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Access Accepted第422回:GameSpyが5月31日にサービス終了。時代の幕がまた一つ下りる
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印刷2014/05/19 12:00

業界動向

Access Accepted第422回:GameSpyが5月31日にサービス終了。時代の幕がまた一つ下りる

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第422回:GameSpyが5月31日にサービス終了。時代の幕がまた一つ下りる

 オンラインゲームの普及と共に,ゲーマーにさまざまなサービスを提供してきた「GameSpy」が,2014年5月31日をもって15年の歴史に幕を下ろす。1000以上のゲームタイトルに使われてきたGameSpyだけに,その影響は意外なほど大きく,各ゲームメーカーは対応に追われている模様だ。今週は,そんなGameSpyの歴史を振り返ってみよう。


オンラインゲーマーのニーズから生まれた「GameSpy」


 2014年4月,ベテランの海外ゲームファンにはおなじみの「GameSpy」のサービス停止が発表された。これは,GameSpy Technologiesを買収したGlu Mobileが明らかにしたもので,GameSpyの全サービスは,5月31日をもって終了することになるという。

オンラインゲーム好きであれば,たぶん幾度もお世話になったであろう「GameSpy」。この見慣れたロゴとも,もうすぐお別れだ。1000タイトルを超えるゲームを支えるサーバーを運営していたため,サービス停止の影響はかなり大きい
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第422回:GameSpyが5月31日にサービス終了。時代の幕がまた一つ下りる

 多くの欧米ゲーマーの記憶に,起動時に立ち上がる「Powered by GameSpy」というロゴが焼き付いているはずだが,GameSpyの歴史は,1996年にリリースされたid Softwareの「Quake」とともに始まった。リリースされたばかりの頃,「Quake」のマルチプレイは「DOOM」や「DOOM II」と同様,近い場所にあるPCをケーブルでつないで楽しむLANプレイを想定したものになっており,インターネットに対応しているとはいえなかった。

 そこで1997年に登場したのが,サーバーのブラウジングやリーダーボードを表示できるツールとして作られた「QSpy」で,これがGameSpyの前身にあたる。
 QSpyを制作したのは,“Morbid“というハンドルネームで知られるゲーマー,ジャック・マシューズ(Jack Mathews)氏で,プログラム経験のある仲間と一緒になって作られたMODの一種だったが,そこに可能性を見出したマーク・サーファス(Mark Surfas)氏が販売契約を結び,1997年に「GameSpy 3D」というミドルウェアとしてリリースされた。

 Quakeには,それ以前から「QuakeWorld」と呼ばれるアドオンが存在していた。これは,インターネットによるオンライン対戦に対応するためにジョン・カーマック(John Carmack)氏ら,id Softwarenのプログラマー3人が制作したもので,1996年12月に公開されている。このQuakeWorldによって,ダイヤルアップ接続のユーザーでもインターネットでのマルチプレイ対戦が楽しめるようになり,これを機に,オンラインの「ゲームトーナメント」が生み出されていった。

オンラインゲームの遊び方を変えた,1996年の「Quake」。「QuakeWorld」では,当時ダイヤルアップ式のモデムを使っていたゲーマーでも,インターネットを介して別の地域のプレイヤーと対戦できるようになった
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 しかし,QuakeWorldによってインターネットでデスマッチやキャプチャー・ザ・フラッグが楽しめるようになったとはいえ,それはあくまでも「できる」といった程度のものでしかなく,マルチプレイを快適に遊ぶためのサービスは用意されていなかった。
 どうすれば,ほかのプレイヤーがホストしているサーバーに接続できるのか? どうすればインターネットからMODをダウンロードして導入できるのか? 果たして現在の自分のスキルは世界的に見てどれくらいのものなのか? そういったことが,一般のゲーマーにはまだ分かりにくい状況であり,そうしたサービスを用意したのが,GameSpy 3Dだったというわけだ。
 GameSpy 3Dはid Softwareから公式認定も受け,QuakeWorldのアップデートに合わせて多数のプレイヤーに配布されることになった。

 以来,FPSファンを中心にしたゲーマーの支持を獲得し,オンライン対戦の盛り上がりとともに,「Battlefield 1942」「Star Wars: Battlefront」「Arma II」「Civilization IV」,そして「Borderlands」などの有名作品を含む1000タイトル以上のゲームに使われてきた。
 そんなGameSpyが,約15年の歴史についに幕を下ろすことになるのだ。


日本を含め,多数のプレイヤーが重大な影響を受ける


 1999年,サーファス氏はベンチャーキャピタルの投資を得て,GameSpy Industriesを設立し,情報サイトGameSpy.comを立ち上げた。さらに同氏は,プレイヤー向けのサービスとして「Planet Quake」「Planet Unreal」「Planet Half-Life」,そして「3DActionPlanet」「RPGPlanet」など,タイトルやジャンルごとに分けられたサイトを次々に開設し,オンラインコミュニティの形成に大きな役割を果たした。これらのサイトは,まとめて「Planet Network」と呼ばれている。

2012年3月Game Developers Conference 2012でのGameSpyのブース。このあと,GameSpyのアセットはGlu Mobileに売却されることになる
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 2000年にはGameSpy 3Dに続いて「GameSpy Arcade」を開発。ボイスチャット機能が追加されるなど大きくパワーアップされており,ゲームにおけるネットワーク関連のミドルウェアとしての地位を確立した。この頃から,Powered by GameSpyというロゴの表示が行われるようになり,2005年まで,PCやPlayStation 2向けの300近いタイトルに利用されることになった。2007年にはWiiもサポートしており,この頃が絶頂期であったといえるだろう。
 ちなみにサーファス氏のGameSpy Industriesは,2000年にメディア企業大手のZiff-Davisに買収され,2004年にはZiff-Davis傘下のIGNと統合して,IGN Entertainmentのゲーム部門の一つとしてサービスを継続することになった。

 一世を風靡したGameSpyが下降することになったのは,プラットフォームホルダー自らがネットワーク環境を整備したり,オープンソースのネットワークミドルウェアが公開されたりしたことで,ゲームメーカーがGameSpyをライセンスする必要性が薄れてしまったことが大きいだろう。それに伴って,Planet Networkのコミュニティへの影響力も以前に比べて低下していた。

 2011年には,IGNの編集者とGameSpyのスタッフがゲームについてアツく語るポッドキャストをスタートさせて話題になったものの,2012年,IGNはGameSpyのアセットをモバイル向けゲームのデベロッパ,Glu Mobileに売却するという決定を下した。
 Glu Mobileに買われたGameSpyは,これといって有効に利用されることもなく,ミドルウェアの販売やサポートも2013年1月に中止されてしまった。そしてついに,今回のサービス終了が発表されたというわけだ。

 この影響は大きく,各ゲームメーカーは対応に大忙しだ。
 例えば「Arma」シリーズのBohemia Interactiveは,公式フォーラムでアナウンスを行い「Arma II: Operation Spearhead」「Arma 3」はSteamへの移行を行うが,そのほかのタイトルについては,従来のようなサービスは継続できないと発表。また,「Battlefield」や「Medal of Honor」「Command&Conquer」シリーズなどの人気作品を抱えるElectronic Artsは「独自サポートへのオプションを探っている状態」としている。

 Rockstar Gamesは,発売中の「Grand Theft Auto V」には影響はないものの,「Max Payne 3」「Red Dead Redemption」「Grand Theft Auto IV」などでいくつかのオンライン機能が削除されると報道されている
 2月の段階で影響を受ける多数のタイトルを公式サイトで発表した任天堂は,GameSpyのサーバーを使っていた「ニンテンドーWi-Fiコネクション」を,5月20日に終了する予定だ。

古めのゲームを検索していると,右下に「GameSpy」ロゴが表示されたスクリーンショットに行き当たることがある。確かに,最近のタイトルでこのロゴを見かける機会は少なくなっていたかもしれない
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 Activisionのように,影響はないとするパブリッシャもある一方で,Steamなどの他社のサービスへ移行する予定のメーカーや,方針が決まらないのか,発表を先送りにしているメーカーも少なくない。
 任天堂のほか,日本のパブリッシャにも影響はおよんでいるが,ここでは書ききれないので,気になる人は,公式サイトやファンサイトをチェックしてみよう。

 こうした混乱はまだしばらく続きそうで,オンラインゲーマーにとって何度もお世話になってきたGameSpyの幕引きは,少々後味の悪いものになってしまった。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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