業界動向
奥谷海人のAccess Accepted / 第243回:活況を呈する欧米のインディーズゲーム市場

デジタル流通システムの発達により,以前の活気を取り戻しつつあるPCゲーム市場。そこでは,メジャータイトルを食ってしまいそうなユニークなインディーズゲームが次々と誕生し始めている。しかしその一方,広報活動もままならない弱小メーカーゆえに,苦戦を強いられているところも少なくない。今回は,そんな知られざるマイナーゲームを,筆者の応援を込めて紹介したい。


前作のファンサポートが不十分なまま新作を発表して批判を浴びたValveだが,「Left 4 Dead 2」はやはり面白い。現在「Call of Duty: Modern Warfare 2」とマルチプレイ人気を二分するゲームではないだろうか。とはいえ,いずれも人気作品の続編。Take-Two Interactiveの「Borderlands」や,Electronic Artsの「Dragon Age: Origins」以外,挑戦的な新IPは,ほとんど出てこなかった
多くのゲーマーにとって,2009年後半のラインナップは地味な印象を与えるものだったかもしれない。
たしかに,Activision Blizzardの「Call of Duty: Modern Warfare 2」「Guitar Hero 5」,Electronic Artsの「FIFA 10」「Madden NFL 10」「The Beatles: Rock Band」,Take-Two Interactiveの「Borderlands」やUbisoft Entertainmentの「Assassin's Creed II」,Valveの「Left 4 Dead 2」など,ミリオンセラーになったタイトルもある。とはいえ,そうしたタイトルのほとんどがシリーズ作品かヒットタイトルの続編で,「最初から売れると思われていたが,やはり売れた」というものだった。
こうした「数少ない作品に消費者の人気が集中する」という傾向は最近のアメリカ市場で鮮明になりつつあり,それを踏まえ,メーカー側もタイトルを絞った広報戦略を繰り広げるようになってきた。かつてのようにノーマークのゲームが意外なヒットを飛ばすチャンスは激減し,新IPの登場機会も減っている。
このようなメジャータイトルに比べ,活気のあるのがインディーズ系のPCゲームだ。
自分のWebサイトから直接ダウンロードさせたり,「Steam」や「Impulse」といったデジタル流通システムを使ったりして,もはやパブリッシャやリテイラーを通すことなく,直接ファンに販売することが可能になったことが,そんな活気の理由だろう。
小売店や量販店でゲームのパッケージを売る従来のビジネスモデルを切り捨て,あらゆる方法でコストを徹底的に抑え,小さなゲームなりの市場を,オンラインを中心に築こうという試みが,成功しつつあるのだ。
確かな数字を示すことはできないのだが,昨年(2008年)あたりから,PCゲームではパッケージ販売よりもデジタル流通システムのほうが,市場が大きくなったといわれている。Steamほどのスケールになると,「大手企業からインディーズ開発者まで,区別なく販売機会が得られる,新たなプラットフォーム」と形容できそうだ。
ただし,インディーズゲームにもインディーズゲームなりの苦労はある。
プロの広報担当がいないので,メディアに取り扱ってもらえないとか,見かけが地味なので,ほかのゲームの間に埋もれてしまって目立たないといった,「いかにゲーマー達に自分達のゲームを知ってもらうか?」という悩みである。
ゲーム賞を受賞するとか,メディアから大きな評価を受けるといったことでもなければ,誰にも知ってもらえず,そのまま古ぼけてしまうということにもなる。
そうした理由から,インディーズ系メーカーもいろいろと考えており,本連載の第237回,「ゲームの値段はあなたが決めてください?」で紹介したような,奇抜ともいえる販売が行われたりしている。また,インディーズメーカーとはいえないが,Paradox Interactiveが「East India Company」と「Majesty 2: The Fantasy Kingdom Sim」のプロモーションで行った,発売後わずか1か月のタイトルを(一時的にだが)5ドル(約450円)で売るという特価セールなども,消費者の耳目を集める有効な手段だ。
とはいえ,やはり広報がうまく行かず,ほとんど誰にも知られることないゲームソフトは存在する。欧米のサイトにも情報のないようなロシア産ゲームを,ゲームイベントでは必ず紹介するという習慣を持った4Gamerではあるのだが,それでも発売のニュースなどもないまま,忘れ去られてしまうタイトルも少なくないのだ。
今週はそんなややマイナーなゲーム達を,応援の意味も込めていくつかピックアップしたい。どの作品も,ここ2〜3か月の間にリリースされたホヤホヤの新作ばかり。中にはかなり安価なタイトルもあるので,時間の空いた休日にでも気軽に遊んでみてほしい。
BLOOD BOWL: DARK ELVES EDITION
開発元: Cyanide Studios 公式サイト
「Blood Bowl: Dark Elves Edition」は,テーブルトークRPGであるWarhammerシリーズの一つ,「Blood Bowl」をゲーム化したものだ。Warhammerに登場するエルフやオーク,トロールやゴブリンといったキャラクター達を使ってアメフトを楽しむという一風変った内容である。開発元のCyanide Studiosは,2004年にも同じようなコンセプトの「Chaos League」というタイトルを発売しているが,あまりにもWarhammerに似ていたため,制作会社であるGame Workshopから訴えられ,その後,両者の和解によって生まれたのが本作である。何が起きるか分からないものだ。
Blood Bowlは,ただのアメフトゲームではなく,チームを構成して試合に勝ち進んでいくという,ロールプレイング要素を持っている。Warhammerでは殺し合いをしているはずのEmpireとChaos軍が戦うため,試合中でも殴る蹴るは当たり前。選手がレッドカードを受けて出場停止になったり,怪我で片目を失ったら,次の試合でも片目のまま登場するなど,継続性があり,それが戦略要素にもなっている。
オリジナルの「Blood Bowl」は,2009年6月にリリースされているが,本作はSteamなどのオンライン販売に向け,キャラクターにダークエルフを追加するなど,新たなコンテンツを加えて再リリースした作品だ。
GRATUITOUS SPACE BATTLES
開発元: Positech Games 公式サイト
宇宙を舞台にしたストラテジー,「Gratuitous Space Battles」は,見た目こそ往年の傑作RTS「Homeworld」を連想させるが,遊んでみるとまったく感覚の異なるゲーム性を持っている。カジュアルな雰囲気ながら,長い間楽しめそうな作品だ。
プレイヤーは宇宙戦艦や戦闘機をしかるべき場所に配置して,押し寄せてくる敵を撃退していくというタワーディフェンス系の内容。
マップには,ガス雲やアステロイドといった,戦いに直接影響する環境オブジェクトが配置されており,ゲームで使用するユニットを,それに合わせて配置していかなければらない。リアルタイムストラテジーというよりカードゲームのコンセプトに近く,敵の手を読んだり,裏をかくことが要求されるのだ。また,ミッションをこなしてHonorポイントを得れば,新しいパーツを獲得していくことも可能だ。
Positech Gamesは,Cliff Harris(クリス・ハリス)氏という人物がもっぱら一人で作っている。Elixir StudiosやLionhead StudiosでAIエンジニアとして活躍したあと,EA Maxisにおいて「SPORE」のプロトタイプ制作にも参加するという,かなり濃い経験の持ち主だ。だが企業人であることが好きになれず,本国イギリスに戻って個人会社を立ち上げたという。
KING ARTHUR: THE ROLE-PLAYING WARGAME
開発元: Neocore Games 公式サイト
ハンガリーのNeocore Gamesの最新作は,欧米で人気のアーサー王伝説に,リアルタイムストラテジー要素とRPG要素を掛け合わせた「King Arthur: The Role-Playing Wargame」である。
アーサーが,王の証しである剣,エクスカリバーを岩から抜き取ったとき,魔界の生物が一斉に目を覚ましてしまう。プレイヤーはアーサー王となって,円卓の騎士達や魔術師マーリンのようなウィザードを駆使して戦場を駆け回り,目覚めた魔物をブリタニアの大地から葬り去るのが目的だ。
キャラクターは,戦闘をこなすことで成長する。また,例えばキリスト教を受け入れられるか否か,あるいは占領した土地の住人をどう扱うのかといった選択により,物語の展開やエンディングが異なるものになるようで,このあたりはRPG的だ。
King Arthur: The Role-Playing Wargameには,状況に応じてターン制の2Dキャンペーンマップと,リアルタイムの3Dバトルマップを使い分ける「Total War」シリーズのようなゲームシステムが採用されている。Neocore Gamesが独自開発したゲームエンジンはなかなかのもののようで, 4平方Kmという広大なマップ上で,何千というユニットが映画「ロード・オブ・ザ・リング」のように入り乱れて戦うシーンを満喫できる。
NATION RED
開発元: Diezelpower Studios 公式サイト
2009年の主役ともいえる,ゾンビ。そんなゾンビをテーマにしたゲームに,また新たなものが登場した。俯瞰視点タイプの「Nation Red」は,とにかく何も考えずに撃ちまくるシューティングゲームである。アリゾナの砂漠地帯をたまたま通りかかったトラック運転手が,大量のゾンビ復活に遭遇するといった設定はあるのだが,ゲームそのものは,ひたすらゾンビをなぎ倒していくだけという,思い切りの良いシンプルさがウリだ。
ご存じのように,日本では「ネイションレッド 日本語版」としてズーからリリースされているので,「インディーズ」などと言うと怒られてしまうかもしれないが,入手性や遊び安さの点では折り紙付きだ。
ゲームは,ゴーストタウンや工事現場,精神病院など18種類のマップで構成されており,使用できる武器も,Glock,UZI,AK-47,ショットガンといった銃器のほか,ジャックハンマーや斧などさまざまなタイプのものが用意されている。Steamオンリーとして付いてくる武器もいくつかあるのだが,中でも“Steam Hammer”と呼ばれるものは,ゾンビの肌を蒸気で溶かしていくというすさまじいもの。描写はすごいが,爽快感があって楽しい。
開発元のDiezelpower Studiosは,フランスの本部に加えて日本にもオフィスがあるらしいが,このNation Redでも,ゾンビが「ラーメンに浸りたい〜」などと叫んでいるが笑える。マルチプレイモードなどがあれば良かったと思う。
OSMOS
開発元: Hemisphere Games 公式サイト
「OSMOS」は,「これぞインディーズゲーム」といった雰囲気の一本。最近アメリカで増えてきた“ラウンジゲーム”と呼ばれるカジュアルタイトルの一つで,OSMOSという丸い核のようなものを,自分より小さなOSMOSにぶつけ,それを取り込んで巨大化させていくという,まるでTheGameCOmpanyの「flOw」と,ナムコの「塊魂」をあわせたようなゲームだ。
ちなみにラウンジゲームとは,肩肘張って画面に食い入るようにしながらプレイするのではなく,流れるアンビエントサウンドを聞きながら,リラックスしてプレイするようなスタイルのゲームのことを指す。
OSMOSはエネルギーを噴射して移動するため,突然止まったり鋭角にカーブするといったことができない。無重力の宇宙空間でジェット噴射を使った移動を想像してもらえるといいが,うっかりして自分より大きなOSMOSにぶつかると吸収され,ゲームオーバーになる。
また,移動のためのエネルギーが体内から放出されるので,移動距離が長いと自分の体が小さくなる。ちょっと離れた場所にある自分と同じくらいの大きさのOSMOSを目指しても,合体の直前に自分のほうが小さくなってしまっていたということも起こり得るため,ぶつかる相手を選ぶ判断が,ゲームの面白さにつながっているのだ。
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