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印刷2010/07/05 14:54

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第269回:ゲーム用プラットフォームとしてのYouTube

奥谷海人のAccess Accepted

 今や欧米ゲーム業界にはなくてはならないツールになってきたYouTube。最近は,ゲームメーカー各社がこぞってYouTube内に公式チャンネルを用意し,新作のムービーやプロモーションビデオなどを流すことで,より多くのゲーマーにアピールしようとしている。そんな中,YouTubeをゲームのプラットフォームとして活用するといった,新しい動きも見られるようになってきた。今週は,そんなYouTubeにまつわる動きを紹介してみよう。

第269回:ゲーム用プラットフォームとしてのYouTube

 

YouTubeのビデオを使ってゲームが遊べる?
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自社開発のブラウザChromeの宣伝のためにGoogleが作成したYouTubeゲーム,「Google Chrome Fastball」。プレイヤーはネット上の各種サービスを駆使して,5つのパズルや問題を解いていく。これまでにリリースされたYouTubeゲームの中では,最も複雑なものだといえるだろう

 Googleは,6月初めにGoogle Chromeという専用チャンネルをYouTube内に開設し,最初のコンテンツ「Google Chrome Fastball」を公開した。これは,「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」という名前を与えられた,ピタゴラスイッチ風へんてこマシンのビデオを,いかに早い時間で再生し終えるかを競うもので,再生の途中に,Google検索に関するさまざまな質問が出され,それに素早く答えていく必要があるのだ。

 質問には,例えばGoogle Mapを利用して「A地点からB地点まで,車,バイク,徒歩のうちで最も推定所要時間が短いものは?」というものや,表示された文字が何語かを問うもの,さらにはユーザーの音楽の趣味を判断して情報を提供するサービス,「Last.fm」を使って人気の高いバンド名を入力するものなど,ランダムに出てくる5種類のゲームに素早く答え,そのタイムを競うのである。
 質問も解答も英語なのでややハードルが高いかもしれないが,最後に「あなたは○○人中の○○位でした」という結果が出されるので,順位を上げようとつい何度も遊んでしまうかもしれない。

 筆者の場合,遊んだうちで最も早かったのが2分53秒で,最後には「Now that’s Chrome Fast」(クローム並の速さです)と表示されたものの,実際には46280人中10527位とごく普通の成績。何度かやっていると同じ質問が出てきたりするので,英語が苦手な人でも好いタイムを出すことは可能だろう。

 筆者がプレイしたYouTubeゲームは,Google Chrome Fastballだけではない。数日前には,ステファニー・メイヤーのティーン向け小説「トワイライト」をベースにした「Twilight Eclipse: The 8-Bit Interactive Game」というゲームが公開されたので試しに遊んでいる。
 これは,トワイライトを原作とする映画「Twilight: Eclipse」の公開を喜んだファンが作ったもので,小説の内容を懐かしい8ビットゲーム風グラフィックスにアレンジしたノベルゲームだ。ムービーの最後でYouTubeの“アノテーション”(注釈)機能を利用して会話を選択し,新しいビデオへ物語を進めていく。よほどのトワイライトファンでもない限り楽しめそうもないが,間違った会話を選択するとそこで終了となるなど,「ゲーム」と呼べるものであることは間違いない。

 

ビデオを使ったゲームで特許を出願中のGoogle
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こちらは,よりトラディショナルなスタイルのYouTubeゲーム「Twilight Eclipse: The 8-Bit Interactive Game」。ビデオの最後に表示されるアノテーションで会話を選び,次のビデオを表示させていくというもの。プロモーション用ではなくファンメイドなので,会話をよく読むと,映画の内容をパロったジョークが満載だ

 本来はムービーのブロードキャスティングツールとして開発されたYouTubeだが,Googleはこのジャンルにそれ以上の可能性を感じているらしく,2009年12月に興味深い特許を出願している。
 それが「デジタルビデオを使ったインタラクティブゲームを生成するウェブベースのシステム」(Web-bases System for Generation of Interactive Games Based on Digital Videos)というもので,どうやら,ビデオにインタラクティビティを与えてゲームのように楽しめるシステムを開発したか,もしくは開発中であるらしい。特許申請書は一般公開もされているので,興味のある人は読んでほしいのだが,相当な分量で,なおかつ技術的な内容であるため,正直言うと筆者の手には余る。ともあれ,おおよそ申請書には以下のようなことが書かれている。

 「このシステム/手法は,すでに公開されているビデオ映像にインタラクティブな“アノテーション”を加えて表示できるものである。グラフィカルなインタフェースが複数のアノテーションを表示し,他のビデオ映像への誘導を行なう。アノテーションはそれぞれに機能を持っており,テキストを加えるとか,ビデオやウェブサイトにリンクするといったように,ビデオの見た目や動作を変化させることができる」

 この部分だけを読むと,今回発表されたGoogle Chrome Fastballより,アノテーション機能を使ったTwilight Eclipse: The 8-Bit Interactive Game,さらにはこの手のノベル系YouTubeゲームの初作品とされる,「A Car’s Life」(2008年9月に公開されている)に近いものが想像できる。
 ただ,現在のところアノテーションボタンを押しても新しいオプション画面が出てくるというような機能はYouTubeには存在しないので,いずれGoogle Videosなどで何か新しいことを行なう予定なのかもしれない。

 このところ,Googleはインタラクティブ性の高いゲーム,もしくはARG(オルタナティブ・リアリティ・ゲーム)といわれる分野に興味があるようだ。とはいえ,Google Mapを使ったモノポリーライクなサービス「Monopoly City Street」はほとんど反響のないまま数か月で終了したし,アバターを使うソーシャル・ネットワーク・サービスとして開発されていた「Lively」も途中でキャンセルされてしまうなど,これといった結果を出していないのもまた事実。今のところ,YouTubeを使ったゲームは,“お遊び”の範囲を超えていないのも確かだろう。現在のアノテーション機能だけでプレイしたくなるようなゲームを作ることはかなり難しいが,今後,Googleが申請した特許が具現化されるなど大きなイノベーションがあれば,その状況は変わるかもしれない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けている。2004年に開始された本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,4Gamerで最も長く続く連載だ。
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