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[Gamefest 08#09]教育現場で使われるXNA Game Studioの現状
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印刷2008/09/08 22:04

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[Gamefest 08#09]教育現場で使われるXNA Game Studioの現状

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 Gamefest初日(9月4日)の,XNA Game Studioセッションの締めくくりとして行われたのが,「XNA Game Studio 教育機関への導入を語り合うラウンドテーブル」だ。
 まず,登場したのは,以前紹介した東京工芸大学のゲームコースにおいて使用されるXNAの教材を開発したSAS。オブジェクト指向的な教育コンテンツを模索する豆蔵。そして,XNAゲームコンテストで優秀賞を獲得した学生を育てたトライデントコンピュータ専門学校の3者がそれぞれの取り組みについて発表した。

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 工芸大で使われているSASが開発した教材は,110mハードル走をゲーム化したもので,実際の開発の雰囲気を体験することを重点に置き,XNAの基礎から段階を追ってゲームの各部を解説するようになっている。学生が慣れているだろうということでドキュメントはHTML形式にされ,サンプルプログラムもリンクされている。インストールなどの手順が必要な部分では,ダイアログやフォームのスクリーンショットに番号を記入し,順番と内容を明確にするなどの配慮がなされているという。
 これは,XNAによるゲーム作りの基礎を解説するもので,プログラム部門の2年生を対象に,1年間かけてのカリキュラムとなっている。とはいえ,ゲームデザイン部門やデザイン部門の学生とチームを組んでXNAでゲームを作る授業も2年次に行われる(この110mハードル走を参考に作るもの)ことになっており,そっちは年末までに仕上げるという話だったように筆者は記憶しているので,実際には110mハードル走の部分の学習はきわめて短期間で行われるのだろう。
 この教材は,工芸大の授業で使われるだけでなく,書籍として発売されることになったようだ。発売日などの詳しい情報はなかったが,興味のある人は,発売に期待しよう。

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 続いて発表を行った豆蔵の皆川誠氏は,オブジェクト指向を生かしたゲーム開発法への取り組みについて語った。豆蔵という会社は,UML,Extreme Programingほか各種アジャイル開発,オブジェクト指向全般でのエキスパート集団であり,業界向けの開発者セミナーなども多く開催しているので,Javaなどを使ったエンタープライズ向け開発の現場では知らない人のないくらい有名な会社なのだが,ゲーム系とはずいぶん畑が違う。
 なぜ豆蔵が,ゲームの開発系に手を出してきたのだろうか。皆川氏は,いかなる経緯でかは不明だが,XNA Game Studioに触って「とってもよいものだ」との印象を持ったという。
 しかし,ゲームを作ろうと調べると,各論については詳細な解説があるものの,なぜか,ゲームの全体的な作り方についての資料がほとんどないのに驚いたという。さらに驚いたのが,ゲーム業界の開発体制の古さのようだ。技術的には恐ろしく高度なことをやっていながら,なぜUMLなどで解説した資料がほとんどないのかというのは,エンタープライズ系開発の世界からゲーム開発の世界を見たときに,おそらく誰もが感じることであろう。

 これはゲーム開発分野が遅れているせいもあるだろうが,一部のオブジェクト指向開発者が先端を走りすぎているという事も言える。世の中には,プログラムをいかに効率よく美しく作れるかということに特化した研究も盛んに行われており,ソフトウェア工学と呼ばれている。そういったものを活用し,さらに先に進みつつあるのがオブジェクト指向開発の世界で,印象としては,設計図なしで超高層ビルを建てるようなことが平気で行われているのがゲーム業界だ。

 皆川氏は,オブジェクト指向を生かした作り方を提唱できるのではないかとしたうえで,アジャイル開発やUMLなどを取り入れた開発手法,とりわけUMLベースでのゲーム開発の流れを確立したいという。
 サンプルとして取り上げられているのは,3Dブロック崩しで,ゲームとしては決して高度なものではないが,一般のゲームで重要となる本質的な部分をほぼ含んだものとなっているという。

 ちなみに,UMLとはUnified Modeling Languageの略で,プログラミング言語ではなく,モデリング言語である。モデリングとは何かについての詳細は割愛するが,データ構造や依存関係,処理の流れなど,多くのものを図示化するための標準的な図の描き方だと思っておけばよい。標準的な形で図にすることで,処理の概略を設計し,その内容を多くの人で共有できるようになる。現在のソフトウェア設計の標準語といってもよいものである。
 そういったUMLによる設計を核として,ペアプログラミングを主体とした手法での開発を指導していくという実験的な手法を主張しているのである。
 ペアプログラミングについても,話すと長くなるので割愛するが,興味のある人は「XP」関連の書籍を読んでみるとよい。ほぼ例外なく明快でウソのような奇跡体験が満載されているので,かなり楽しめるはずだ。
 この教育プロセスをどこで実践するかなどの予定はまだ立っていないようだったのだが,講演中の質問でぜひ取り入れたいという申し出も出るなど,注目を集めていたようだ。

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 最後に登場したのは,名古屋にある河合塾系のトライデントコンピュータ専門学校の田中正造氏だ。
 春に行われたXNAのゲームコンテストで最優秀賞を受賞したのが,トライデントの学生(チーム後藤)だったということで,どのような授業が行われているかなどが解説された。実際に,XNAを使った授業も行われており,XNAのゲームコンテストを目指した実習が行われているという。
 興味深かったのは,XNAによるゲーム作りも,もちろん重視されているものの,C#と.Net Frameworkによって開発ツールを作るという部分が強調されていたことだ。ゲーム開発では,開発のためのちょっとしたツールを自作していくことが多い。使用しているのがWindows PCであれば,現在のところ,C#ないしVB.netと.Net Frameworkというのが最強クラスで,簡単にいろいろなものが作れる環境であるといってよい。田中氏は,VB,C#,MFCなどで有名な解説書をいくつも著していることでも知られており,Windows上でのツール制作を学ぶには最高の環境なのかもしれない。
 さて,XNAゲームコンテストで最優秀賞を受賞したという作品「やまかけ」は,会場のホワイエ部分でプレイアブル展示されていた。内容は微妙にアクション系のパズルゲームだ。複数のレイヤーを切り換えながらブロックを押し,進路を切り開く。ルールを把握するまではなにがなにやら分かりにくい点もあるものの,ある程度動き方を把握すれば,なかなかの難度のパズルが楽しめる。とくに童話調のグラフィックスが全体の雰囲気を盛り上げていた。
 トライデントでは,今後Xbox 360専攻のゲームコースを新設するなど,XNAなどにもますます力を入れていくという。

 会場には,専門学校など同業者が多く集まっていた模様で,実際にXNAを使った授業を展開している発表などは刺激になったようだ。トライデントのXbox 360専攻コースについては「(就職は)大丈夫ですか?」といった質問も出てきたのだが,同校では業界の動向を見ながらコースの新設なども行っているということで,Xbox 360については,かなり強気の読みをしているようである。ジャンルが狭いと就職先もそれだけ少なくなるのだが,Xbox 360用の人材を取るようなところであれば,専攻の学生を評価してもらえるのではないかと,むしろニッチさで売り込む方針のようだ。
 ちなみに,同校が今年から募集を始めた学科では,Xbox 360専攻以外にニンテンドーDS専攻とオンラインゲーム専攻があった。そろそろコンシューマでもオンラインゲームを本格的に開発するところは出てきそうではあるのだが,はたして国産オンラインゲーム市場は発展していくのだろうか。これも興味深い読みである。

「やまかけ」の画面写真
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