業界動向
奥谷海人のAccess Accepted / 第180回:E3 Media & Business Summitプレビュー

「E3」が近づいてくると,条件反射的にワクワクしてくるゲームファンも多いのではないだろうか。プレスリリースで発表されたり,ウワサが流れていたりしたゲームが実際に展示される,見逃せないイベントだ。来週から始まる本番前に,主要メーカーの見どころを確認しておこう。

E3以上にトラブル続きな主催者ESA
今年もE3 Media & Business Summit(以下,E3)の季節がやってきた。「今年も」とは書いたが,一昨年までは毎年5月に行われていたイベントだったので,以前から取材を重ねてきた筆者としては,馴染めない部分があるのも事実だ。
2007年のE3はサンタモニカで開催されたが,今年は再びロサンゼルス市にあるコンベンションセンターへ戻ってくる。ただし,イベントのあり方は去年と変わらず,1万人程度の招待者のみが参加できるエクスクルーシブな会合のままだ。

「お祭り騒ぎ」といった印象とは程遠くなったE3 Media & Business Summit。だが,欧米の主要メーカーは,腕によりをかけた作品を多く出展する。E3は業界でも重要度が低くなっているといわれるが,世間をあっと驚かせるような新発表はあるのだろうか
E3といえば,主催する業界団体組織であるESA(Electronic Software Association)の存在意義が薄れ始めている。5月には,Activision (Vivendi Games)はE3へ参加を見送り,いくつかのメーカーはESAからの脱退を表明している。
その理由として挙げられることが多いのは,2007年からESAのプレジデントとなったMichael Gharaghar(マイケル・ギャラハー)氏の存在である。ギャラハー氏はゲーム産業に詳しくないばかりか,業界を取り仕切る人物としての才気が見られないといった意見が多いのだ。
前任者であるDoug Lowenstein(ダグ・ローウェンシュタイン)氏は,暴力表現に関する問題が起きたり,業界に新しい動きがあったりするとすかさずコメントを公表し,存在感を示していた。
一方のギャラハー氏は,ブッシュ政権でIT技術に関するチーフアドバイザーを務めていた人物であり,社会的なキャリアという意味で不足はないが,具体的に何をやっているのかが,ゲーム企業にはよく伝わっていないのかもしれない。
ESAを脱退する企業が増えると収入が減ってしまい,ESAのロビー活動や宣伝に支障が出るので,北米のゲーム産業にとって,あまり好ましい状態とはいえないだろう。
そんな不安定な状況の中,E3が開催されるのだが,今年後半から来年にかけて,各社はどのような製品ラインナップでアプローチをかけるのだろうか。
今回の時点で紹介できるのは,事前に情報がつかみやすい主要メーカーに限られており,ここに掲載されていないだけで,ほかにも期待作は多い。そういったゲームや,各ゲームの詳細については,来週までのお預けということにしてもらいたい。ちなみに,紹介順序はメーカー名のアルファベット順だ。
Bethesda Softworks
Fallout 3

BethesdaといえばThe Elder Scrollシリーズだが,今年の出展作は「Fallout 3」である。コレクターズエディションもあり,120ドル(約1万3500円)で発売される予定だ。Diablo IIIとの因縁の戦いが待っている(関連記事)
「The Elder Scrolls IV: Oblivion」のヒットにより,日本でも熱い視線を浴びているBethesda Softworksは,これまでのような「玄人好みのゲーム開発会社」としてだけでなく,国際的なパブリッシャとしての躍進を狙っているようだ。親会社であるZeniMax Mediaは,2008年2月にロンドン,そして4月には東京で支社の設立を発表。5月には「Enemy Territory: Quake Wars」などFPSの開発で知られたイギリスのSplash Damageとパートナーとなっている。いままでのBethesdaのイメージとは,違った作品が登場してくるかもしれない。
会社が大規模になった以上,資金調達のためにも今後はライブラリーの拡充が急ピッチで行われるはずなので,ウワサされる「The Elder Scrolls V」の存在が,ますます真実味を帯びてきた。E3では,「Fallout 3」以外に展示される作品はなさそうだが,今後も注目すべきメーカーの一つだろう。
Codemasters
Operation Flashpoint 2: Dragon Rising

自前のゲームエンジンを使ったFPS「Operation Flashpoint 2: Dragon Rising」は,前作をプレイしたFPSファンに取って待望のゲームだろう。進化したグラフィックスによって,さらにリアルになった戦場が描かれる
イギリスを本拠にするCodemastersもESAからの脱退を表明したが,E3には出展する。同社は,Warner Bros.Interactiveとの提携をバネに本格的な北米進出を果たしており,2007年にはロサンゼルスに支社を設立した。社運を賭けて開発したEGO Game Technology Engineが成功し,その第1作となった「Race Driver:GRiD」も高い評価を得ている。最近では,日本に支社を設立するなど,Bethesdaに負けず劣らずの好調さが光る会社だ。
ヨーロッパに軸足を置くCodemastersだけに,新作はPCゲームが多い。EGOエンジン以外にもUnrealエンジンをライセンスした作品があり,中でも「Damnation」は,マップの高低を利用するアクションが楽しみである。また,ギリシャ神話をテーマにしたアクションRPG「Rise of the Argonauts」も期待できそうだ。
Eidos Interactive
Just Cause 2

それほど大きな話題にはならなかった前作だが,「Just Cause 2」はキャラクターのシワや細かい傷までが表現されるほどグラフィックス面で大きく進化。間延びしがちだったアニメーションにも改善が見られるようだ
ヨーロッパ最大のパブリッシャーとして君臨したEidos Interactiveは,経営難に苦しんだのちに,イギリスのSCi Entertainmentの傘下に入った。ただ,SCi自体にも買収話が何度か持ち上がるなど,Eidosは今後も予断を許さない状況にある。
そんなEidosだが,カナダに支社を設立して「Deus Ex 3」の開発を行うなどして,再起を狙っているようだ。2008年のラインナップの中では「Tomb Raider: Underworld」を一番の注目作と考えて間違いないだろう。シリーズでは初めてとなる,モーションキャプチャーのキャラクターアニメーションや,よりリアルな天候システムなどにより,シリーズに新たな風が吹き込まれる。
また,太平洋海戦を扱うフライトコンバット「Battlestations: Pacific」の出展が発表されているが,ほかにも隠し球を持っていそうな雰囲気だ。
Electronic Arts
Warhammer Online: Age of Reckoning

MMORPGは,これまで同社が泣かされてきたジャンルであり,Warhammer Online: Age of Reckoningによって巻き返しを図る。リリースの延期が繰り返されているが,最近になってメキメキと仕上げが進んでいるようだ
ある調査会社によれば,今年100万本を超えるとされるゲームのうちの半分が,Electronic Artsのゲームになるといわれており,ゲーム市場における存在感は揺ぎない。
ただ,これまで多くのEA Gamesタイトルに携わってきたニール・ヤング(Neil Young)氏が退社したことにより,しばらくはThe Simsチームを含むレッドウッドシティやロサンゼルスの開発部隊に,混乱が生じるかもしれない。
率先してマルチプラットフォーム化を進めていることもあり,PCゲーマーにとっては非常に有難い存在の会社である。だが,2008年に発売されるEA Sportsのタイトルの中には,PCへの移植が見送られるものが出てきたのは残念だ。
さすがに抱えているタイトル数が多い会社なので,すべてのゲームを紹介できないが,やはりMaxis(現EA Sims)の新作「The Sims 3」と「Spore」は,どちらも前評判がすこぶる高く,メガヒット作になるのは間違いなさそう。
Maxisと同じくEAの看板デベロッパであるEA DICEが開発中である,基本料金無料のFPS「Battlefield Heroes」や,フリーラニングの軽快なアクションが魅力の「Mirror's Edge」が,E3では大々的に公開されるはずだ。
ほかにも, BioWareのアクションRPG「Dragon Age」, Pandemic Studiosの「Mercenaries 2: World in Flames」,CryTekの「Crysis Warhead」など,注目作がとにかく多い。さらに,これまでおよび腰だったMレーティング(17歳以上対象)のゲームにも力を注ぐようで,ホラーアドベンチャーの「Dead Space」という新作が控えている。そしてなんといっても,「Command & Conquer: Red Alert 3」は,シリーズファンとして忘れてはならない作品だ。
2K Games
Sid Meier's Civilization IV: Colonization

Civilizationのコアエンジンや基本システムを利用して開発された「本格的なMOD」だが,Sid Meier's Civilization IV: Colonizationの制作発表に,往年のシドファンは沸きかえったはずだ。「Alpha Centauri」なども復活するのだろうか?
「Bioshock」の成功で,Take-Two Interactiveの中でもRockstar Gamesと互角の存在となりつつある会社が2K Gamesだ。Rockstarと比べて,PCゲーム系の作品も多いのが2K Gamesの魅力でもある。2007年に2K Gamesは2K Marinを設立し,Bioshockを開発したIrrational Games(2K Boston)が監修を行いながら,新作の開発を行っているという。最近のゲーム業界でスポットライトを集める「カジュアルゲーム旋風」にはほとんど関心のなさそうなイメージであり,今後もコアゲーマーを唸らせるゲームを量産してくれるだろう。
E3に出展されるタイトルとして気になるのは,Firaxis Gamesの新作「Sid Meier's Civilization IV: Colonization」だ。Civilization IVの基本システムをベースに,往年の名作「Sid Meier's Colonization」を復活させたもので,新大陸アメリカにヨーロッパ帝国の開拓と生存競争をテーマにしている。
さらに,アメリカでは初の本格公開となる「Borderlands」は,Gearbox Softwareの手掛ける新作で,なんと50万種にもおよぶアイテムをフィーチャーする,「Halo」風FPSとRPGのハイブリッド作品だ。また,マフィアの成り上がりを描く「Mafia II」も,どこまで進化しているかが楽しみであり,「Grand Theft Auto IV」のPCへの移植も発表されるかもしれない。
THQ
Red Faction: Guerrilla

今のところ2009年のリリース予定となっているが,「Red Faction: Guerrilla」はFPSファンにとっては待望の作品だ。爆破によって地形が変わるといった画期的仕掛けをもったFPSが,最新技術によって復活するのだ
最近一年で3500万ドル(約37億円)を損失し,5月には200人に及ぶ従業員を解雇したTHQ。PlayStation 2やNintendo DSなど子供向けのライセンスゲームの売り上げが収益の半分近くになるなど,現世代のゲーム機に乗り遅れてしまった感がある。
発売予定のゲームの中にも開発の遅延がアナウンスされた作品もあり,本格的な復活は来年以降になるかもしれない。何よりも,ライセンス料を払う必要のないオリジナルタイトルの強化が必須だろう。
そんなTHQだが,PCゲームに関しては,注目のオリジナルラインナップが控えている。その一つが, FPSブームの絶頂期にリリースされた作品の第3弾「Red Faction: Guerrilla」だ。本作の開発元は,「Descent」などで知られるVolitionなだけに,期待するファンは多い。またVolitionは,2008年内リリース予定のクライムアクション「Saints Row 2」も手掛けている。
さらに,シド・マイヤー氏の右腕といわれたBrian Reynolds(ブライアン・レイノルズ)氏と,The Elder ScrollsシリーズのリードデザイナーKen Rolston(ケン・ロルストン)氏がタッグを組んだRPG「Crusible」は,E3で公開される可能性が高い。
Ubisoft Entertainment
Far Cry 2

Ubisoftが開発する「Far Cry 2」は,オープンワールドでアフリカ某国の内紛が描かれる。これまでサバンナ風の風景が公開されていたが,本作にはジャングルなども含まれているようだ。ちなみにマップは,The Elder Scrolls IV: Oblivionよりも大きいらしい
Ubisoft Entertainmentは,Tom Clancyシリーズや「Assassin's Creed」などの成功で勢いにのる会社だ。カジュアルゲームなどにも強く,アピールするターゲット層が広い。ここ数か月でロシアやインドにも支部を設立するなど販売網や開発拠点の拡充にも余念がない。最近では,アメリカの経済誌Forbesで「Take-Two Interactiveと合併すると,(Activision BlizzardやElectronic Artsを牽制する)第3の核となる」といった記事が掲載されるほどだ。
とくにTom Clancyシリーズに力を入れていくようで,ベストセラー作家であるトム・クランシー氏の名前を使ったゲームに関する権利をすべて獲得してしまったほどだ。これまでのようなタクティカルなアクションゲームだけでなく,RTSの「Tom Clancy's EndWar」やフライトコンバットの「Tom Clancy's H.A.W.X」など,さまざまなジャンルでトム・クランシー作品を楽しめるようになりそうである。
また同社は,独自ライセンスの続編モノが多く,この他にも「Far Cry 2」「Heroes of Might & Magic Kingdom」「Prince of Persia: Heir Apparent」など,挙げ始めるとキリがないほどだ。ちなみに,評価が高いながらもセールスに結びつかず,「世界一不幸なゲーム」と評されたアドベンチャーゲームの最新作「Beyond Good & Evil 2」が正式に発表されたので,E3で公開されるだろう。
基本的に,E3での新発表はないようなので,ウワサされる「Assassin's Creed」の第2弾については,もう少し待たされることになりそうだ。
Activision Blizzard
Call of Duty 5: World at War

大ヒットFPS「Call of Duty 4: Modern Warfare」の続編,「Call of Duty 5: World at War」。開発元はInfinity Wardではないが,シリーズのルーツである第2次世界大戦へとテーマを戻し,南太平洋での日本との死闘が描かれる
Activision Blizzardは,ActivisionとVivendi Games,Blizzard Entertainmentとの合併がようやく株主に認められ,資産価値189億ドル(約2兆円)の大企業として正式にスタートすることになった。最近の好調なセールスで役員には総額6億円規模のボーナスが支給されるとかいう話もある。同社はE3への参加取り止めを早くから発表していたが,期日中には会場外で独自のイベントを実施するので,番外編として今回取り上げる。
同社の一翼を担うBlizzard Entertainmentだが,Activisionが主催するイベントで,「Starcraft 2」と発表されたばかりの「Diablo III」の新情報が公開される可能性は低そうだ。
Blizzardは10月に定例の独自イベントBlizzConを開催する予定であり,それまでにDiablo IIIの新ムービーの制作や,新情報公開に向けた準備をするつもりだろう。
Starcraft IIや「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」も今冬のリリースタイトルとして,すでに大きな注目を得ており,E3専用のデモを作る必要性もないのである。
同様に,Activisionと提携関係にあるid Softwareも近々地元ダラスで「QuakeCon」を控えており,そこで「Rage」の新情報が公開される予定だ。本家Vivendi Gamesのタイトルは,「Ghostbusters: The Video Game」「Leisure Suit Larry: Box Office Bust」「Prototype」など,PCでも発売されるゲームが多い。だが,イベントの主催がActivisionということを考えると,これらも新情報入手は難しいかもしれない。
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※7月18日のAccess Acceptedは,E3 Media & Business Summit 2008取材のため休載いたします。ご了承ください。次回の更新は7月25日となります。
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