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印刷2014/09/01 12:00

業界動向

Access Accepted第433回:Amazon.comが「Twitch」を買収したのはなぜか

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第433回:Amazon.comが「Twitch」を買収したのはなぜか

 ゲームプレイの模様をライブ配信する「Twitch」が,Amazonに約1000億円で買収されるというニュースが流れてきた。Twichによるライブ配信や,YouTubeにアップされるプレイ動画など,ファンメイドの映像は,今やゲームのプロモーションにおける不可欠な要素となっている。今回は,時代の寵児といえるブロードキャスターやユーチューバーを紹介しつつ,このトレンドについて考えてみたい。


1000億円で買収されたライブ配信サイトTwitch


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 北米時間の2014年8月25日,ライブ配信サイトの「Twitch」が9億7000万ドル(約1000億円)でAmazon.com(以下,Amazon)に買収されることが明らかになった。8月26日に掲載した記事でもお伝えしたように,今回の買収劇の前には,Googleが10億ドルの買収を提示したと報道されるなど,スタートしてからわずか3年しか経っていないゲーマーご用達のTwitchが,どれほど多くの企業から熱い視線を注がれていたのかが分かる。

 Twitchは,ブロードキャスターと呼ばれる一般ユーザーがゲームをプレイする様子を無料でライブ配信することができるというサービスだ。「League of Legends」「Dota 2」「カウンターストライク」など,大規模なトーナメントが行われるようなゲームだけでなく,「ポケットモンスター」「マリオカート8」,さらには「DARK SOULS」「Minecraft」といった作品のプレイ動画が毎日のように配信され,月に5500万人もの人々が鑑賞し,あるいはコメントを書き込むという巨大なゲーム放送局のようなものになっている。

 7月だけでも,約100万人のブロードキャスターが約2.5億時間にも達するコンテンツを配信したとされており,ゲームが上手な人のテクニックを研究したり,攻略の手本にしたり,さらには買おうかどうか迷っているタイトルをチェックしたりなど,使われ方はさまざまだ。ある意味では,「進化した攻略本」と呼べるのかもしれない。

インターネットトラフィックの占有率では,今やAmazonやFacebookを抜く存在になった「Twitch」。AmazonがこのTwitchで何をしようとしているのか,ゲーマーにとって気になるところだ
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 ところで,なぜTwitchはGoogleではなくAmazonの傘下に入ることを選択したのかを疑問に思う人もいるかもしれない。Googleは動画投稿サイトとして圧倒的な存在であるYouTubeを2006年に買収しており,さらにここでTwitchを身内にして,このジャンルを独占しようとするのは,自然な流れだ。
 これについては,経済誌Forbes(電子版)が関係者の話として,「独占禁止法に抵触する可能性が問題視された」と伝えているが,おそらくそうなのだろう。
 さらに,Google以外にも多くのIT企業がTwitch買収に動いていたようだが,最終的に大方の予想を覆してAmazonが買収を成功させることになった。

 今のところ,AmazonがTwitchをどのように活用していくのかについては明らかにされていないが,今回の買収についてAmazonのCEOを務めるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏は,「我々Amazonは常に新しい考えを求めています。Twitchから多くのことを学べると期待すると共に,より早く,新しいサービスをゲーマーコミュニティに提供できるようにしたいと思います」とコメントしている
 Amazonへのリンクでゲームを購入させるといったベタな方法では,1000億円の支出を株主に納得させることは難しい。おそらく,5500万人/月ものユニークユーザーにリーチするTwitchに,Amazonの将来を賭けるだけの可能性を見いだしているはずだ。


ゲーム実況が生んだ新たなスター達


 ブロードキャスターという呼称は,Twitchで活躍する動画投稿者達に付けられたもので,ご存じのようにYouTubeの動画投稿者は,ユーチューバーと呼ばれる。ゲームのライブ配信では独占状態のTwitchだが,ユーチューバー達のゲーム動画もさらに勢いがついている。

 有名な人物としては,YouTubeでは断トツの3000万人というチャンネル登録者数を持つスウェーデン人,「PewDiePie」(ピューディパイ)こと,フェリックス・アルヴィッド・ウルフ・チェルベリ(Felix Arvid Ulf Kjellberg)氏が挙げられる。広告だけで年間4億円を稼ぎ出しているPewDiePieだが,動画の内容は,さまざまなゲームのプレイ映像に自分のリアクションを重ねるというもので,過去5年間で公開された2000本近い動画は,累計で57億回以上も再生されている。テレビ関係者が聞いたら,うらやましくて卒倒してしまいそうな話だ。

さまざまな声色を使ったり,スウェーデン語を織り交ぜたり,スラングを使ったりした動画が多くのゲーマーの人気を集めたチェルベリ氏。日本に滞在したときの動画を公開したこともある
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 24歳になるチェルベリ氏は,一昨年(2012年)末に代理店のMaker Studiosと契約しており,ロンドンにあるオフィス兼自宅から,ほぼ毎日のように動画を投稿している。バグに遭遇して妙な声をあげたり,キルされるたびに大きなリアクションをしたりする様子がコミカルで,超高難度と中毒性で話題になったベトナム産ゲーム「Flappy Bird」が大ヒットした理由の一つも,彼がレビューで何度も失敗する様子が大ウケしたことだとされている。

 最近は,Electronic Artsのスケートボードゲーム「Skate 3」の配信をシリーズ化しており,1回につき1200万回もの再生を記録するほどの人気を獲得するなど,今では,ファンクラブができるほどのゲーム業界のスターになったチェルベリ氏。2010年のタイトルである「Skate 3」だが,彼のムービーがよほどゲーマーに刺さったのか,イギリスではヒットチャートに再登場し,小売チェーンがElectronic Artsに再販を要請する事態にまでなっている。

 チェルベリ氏ほどではないものの,ゲーム実況を行うユーチューバーとして,「Minecraft」のCaptainSparklezや,二人組のLewis&Simonなどもおり,いずれも700万規模のチャンネル登録者数を誇っている。バグを楽しむという,ゲームメディアなどにはできないことも映像化しているが,「Flappy Bird」や「Skate 3」の例を見る限り,彼らのムービーが実際のセールスに深くつながっているのは間違いない。

Electronic Artsから2010年にリリースされた「Skate 3」。スケートボード以外のこともできる,オープンワールドタイプのゲームだが,あえて残されたのでは? とも思えるコミカルなバグも多く,チェルベリ氏がプレイ動画を公開することで,人気に再び火がついた
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 最近,ホラー系タイトルが増えているのも,一つには,プレイヤーのリアクションが分かりやすいので動画が作りやすく,それが拡散することをメーカーが期待しているためだとする穿った意見もあるほどだ。また,「Goat Simulator」のような,一発芸にも似たゲームがヒットするという現象も,立て続けにYouTubeにアップされた同作のコミカルな動画を考えれば説明できるかもしれない。

 TwitchやYouTubeほど好きなことができるわけではないが,こうしたプレイ動画をサポートする動きは,PlayStation 4のシェア機能や,Xbox Oneのプレイ録画など,プラットフォームフォルダーにも広がっている。Twitchのライブ配信を閲覧するゲーマーの約60%がそのゲームを所有していないというデータもあり,ゲーム映像は購入の大きな判断材料になっていると多くの企業が見ているのだ。

 いつの間にか,AmazonやGoogleといった大企業が注目するまでに成長した,ファンメイドのゲーム映像。プロの作るムービーとはまた違ったセンスや面白さが多くのプレイヤーの人気を集めており,タイトルのプロモーションには不可欠の存在になっている。今後,こうした動きはさらに加速していきそうで,Twichを買収したAmazonも含めて,注目していく必要があるだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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