― 特集 ―

ガマニアに聞く,エターナルカオスの無料化やEQ運営の今後について

Text by Gueed / Photo by kiki
 

左が,最近肩書きから"代行"がなくなり,晴れて日本ガマニアの最高執行責任者となった浅井氏,右が「エターナルカオス」プロジェクトマネージャーの大久保氏
 2002年10月の正式サービス開始から約2年5か月が経過した,ガマニアデジタルエンターテインメントのMMORPG「エターナルカオス〜新たなる生命〜」が,3月10日をもって基本料金無料のサービスへと移行した(関連記事は「こちら」)。
 エターナルカオスには,以前から「エタカハンターチャンス」というアイテム販売機能があったし,また同社は「巨商伝」などでアイテム課金によるビジネスの下地を築いてきた。ただ,なぜこの時期なのか,なぜ元々980円/月という比較的リーズナブルな料金設定のエターナルカオスで無料化に踏み切ったのか,いくつか疑問が残る。

 というわけで,東京は広尾のガマニア日本支社にお邪魔して,エターナルカオスについて,また「GASH」を中心に据えた同社のビジネス展開について,あれこれ聞いてみた。
 話をしてくれたのは,同社最高執行責任者の浅井清氏と,エターナルカオスプロジェクトマネージャーの大久保氏。エターナルカオスについてはもちろん,「エバークエスト 日本語版」(以下,EQ)の気になる"あの話題"も聞いてみたので,ぜひ一読してみてほしい。

【エターナルカオス 過去3年間の主なトピックス】
2002年1月〜「ラグハイム」日本上陸(その後,エターナルカオスへと名称変更)
2002年10月 「エターナルカオス」有料化
2003年1月日本で「エターナルカオス2003」導入
6月ゲームサーバーを日本国内に移設
8月クエストシステム導入
2004年8月ゲーム内アイテム同梱済みスターター用パッケージを発売
2005年1月エタカハンターチャンスリニューアル
3月完全無料化


 

ガマニアに聞く,エターナルカオスの無料化やEQ運営の今後について

4Gamer.net:
 浅井さんは現在,日本ガマニアの"舵取り"を務めてらっしゃいますし,本日はエターナルカオス以外についても,とくに戦略的な方向性について,いろいろ聞かせてください。……といっても,まずは最近の主要トピックである"エターナルカオス無料化"の話題から。
 エターナルカオスのニュースを時系列に追ってみると,アイテムモールイベントの継続など,今回行われた無料化への布石が見られるのですが,いつ頃から収益モデルの転換を考えていたんですか?

浅井氏:
 アイテム販売で……というのは別として,昨年(2004年)の後半ぐらいからでしょうか。
 というのも,ラグハイム時代を合わせると,エターナルカオスはもう3年近く遊ばれています。それでやっぱり"古い"というイメージになったのか,会員数が伸び悩んでいたんですよね。とくにMMORPGは,ゲーム性はもちろんのこと「プレイヤーの活気」が重要なので,どうにかこの状況を打開したいと思っていました。

4Gamer.net:
 そこで無料化,と。ただでさえリーズナブルな料金設定なのに,思い切った決断ですね。

浅井氏:
 もちろん"売り上げを伸ばす"という会社的な思惑もありますが,無料化によるアイテム課金は,いまやさまざまな意味でビジネスとして成立すると思うんですよ。例えば現在実施している「エタカハンターチャンス」では,これまで入手困難だったアイテムが手に入るなど,かつてのエターナルカオスプレイヤーを引き戻すだけの魅力を与えられたと思います。
 もちろん,本音を言えば,月額課金を続けたいという気持ちはありました。収益も安定するでしょうし。でもアイテム販売でなんとかやっていけるメドが立ち,かつエターナルカオスの活性化を目指して今回の施策に踏み切ったわけです。

4Gamer.net:
 エタカハンターチャンスは,エターナルカオスの本国(韓国)版には無い機能ですよね。

浅井氏:
 そうです。日本で独自に導入しました。

4Gamer.net:
 ということは,その部分に関してはある程度好きなようにカスタマイズできるわけですよね。現在のハンターチャンスは,50GASHと200GASHという二つのコースしかなくて,課金部分のメインディッシュとしてはやや寂しい感じもします。今回の無料化に伴って,そのあたりも強化されたりするんでしょうか?

浅井氏:
 そうですね。今後は"日本語版にしかないアイテム"や"ハンターチャンスでしか手に入らないアイテム"を提供するなどの仕掛けを考えています。

特別にもらった,エタカハンターチャンスのリニューアル後に入手できる「王冠」のスクリーンショット。茶目っ気のあるキャラクターのコスチュームも,エターナルカオスの大きな特徴だ

4Gamer.net:
 ちなみに現在は「200GASHのコースを使えるのは,1日5回まで」なんていう制限がありますが,無料化された今となっては,逆にビジネスの足枷(あしかせ)になりませんか?

浅井氏:
 うーん,実は同じく当社で扱っている巨商伝もそうなんですけど,アイテム販売モデルだと際限なくお金を出すプレイヤーがいるんですよ。もちろんたくさん買ってはいただきたいんですけど,1か月に10万や20万も使われるのはちょっと……というのはあります。
 儲かる儲からない以前に,「これはゲームの正しい遊び方ではないんじゃないか?」と。決して綺麗事を言ってるわけではなくて,"ある一定の枠があるからこそ楽しい"というのも真実じゃないかと思うんです。

4Gamer.net:
 では,今後もそのスタンスは変わらない?

大久保氏:
 ハンターチャンスのメニュー構成や制限が変わる可能性はもちろんありますよ。例えば「1か月で使えるのは3万円まで。1日で使い切っても構わない」みたいなのはアリですね。ただしその場合でも,上限だけは設けようと思っています。メニューに関しては,無料化後の様子を見てからの話ですし,まだ具体的にはお話できないです。

4Gamer.net:
 ではプロモーション方法はどう変わっていくんでしょう? 例えば巨商伝などは,ハンゲームとのコラボレーションで多くのプレイヤーを獲得しているようです。エターナルカオスでも,無料化のタイミングでなにかしらの仕掛けが必要なのではないでしょうか?

浅井氏:
 今のところエターナルカオスでは(ハンゲームとの提携は)考えていません。
 巨商伝は元々動作の軽いゲームですし,ハンゲームでライトゲームを遊ぶプレイヤーと親和性が高いんじゃないかと想定して,コラボレーションをしています。もちろんガマニアにはGASHプラットフォームを拡大するという戦略もあるんですけど,巨商伝に関しては,単体のゲームでどこまでプレイヤーを増やせるかに挑戦したわけです。
 一方のエターナルカオスは,やはり「ラグハイム」時代から長い期間を経ているし,古くからのMMORPGファンにはよく知られているのではないかと自負しています。もちろんゲームもバージョンアップを重ねて,当時とは比べ物にならないぐらい良くなっている。かつて少しだけエターナルカオスに触れたプレイヤーに戻ってきてほしい,そしてライトゲーマーにも遊んでほしいという二つの願いがあります。とくにライト層には強くアピールしたいですね。3Dなのに動作が軽快,かつサクサク遊べるというのは,現時点では逆にエターナルカオスの大きなメリットだと思いませんか?

アジアで最高の"お金持ち"を目指すという,2DMMORPG「巨商伝」。今後は,ハンゲームの仮想通貨「ハンコイン」でも遊べるようになるだろう

4Gamer.net:
 なるほど。しかし,さすがに目新しいとはいえませんよね。

浅井氏:
 そうです。でもなんていうか,「新しいゲームでないがゆえに完成している部分」に魅力を感じてほしいんですよ。

大久保氏:
 エターナルカオスは,有料サービス中も新規プレイヤーに対して20日間の無料プレイ期間があったので,実質2月19日から無料になっています。で,現在は順調にプレイヤーが増えている状況です。戻ってきてくれたのですかねぇ。
 今おっしゃったように,エターナルカオスは最新のMMORPGというワケではないし,メインにプレイしているMMOがあって,そのゲーム+エターナルカオスという遊び方も,今はアリだと思うんですよ。パーティを組まないと楽しめないゲームが多いなか,本作はソロでも相当遊べるから,空いた時間で手軽に楽しめますし。あとこれは公言していないウリなんですが,エターナルカオスは"ウィンドウモードで起動"できるんです。つまり「ながらゲーム」というポジションに向いているんですよね。

 その証拠として,プレイステーション2であの「ドラゴンクエスト VIII」が出たときも,同接(同時接続者数)は減らなかった。なんでかというと,みんな"エターナルカオスの中"でドラクエの話をしていたからなんですよ。

4Gamer.net:
 「ラグナロクオンライン」もそうですし,成功しているMMORPGではよくある光景ですね。

浅井氏:
 ちなみに念を押しておきたいのですが,今回の無料化に関して,古すぎるとか,ゲームがダメになってきたからとか,そういうネガティブな要素はまったくないんですよ。逆に今このタイミングだからこその無料化なんです。戦略的なビジネスの転換です。
 というのも今の段階であれば,この先まだまだ大きなバージョンアップなどの"ネタ"が控えている。「Laghaim 2005」がその最たるものですね。だから今のうちにプレイヤーを増やしておこう,と。確かにアップデートのほとんどはハイレベルプレイヤー向きですが,シャイロン(編注:ロー/ハイレベルキャラクターが利益を共有できるマップ。PKも可能)の実装後はレベル上げも比較的簡単になっていますし。無料化+大規模アップデートというのは大きな魅力のはずです。

4Gamer.net:
 確かにそうですね。実際に私も個人的にいいゲームだとは思います。ただ今からだと,ハイレベルプレイヤーとの差が気になりすぎて,なかなか踏み込めませんねぇ。

浅井氏:
 そんなプレイヤー向けに,サーバーの増設も考えていますよ。既存のサーバーだけでは,プレイヤー間のレベル格差が激しくなるというのはもちろん認識しています。なので新サーバーでエイヤッと遊んでもらえるようにしようかと。もちろん会員数の状況を見て,ですが。

大久保氏:
 やっぱり城主になりたいとか,そういう目的にもプレイヤーを向かわせたいですからね。無料化+アイテム課金で全体の売り上げが伸びなくても,より多くの人に遊んでもらうことで,継続的に長くサービスできると思っています。

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