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印刷2008/06/30 20:27

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剣と魔法の博物館 モンスター編 / 第91回:エコー(Echo)

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第91回:エコー(Echo)
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 古代の人々は,流れる川や降りしきる雨,地震といった自然/天災の中に,妖精やモンスターの姿を見いだしてきた。今回紹介するエコー(Echo)も,そうした自然現象にちなんだ妖精である。
 エコーという言葉を辞書で引くと,「こだま」や「やまびこ」を指す言葉として説明されている。言うまでもないが,こだま(やまびこ)は,声/音が谷や山に反響して返ってくる現象。山に向かって叫んだ声が,ワンテンポ遅れて返ってくるために,昔の人々は,山に住む精霊や神様が返答しているのだと考えたのである。誰もが一度や二度は山に向かって「ヤッホー」などと叫んだことはあるだろう。

 妖精としてのエコーは,ギリシャ神話に登場する女性の姿をしたニンフ(妖精や下級の女神の総称)の一種とされ,オレイアデス(Oreades,山の精)の一人だったと言われている。ギリシャ神話の妖精全般に言えることだが,妖精達は陽気で踊りを好む性質があり,エコーはそれらの特徴に加えて美しい声を持ち,おしゃべりが大好きだという。
 とくにそのおしゃべりは魅力的だったそうで,なんと彼女の話術には,神々も一目を置くほどだったそうだ。ひょっとすると彼女の声には,何らかの魔力が秘められているのかも知れない。

 

 ギリシャ神話における妖精達には,悲劇的なエピソードもよく似合うが,エコーも例外ではない。ここでエコーとナルキッソス(Narcissus)の悲しい物語を紹介しよう。
 エコーは,しばしば嫉妬の女神として知られるゼウスの妻,ヘラのそばにおり,巧みなおしゃべりでヘラのご機嫌を取っていた。ところが,これにはウラがあり,彼女はゼウスの浮気がばれないように,ヘラの注意を逸らしていたのである。
 この企みはたちまちヘラの知るところとなり,怒ったヘラは罰として,エコーの自慢の声を奪ってしまった。ただしヘラ自身もエコーの美しい声が気に入っていたのか,声を完全に奪うことはぜず,目の前で話されたことの最後の部分だけは話してもよいという条件を付けたのだ。以来,エコーは他人の発言の語尾を真似することはできても,自分の意志を伝えることはできなくなってしまった。

 ある日のこと。エコーはナルキッソスというテスピア人と出会った。彼は美青年で多くの女性から求愛されていたが,エコーもナルキッソスに求愛した一人だった。ところがエコーは自分の想いを伝えられず,ナルキッソスの語尾を一生懸命に真似ることしかできなかったのだ。ナルキッソスはそんなエコーをつまらなく思い,冷たくあしらう。エコーは悲しみにくれて洞窟に引きこもり,そのまま静かに息を引き取ってしまったのだ。しかし彼女の声だけは残り,こだまとなって山々の間に響き渡ったという(牧羊神パンに言い寄られたエコーが,その愛を受け入れなかったため,パンの怒りに触れてバラバラにされ,砕け散ったエコーの声がこだまになったという説もある)。

 その後,神々はエコーに冷たい仕打ちをしたナルキッソスに,「自分の姿しか愛せなくなる」という罰を与えた。この罰のせいで,水面に映った自分を見たナルキッソスは自分に惚れてしまい,その場から離れられなくなると,やがて衰弱死してしまったのである。亡くなったナルキッソスは,神々によって一輪の花に変えられたという。ちなみに英語で,水仙のことを「Narcissus」と言ったり,うぬぼれ屋や自己愛の強い人を「ナルシスト(Narcist)」と言ったりするのは,この逸話に由来したものである。

 

次回予告:メフィストフェレス

 

■■Murayama(ライター)■■
先日,窓を少し開けた状態で,日課である「Dark Age of Camelot」のプレイを楽しんでいたというMurayama。盛り上がる対人戦に思わずヒートアップし,「おらー!」とか「くっそー!」などと独り言を発しながらキャラクターを操作していたところ,窓の外に人の気配が。チラッと見てみると,外装工事のおじさんと目があってしまい,かなり気まずい思いをしたとのこと。いや,気まずさで言ったら,外装工事のおじさんのほうが上だと思うのだが……。
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