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ソニー報道関係者向け説明会レポート:2010年度に3D戦略を推進,すべてのPlayStation 3は3Dゲーム対応へ
ソニーグループでは,コスト削減目標を3300億円と計画しているが,そのうち80%以上は上半期のうちに達成,2009年度の営業損失見通しを1100億円から600億円に上方修正したとのこと。
続いてストリンガー氏は,今後の重点施策として以下の4点を挙げた。
・中核事業(テレビ/ゲーム/デジタルイメージング)の安定的な収益力確保
・革新的なハードウェア/ソフトウェア/サービスの融合による新たな顧客体験の提供
・新規顧客および新規市場の開拓
・環境に配慮した商品および事業活動への重点的取り組み
これらの施策を通じて,営業利益率5%,株主資本利益率(ROE)10%の達成を目指すとのことだ。
トランスフォーメーションは,これまでは事業ごとに個別に行ってきた「調達/生産/物流/サービス」「ソフトウェア設計」「販売/マーケティング」という共通機能を,横断的なプラットフォームとして集約することで,組織としてのスピードと効率の改善を図るというものだ。具体的には,「調達/生産/物流/サービス」では,資材調達コスト/物流費の低減,事業所統廃合,キャッシュフロー改善,「ソフトウェア設計」では統一感のあるユーザーインタフェースの提供や機器間連携の強化,ソフトウェア共通化による効率改善と設計スピードの改善,「販売/マーケティング」ではソニーブランド強化への戦略的な投資,ソニー直営店の強化などが挙げられた。
続いて,先にストリンガー氏が挙げた重点施策について,吉岡氏から具体的な説明が行われた。
中核事業の収益力確保については,デジタルイメージング,テレビ,ゲームにおける施策の説明がなされた。
まずデジタルイメージング事業だが,デジタル一眼レフ商品ラインナップの拡充と強化,エントリーセグメント拡充による市場シェア拡大,ネットワーク対応商品の拡充を実施していくとのこと。なおネットワークについては,後述するSony Online Service(仮称)にすべてのデジタルイメージング製品が対応する模様だ。
テレビ事業は,2010年度の黒字化を,2012年度には台数ベースで全世界20%のシェアを目標とするとのこと。
黒字化に向けては,「商品力アップによる数量の拡大」「モデル採算性の改善」「構造改革推進による損益分岐点の改善」を3本柱にするとのこと。
2010年以降は,専用眼鏡による立体視に対応した3Dテレビを全世界に投入していくほか,OEM/ODMを積極的に取り入れ,新興国需要を取り込んでいくとのこと。そのほか,設計プロセスの効率化,リソースの削減,水平分業化などが施策として挙げられた。
また,これまでは“売って終わり”だった既存ビジネスモデルから脱却し,アプリケーションやコンテンツなどをSony Online Service(仮称)を通じて提供する“売ってから始まる”ビジネスモデルを作り出すことを目指していくとのことだ。
ゲーム事業は2010年度の黒字化が目標
すべてのPlayStation 3はアップデートで3Dゲームに対応
平井氏は,ゲーム事業では2010年度の黒字化が目標だと述べた。そのために,まずはPlayStation 3のコストダウン,オペレーション効率化など横断的改善活動による採算性の改善,PS3/PSP/周辺機器/ソフトウェア/ネットワークサービスを組み合わせた売り上げ拡大の二つを迅速かつ確実に行っていくと説明する。
なお平井氏はオンラインゲームについても触れ,これまでは無料のものだけだったが,今後は“プレミアムなもの”を提供することを検討中と述べた。
続いて平井氏は,2009年9月に新型PlayStation 3,2009年11月にPSP goが発売され,タイトルラインナップもダウンロードコンテンツを含め充実していることをアピール。そして,「10年レンジの製品として設計された」PlayStation 3のアドバンテージを五つ挙げた。
一つめは,Motion Controller。本製品については「こちら」の記事で紹介したように,PlayStation Eyeと組み合わせて直感的な操作を行えるデバイス。なお平井氏は,Motion Controllerが「DUAL SHOCKに続く第二のデファクトコントローラになる」と述べていた。
二つめはBlu-ray Disc。高画質のゲームを実現するだけでなく,空いた容量にムービー/デモ/広告などのコンテンツを入れる可能性もあると,平井氏は述べていた。
三つめとなるPlayStation Networkでは,ゲームはもちろん,ビデオやコミックなどのノンゲームコンテンツも,これまで以上に充実させていくとのこと。そのために,2010年の第二四半期には,ノンゲーム用の開発ツールの配布を予定しているとのことだ。
四つめは,ゲームや映画をコピー/ムーブして持ち出せたり,リモートプレイでPlayStation 3を操作できたりといった,PlayStation 3とPSPや一部携帯電話との連携が挙げられた。
そして最後の五つめが3Dゲームである。先に挙げた3D対応テレビのようなソニーの3D戦略に併せ,PlayStation 3に立体視に対応したゲームを投入する。また3Dゲームについては,2006年以降発売されたすべてのPlayStation 3において,ファームウェアアップデートのみで対応できるようにすると平井氏は語った。
PlayStation Networkを根幹に
新サービス“Sony Online Service”(仮称)を展開
次に,ネットワーク対応商品およびサービスについて,平井氏がプレゼンした。
最初に掲げられたのが「ネットワーク時代の新しいユーザーエクスペリエンス(UX)の実現」で,これがストリンガー氏の述べた「革新的なハードウェア/ソフトウェア/サービスの融合による新たな顧客体験の提供」にあたるわけだ。
まず,PlayStation Networkは現在,登録アカウント数は3300万で,アクティブユーザー率が高く,2009年度の売上見込みは前年度比3倍規模の500億円であると,堅調さをアピール。また,ダウンロードゲームとアドオン(ダウンロードコンテンツ)が収益に大きく貢献していると平井氏は述べる。
PlayStation ONEのダウンロードゲームは現在650タイトル,DLCは1万以上になったとのことだ。そのほか,2417本以上の映画,1万5000以上のテレビ番組を提供するビデオデリバリーサービスもさらに増強中とのこと。また,音楽ビデオやPSP向けコミックコンテンツの配信など,新しいサービスに取り組んでいる例も挙げた。
そして今後は,3300万アカウントを擁するPlayStation Networkを生かし,PlayStation 3/PSPのみならず多様なソニー製ハードウェアと融合したネットワークサービスを展開していくとのこと。それが先に何回か話に出た「Sony Online Service」(仮称)である。
PlayStation Networkでは,ゲームとビデオを機軸にサービスを継続して拡大していくが,そのプラットフォームを効果的に利用しつつSony Online Serviceへと展開していくそうだ。
一つのユーザーIDで複数のデバイスに対応し,どの商品を使っても共通した“体験”を実現する機能を実装していくとのことで,ネットワークに強い,新しいモバイル商品の開発も計画されているとのこと。
また平井氏は,SNSやアプリケーション,ユーザージェネレーテッドコンテンツといった,サードパーティのサービスも積極的に導入することを検討していると述べた。
Sony Online Serviceを展開する目的は,ソニー製品というハードウェアの価値を向上させるためにあるとのこと。なお,Sony Online Serviceは,ソニー製品という縛りのある“クローズ”のコミュニティとなるが,将来的には,ソニー製品と他社製品の差異化を踏まえたうえで,オープン化することも視野に入れている模様だ。
平井氏は最後に,ゲームのネットワークサービスが2010年度の黒字化,ネットワークサービス全体としては2011年度の黒字化を目指し,2012年度には約3000億円規模の事業を目指すとコメントした。そして,電子書籍などネットワークモバイル事業を強化拡大することで,2012年度末までにネットワーク対応商品を,台数ベースで約3.5億台普及させたいと述べ,プレゼンテーションを締めくくった。
そのあとは吉岡氏が再びプレゼンし,ソニーの3D戦略について説明した。簡単にまとめると,3D映像の撮影機器やゲーム開発ツールといったコンテンツを作る部分から,流通,そしてテレビやゲーム機といった3Dを出力する機器までのすべてをソニーが提供することで,3D市場を牽引していくとのことだ。
その準備として,対応フォーマットの確立としてのHDMI規格の標準化,PlayStation 3での3Dゲーム導入,3D中継放送導入の全面的サポート,3Dシアター展開の加速などが挙げられた。
ゲーマーにとっては,3Dゲームが本説明会の一番の注目ポイントだと思うが,平井氏は現行のPlayStation 3すべてが3Dゲームに対応すると明言していた。PlayStation 3においては,3Dゲーム導入のハードルとなるのはテレビだけとなりそうである。どういったゲームタイトルが3D対応としてリリースされるかにもよるが,来年以降の3Dゲーム普及がどうなっていくか,注目していきたいところだ。
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