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印刷2008/03/21 18:46

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted

 2007年にCEOとしてJohn Riccitiello(ジョン・リチティエロ)氏を迎え入れ,新体制となったElectronic Arts。それ以前も,「The Sims on Stage」というThe Simsファン向けのオンラインサービスを行ったり,韓国のNeoWizと組んでアジアで「EA Sports FIFA Online」などを展開したりしていたが,2008年に入り,同社のオンライン戦略が明確になってきた。ようやく始まったともいえる,Electronic Artsのオンラインゲーム市場への本格的進出が,どのようなものか紹介しよう

見えてきたEAのオンライン戦略
オンラインゲーム市場には奥手だった巨人

 Electronic Artsは,ゲームソフトのパブリッシャとしては,世界最大だ。最近になってActivision Blizzardの急激な追い上げを受けているものの,あるリサーチ会社のアナリストは,2008年度に北米ゲーム市場でミリオンセラーになると予想されるタイトル19本のうち,8本を同社のタイトルから選ぶなど,簡単にNo.1の座を譲り渡しそうにはない。

 Electronic Artsといえば,以前のプラットフォーム競争において,前CEOのLarry Probst(ラリー・プロブスト)氏が,「我々がサポートするプラットフォームが勝つプラットフォームだ」と豪語したことでも知られる。セガのドリームキャストは,Electronic Artsの人気スポーツタイトルを一つもリリースできなかったことが,北米で奮わなかった要因の一つと考えられている。

 事実,Electronic Artが育んできたIPは数多く,最近は徹底したマルチプラットフォーム化を推し進めつつ,成長を続けている。

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サンフランシスコに近いレッドウッドシティに本社を構えるElectronic Arts。広大な敷地を誇っており,サッカー場やビーチバレーボール場などもある

 そんなElectronic Artsにとって,長らくネックとなっているのがオンラインゲーム市場の開拓だ。ご存じのとおり,欧米市場では他社に先駆け,1997年に「Ultima Online」をプロデュースしたが,そのあとはレーシングMMORPG「Motor City Online」(2001年9月発売)やSF MMORPG「Earth & Beyond」(2002年9月発売)など,少し時代を先取りし過ぎたといえる,マニアックなタイトルの失敗が続いた。2002年12月にローンチした「The Sims Online」は,シムズ人気にあやかって「MMO市場初のミリオンセラー」を期待されたが,実際には最大時でも12万人ほどの会員しか集められなかったという。

 また,Electronic Artsがドリームキャストへの参入に足踏みしたのも,ドリームキャスト用ゲームの開発に不慣れだったという理由のほかに,ドリームキャストのオンラインに関する仕様に不安を持っていたともいわれている。

 2001年には,オンラインゲームポータル「Pogo.com」を4000万ドル(約40億円)で買収しているが,この頃はオンラインゲームに対する明確な指針はなかったようで,Sony Online Entertainment,NCsoft,そしてBlizzard Entertainmentなどに,市場の多くをゆずる形となった。

 しかし,ここ数年でマーケットは大きく変化し,“オンライン系カジュアルゲーム”が盛り上がってきた。Xbox Liveのスタートを期に,長らく光が当たっていなかったカジュアルゲームが脚光を浴び始めたのだ。時を同じくしてアメリカでブームとなった,ポーカーゲームの影響も受け,Electronic Artsにとっては“持ち腐れ”状態になっていたPogo.comも軌道に乗り始め,2006年からはアメリカにおけるゲームポータルTOP10の常連へと成長した。

 さらに2007年2月にジョン・リチティエロ氏がCEOに就任すると,その夏にはElectronic Artsの組織再編を断行。EA Games,EA Sports,EA Casual Entertainment,そしてThe Sims Divisionの四つの部門にそれぞれ社長を就任させ,各分野で改革を行いやすい体制を整えた。

 

EAの新規オンラインサービスは
「無料」がキーワード

 新体制へと変わり,Electronic Artsの戦略が明確になり始めているが,とくにオンラインゲーム市場へのテコ入れは,これまでの慎重路線からは一変し,急激に推し進められている。今後ローンチが予定されている以下のようなサービスを見ると,Electronic Artsのオンラインゲーム市場への取り組み方が分かってくるはずだ。

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 2008年2月21日に閉鎖された「The Sims Online」を,大きく改造したのがEA Landだ。The Sims Onlineは,北米で月額9.99ドル(約1000円)を徴収しながらも,目立ったアップデートも行われず,ノータッチ状態になっていた。それが,2007年3月頃から模索が始まり,同年8月以降から約半年で,22回に及ぶアップデートが「Test Center 3」という実験サーバー内で繰り返されていた。そうした実験を踏まえ,EA Landは「Second Life」のようなバーチャルワールドでのコミュニティサービスへと生まれ変わる予定だ。

 無料でプレイでき,プレイヤーは,自分でアップロードした画像を使って,衣装や家具などのテクスチャーを変更させたり,自分の店を開いたりして,バーチャル世界を満喫するという。また,Googleのトップページでのオークションの結果や好きな店舗が営業中かどうかなどを,確認できる機能も実装されるようだ。

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 これまでのバトルフィールドシリーズとは打って変わり,いわゆるカジュアルFPSになって登場するのが,カートゥーン・シェイダーによる親しみある絵柄の「Battlefield Heroes」だ。展開は「Battlefield 1942」のようにスピーディで,視点を3人称に変更できるため,FPSには不慣れなプレイヤーでも取っ付きやすいだろう。サーバー側にプレイヤーキャラクターやステータスが保存され,基本料金は無料。

 発表会の記事で紹介されているように,「毎日8時間もプレイしているような15歳のウルトラスキルを持った小僧に何度もヘッドショットを食らってバカにされないこと」がテーマの一つ。だが,繰り返して遊んで上達していくという楽しさが否定されるわけではないと思うので,どんなバランス調整をしてくるのかが見ものだ。

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 「The Sims Carnival」は,3月初旬からβテストが始まっているElectronic Artsのゲームポータルだ。しかし,Pogo.comのような“旧式”とは異なり,Web2.0的な要素が前面に押し出されている。The Sims Carnivalではプレイヤーが自分でゲームを制作したり好みのゲームを集めたりでき,その過程でコミュニティが形成されていくのだ。「YouTubeのFlashゲーム版」という表現が一番近く,他人のゲームを評価したり,仲間を募って共同制作するなど,コミュニティ作りが念頭に置かれているのだ。

 プレイヤーは,GameCreatorというツールをダウンロードすれば,Flashゲームを自作できる。まだβテスト段階だが,プレイに30秒もかからないようなお手軽なゲームを含めれば,すでに100作ほど公開されているので,制作はそれほど難しくないのだろう。

 Simsの名を冠しているのは「The Sims 2」のアセットも利用できるからである。正式サービス後には,独立系デベロッパの本格的な参加も見込めそうだ。

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 これらのプロジェクトは,すべて「クライアントを無料で配布し,基本的なプレイ料金も無料」という点が共通している。韓国で2005年に実験的な意味合いも込めてスタートさせた「EA Sports FIFA Online」での成果がベースになっているという。

 Time誌が2007年9月に行ったリチティエロ氏へのインタビューによると,韓国でのサービスでは,約10%のプレイヤーがパッケージ購入よりも多くの金額をアイテム購入に費やしたとのことで,その結果,北米でも十分に利用できると判断したらしい。

 ゲームやサービス自体は,決して目新しいものではないが,このようなアジア方式をThe SimsやBattlefieldといったメジャータイトルに組み込むのは,アメリカの大手パブリッシャとしては初めてのことだ。

 Electronic Artsは,年内にはMMORPG「Warhammer Online: Age of Reckoning」のローンチも予定していることを忘れてはならない。すでにβテストの告知も始まっているが,こちらは月額料金制の“正統派”だ。同社にとっては,久々のコアゲーマー向けMMORPGであり,北米,ヨーロッパ,そして日本を含むアジアでのサービスも企画されており,Ultima Online以来の定番化が期待されるところだろう。また,買収したBioWareが開発中である,MMORPGの存在も気になるところだ。

 基本無料のアイテム課金という,日本や韓国で定番となったビジネスモデルが,Electronic Artsによって本格的に北米地域で展開される。その一方で,Warhammer Onlineといった,コア向けタイトルもラインナップされており,2008年は,Electronic Artsのオンラインゲーム戦略が本格的に始動する年となりそうだ。プロブスト氏の言葉を借りるなら,Electronic Artsが現在大きく力を入れているウェブ/オンラインというプラットフォームが,“勝ち組”になるのかもしれない。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。ビデオレンタル店に子供が見逃してしまった「Bee Movie」を借りに行ったという奥谷氏。しかし,在庫処分の半額セールが開催されており,映画好きの奥谷氏は一気に16本ものDVDを衝動買いしてしまったのだとか。しかも買った映画は,「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」や「鉄板英雄伝説」など,あまり聞いたことのないものばかり。奥谷氏は「1回見れば,二度と見ない映画」なので,半額セールを利用して購入したというが,そこまでの評価なら,レンタルで良かったのでは? せっかくビデオレンタル店に行ったのですし。

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