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ブラウザゲームが市場を押し上げた。JOGAが「オンラインゲーム市場報告発表会」を開催し,2010年のオンラインゲームの動きを報告
会場ではまず,JOGAの会長である植田修平氏が,「JOGA オンラインゲーム市場調査レポート 2011〜2010年のオンラインゲーム市場動向〜」と題した報告を行った。
報告によれば,2010年のオンラインゲームサービス事業者数は125社で,前年比106%となった。これは,IT事業者およびモバイル端末用のソーシャルゲームサービスを行っていたきた事業者20社以上が,ブラウザゲームの開発/サービスに乗り出したことが理由である。また,オンラインゲームサービスタイトル数の推移については,引き続き増加傾向にあるとのことだった。
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オンラインゲームの中では,MMORPGのタイトル数が減っており,全体に韓国産ゲームの減少が見られる。
それに対して,ブラウザゲームのタイトル数が前年比で128%となり,内訳を見ると国産タイトルおよび中国/台湾で制作されたタイトルが増加している。国産タイトルに限れば前年比119%になっており,植田氏は,2011年以降は日本産のゲームがさらに増加していくのではないかとの予測を述べた。
PC向けのオンラインゲームユーザーの男女比率については,男性69.7%,女性30.3%であり,調査開始以来初めて女性の比率が30%台に達した。この理由としては,PC/モバイル向けのソーシャルゲームプレイヤーの一部が,よりリッチなブラウザゲームや,オンラインゲームに移行したためだと,植田氏は説明した。
ちなみに,PC向けのソーシャルゲームの女性比率は41.5%と,PCオンラインゲームに比べて高い値を示している。
オンラインゲームとソーシャルゲームのプレイヤー層については,20代ではオンラインゲームの割合が高いのに対して,30代からはソーシャルゲームの割合が高くなる。
同じ「社会人」といっても,20代のうちはオンラインゲームにじっくり取り組む余裕があるが,30代では,まとまった時間がなくとも遊べるソーシャルゲームにシフトしていくのではないかと植田氏は語る。「年をとるごとにゲームに使える時間が減っていく」という話を聞くが,それが今回のデータの背後にあるというわけだ。
したがって,定額制タイトルの1か月あたりの売上は,ほぼ横ばい状態だが,アイテム課金制の料金形態を採用したオンラインゲームの売り上げは年々増加しており,それは2010年も例外ではなかった。
オンラインゲームの市場規模について植田氏は,「着実に成長している」と述べる。
内容を見ると,パッケージ販売の売上は前年比95%で減少しているものの,運営サービスの売上が前年比104%となったことで全体では前年比103%となった。運営サービスの売上は,1000億円規模に達している。
植田氏はまた,2011年以降も輸出による売上金額の増加が期待でき,輸出タイトル数は確実に増えていくだろうとの展望を述べた。
さらに,日本企業が海外に拠点を置き,サービスを提供するというケースについても言及された。現在,海外に子会社/関連会社を設立して事業展開している日本のオンラインゲーム企業は10社に満たないが,全体で75億6182万円の売上を記録しているという。この調査(ヒアリング)は今回,初めて行われたもので,前年比などは出ていない。
報告の最後に植田氏は,「ブラウザゲームが市場規模を押し上げた」と2010年のオンラインゲーム市場を総括し,ライセンスアウトが増えていることについては,JOGAでも国内市場の活性化を促すと同時に,国内企業の海外進出をサポートしていく予定であるとまとめた。
この報告は同社が実施した以下のような調査の結果に基づいている。
●調査概要
1. 調査対象:
国内ソーシャルゲーム市場規模(※Mobage/GREE/mixiの3SNS経由でのソーシャルゲーム課金売上を対象)
2. 調査方法:
各社IRデータ,主要事業者(SNS,SAP)ヒアリングをもとに,各SNSのソーシャル課金売上を推計
3. 調査期間:
2010年6月〜12月:2009年市場規模の推計,2010年市場規模の予測
2011年6月:2010年市場規模の推計
調査結果を見ると,2010年のソーシャルゲーム市場規模は前年比448.5%の1036億円と急成長を遂げていることが明らかになった。野下氏は,この成長の理由を,3つ挙げる。
一つめは,ソーシャルゲーム供給量の拡大だ。野下氏は,2009年から2010年にかけて,上記の「Mobage」「GREE」「mixi」という3つのSNSが相次いでオープン化したことによって参入障壁が一気に低くなり,その結果として,数千におよぶソーシャルゲームが供給されることとなったと語る。
二つめは,主にユーザーへの訴求力についてだ。コミュニティを中心に据えたゲームのスタイルや,誰でも遊べるという気軽さ,そしてそれらと親和性の高い「基本プレイ料金無料」というビジネスモデルが急成長の呼び水になったのだ。
最後に野下氏は,3つのSNS,いずれも決済システムが整備されていたことによって,マネタイズが容易だったことを挙げた。
ソーシャルゲーム市場の今後について野下氏は,中期的な成長が続くとし,2011年は前年比150%の成長を達成できるのではないかと予測した。
プラットフォームについては,中心的な存在だったフィーチャーフォンがスマートフォンへ移行し,さらに中長期的には,PCやタブレット端末を含めたマルチプラットフォーム体制に向かうと述べ,同時に海外展開も進むだろうと展望した。
最後に野下氏は,参考としてスマートフォンにおけるゲームプレイヤーの動向を示した。それによると,スマートフォンのゲームをプレイする人のうち,お金を払ってゲームアプリを購入した,あるいはゲームアプリ内の課金を利用した経験のある人は18%。そのうち,1か月に1000円以上支払っている人は42.2%になるという。何らかの傾向を導き出すにはまだデータ不足だが,2011年はより詳細な調査を検討しているとのこと。今後のビジネスのヒントとなるような結果が出ることに期待したい。
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