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印刷2012/11/28 00:00

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[SQEXOC 2012]スクウェア・エニックス・オープンカンファレンスレポート「メイキングオブ「Agni's Philosophy」〜リアルタイムCG映像の未来〜」編

橋本善久氏(CTOテクノロジー推進部コーポレート・エグゼクティブ)は,昨年から開始されたこのオープンカンファレンスの発起人でもある
 2012年11月23日と24日の両日,スクウェア・エニックスは,同社のテクノロジー推進部が研究開発中の技術をカンファレンスのスタイルで公開する「スクウェア・エニックス オープンカンファレンス2012」を開催した。
 昨年も10月に開催され,大変な盛況ぶりだったことから,今年は大きめな会場に場所を移し,2日間の開催となった。なお,9月に開設された申込受付サイトでは,申込処理の開始からわずか数分で定員の500名をオーバーしてしまったと伝えられている。
 昨年以上に,今回の開催の注目度が高くなってしまったのは,昨年の内容が充実していたことに加え,今年6月のE3で公開されたLuminous Studioのリアルタイム技術デモ「Agni's Philosophy」についての解説が行われることが事前に告知されたためだろう。

 本稿では,事実上のオープニングセッションであり,基調講演的意味合いを持った初日の第1セッションの模様をレポートする。
 登壇者は,橋本善久氏(スクウェア・エニックス CTO テクノロジー推進部 コーポレート・エグゼクティブ)だ。

無料の技術カンファレンスをこの規模で開催することに当たっては,表に出せない苦労もあったと聞いている。運営スタッフのほとんどが,テクノロジー推進部の実動メンバーでもある


Agni's Philosophyとは?〜次世代技術デモはこうして制作された


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 まず,橋本氏が語ったのは「Agni's Philosophy」とはなにかについてだ。
 これは「その作品単体」についてだけ説明するならば,テクノロジー推進部が開発中の新世代ゲームエンジン「Luminous Studio」上で制作され,実行されるリアルタイムCGデモということになる。

 ただし,スクウェア・エニックスの作品ということから,同社のコーポレートイメージともいえる「ファイナルファンタジー」の世界観を盛り込んだ形で作り込まれており,次世代のファイナルファンタジーの姿を強く意識したものであることは間違いないだろう。

Agni's Philosophyは,将来の「ファイナルファンタジー」はこのくらいの映像になるという「所信表明」的な作品でもある
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 「ファイナルファンタジーの世界観」とは言いつつも,過去作品と関連したものではなく,完全新作の世界観となっている。開発規模は予想外に大がかりで,コンセプトとストーリーの制作に約半年,そして映像制作にも約半年を掛けている。ちょっとしたゲームを開発するくらいの力の入れ方である。

 とはいえ,Agni's Philosophyはゲームではなく「技術デモ的な映像作品」であったため,その開発の流れはやや特殊であった。

 まず,最初に,今回のプロジェクトの中核メンバーである橋本氏と,野末武志氏(スクウェア・エニックス ヴィジュアルワークス部 チーフ・クリエイティブ・ディレクター,Agni’sPhilosophy クリエイティブ・ディレクター),岩田 亮氏(スクウェア・エニックス テクノロジー推進部,リード・アーティスト)により,コンセプトの確立,ストーリーボードとアートワークの制作が行われている。
 橋本氏は業界では名の通ったゲームテクノロジーのスペシャリストである。野末氏はスクウェア・エニックスのオフラインレンダリングチームであるヴィジュアルワークス部のコアメンバーの1人。そして岩田氏は,元々ヴィジュアルワークス部のコアメンバーのアーティストであったが,技術方面にも明るかったためテクノロジー推進部に移籍し,現在はアートと技術の両方の視点からプロジェクトを見据える立場を務めている。ちなみに,本作の主人公Agniの造形は岩田氏自身のデザインによるものである。

左から岩﨑 浩氏(スクウェア・エニックス テクノロジー推進部,リード・エンジニア),岩田 亮氏(スクウェア・エニックス テクノロジー推進部,リード・アーティスト),野末武志氏(スクウェア・エニックス ヴィジュアルワークス部,チーフ・クリエイティブ・ディレクター,Agni’sPhilosophy クリエイティブ・ディレクター),橋本善久氏(スクウェア・エニックス CTO,テクノロジー推進部 コーポレート・エグゼクティブ)

 コンセプトの立案に際しては,技術デモとはいえ,「映像作品」として,そしてなによりワールドワイドに公開していくことが想定されていたため,前述の3人のコアメンバーにより綿密な議論が重ねられた。

 こうしてコアメンバーによって作られたコンセプトをもとに,ヴィジュアルワークス部がオフラインレンダリング版(プリレンダー版)の「Agni's Philosophy」を制作。そして,このプリレンダー版の「Agni's Philosophy」をもとに,テクノロジー推進部が同等のクオリティを維持することを命題として,リアルタイムレンダリング版をLuminous Studioベースで制作していった。
 ただし,実際にはプリレンダー版が完成してからリアルタイム版の制作が進められたわけではなく,多くの部分でプリレンダー版とリアルタイム版の制作工程はオーバーラップしていたそうだ。

 また,Luminous Studioの機能には,当然,MayaなどのDCC(Digital Content Creation)ツールとの連携(リンク)機能も含まれるため,ヴィジュアルワークス部側もプリレンダー版のライティングなどにおいては,この機能を徹底活用して作業を進めていたことが明かされた。

「Agni's Philosophy」プロジェクトの制作フローと制作体系
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基本的なライティング設計はLuminous StudioとリアルタイムリンクさせたMayaで行われた。ライティング結果を即座に確認・調整できるリアルタイムイテレーションは高い作業効率を発揮できたとされている
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 開発規模は,ヴィジュアルワークス部側からのコンテンツをリアルタイム版にコンバートするスタッフが4人,プリレンダー版の特殊効果をリアルタイム版向けに解釈して実装するスタッフが4人と発表されている。事前に進められていたテクノロジー推進部側の基礎研究の成果もあり,リアルタイム版制作スタッフは意外なほど少人数のチームで進められた。
 一方で,ヴィジュアルワークス側の従事人数は非公表となっており,こちらは,それなりの規模になっていたのではないかと推測させる。いずれにせよ,本プロジェクトはスクウェア・エニックスによる本気モードでの取り組みだったということになる。

Agni's Philosophyの制作規模
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 「技術デモ制作プロジェクトでありながらも,スクエニが本気モードで取り組んだ理由」……ここが気になる人も多いことだろう。
 その開発動機は非常に前向きなところからきている。
 Luminous Studioは新世代ゲームエンジンとして開発が進められているが,仮にPlayStation 3,Xbox 360などの次の世代のゲーム専用機,あるいはDirectX 11世代のGPU搭載PC向けゲームを開発する際に,そのエンジンでいきなりゲーム開発が順調に進められるかというと,さすがにぶっつけ本番では不安が残る。
 そこで,テクノロジー推進部としては,Luminous Studioを用いての仮想的な次世代ゲーム開発プロジェクトを立ち上げることにした。それが「Agni's Philosophy」ということになる。
 橋本氏は,「このプロジェクトを進めていけば,さまざまな問題に直面するであろうことは予測できたが,それこそがLuminous Studioを鍛えてくれるチャンスとなるはずだし,なによりエンジン制作スタッフをも鍛えてくれるはず」だ……と考えた,と当時を振り返っていた。

「Agni's Philosophy」の開発目的
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 さて,Agni's Philosophyは映像作品であり,ゲームではない。技術デモという意味では,「映像」以外のテーマもあったはずだが,最初は,ハイエンドゲームの要素として重要で,今世代から次世代にかけて,技術世代のステップアップ度が最も激しいと目される要素である「映像」(グラフィックス)を選択したのである。

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FF1(ファミコン)
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FF3(ファミコン)
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FF4(スーパーファミコン)
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FF5(スーパーファミコン)
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FF7(PlayStation)
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FF8(PlayStation)
橋本氏のプレゼンテーションでは,1980年代のファミコンから始まったゲームグラフィックスの歴史を「ファイナルファンタジー」シリーズで振り返るひとコマも
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FF10(PlayStation 2)
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FF12(PlayStation 2)
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FF13-2(PlayStation 3)
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FF14(PC/PlayStation 3)

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 最近では,ゲームグラフィックスとしての映像については,プレイヤーから「これ以上進化する余地があるのか」という後ろ向きの意見がされることがある。
 この問いに対し,橋本氏は,むしろ3Dゲームグラフィックスの本格進化は「これからが本番」だと答えていた。確かに,初代プレイステーション時代からゲームは3Dグラフィックス化したが,リアルな表現はもちろんのこと,アーティスティックな表現を行ううえでも,初代PlayStationやPlayStation 2の時代は多くの要素を諦めざるをえなかった。PlayStation 3になって,やっとプログラマブルシェーダ時代となり,表現に自由度が見出せるようになった。それは端緒にすぎず,「進化」「発展」という意味では,確かに「次」が本番という解釈は,開発の現場にいる技術者,クリエイターからすれば正直かつ自然な見方なのだろう。

 そして,「ゲームグラフィックスの究極形」として当面の目標にしやすいのがプリレンダーによるグラフィックスであり,今回のデモ制作に関しては,プロ集団である自社ヴィジュアルワークス部とコラボすることで高効率に互いの技術をすりあわせていくことが,Agni's Philosophyというプロジェクトの大きな意義の一つにあったに違いない。

Agni's Philosophyプロジェクトの意義とは,次世代ゲーム開発の仮想体験であった
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 セッション後半では,Agni's Philosophyの映像全編を流したあと,実際に,ランタイム版を実行し,岩﨑 浩氏(スクウェア・エニックス テクノロジー推進部,リード・エンジニア)の操作によってライブデモが行われ,これが単なる映像ではなく,ちゃんとリアルタイムに描画されていることが改めて示されていた。
 「Agni's Philosophy」における技術的な見どころの数々については別セッションが24日に行われているので,詳細はそちらに譲りたい。

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「実際にランタイムを動かしていますよ」……とアピールするためにジョイパッドを掲げる岩﨑氏
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「Agni's Philosophy」は映像作品なので,カメラシーケンスから外れている情景は作り込まれていない。岩?氏は,わざとカメラを通常起動から大きく外して,背景がまったく作り込まれていない部分を公開してみせた


「未来のゲーム体験」を作り上げるために


 「Agni's Philosophy」は,6月にE3で公開されたあと,各種メディアで紹介され,さらに各所のイベントやインターネット上で公開された。
 公開後に寄せられた各方面からの評判は上々で,とくに海外からの評判が高かったことや,女性からの反応が良好だったことが,開発スタッフを喜ばせたようだ。また,「Agni's Philosophy」はゲーム業界以外の人々からも注目を集めているそうで,とくに映像制作分野からの問い合わせも多かったとのこと。昨今,「ノンゲームの映像制作にゲームエンジンが利用できないか」という検討が実際に国内外の映像業界で真剣に行われているため,こうした問い合わせがくるのもうなずける話ではある。
 また,今回の開発では,「どういった表現がまだプリレンダーに及ばないのか」といった表現レベルの格差の認識や,その代替案の開発,「データのコンバートやワークフローに関連した問題」への直面を経験できたそうで,橋本氏の想定通りではあるが,次世代ゲームの水準を満たすゲーム開発で発生する問題点の洗い出しが先行体験できたこともよかったと振り返っている。

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「未来のゲーム体験」を作り上げるためにテクノロジー推進部とLuminous Studioの挑戦はまだまだ続く……
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 PlayStation 3(2006年),Xbox 360(2005年)の登場前夜ともいえる2003年〜2004年当時,すでに欧米の有力スタジオはゲーム開発効率の向上とゲームのクオリティの底上げのための技術開発を先行して行っていた。PS3,Xbox 360の登場直後は,この取り組みの差があったためか(現在はちゃんとキャッチアップできているものの),日本のゲームスタジオは技術面において,ややスタートダッシュに出遅れた感が否めなかった。スクウェア・エニックスとしては,当時の反省もあり,今回のような取り組みを行っているのかもしれない。
 そして,こうしたプロジェクトの存在や,その詳細までを明かすのは,日本のゲーム開発シーン全体に「うちはここまでやっている」ということをアピールすることで業界全体の盛り上がりや,技術力の切磋琢磨を狙っているのだろうか。この試みが,日本のゲーム業界へのよき刺激となり,次世代ゲーム開発に弾みがつくことに期待したい。
 今回のカンファレンスで公開された技術的な内容は,続く記事で取り上げる予定なので,時代の最先端を走る研究開発と最新動向を期待している人は,そちらをお楽しみに。

[SQEXOC 2012]3分半の技術デモムービーが観衆の心を捉えた理由とは? スクウェア・エニックス 橋本善久CTOが「Agni's Philosophy」のコンセプトワークを解説

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