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印刷2011/02/07 17:42

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第293回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜 ゾンビ編

奥谷海人のAccess Accepted

 先週取り上げた「西部劇」は,やはり多くの読者にとってなじみの薄い世界だったかも知れないが,これが「ゾンビ」ものになると,かなり身近な存在に感じるはずだ。「Call of Duty: Black Ops」のゾンビモードや「Borderlands」「Red Dead Redemption」のDLCなど,ゾンビの出てくるゲームは多いし,「Left 4 Dead」や「Plants vs. Zombies」になるとほとんど主役級だ。もともとは雑魚モンスターに近かったゾンビ達が,ポップカルチャーにおいて確実に存在感と知名度を上げてきた経緯を追っていこう。

第293回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜 ゾンビ編

 

割と新しいゾンビという存在
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「Dead Space 2」のクリーチャーをゾンビと呼ぶのも違和感があるのだが,甦った死者(ネクロ)が,醜く変形(モーフ)したという設定なので,定義的にはゾンビであるといえそうだ。2011年1月26日にアメリカで発売されたDead Space 2は,夜1人でプレイするのが怖いほどのゲームだが,マルチプレイモードではネクロモーフになって噛み付けるのがイイ

 ゲーム業界でゾンビが大流行という話は,今から2年ほど前に掲載した本連載の第196回「ゾンビとゲームの不思議な関係」で大きく取り上げた。以来,この連載でも何度となく話題にしてきたことだが,アメリカでリリースされたばかりの「Dead Space 2」,現在もヒット中の「Red Dead Redemption」,そして「Call of Duty: Black Ops」のゾンビモードなど,最近のヒット作には必ずといっていいほど,ゾンビ,あるいはゾンビ風クリーチャーがフィーチャーされており,いまだにゾンビの流行は終わっていないようだ。

 もともとゾンビは,コンゴなどで信仰されている神「nzombi」(ンザンビ)に由来しているとされ,コンゴ出身の奴隷によって植民地時代のハイチなどに広まり,やがてアメリカやヨーロッパに伝わっていったという。
 1921年には,怪奇小説作家として名高いH.P.ラヴクラフトが「死体蘇生者ハーバート・ウェスト」という短編小説を書いている。ブードゥ教の伝説にあるように,秘力のあるポーションやパウダーを使って死体を蘇生させる主人公が描かれており,その描写が後のハリウッド映画などのポップカルチャーに大きな影響を与えたとされる。

 第二次世界大戦前のゾンビは,ハリウッド初のゾンビ映画と呼ばれる「ホワイトゾンビ」にあるように,“シャーマンやマッドサイエンティストに操られるゴーレム”といった役どころで,単独で登場する操り人形といったイメージが一般的だった。
 その常識を覆したのが,1954年にリチャード・マシソンが発表した「I Am Legend」だ。病原菌によって吸血鬼のようになった人々が世界を覆い尽くし,たった一人生き残った男が孤独な戦いを繰り広げるストーリーは,“ゾンビ・アポカリプス”とも呼ばれる現在のゾンビ観に大きな影響を与えた。同作は,1964年の「地球最後の男」や2007年の「アイ・アム・レジェンド」など,何度か映画化されている。

 しかし,現在のゾンビ映画やゾンビゲームに決定的な役割を担うことになったのは,やはり1968年に公開された「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」だろう。ハロウィーン向けのB級映画として作られた作品だが,結果的に制作費の30倍ほどの興行成績を収めるほどヒットした本作は,ジョージ・A・ロメロ監督がI Am Legendにインスピレーションを受けて作られたと言われる。この映画で描かれた,手を前に出しながらヨタヨタと歩くゾンビのイメージが決定的なものとなり,現在までにさまざまなゾンビ映画が作られるようになったのだ。

 

ポップカルチャー化したゾンビ
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筆者はまったく目にしたことがないのだが,2010年10月にXbox 360,PlayStation 3,そしてWii向けにリリースされたという音楽ゲーム,「Rock of the Dead」。どうやら,ギターコントローラーを操作してゾンビを倒していくといった「タイピング・オブ・ザ・デッド」タイプのゲームであるらしいが,あまり人気は出なかったようだ

 テーブルトークRPGの草分けと言われる「Dungeons & Dragons」は,4Gamer読者なら,たとえプレイした経験がなくても,そのタイトル名くらいは聞いたことがあるはずだ。「Ultima」シリーズで知られるRichard Garriott(リチャード・ギャリオット)氏は,高校時代に始めてPCに触れたときから,このDungeons & Dragonsをテーマにしたゲームを26作も作り続けたという。
 このように,RPGの世界観やゲームシステムに非常に大きな影響を与えた金字塔的作品としても知られるDungeons & Dragonsだが,第1版である「Dungeons & Dragons "white box"set」(1974年)の最初に出てくるモンスターの一つがゾンビだ。このためなのか,ゲームにおけるゾンビは,長く“雑魚キャラ”というイメージが付きまとうことになってしまった。

 ゾンビをゲームの中心に持ち上げた最初のゲームは,1984年に開発された「Zombie Zombie」だといわれている。イギリスの奇才,Jeff Minter(ジェフ・ミンター)氏も在籍していたゲームメーカー,Quicksilvaが,ZX Spectrumという8bitゲーム機向けにリリースした作品で,「死者が甦り世界を制覇する」という予言を現実のものにしてしまった不運な青年が主人公。
 「Softsolid 3D」と名づけられた,当時としては珍しい見下ろし型のゲーム画面など,見せ場も多いゲームだったが,イギリスを中心としたヨーロッパ以外では発売されなかったため,認知度は低めだ。

 1993年にはLucasArts Entertainmentが開発し,コナミが販売したスーパーファミコン向けゲーム「Zombies Ate My Neighbor」が登場。トップダウン型のシューティングゲームで,ゾンビを中心に吸血鬼や狼男で溢れるご近所を,銃を撃ちまくりながら進んでいくというシンプルなものだ。だが,撃たれた敵が血を噴き出すという演出もあってか,ゲーマーからカルト的な人気を獲得した。

 日本では1996年,セガの「ハウス・オブ・ザ・デッド」がアーケードに登場したほか,カプコンの代表的シリーズの原点になった「バイオハザード」がリリースされるなど,ゾンビをフィーチャーしたゲームが,この頃から増えていく。
 説明するまでもないだろうが,1990年代後半から欧米のゲーム業界でも,ゾンビを含め人間の姿形をした敵と戦うゲームが技術的に可能になると同時に容認もされ始め,ゾンビ流行の追い風になっていく。
 2005年には「Stubbs the Zombie in Rebel Without a Pulse」という,ゾンビを主人公にしたゲームがリリースされ,2008年の大ヒット作である「Plants vs. Zombies」では,なんとなく親しみが持てるゾンビが登場するなど,ゾンビのバラエティも増えている。

 アメリカの「ZMDB.com」という情報サイトによれば,現時点でゾンビをテーマに扱った映画は,実に4390本にもなるという。というわけで,ファンなら紹介するまでもないかも知れないが,気になるゾンビ映画の名作3本を,ゲームにからめつつ取り上げてみよう。

 

奥谷海人の選ぶ,名作ゾンビ映画
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ゾンビ(1978年)
 ジョージ・A・ロメロ監督がナイト・オブ・ザ・リビングデッドの続編として制作した作品で,ゾンビが増殖し続けるアメリカが,もはや国家としての機能を失う中,ショッピングモールに立てこもる主人公らの姿を描いたサバイバルホラーだ。
 ショッピングモールにゾンビといえばもちろん,「デッドライジング」。雰囲気はちょっと異なるが,同作がこの映画にインスパイアされているのは間違いないだろう。
 ちなみにショッピングモールは,「アメリカの物質文明」の象徴であり,それが破滅に向かうというのが裏のテーマであるようだ。2004年にはゾンビをリメイクした「ドーン・オブ・ザ・デッド」という作品が制作されているが,こちらも見ごたえのある映画だ。デッドライジングを楽しんだ人は,ぜひ観てほしい。

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28日後(2002年)
 この映画が登場する前のゾンビは,いかにも頭が悪そうにヨタヨタと歩くゾンビばかりだった。だが,「トレインスポッティング」で名を上げたダニー・ボイル監督は,この「28日後」で血や肉を求めて全速力で走ってくる狂気のようなゾンビを描き,その後の映画やゲームに大きな影響を与えた。
 この映画で描かれるゾンビは,実際には甦った試写ではなく"感染者"(インフェクテッド)であり,状況は「Left 4 Dead」とほとんど同じ。「Left 4 Dead」シリーズのゾンビも,集団でものすごい勢いで走ってくる。こういったゾンビが登場するようになったことで,サバイバルの難度は一気に上がったといえるだろう。

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ショーン・オブ・ザ・デッド(2004年)
 ゾンビホラーをラブコメ調にアレンジした映画といえば,やはりイギリスのコメディアンであるサイモン・ペグが主演した「ショーン・オブ・ザ・デッド」(日本未公開)だろう。恋人にふられてしまったダメ男のショーンが,ニートで一日中ゲームをしているルームメートのエドらと共に,およそ安全とはいえないなじみのパブに立てこもるというストーリーで,「ゾンビ」のほか,さまざまなゾンビ映画のオマージュが楽しめる。
 2009年にリリースされた「フォートゾンビ」に恋愛要素はないが,ゾンビの来襲に備え,場所を選んで立てこもることになる。生存者の救出や,立てこもるための準備を怠ると,ショーン・オブ・ザ・デッドのパブのように,あっさり攻め込まれてゲームオーバーになってしまうのだ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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