連載


シーサーペント(Sea Serpent)は,しばしばサーペントとも呼ばれるモンスターである。基本的には水棲とされており,巨大な蛇のような姿をしている。性格は非常に凶暴で,近くを通りかかろうものなら,船ごと破壊されてしまうだろう。
シーサーペントはゲームにもよく登場する。鋭い牙による噛み付きや,水に由来するブレスのほか,激しい水流を起こしたり,船に巻きついたりといったダイナミックな攻撃手段を持っている場合もある。
魔法を使う例はあまり見られないが,中にはリバイアサンと同一視されているケースもあり,ごく稀に魔法などを使うものもいる。その場合は,より熾烈な戦いを強いられるだろう。
とくに弱点らしい弱点が設定されていないことも多く(強いて挙げるなら,水属性のモンスターということで火/雷に関連する攻撃だろうか),ゲームでは苦戦する可能性が高い。だが肉体的な弱点はなくとも,地形的な条件を生かすことで有利に戦いを進められることはある。いくつかのRPG/MMORPGで,シーサーペントを含む巨大海洋生物は,陸に上がれないのである。そこで彼らを陸地の付近までおびき寄せ,陸地からの遠隔攻撃で一方的に倒すというテクニックがあるのだ。戦闘システムがエンカウント方式のRPGでは無理だろうが,もしもシーサーペントと戦うことになったら,地の利を生かした戦術で戦ってみるのも面白いだろう。
現実の世界でも,古くからシーサーペントの目撃例があったようで,18世紀までに20件以上,19世紀になると100件以上の目撃情報が残されている。最も有名な目撃例は,1848年8月6日の,イギリスの軍艦ダイダロス号による報告だろう。
同艦は東インド諸島に向けて航海中,全長20m以上の,たてがみのようなものを持つ茶褐色の巨大生物と遭遇。およそ20分にわたってそれを観察したという。この事件は話題となり,タイムズ誌に掲載された。また,艦長であるピーター・マッカーは,「自分の名誉にかけてシーサーペントは実在する」と語っていたらしい。
ほかにも,第一次世界大戦中にドイツのUボートが,英国の船を撃沈したとき,その爆発のショックで浮上した(?)巨大生物を目撃している。その姿は水掻きを持ったワニのようだったとされており,シーサーペントの目撃例として大きな話題になったそうだ。
また,これは目撃例ではないが,シーサーペントを語るうえで欠かせない,ユニークな逸話を紹介してみよう。1845年,化石収集家として知られるアルベルト・C・コッホは,とある化石を公開した。それは全長35メートルにも及ぶ巨大生物の化石で,ヒュドラルコス・シリマニ(海蛇の王)と名づけられた。このシーサーペントを連想させる化石はたちまち話題となったが,動物学者ジェフリーズ・ワイマンを中心とした学者達の検証によって,絶滅した鯨の一種 ゼウグロドンの化石を精巧に組み合わせたものだということが発覚した。とはいえ,ニセモノと判明しても人気はあったようで,興行的には成功を収めたらしい。
シーサーペントの正体については諸説あり,恐竜プレシオサウルスやモササウルスの生き残り,巨大ウツボ,ダイオウイカなどの説があるが,リュウグウノツカイではないか? というのが最有力と言われている。リュウグウノツカイは,体長5〜10メートルまで成長する深海魚の一種で,銀色の風貌は実に神秘的であるため,科学の発達していなかった時代の人々には,シーサーペントとして映ったのかもしれない。シーサーペントの正体についてアレコレ考えてみたいという人は,当連載の第7回:クラーケンにも目を通すといいだろう。

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