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印刷2011/01/31 18:32

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第292回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜 ウェスタン映画編

奥谷海人のAccess Accepted

 もしかすると,若いゲーマーにあまり馴染みがないかもしれない映画ジャンルが「西部劇」だ。少なくとも現在のハリウッドでは人気がなく,またゲームのテーマとしてもほとんど扱われることがなかった西部劇だが,Rockstar Gamesから発売中の「Red Dead Redemption」が予想を超える大ヒットを飛ばしたことで,ふたたび注目されつつある。今回はそんな西部劇の基礎知識を紹介したい。

第292回:洋ゲー世界を知るための基礎知識 〜 ウェスタン映画編

 

Red Dead Redemptionの成功の前に
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「Dragon's Lair」と共に,American Laser Gamesのレーザーディスクゲームとして知る人ぞ知るといった作品が「マッド・ドッグ・マックリー」。筆者はアーケード版しかプレイした経験がないが,日本ではカプコンがリリースしていた。カプコンは,1980年代からウェスタン風ゲームを量産したメーカーの1つだ

 一時期ハリウッドで隆盛をきわめた西部劇(以下,ウェスタン)だが,最近の若い人にはあまりなじみがないかもしれない。本家アメリカでは,1980年代以降に不人気ジャンルとなり,新しいタッチで描かれたウェスタンものはいくつか制作されているとはいえ,もはや過去のものになりつつある。そのため,1980年代以降に大きな成長をとげたゲーム業界でもウェスタンものというのは少なく,「Red Dead Redemption」(以下,レッド・デッド・リデンプション)が初の大ヒット作品と言ってしまってもいいだろう。

 ウェスタンゲームと聞いて筆者がまず思い出すのは,「Mad Dog McCree」(1990年)だ。もともと,「Dragon's Lair」と同じAmerican Laser Gamesによってアーケード向けに作られたアドベンチャーで,実写で表示されるターゲットに向けて銃を撃ったりするという内容だった。相手よりタイミングが遅れると,ヘルスポイントが減ってしまうという,割とシビアなタイトルであったことを記憶している。PCやコンシューマ機でリリースされたほか,日本ではカプコンがレーザーディスク版「マッドドッグ マックリー」を販売していたのだが,ほとんど知られていない作品だろう。

 その後,かなりの空白期間を置いた1997年,LucasArts Entertainmentが「Outlaws」というFPSをリリースした。おそらく,3Dグラフィックスで西部開拓時代を描いた最初のゲームがこれだろう。残念ながら日本では未発売だが,フラメンコ調のゲーム音楽も斬新で,発売されたゲームCDは,音楽CDとしても使えるという具合に「音楽」に凝った作品だった。
 ゲームとしては単調で,人気が出たわけではないが,FPSジャンルにおいてスナイパーが「スコープを覗く」というアクションを採用した初めてのゲームと言われており,6人までのマルチプレイモードも楽しめた。

 キャラクターやストーリーのつながりはないが,Red Dead Redemptionの“精神的な”前作にあたるのは,2004年に発売された「Red Dead Revolver」だ。もともとRed Dead Revolverは,当時サンディエゴにも開発スタジオを構えていたカプコンが制作していた作品であり,カプコンが2002年に北米での開発を中止したとき,Rockstar Gamesが開発チームAngel Studiosごとこのプロジェクトを引き取ったという経緯がある。
 カプコンは,ウェスタンものタイトルとしてファミコン向けの「ガンスモーク」を1985年に制作しており,Red Dead Revolverは,ガンスモークを題材にしたものだったという。

 PC向けには,ストラテジー「Desperado: Wanted Dead or Alive」(2001年)やFPS「Call of Juarez」(2007年),さらには,昨年(2010年)には「Lead and Gold」というオンラインマルチプレイ専用アクションゲームなどヨーロッパ発の西部劇ものタイトルが登場している。コンシューマー機向けには,「Tony Hawk」シリーズで知られていたNeversoftが,2005年に「Gun」というゲームをリリース。同じ年には,当時新進気鋭のクリエイターとして知られたLorne Lanning氏の「Oddworld: Stranger's Wrath」という,基本はファンタジーものだがウェスタンに大きな影響を受けた作品もリリースされた。
 ちなみに,カプコンが2004年にPlayStation 2専用の格闘ゲームとしてリリースした「ゴッドハンド」も,西部劇風な世界観をテーマにしたゲームだった。カプコンは,なにかとウェスタンテーマのゲームに縁が深いようだ。

 

ウェスタンというジャンルを映画で知ろう
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日本でも絶賛発売中の「レッド・デッド・リデンプション」は,筆者も個人的に2010年最高のゲームに選んだ傑作だ。現在Take-Two Interactiveの傘下に入ってRockstar San Diegoと名前を変えた,Angel Studiosが開発した「Red Dead Revolver」の精神的な続編とされるが,内容的には完全な「作り直し」となっている

 ウェスタンムービーに決まった定義はないのだが,だいたい「アメリカ開拓史時代を背景に,ガンマンたちが織り成す物語」ぐらいと思って間違いないだろう。ウェスタンとはいえ,アメリカ西部だけでなくアラスカやボリビアなど,さまざまな土地を舞台にした作品が作られている。
 ハリウッド史的には,1930年代後半,撮影機材が屋外に持ち運べるように小型化されたおかげでロケ撮影ができるようになり,アリゾナ州やネバダ州を舞台にしたウェスタンムービーが作りやすくなったという事情があるようだ。

 ウェスタンをポピュラーなものにしたのが,ジョン・フォード監督がメガホンを取った「駅馬車」(1939年)だ。ジェロニモ率いるアパッチ族のテリトリーを抜ける駅馬車に乗り合わせた人々を描いた物語で,さすらいのガンマンや,ネイティブアメリカンとの戦い,盗賊との死闘など,その後の西部劇のテンプレートを多く作り出したといわれる。

 第二次世界大戦から1950年代後半までの西部劇は,駅馬車に代表されるように「自由と正義の国アメリカのヒーローが,悪人と対決する」というイメージだったのだが,1960年代になると,西部劇のあり方を再構築する動きが出てくる。これまで一方的に「悪役」と決めつけられていたネイティブ・アメリカンの立場が見直されると共に,これまで正義の味方とされてきたガンマンのあり方も変化していく。
 この動きに拍車をかけたのが,イタリアやメキシコなど,アメリカ以外の国で作られた,いわゆるマカロニ・ウェスタンの北米への大量流入だ。ちなみに,マカロニ・ウェスタンは完全な和製英語で,北米では通じない。
 マカロニ・ウェスタンの特徴は,主人公が必ずしもヒーローではないことだ。有名な作品としては,セルジオ・レオーネ監督,クリント・イーストウッド主演による「続・夕陽のガンマン」(1966年)が挙げられる。
 原題である「Il Buono, il Brutto, il Cattivo」を直訳すると,「良いヤツ,悪いヤツ,醜いヤツ」になるが,良いヤツであるはずのイーストウッドもかなり狡猾な人物で,それ以前のウェスタンムービーでは見られないようなキャラクターだった。

 それ以降,さまざまなウェスタンが制作されたものの,冒頭で述べたように1980年代にはすっかり観客に飽きられてしまう。ゲーム産業の勃興期はちょうどこの時期にあたっており,ウェスタンもののゲームが少ないというのも,そのせいなのかもしれない。
 しかし,Red Dead Redemptionが,累計800万本という大ヒットを収めたことで,今後はウェスタンをテーマにしたゲームソフトが増える可能性がある。Red Dead Redemptionをプレイしてウェスタンに興味を覚えた人なら,やがて来るかも知れないウェスタンゲームブームのため,今からウェスタンを予習しておくのも良いだろう。
 というわけで,最後に筆者の選んだウェスタンムービーを紹介しよう。Red Dead Redemptionをプレイしながら見ると,また一興だと思う。

 

奥谷海人の選ぶウェスタンムービー の名作3タイトル
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荒野の用心棒(1964年)
「夕陽のガンマン」および本文で紹介した「続・夕陽のガンマン」と共に,マカロニ・ウェスタンを大流行させた"ドル箱三部作"とも言われるセルジオ・レオーネ監督の作品。それまでのウェスタンでは見られなかった激しい暴力描写や,主役のクリント・イーストウッドを初めとした泥臭いキャラクターが個性的だ。英語でドル箱三部作は,「Man with No Name Trilogy」(名無し男の三部作)と呼ばれるが,Red Dead Redemptionにも「Man with No Name」という実績が存在し,影響は明らかだ

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ワイルドバンチ(1969年)
 サム・ペキンパー監督のファンという人は多いと思うが,「ワイルドバンチ」は"最後の大作ウェスタン"と呼ばれることもあるウェスタンの名作。賞金首となりアメリカからメキシコに逃げ込んだ強盗団が,現地の将軍率いる数百人の部隊と,壮絶な戦いを繰り広げるというストーリーで,スローモーションで噴き出す血しぶきの描写など,パキンパーらしいバイオレンス度の高いアクションシーンが見もの。メキシコでの逸話も,テーマソングに合わせて馬を並べて走る男達のカッコよさも西部劇の定番といえる表現。もちろんRed Dead Redemptionのカッコ良さにも通じるものがある

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明日に向って撃て!(1969年)
「明日に向って撃て!」というタイトルは,西部劇にそれほど興味がない人でも,必ず聞いたことのあるはず。ブッチ役のポール・ニューマンとサンダンス・キッド役のロバートレッドフォードという名優二人が競演した作品で,列車強盗をやりすぎたために鉄道会社の追っ手に狙われ,南米ボリビアまで逃げるというストーリーで,二人の主人公は実在のお尋ね者。ブッチとキャシディが生きた時代はRed Dead Redemptionとほぼ同じで,近代化が進む西部になんとなく違和感を感じる主人公というあたりもよく似ている

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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