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「第21回 3D&バーチャルリアリティ展」開催。そろそろAR&MRが本格展開? 3Dプリンタも多数展示
4Gamer的には,3D映像技術や関連デバイスなど,ゲームでも利用されそうなモノを先取りして紹介している展示会だと思っておけばいいだろう。工業用が中心なので,実際に民生用のゲームデバイスにまで落ちてくるかは不明だが,ゲーマーとしては押さえておきたい業界動向も窺えるイベントだ。例年どおり,今回も目についた出展物をレポートしてみたい。
筑波大学によるカメラを使った空間ポインティングデバイス。上部に取り付けたカメラで指の3次元座標を読み,物体をモデリングしている |
下から吹き出す煙をスクリーン代わりにして映像を投影するデバイス。風には非常に弱いが,空間に映像が浮かぶ仕組みは面白い |
MREALの体験デモも。Mixed Realityはゲームに使えるか?
今年の流行はMR(Mixed Reality)とAR(Augumented Reality)だろうか。
ARもMRも,意味としてはほぼ同じものなのだが,ARというと,白黒の幾何学模様が印刷されたマーカーをカメラにかざすと,なにか3Dオブジェクトなどが映って見えるというのが,これまでの主要な展開だった。ARと聞けばそういうものを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。一方,MRと呼称している展示は,もう一歩進んだ内容が多いように思われる。
以前,Unite Japanの記事で少し紹介したこともあるキヤノンシステムソリューションズの「MREAL」はMRの代表格で,今回の展示会で体験会も開かれていた。「体験しないと分からない」といわれるMRをようやく実地で体験できる機会を得たので,さっそく紹介してみたい。
さて,一般に出回っているARアプリだと,ARマーカーを動かすと,ちょっと遅れて画像がついてくるようなものがほとんどだと思われるが,MREALではそのようなCG画像のズレがまったくない。映像自体のフレームレートがやや低めだったり,動きに対するレイテンシが少しあるのは確かだが,それでもきっちりと現実(カメラ映像)とCG映像はシンクロしている。体を動かしたり首を傾げたりといった動きにも完全に追従する。
そういった観客の動きを検出するために,デバイスに何本かの「ツノ」が生えているのが分かるだろうか。会場には上部を取り囲むように複数台のカメラが設置されており,そこから「ツノ」を読み取った観客(装着者)の動きを高精度で反映しているわけだ。
ちなみに,今年の会場内では,例年のVR的なデモでは見られなかった,こうしたツノ付きのHMDが多数見受けられた。CG映像だけを視界に提示するVRとは違って,カメラ映像とCG映像を合成するMR的なデモでは,より正確な位置測定が必要になるということだろう。
MREALのデモがどう見えるかについては,文章や写真だけでは非常に説明しにくいのだが,会場では,デモ機それぞれの映像が個別のディスプレイで表示されていたので,ステージ全体を撮影したムービーでデモの雰囲気を味わってみてほしい。なお,手前にいる人が見ている映像はステージ右下の画面に表示されている。
さて,この技術,一言でいうと「ようやく登場した許容できるクオリティのAR」と表現するのが分かりやすいだろうか。「これなら使える」「これはほしい」と思わせるだけのものになっている。会場ではオフィスの模様替えシミュレーションのデモなど,堅実な応用事例も紹介されていたのだが,エンターテイメントでこそ花開くもののような気がしてならない。もっとエンタメ寄りのデモも見てみたいものだ。
誰もが“MAKER”に。3Dプリンタは花盛り
比較的手ごろ? なMakerBotの「Replicator 2X」 |
こちらも低価格で知られるCubifyの「Cube」 |
『MAKERS』の影響もあってか,今年はかなり広いスペースで多くの製品が展示されていた。まあ,プロ向けのイベントなので民生向けで使えそうな製品はほとんどないのだが,それでも3Dプリンタを使ったラピッドプロトタイピングは,すでに十分に受け入れられている感じだ。
3Dプリンタには多くの方式があるのだが,最近低価格で提供されているもののほとんどが,プラスチックなどの樹脂を融かしてインクジェットプリンタ風に印刷し,一層ずつ積み上げていくタイプだ。精度をある程度妥協すれば,それこそホームセンターにあるような部品で構成できることもあって,世の中には500ドルを切るようなものも出てきている。とはいえ,会場で見かけたのは,最低でももう少しちゃんとしたクラスの製品だ。
比較的お手ごろで性能的にもプロの目に耐える範囲なのか,何か所かに置いてあったのが「Replicator 2X」だ。この機種は,2色のプラスチックないしABS樹脂が同時に利用でき,形状データのデータベースも充実している。国内での価格は38万円くらい。元の値段が2800ドル(送料別)なのでちょっと割高感はあるが,製品として手軽に入手できるというのは悪くない。
3Dプリンタで大々的にブースを展開していたのはStratasysで,1mにおよぶ大きなものまで作れる機種や,比較的手軽(軽自動車1台くらいの値段だが)なものまで幅広く展示されていた。まあ,例年出展はしているのだが,今年はえらく気合が入っている感じだ。
さて,こういった3Dプリンタでは,複数の輪が絡み合った鎖帷子みたいなものも一発出力できるのだが,そういった中空に浮いた部品を固定するためにはサポート材が必要になってくる。プラモデルでいうと,ライナーの部分も一緒に出力する感じになると思えばよい。複数の樹脂を使えるプリンタでは,サポート部の樹脂を使い分けたりするわけだが,込み入った構造のものを一発成型しようとするとサポート材を撤去できない事態というのは容易に想像できる。キーエンスでは水に溶けるサポート材を開発し,水に漬けておくだけで完全にサポート材を除去できるようにしたという。なんか凄くよさそうな感じだ。
個人的には,昨年紹介した金属粉末を溶融していくタイプが一番グッとくるのだが,さすがにお値段が1桁変わってくる。とはいえ,数年前には個人で購入などおおよそ考えられなかった3Dプリンタが,いまや個人でも手が届くところまで急速に降りてきつつある。今後も高性能化と価格破壊が進行して,今回紹介したようなハイエンド機並みのものがお手ごろになることに期待したい。
3D&バーチャルリアリティ展公式サイト
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