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「Game Tools & Middleware Forum 2013・東京」開催,SCE製ツールの最新動向を見る。PS4の動向は? PS Vitaで脈拍検出って?
最初に出てきたのはPlayStation 4(以下,PS4)の話題で,サードパーティ製のゲーム用ミドルウェアの対応状況が紹介された。スライドで挙げられたのはその一部とのことだが,主なミドルウェア開発会社はほとんどが対応してきているようだ。アーキテクチャがPCに近いため,PlayStation 3(以下,PS3)のときのようなSPU最適化で苦労したりということもなく,かなりすんなりサポートが進んでいるとのこと。システムとグラフィックスで兼用されるGDDR5メモリも高速なので,ほとんど最適化の必要もなく動くと,評判はよいようである。
PhyreEngineは,SCEから無償でライセンシに提供されているゲームエンジンで,2008年の提供開始以来,110タイトルで使われているとのこと。主にダウンロード版のゲームでよく使われているそうだ。PlayStationプラットフォーム間でのクロスプラットフォーム化を進めるためのエンジンでもあり,PS4,PS3,PlayStation Vita(以下,PS Vita)に対応している。
ソースコードが提供されているほか,サンプルが20以上,そして典型的なゲームに対するテンプレートが用意されており,テンプレートをいじっていくことでゲームができるという。用意されているのは,
- 3D 野外の1人称・3人称視点
- 3D 室内の1人称・3人称視点
- 2Dスプライトベース
- 2.5D 3D/2D混在(予定)
のもので,大雑把な括りながら大半の種類のゲームに対応できそうな雛形が用意されている。例えば,野外での1人称または3人称視点ゲームでは,広大なマップをシームレスに歩き回れたりと,難しそうな部分は最初から作り込んであるので,比較的簡単にゲームが作れそうだ。開発中とされる2.5Dないし2D/3D混在のものは,高度なポストエフェクト処理に対応したもので,PS4での利用を想定したもののようである。
春に包括的提携が発表されたUnityについても紹介が行われた。
PhyreEngineがPlayStationプラットフォーム間でのクロスプラットフォーム化を図るものなのに対し,Unityは,もっと広い意味でのクロスプラットフォーム化を図るものという位置付けだ。サポート対象となるのは,PS4,PS3,PS Vita,PS Mobile,そして初期の提携発表では言及されていなかったGAIKAIも加わっている。
Unityと提携した理由については,インディーズ系のデベロッパに参入してきてもらいたいという強い思いがあったからだとの説明があった。少人数でも開発可能な環境や,ダウンロード配信など流通環境も整っており,今後インディーズの占める割合はさらに大きくなるだろうというのが豊氏の見解だ。「少人数だからこそ新しいアイデアのゲームが出てくるのではないか」と期待しているという。
現状のインディーズ開発者の多くはスマートフォンやタブレット市場,PC市場を活動の中心にしているのだが,ぜひタッチインタフェースだけではなく,ボタンなど,フィジカルなインタフェース向けのゲームをインディーズの人達に試してもらいたいと豊氏は語っていた。
なお,多くのプラットフォームでゲームを配信する,とあるインディーズの話では,PS Vitaでの注目度が最も高かったとのこと。「iPhoneやAndroidでは埋もれてしまうから」というのは,喜んでいいのか微妙な理由だが,PlayStationプラットフォームがインディーズゲーム発表の場として認知されつつあるのはよい傾向だろう。また,SCEでもインディーズに最大限のサポートをしたいという。個人であればPS Mobileがお勧めで,少人数であればSCEのサードパーティソリューションが窓口になると参加を呼びかけていた。
その最新の応用例として紹介されたのが,7月21日まで六本木ヒルズで行われていた初音ミク関連のイベントだ。これは,六本木ヒルズの施設の一つであるメトロハット(Google ストリートビュー)を,PS VitaやXperia Zのアプリを通して見ると,初音ミクの踊る姿が見えるというもの。壁面に画像が展開されていたり,空中を浮遊するステージ上で等身大の初音ミクが踊ったり,最後には,メトロハットの上で巨大初音ミクが踊りだしたりといった具合だ。
さらに興味深いのは指を使った脈動測定だ。PS Vitaのカメラは正面右上隅に配置されているのだが,そこに指を当てて,透過光から脈動を検出しようという試みだ。こちらは2,3bitの変化があるとのことなので,顔による検出よりも現実性はあるかもしれない。ただし,じっとしてないとダメなようなので,ゲーム中の脈動をうまく取れるかということになると,ちょっと微妙なところかもしれない。
脈拍検出にカメラを使うというのは面白い発想だが,精度はあまり高くなくても,プレイヤーの興奮状態を検出できるようになれば,ゲームにフィードバックすることでいろいろなことができそうだ。ちなみに,これはビデオ映像に対しても使えるとのことで,ストリーミングプレイヤーや動画再生ソフトに統合されても面白そうだ。
ちなみに,このPlayViewは,これまで独自のライセンスで配布されていたのだが,7月末からライセンス形態を変更し,一般のPlayStation系開発ライセンスの一環として使えるものになるとのこと。
タイミング的にちょっと期待したPS4関連の話題はほとんど出てこなかったのだが,とりあえずかなり開発しやすいハードであることは窺えたので,各社のタイトル開発なども順調に進んでいることに期待したい。
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