インタビュー
ガマニアの総力を結集した「2011 Gamania Game Show」。単独ゲームショウを開催した狙いやグループの今後について,CEOのAlbert Liu氏に聞いてみた
主に新作オンラインゲーム4作品を紹介する内容で,海外から数百名規模の取材陣を招待するなど,世界的に経済が落ち込んでいるこのご時世でありながら,なかなかに景気の良いゲームショウとなっていた。
イベントの会期中ごく短い時間ではあったものの,ガマニア単独でのゲームショウ開催の狙いやグループの今後について,ガマニアグループのトップである,Albert Liu氏に直接話を聞くことができた。
4Gamer:
よろしくお願いします。今回のイベントを開催して,今の心境はいかがですか?
これまでのゲームショウと比べて,何から何まで自分達で準備せねばならず,とにかく大変でした。とくに初日のセレモニーでステージに登壇したときは,非常に緊張しましたね。
4Gamer:
たしかに単独で,これだけの規模のショウを行うのは大変でしょう。では,ガマニアグループが単独でゲームショウを開催するに至った経緯について教えてください。
Albert氏:
昨年の東京ゲームショウ2010での出展内容を覚えていますか?(※2010の東京ゲームショウで筆者が取材したことをAlbert氏は覚えていた) 実は東京ゲームショウ2011では,あれ以上の規模でブースを展開して,アジアに向けて存在感を示すつもりでした。しかし,3月に東日本大震災が起こったことで,予定を大きく変えることになりました。
4Gamer:
東京ゲームショウ2011は今年も開催されることになりましたが,震災後のイベント開催に関しては,見通しが立たないことが多かったと思います。震災後はTGSに限らずイベント開催について,どうなるのだろうという心配がありましたね。
大々的にブース出展を行うには,準備に相当な時間を要します。おっしゃるとおり,当時は先の見通しがまったく分からない状況でしたし,東京ゲームショウの代わりにアジアに向けて情報発信できる機会について,決断を急がなければなりませんでした。最初はほかの国のゲームショウに出展することも考えましたが,アジア全体に向けて情報を発信するという意味では,やはり東京ゲームショウにはかないません。
そんな風にあれこれ検討するうちに,既存のゲームショウにブース出展するのではなく,自社でゲームショウを主催するのはどうだろう,という考えに至りました。
4Gamer:
そこで自社でと決断できることに,ガマニアの勢いというものを感じます。ちなみに,気が早いかもしれませんが,次回の東京ゲームショウ2012には出展しようと考えていますか? それとも“2012 Gamania Game Show”になるのでしょうか。
Albert氏:
今の段階では,まだはっきりとは言えません(笑)。Gamania Game Showを日本で開催するという可能性だってないとは言い切れないですからね。
4Gamer:
日本でも独自開催の可能性があると。
Albert氏:
それは今回のイベント終了後に,スタッフの意見や各国プレスの反響,そして自社タイトルのクオリティなども含めて,総合的に判断するつもりです。
ただ確実に言えるのは,どういった形であれゲームショウというアクションはこれからも続けていきたいです。なんといっても,楽しいですから(笑)。
4Gamer:
分かりました。今回のゲームショウでは,新作オンラインゲームの4作品が出展されていますが,Albertさんは個人的にどのタイトルが一番のお気に入りですか?
Albert氏:
大勢の記者から同じ質問をされますね。でも,私の口からそれを言ってしまうと,ほかの3タイトルの関係者が可哀想なので止めておきましょう(笑)。どのタイトルも,自分から見れば子供のようなものですよ。
4Gamer:
では質問を変えまして,現在の日本市場を踏まえて考えると,リリース後に日本で一番人気が出るのはどのタイトルだと思いますか?
Albert氏:
「ティアラ コンチェルト」は,去年の東京ゲームショウ2010で反響がとても大きくて期待しています。また,「ラングリッサー シュヴァルツ」は,日本の有名IPをオンラインゲーム化させており,知名度という意味で大きな強みがあるでしょうね。
「ドリーム ドロップス」は,DIVINAやルーセントハートがヒットしている日本ではとくに期待が持てそうですし,最後の「Core Blaze」は,ガマニアグループが全力を注いで,全世界で受け入れられるクオリティにしていくつもりです。
ラングリッサー シュヴァルツ |
ドリーム ドロップス |
Core Blaze |
ティアラ コンチェルト |
4Gamer:
えーと,つまり質問への回答は“全部”ですね?
Albert氏:
まあ,そこはCEOという立場ですから(笑)。
4Gamer:
ガードが堅いですね(笑)。ところで,これら4タイトルのゲームジャンルは,いずれもオンラインRPG(MMORPG)です。ガマニアは一時期,カジュアルゲームにも注力していましたが,現在はオンラインRPGが主力というスタンスなのでしょうか?
カジュアルゲームを諦めたわけではなく,市場を向いてないというわけでは決してありません。つねに一定のニーズは存在していますからね。しかし当時我々がローンチしたカジュアルゲームの実績を振り返ると,開発と運営の双方が経験不足だったと反省しています。
そこで一度,原点に立ち戻ってみたんです。我々にとって一番の強みは何かというと,やはり,長年経験を積み重ねたオンラインRPGは外せません。
4Gamer:
あくまで今回のイベントでの主役が,MMORPGだったというわけですね。今回,世界各国からプレスを招待していますが,ガマニアはどこの地域にとくに注目していますか。
Albert氏:
これから開拓する地域という意味では,中国と欧米に注目しています。
4Gamer:
欧米と言えば,北米とヨーロッパにガマニアの支社を設立していますね。
Albert氏:
はい。しかし今はオフィスには少数のスタッフしかいないので,まだまだこれからといったところです。今回のGGSでは欧米の関係者も多く招待していますが,彼らと密にコミュニケーションを取って,マーケットをよく理解してから動いていける体制を築いていきたいですね。
4Gamer:
では,日本のガマニアに対しては,どういった見方をしていますか?
Albert氏:
グループの中でもガマニアジャパンの業績は比較的落ち着いています。しかし浅井氏(ガマニアCEO)には,ここで満足することなく,さらにシェアを拡大してくれることに期待しています。
4Gamer:
なるほど。ただ,日本のオンラインゲーム市場は,とても競争が激しいです。これ以上のシェアを拡大となると,いずれは,例えばコンシューマゲーム機への参入も視野に入ってくるのではと思うのですが。
欧米のメディアからも,その質問は多いですね。ガマニアにとってコンソールはやりたくない分野,というわけではありません。チャンスがあればやります。ただ,ガマニアグループはPCオンラインゲームに関するたくさんのノウハウを蓄積しており,それは大きなアドバンテージといえるものなので,これを生かせる余地はまだまだあるはずです。
また個人的には,コンシューマゲーム機とPCオンラインゲームにある障壁は,今後次第になくなっていくんじゃないかな,という気もしているんですよ。
4Gamer:
そのときこそ,PCオンラインゲームのノウハウが,コンシューマゲーム機でも生かされるものかもしれません。昨日(9月8日)のカンファレンスでは,「これからはクロスプラットフォームだ」と強調していましたが,これもそうした違ったプラットフォームでノウハウを生かすということですよね。
Albert氏:
そうです。知ってのとおり,近年はPCやゲーム専用機以外でも,さまざまなプラットフォームでゲームが遊べるようになっています。携帯電話やiPadでゲームを遊ぶのは完全に浸透しているし,2010年からのWeb/ソーシャルゲームの勢いは目を見張るものがあります。
4Gamer:
日本でも,スマートフォンにおけるゲーム市場は急成長しています。
Albert氏:
一見ゲームと関係ないように見えても,ゲームが遊べる端末があるんですよね。例えば,今後台頭してくるであろうスマートテレビでも,ゲームが遊べるかもしれません。クロスプラットフォームがどうこうというより,「(このプラットフォームで)ゲームを遊びたい」というプレイヤーの声があれば,それに耳を傾けるべきです。ガマニアは,どういったプラットフォームでゲームが遊べるのかといった動向に,常に目を光らせていきます。
4Gamer:
ソーシャルやスマートフォン向けのタイトルの開発に関して,現時点でお話できるプロジェクトはありますか。
Albert氏:
まだ詳細は発表できませんが,台湾と日本の両方で何作か開発しています。開発が順調に進めば,今年の年末から来年の頭にかけて,なんらかの発表ができると思います。
4Gamer:
分かりました。本日は,ありがとうございました。
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