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Access Accepted第448回:2015年はPCゲームにとって転機の年になるのか?
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印刷2015/02/02 12:00

業界動向

Access Accepted第448回:2015年はPCゲームにとって転機の年になるのか?

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 ここ数年,市場規模を縮小させてきたPCゲームだが,最近,再び活気づいてきたようだ。というのも,2015年1月に,ゲーマーにとって気になる機能を盛り込んだWindows 10が発表され,さらに――どちらも年内の発売が正式に発表されたわけではないが――Valveの「Steam Machine」や,Oculus VRのVR対応ヘッドマウントディスプレイ「Rift」が登場を控えている。もしかするとこの2015年は,PCゲームにとって大きな転機の年になるのではないだろうか。


Windows 10発表によって動き始めたPCゲーム市場


 北米時間の2015年1月21日,Microsoftはワシントン州レドモントの本社でイベントを開催し,Windows 10を正式に発表した。Windows 7/8.1またはWindows Phone 8.1のユーザーは,発売後1年間は無料でWindows 10にアップグレードできるという,これまでのMicrosoftではあまり例のない施策が用意されており,これによりWindows 10の普及を一気に進めたいという強い意図が窺える。

 Windows 10ついては,1月22日に掲載した記事で説明しているので,詳しくはそちらを参照してほしいが,ゲーマーにとって気になる新機能が数多く用意されているという印象だ。新たに搭載される「Xbox App」は,基本的にXbox Liveの機能をWindows 10で実現するもので,フレンドとのコミュニケーションがより容易になったりするが,それだけではなく,例えば「DVR機能」を使うことで,プレイ中のゲームの模様を録画したり,「Fable Legends」などの専用タイトルに限られるものの,PCとXbox Oneでのクロスプラットフォーム対戦ができたりする。このように,さまざまな点でゲーマーにとって注目すべきOSになっているのだ。

デバイスや用途による名称の違いはなく,すべてWindows 10として統一されることになるMicrosoftの次世代OS。現実世界に仮想の3Dイメージを投影する新デバイス「Microsoft HoloLens」も気になるところだが,DirectX 12やXbox Appなど,Windows 10にはゲーマー向けの機能が目白押しだ
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 また,DirectX 12の搭載も重要な点だ。Windows 7に実装されたDirectX 11以来,実に6年ぶりのナンバリング最新版になるDirectX 12は,古くなったDirectXの土台を新たに作り直したもので,マルチコアCPUやGPUをより効率的にコントロールすることで,同じスペックのPCでも最大50%程度のパフォーマンス向上が実現されるという。

 1995年のDirectX 1以降,ほぼ毎年のようにアップデートが行われてきたDirectXだったが,2002年のDirectX 9から2007年のDirectX 10までは,大きな間隔が空いている。2002年は,MicrosoftがXboxでコンシューマー機市場に参入した年であり,アップデートの停止は,ハードウェアが固定されたXboxやXbox 360とPCとの間でグラフィックス機能に大きな違いが生まれることを嫌ったためではないかという憶測さえ生んだ。
 コンシューマ機に力を入れ,PCゲームを顧みないようにも見える同社のこうした態度は,ゲーム開発者から「PCゲームの進化を阻む張本人」と批判され,一時はグラフィックスAPIを「OpenGL」にしてしまおうというような動きも起きた。

 それ以降も,Windows 8でDirectX11.1,Windows 8.1でDirectX 11.2と,小刻みなアップデートを繰り返してきたわけだが,それだけに今回の「DirectX 12」のリリースは,最高のグラフィックスをゲーマーに提供したいというPCゲームの開発者やゲーマーにとって朗報になる。

これは「UnrealEngine 4」を使って開発が進められている「Fable Legends」のテクノロジーデモで,DirectX 12が使われている。「こちら」で視聴できるので,興味のある人は見てほしい
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2015年は,PCゲームにとって転機の年になる?


 Windows 10とDirectX 12の説明が長くなってしまったが,2015年をざっと眺めてみると,このほかにもPCゲーマーにとって興味深い話題がいろいろある。

「Windows 10」に標準搭載される「Xbox App」だが,DVRやストリーミングといった機能が気になるところ。Game Developers Conference 2015やE3 2015での公開に期待したい
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 まず注目したいのが,Oculus VRのVR対応ヘッドマウントディスプレイ「Rift」だ。具体的な発売日については正式発表されていないが,2014年3月にFacebookによって買収される以前には,「2015年の春から夏頃の発売が目標」であると発表されており,年内発売の可能性は高い。
 1月10日に掲載したインタビューでも,Oculus VRの副社長であるネイト・ミッチェル(Nate Mitchell)氏が,プロトタイプ機として第3世代にあたるコードネーム「Crescent Bay」の仕上がりに相当な自信を見せており,詳しいことは3月にサンフランシスコで開催されるGame Developers Conference 2015あたりでアナウンスされそうだ。

 同じウェアラブルデバイスとしてMicrosoftが発表した,「Microsoft HoloLens」も2015年内のリリースが予定されている。「Microsoft HoloLens」は,現実世界に3Dの仮想オブジェクトを重ねて表示するもので,没入型の「Rift」より「Google Glass」のほうが比較対象としては分かりやすいだろう。
 発表イベントでは,現実のリビングルームを「Minecraft」の世界と重ね合わせた映像が公開されていたが,このほかにもバーチャルキャラクターを現実世界に登場させたり,ゲーム画面を壁に映し出してディスプレイなしでプレイしたりといった利用が想定されている。
 Riftとは基本的な仕組みが異なるものの,コンテンツや価格,サポート状況によってはRiftに注目していたユーザーが目移りしてしまいそうでもあり,Oculus VRとしてもうかうかしていられないのではないだろうか。

現実の風景とゲームを重ねながらシューティングや恋愛シミュレーションを遊ぶと,なんだかバーチャルとリアルの区別がつかなくなりそうだ。価格や対応コンテンツなど,詳しい情報が待たれる
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 これに加えて,2015年にはValveの運営するオンライン配信システム「Steam」をベースにした「Steam Machine」がリリースされる見込みだ。ご存じのように「Steam Machine」は,Valveが独自開発したLinuxベースの「Steam OS」を搭載した小型PCで,家庭用のHDテレビにつなぐことで,Steamに登録したゲームを遊ぶことができる。
 2014年9月に1億アカウントを超えたと発表され,PCゲームの1つのプラットフォームとして確固たる存在になったSteamだが,Steam Machineは,PCゲームをデスクトップからリビングルームへ浸透させようというチャレンジだ。

 それに対して,Windows 10の「ゲームストリーミング」は,Xbox Oneで動いているゲームをPCにストリーミングし,PCでプレイが可能になるというものだ。Steam Machineとは逆に,リビングルームのテレビが家族に占領されてしまったら,ユーザーはこの機能を使ってPCのある寝室でプレイの続きが楽しめる。
 技術的な根拠は不明だが,今のところXbox One専用タイトルのみがこの機能をサポートしているとのこと。条件にあてはまるものとしては,上記の「Fable Legends」のほか,「Halo 5:Guardians」「Forza Motorsport 6」などがある。


 Windows 10,Rift,Microsoft HoloLens,そしてSteam Machine……PCゲームにからむ環境には,今年,大きな変化の兆しが感じられ,これまであまり明るい話がなかったPCゲームに大きな転機が訪れるのではないかという予感がする。
 個人的な話で恐縮だが,この状況は筆者に,3Dグラフィックカードが登場した1990年代中頃や,オンラインゲームが話題になり始めた1990年代後半を思い出させるものがあり,よく分からないが何か新しい時代がやって来そうだ,というワクワク感が止まらない。2015年がPCゲームにとってどういう年になるのか,結果は数年先にならないと判断できないだろうが,1人のPCゲーマーとしてこれからも注目していきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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