きくしてあって,以前聞いた話だと,立体感を強調するためにカメラの間隔をちょっと広めにしているのだそうだ。一般の人に立体映像をアピールするのに懸命なのはよく分かるのだが,逆効果になっている可能性は否めない。
もっと自然に見える立体視で,多くの人に受け入れられるプロモーションを目指してもらいたいところである。
http://www.ivr.jp/
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