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印刷2009/04/17 20:04

連載

奥谷海人のAccess Accepted / 第214回:オンラインゲームに危機到来か!?

奥谷海人のAccess Accepted

 ここ最近,アメリカのインターネットサービスプロバイダ(ISP)間では,ユーザーのダウンロードを規制する動きが広がっている。1か月間にダウンロードできるデータ総量を設定し,それを超過した場合に追加料金を請求する「ビットキャップ」や「バンドウィズキャップ」と呼ばれる制度を推し進めようとしているのだ。現状は北米だけの傾向だが,ゲーム業界の未来を考えると,危惧すべきことかもしれない。

第214回:オンラインゲームに危機到来か!?

 

容量が制限されるインターネット
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Time Warner Cableといえば,その社名から分かるとおりアメリカの総合メディア企業Time Warnerのグループ会社である。バンドウィズキャップ制の導入を推し進める理由とは,どのようなものなのだろうか

 アナログモデムが主流だった1980年代から1990年代前半までのインターネットでは,利用時間に応じて料金を支払う,“従量制”というサービス形態が一般的だった。この方式は,今でもモバイル端末などでインターネットを利用する際に,その名残りを見ることはあるが,PCインターネットのサービス形態では,インフラの整備が進むうちにやがて消えていった。しかし,そんな従量制が別の形に姿を変えて,復活の兆しを見せているのである。

 これは,「ビットキャップ」や「バンドウィズキャップ」などと呼ばれており,1か月にダウンロードできるデータ量を制限し,上限を超えると追加料金を徴収するか,サービスそのものを止めるというものだ。

 アメリカ西部を中心に展開する大手ISPのTime Warner Cableは,2009年4月7日(現地時間),テキサス州西部のビューモント市などを対象にバンドウィズキャップ制の正式運用を開始した。月々にダウンロードできる最大データ量によって5GB,10GB,20GB,そして40GBという四つのプランに分けられており,価格は5GBプランが29.95ドル(約3000円)で,40GBプランが54.95ドル(約6000円)。定められた容量以上のデータをダウンロードすると,1GBにつき1ドルが追加請求される。
 これに続いて同社は,テキサス州のサンアントニオ市,ニューヨーク州のロチェスター市,ノースカロライナ州のグリーンズボロ市などでもバンドウィズキャップ制を導入する予定であり,今夏までにはそれをテキサス州全域に拡大し,その後はアメリカ全域で適用する計画があるという。

 バンドウィズキャップ制導入の動きは,Time Warner Cable以外のISPも見せている。北米第2位のISPであるComcastは,250GBまでの制限を設けたサービスを2008年10月に開始しており,また,電話通信会社として有名なAT&Tも,ビューモント市とネバダ州のリノ市で150GBまでのバンドウィズキャップ制を試験運用中だ。なお,この制度は個人ユーザーに限ったものであり,企業単位での利用には適用されない。
 この中で一番制限の厳しいTime Warner Cableは,ユーザーから大きな反発を受けている。とくに同社のネットワーク回線はほかのISPに広く貸し出されており,本格的にバンドウィズキャップ制が導入されれば,回線を使用する各社も同じような価格設定にならざるを得ないと予想される。その点に不安を抱いている人達が多いのだ。

 Time Warner Cableやその関連ISPの利用者は,同社に対してEメールや電話での抗議を始め,コミュニケーション部門のディレクターやコーディネーターが利用するTwitterやブログにまで批判が浴びせられている。さらに,バンドウィズキャップ制導入の中止を訴える署名活動を行う,Stop the Cap!というサイトまで立ち上がった。

 

ゲームをダウンロードするだけで追加料金が発生!?
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World of WarcraftのようなMMORPGをプレイする際にやり取りされるデータ量はあまり多くないので,問題はなさそうだ。だが,クライアントをダウンロードしたり,大型のパッチを導入したりすると,5GBくらいアッという間に超えてしまうだろう

 Eメールのやり取りやインターネットの閲覧をしているだけなら,5GBの制限はたいした問題ではないだろう。だが,ゲーマーにとっては切実な問題になりうる。今更説明する必要はないかもしれないが,オンラインゲームを楽しむ場合,クライアントのダウンロードが必要になる。ゲームのダウンロード販売も増えており,Time Warner Cableの5GB/29.95ドルのプランでは心もとない。Xbox 360やPLAYSTATION 3など向けに配信されるデモ版やDLC(ダウンロードコンテンツ)のデータ量でも1GBを超える場合があり,コンシューマ機をメインで遊んでいる人も,データ量に気を配る必要が出てくる。
 さらに,Game Developers Conference 2009で展示されていた「OnLive」のようなブロードバンドを介したオンデマンド式のゲームサービスでは,ゲームのすべての計算やレンダリングがサーバー側で行われ,それが“ビデオ映像化”してクライアント機に転送される。つねに大容量のデータが送られてくるだけに,バンドウィズキャップ制が広まってしまったら,サービスとして成り立たなくなるだろう。

 こういったことが分かっていながら,アメリカの代表的ISPがバンドウィズキャップ制の導入を推し進めるのには理由がある。BitTorrentなどに代表されるP2Pシステムを利用する,著作権無視のコンテンツ交換を食い止める最後の手段,と考えているらしいのだ。

 アメリカのネットワーク産業は,Time Warnerのように映画や音楽産業との結びつきが深い会社によって支えられており,そういった会社の多くが,著作権を無視した違法なデータ交換に悩まされ続けているのだ。P2Pシステムを使ったデータ配布が,必ずしも悪用されるわけではないが,これを少しでも使いづらくして使用を抑制しようとしているのだろう。
 またISPは,安定したサービスを提供し続けるために設備投資を行う必要がある。水や電力のように,「多く利用する人ほど,多くの対価を払う」ことは,考え方としては理にかなっているかもしれない。

 けれど,その“最終手段”のとばっちりを,最も受けそうなのが,オンラインゲーマーとゲーム/Web産業なのだ。違法コピーの氾濫や,中古取引の多いパッケージ商売から逃れ,デジタル流通やオンラインゲームに活路を見出しつつあるゲーム産業は思わぬ制限を受けることになる。バンドウィズキャップ制の拡大は,Apple (iTunes Store/Apple TV),YouTube,Facebookといったインターネットを利用したサービスにとっても死活問題になる。

 もちろん,この状況に危機感を抱く人は多い。ニューヨーク州議員のEric Massa(エリック・マッサ)氏は,「経済不況から脱しようとしているときに,Time Warner Cableはアメリカの再建に必要な技術の躍進を麻痺させようとしている」との公式声明を発表した。
 また,対象エリアの一つであるグリーンズボロ市のYvonne Johnson(イボンヌ・ジョンソン)市長は,「引越しを考慮する人がいるかも知れない」との懸念を示し,市議会一丸となって反対すると明言している。
 そういった状況から,このバンドウィズキャップ制が全米に広がるかどうかはまだ分からないものの,制度の広まり方次第ではアメリカのゲーム開発者がMMORPGを作らなくなるなどという事態も考えられる。

 せっかく花が開いた,新しい産業の息吹をつぶしてしまいかねない制度の導入はいただけない。ISPもビジネスであり,より利益が多い方向にシフトするというのは理解できるが,インターネット関連産業の地盤沈下を招きかねない手段ではなく,別の方法を模索すべきだと思う。バンドウィズキャップ制の導入は,いまのところアメリカに限った問題だが,オンランゲームやインターネット関連のサービスをリードしてきた会社に悪い影響が出れば,それがほかの国々のサービスに波及することも考えられる。日本に住んでいる人にとっても,決して“対岸の火事”ではないかもしれない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。最近,引越しをした北米在住の奥谷氏。今回の話題に絡んで利用しているISPを聞いてみたところ,250GBの制限をかけているComcastだそうだ。引越しを機にISPをComcastに変えたらしいが,この記事の準備をするまで,Comcastがバンドウィズキャップ制を導入していることを知らなかったという。ゲームに関する情報収集は欠かさない人だが,身の回りのことにはかなり無頓着なようだ。
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