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印刷2007/11/05 19:23

連載

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第60回:バンダースナッチ(Bandersnatch)
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 1871年にルイス・キャロルによって書かれた「鏡の国のアリス」は,「不思議の国のアリス」の続編にあたる児童小説だ。説明するまでもなく,そのストーリーは多くの人に親しまれているが,小説内に挿入された難解な詩も,読者の注目を集めている。
 詩の解釈は人によって異なり,さまざまな憶測を生み,ある意味大人でも楽しめる謎解き要素となっている。さらに「ジャバウォック」「ジャブジャブ鳥」「バンダースナッチ」といった,オリジナリティあふれるモンスターが多数登場することから,ファンタジーファンにとっても読み応えのある作品といえるだろう。
 ジャバウォックに関しては,以前当連載で紹介しているので,今回はバンダースナッチにスポットを当ててみよう。

 初めてバンダースナッチが登場したのは,鏡の国のアリスの「ジャバウォックの詩」だ。同詩では,バンダースナッチは,凶暴なドラゴンの一種であるジャバウォックと並んで危険な存在とされている。といっても,具体的な情報は皆無に等しく,「燻り狂えるバンダースナッチに近寄るな」との記述がある程度。残念ながら鏡の国のアリスでは,その姿については言及されていないし,挿絵なども見つからなかった。凶暴であることは強調されているものの,実に謎の多いモンスターとなっている。

 また,同書のライオンとユニコーンの章では,白の王様の「一分間はあっという間に過ぎてしまう。まだ一匹のバンダースナッチを押しとどめるほうが楽だろう」というセリフから,バンダースナッチは素早く獰猛で,立ち向かうことが非常に困難な存在だということが分かる。さらに「1匹の〜」という記述から,バンダースナッチは個体でなく,種族として存在しているという憶測も成り立つだろう。

 後の1876年に書かれた「スナーク狩り」にも,バンダースナッチが出てくる。その記述によれば,動きが素早く,頸部が伸ばせ,鋭い顎を持っているとなっている。
 最近ではゲームにも登場するが,鏡の国のアリスでの表現が大仰だったためか,ボスクラスのモンスターとして扱われることが多い。原作ではやや臆病な面もあり,大勢の人間を見ると逃げてしまうという記述もあるが,そうした弱点がゲームに反映された例はないので,戦うのであれば正面から全力でぶつかるしかないだろう。

 

 バンダースナッチに関するエピソードといえば,スナーク狩りの第七章「バンカーの運命」が有名だ。この章は,スナークという謎の生物を狩る隊の一員である銀行家(Banker)にスポットを当てたもので,バンダースナッチに締め上げられた銀行家は,顔が鬱血して赤黒くなってしまい,さらにその恐怖のために気が狂ってしまう。おまけに彼が着ていた衣服すらも,恐怖のために白くなってしまうのだ。
 なお,文中ではバンダースナッチを形容する言葉として,frumiousという語が使われているが,これはfurious(激怒した/荒れ狂った)とfuming(燻している,毒している)という語の合成語で,バンダースナッチのみに使われる形容詞である。
 原作者のルイス・キャロルは複数の言葉を合成して,さも一つの語のように見せるテクニックをよく使い,これらは今日ではかばん語(portmanteau)と呼ばれて親しまれている。
 なお,バンダースナッチのネーミングについて,原作者のルイス・キャロルは何も語っていないが,Ban Dog(猛犬)+Snatch(つかむ)の合成語という説が有力である。

 

次回予告:ペリュトン

 

■■Murayama(ライター)■■
最近歯医者さんに通い始めたというMurayama。担当の歯科医が関西弁の愉快な人で,治療を受けるのが楽しみだというのだが,「治療で口を開かれているときに限って,面白い話をしてくる」ため,会話のキャッチボールができずヤキモキしているのだとか。Murayamaの会話好きにも困ったものである。
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