― 特集 ―
「エバークエストII」日本語版インプレッション

Text by 星原昭典


 「エバークエストII」(原題 EverQuest II。以下,EQ2)のごくごく基本的な要素の紹介や,種族・クラスの概要などは公式サイトをはじめ各所でたびたび行われてきた。これだけ有名な作品である。だいたいどんなゲームなのかは,ほとんどの読者はもう知っていることだろう。
 しかし英語版のサービス開始からはや5か月,その間もEQ2には大小さまざまなパッチが当てられてきた。それらによって仕様が大幅に変わったり,プレイスタイルに影響を与えるほど大きな新要素が追加されたりと,EQ2も5か月前に比べるとかなり変化してきている。
 そこで,本作の基本中の基本は紹介記事(「こちら」)に譲り,ここではまず,英語版発売以降の追加/改善要素をまとめてみたい。


※すべての画面写真は,Windows 2000 Professional Service Pack 4,Athlon 64 3200+,メモリ 1GB,GeForce 6800という環境で,クオリティ"バランスド"で撮影しています


 "キャラクターレベルに差がついてしまうと,友人知人同士でグループを組んでプレイできなくなってしまう"……これは,レベルベースの成長システムを持つMMORPGのプレイヤー達が,たびたび頭を悩ませてきた問題だ。メンターシステムは,この問題を解決に近づけるための非常に興味深いアイデアである。

メンターシステムは経験値獲得量を調節できる仕組みでもある。レベル差があまりない状況でも活用可能だ
 メンターシステムとは,キャラクターのレベルや能力を,自分よりレベルの低いキャラクターに合わせて一時的に下げられる仕組みである。高レベル側はメンター(Mentor/指導者,師匠の意),低レベル側はアプレンティス(Apprentice/見習い,弟子の意)となり,師匠役が弟子役を教えるという形をとる。これを利用すれば,レベル差の大きく開いたキャラクター同士でも,グループを組んで遊ぶことが可能になる。
 師匠役となる高レベルキャラクターは,グループ内の自分よりレベルが低いキャラクターに対して「メンター(/mentor)」できる。すると対象キャラクターと同程度にまで強さが抑えられる。EQ2ではキャラクターの強さにそぐわないアイテムは装備できないが,メンターシステムを使った場合,身につけているアイテムの性能が一時的に下がるので,わざわざグレードの低い装備を用意したりする必要はない。

 メンターがついたアプレンティスが得る経験値には,ボーナスが加算される。メンターが一度に指導できるキャラクターは一人だが,アプレンティスは最大5人のメンターに師事できる。当然,メンターの数が多いほどアプレンティスの経験値ボーナスは増加する。つまり,たとえレベル差がそれほど離れていなくても,"なかなかプレイできなくてレベルアップが遅れがちな仲間を大勢でバックアップする"といった形でもメンターシステムは活用できる。
 この仕組みがあれば,自分よりレベルの低い友人をヘルプするのに,不自然なやり方を探す必要がない。スタンダードなプレイでのヘルプになるので,「簡単すぎてヘルプするほうもされるほうもツマラナイ」といった状態にもならずに済むというわけだ。


 こちらは,"プレイに割ける時間に差があると,よく一緒にプレイする知人との間でレベル差が開いてしまう"という,これまたMMORPGでよく発生する問題に対する,一つの解決策といえるシステムである。

 バイタリティは,あまり頻繁にはログインできないプレイヤーのキャラクターに,より多くの経験値ボーナスを与える仕組みだ。すべてのキャラクターはバイタリティというプールを持っている。現在のバイタリティの量は,経験値バーの右端で確認できる。バイタリティが少しでもある状態で経験値を得ると,追加でボーナス経験値が得られ,そのぶんバイタリティが減る。バイタリティが0になると経験値ボーナスは得られなくなる。
 すべてのキャラクターは,オンライン・オフラインに関わらず現実時間の1時間に一度,一定量のバイタリティを得る。使わずにいればバイタリティはどんどん蓄積されていき,一週間程度で最大値に達する。毎日長時間のログインが可能なプレイヤーは,バイタリティをすぐに使い切ってしまうので,ボーナスのない状態でプレイする時間が多くなる。しかしあまりプレイをする時間がとれないプレイヤーは,ほぼいつもバイタリティがある状態でプレイできるので,レベルが上がりやすいというわけだ。

現在のバイタリティ状態は経験値バーで確認できる。

 このバイタリティの仕様はあとから追加されたわけではなく,実際はサービス開始当初から隠し要素として存在したらしい。パッチによってそれが見える状態になったのである。


 英語版サービス開始当初の生産関連の仕様は,正直にいって未完成である印象がとても強かった。たび重なるパッチによって数々の問題点が見直され,現在でも改良作業は続けられている。

"Attuneble"アイテムは"同調"することで使用可能になる。未同調のアイテムがある場合はペーパードール上に警告が現れる
 生産/アイテム周りにおける最もインパクトのある改良は,"同調"(Attune)が必要なアイテムが大幅に増加したことだろう。EQ2では詳細に"Attuneble"と書いてあるアイテムは,自分に"同調"させない限り使用可能にならない(単に装備することはできるが効果が発揮されない)。一度自分に同調させると,そのアイテムは他人に譲渡できなくなる(NPCへの売却は可能)。この仕様は,高性能なアイテムが市場に溢れて価格が暴落したり,それによってプレイヤーの生産に対するモチベーションが低下したりすることを防ぐためのものだが,以前の状態ではそれでもあまり具合が良くなかった。
 それがアップデートによって,かなり多くのアイテムが"Attuneble"に変更され,結果多くの中古装備品が,ほかのプレイヤーに売れなくなった。とはいえNPCには売れるので,それらはプレイヤー側からシステム側に回収されることになり,市場における装備品の需要は増した。それを受けてアイテム生産に対するプレイヤー側のモチベーションも上がり,結果的に市場は以前に比べれば健康な状態に近づいたのだ。

 これ以外にも細かな変更は頻繁に行われている。ごく最近のパッチでは,プレイヤーがオンライン状態でなくても商品を販売できるようになった。「オンライン状態での放置販売」は,ある意味EQの伝統でもあったわけで,かつてのEQプレイヤーにしてみれば,この変更は印象的なものであるはずだ。


ソロプレイの可能性が高まれば,短時間でもゲームが楽しめるようになる
 「一人では何もできない」ことは,前作「EverQuest」(以下,EQ)の"長所"である。プレイヤー同士の協力が求められるからこそ,まず出会いが生まれ,そして何かを成したあとには達成感が生まれる。しかしこの仕様のために,EQがお世辞にも"手軽に遊べるゲーム"ではなくなっていることもまた事実だ。「一人では何もできない」ことは,EQの短所ともいえる。
 その名を引き継ぐEQ2も,基本的にはプレイヤー同士の協力が必要なゲームとしてデザインされている。しかし要望が多かったのか,パッチによって「ソロ向け」「少人数グループ向け」であることを強調したコンテンツが多く追加され,またそのような方向性のバランス調整も行われた。
 このような調整は,今後も多く行われそうである。結果的に,EQが「いちげんさんお断り」的な空気を持ったゲームだったのに対し,EQ2はより多様な遊び方を許容するゲームへと進化していくのではないかと筆者は予想する。

メールボックスはすべての街ゾーンに設置されて,よりアクセスしやすくなった
 このほかには,"インゲームメールの実装/拡張" "インスタンスへのアクセス条件の緩和"などといった追加/変更が行われている。リリースした後これだけ変化しているゲームをローカライズするのが,どれほど大変な作業か,開発の経験を持たない筆者には分からない。しかし,かなりの難事業であることは想像に難くない。日本語版のスケジュールがずれ込んだ原因の一端はそこにもあるのかもしれない。
 ただ事実として,英語版の発売から数か月を経ることで,EQ2は以前より確実に遊びやすいゲームになっている。結果的にその状態からスタートを切ることになる日本語版のプレイヤーは,その点において恵まれていると言っていいだろう。




 ここからは,日本語版βテストに参加して感じた,翻訳周りの印象をお伝えする。  βテスト段階なので,未訳部分や若干の用語の不統一などはもちろんある。それらはいずれ直っていくことだろう。気になるのは,それ以外の部分。どこまでゲーマーの心で,あるいはファンの心で翻訳が手がけられているか,そのスタンスのとり方だ。


クエストジャーナル周りはとくに力を入れて翻訳が進められているようだ
 この原稿を執筆している時点で,筆者の(日本語版β用)キャラクターは,レベル12。市民権取得のクエストやクラス決定のHallmarkクエストはもちろん経験し,レベルはほぼクエストで上げた。取得およびコンプリートしたクエストは80個程度となっている。
 その間,荒くれ者が丁寧な言葉をしゃべったり,男性が女性らしい言葉で話したりといったことは,ほとんどなかった(ゲーム進行に関係のないフレーバーテキスト的なNPCの挨拶がおかしかった程度)。

 どのキャラクターも,種族のイメージや外見に合った口調で話しかけてくる。クエストジャーナルの中にまったく翻訳されていないテキストはほとんどなく,逆にクエストNPCやMob(モブ。その他大勢)の名前が妙に翻訳されてしまっていて困るようなことも,今のところない。ぷっと吹き出してしまうような珍妙な訳にも遭遇していない。
 唯一違和感を覚えたのはジョークに関する部分だが,これは翻訳ではなく文化の違いのせいだろう。こういうところは,まるごと入れ替えたりするとゲームの持つ雰囲気が壊れる部分だとも思うので,これでよいと思う。
 正直にいって,もっと"質の低いもの"を想像していたが,裏切られた。未訳はあるが誤訳はない。一歩一歩丁寧に作業を進めているという印象だ。

種族のイメージやNPCの性格にそぐわない訳はほとんど見られない。ハーフリングは陽気に,ノームはちょっとせっかちにしゃべる。女性は女性らしく,先生は先生らしく話しかけてくる


 特筆すべきは,EQ世界における固有の名詞や歴史などをきちんと踏まえたうえで,翻訳が行われているらしいことである。ケイノスの周りにある各街区には,EQ2世界における過去の出来事をかなり長く聞かせてくれるNPCが点在している。
 EQからEQ2につながる過去500年に一体何が起きたのか,かつてのあの町やあの場所はどうなったのか,EQ以来のプレイヤーには気になる部分である。そのような世界設定に関わる部分は,とくに翻訳が難しいところだ。ちゃんと"このゲーム世界を分かっている人"でないと,おかしな翻訳をしてしまう可能性がある。しかし,ばっちり"EQ的に正解な翻訳"となっていて,嬉しくなった。

 個人的には,エルフ族の未来を憂うウッドエルフの女性が,かつてフェイドワーで起こったテイル・ダル(ダークエルフ)&オークの同盟軍と,エルフ族の連合軍との戦いの話を聞かせてくれたところなどが印象的だった。
 敗色濃厚なエルフ軍のもとに,カラディムからはドワーフが,アッカノンからはノーム達が加勢に来てくれたくだりなどでは,ノーム軍があのクロックワーク達をチクタクチクタクいわせながら大挙して押し寄せるシーンがまぶたに浮かび,ほほえましくもちょっとジーンときた。実は,英語版をプレイしているときには,恥ずかしながらすっとばしたテキストである。

この世界の歴史を,幾人ものNPCがそれぞれの視点から語りかけてくる。昔話の中で語られる人物が,調べてみるとちゃんとEQの世界にNPCとして存在していたりするので嬉しくなる


アイテム名やスペル名の表記を英語もしくは日本語に切り替えるためのオプション
 ひととおり見て回って心配になったのは,翻訳ミスの有無ではなく,この精度の翻訳がどこまで続けられるのかということである。意地悪な見方をすれば,初めの町にいるNPCの歴史を語るセリフなどは,初期段階で力を入れるであろう部分だ。その町の中でさえ未翻訳のテキストをあちこちで見かけるので,先のレベルのゾーンなどはもっと未訳部分が多いことだろう。
 発売日が決定している今,リリースまでにすべての翻訳作業を,この精度を保って完了できるのか,門外漢ながらも気になる部分である。
 アイテムやアーツの詳細,コンバットログといったシステム関連はまだ混沌とした状態だ。コアプレイヤーならば困ることはないだろうが,発売を待ち望んでいる人の中には,英単語が四つ以上並んでいるのをみただけで物怖じする人だっているかもしれない。その視線からすれば,日本語β版の画面は,まだ恐い。注目の「T4エンジンによる言語切り替え」は,まだ使用不能で試すことができていない。完全な形で実現すれば,画期的なことであるだけに実装が楽しみである。


 現段階で実感できたのは,海外産のゲームやEQに慣れた人が「翻訳が難しいだろうな」と思う部分を,日本語版の開発サイドもちゃんと「これは難しいことだ」と認識しているということである。そしてそれをなあなあにせずに,まともに取り組んでいこうという姿勢も感じ取れた。どうやら日本語版の出来には,期待してよさそうだ。今後の経過を期待しつつ見守りたい。



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