ゲーム開始時に，プレイヤーには一頭のサラブレッドが与えられる。しかしながら，この馬でいきなりダービーを目指せるかといえば，答えはノーだ。仮に完璧に調教をこなし，限界まで鍛え上げたとしても，最初の馬ではおそらく重賞レースに勝つことさえ難しいだろう。
　このゲームの底はそれほど浅くなく，ダービー出場はそれほど軽いものではないのだ。まずはゲーム世界の流れを把握するための，愛すべきペットとして，焦らずじっくりと育ててあげたい。
　実のところこのゲームで大きな勝利を収めるには，目の前にいる馬をどう鍛えるかだけを考えていたのではだめだ。ポテンシャルの高い仔馬を購入したり，優秀な戦績を収めた馬を"種付け"して，生まれてくる仔馬を育てたりして，自分の持ち馬のレベルを底上げする必要がある。
　そしてもちろん，仔馬の購入や種付けにはゲーム内のお金がかなり必要になる。それを賞金でまかなえればベストだが，プレイ序盤に狙うのはそもそも無理な話だ。それに代わるお金稼ぎの手段として，このゲームに用意されているのが，RPG的なジョブというわけである。
　いささかシュールな光景であるが，プレイヤーは馬を連れて釣りをしたり，鉄鉱石を採集したりしてお金を稼ぎつつ，レースを有利にするアイテムを作成/購入していく。そうして貯めたお金で，優れた馬を飼い，派手な服を買い，牧場を買い，豪邸を建てる。プレイの目標と手段の両方にわたって，競馬要素と生活要素が絡んでくるのが，このゲームの独特の魅力といえよう。

日常生活の中で，なでたり，ほめたり，抱きついたり，あるいは「チューをする」といった触れ合いを楽しみながら，信頼度を高めていこう。信頼度はハートのマークで表示される。また，レースや調教などで激しい運動をした後はお腹が空くもの。愛馬の好みの餌をあげよう。餌によっては，各パラメータが大幅にアップするものもあるので，いろいろと試してみたい

　先ほど少しだけ触れたジョブの話を。ゲーム世界での生活を楽しんだり，愛馬を育てていったりするうえで必要な衣食住に関わるアイテムは，ショップで購入するばかりでなく，すべてプレイヤー自ら作り出せる。しかも，NPCのショップで売られている商品より，ずっと優れたアイテムを作り出せるのだ。
　例えば，ショップで売られているものよりずっと速く走れる蹄鉄を作って，ゲーム内で売っているプレイヤーがいる。また，馬の能力を大幅にアップさせる料理や，ショップで売られていない色，柄，デザインの衣服なども作れる。それぞれのプレイヤーは好みのジョブについて，プレイを有利にしたり楽しくしたりするアイテムを作成し，お金を稼ぐことが可能なのだ。

　ジョブ，すなわちプレイヤーが就ける職業には，大きく分けて採集系と加工系の二つがある。
　採集系とは，釣り師，きこり，採掘師など，アイテムの材料を集める仕事。ゲームの序盤は，愛馬の餌代にさえ困るほどにお金がないので，プレイヤーはまずこういったジョブに就き，材料を集めてお店に売って，生活費を稼ぐ。
　一つのジョブをやり続けると，次第にジョブレベルがアップしていく。レベルに応じた採集場所や，ジョブの効率を上げる道具（より性能の高い釣り竿とか）もいろいろあるので，プレイヤーキャラクターの成長を楽しみながら，資金を稼げるはずだ。
　それに対して加工系のジョブには，料理人や大工，仕立屋，蹄鉄師などがある。こちらについては，「オーナーランク」や「セレブランク」が一定レベルを超えていないと，なれないといった制限がつく。そのため残念ながら初期の段階では就くことができないが，その分，採集系のジョブ以上に，やりがいのある仕事だ。愛馬のレースと同時に，例えば自らは一流の料理人になることを目指すというのも，本作品らしい楽しみ方の一つといえる。

採集系のなかでも最も手軽に就けるジョブ。町の周りを流れる水路に糸をたらせば簡単に魚がかかる。しかも釣れた魚は，そのまま愛馬の餌にもできるので，一石二鳥なのだ

地面に生えている草を刈る仕事。比較的どこででもできるのに加え，飼い葉や薬草など，愛馬の餌にもできる草を入手可能な点が大きなメリットだ。最初のうちは町の近くの沼がお勧めのポイントだ

つるはしを持って大きな岩を掘っていき，小石や鉄鉱石などを採掘する仕事。活動拠点となる場所が，山や未開発地域といった町の中心から遠いのが難点だが，蹄鉄を作りたいなら必須の仕事だ

いわゆる「きこり」の仕事。木があればどこでも伐採できるが，基本的には街中ではなく，山や森が活動場所となる

　お金が目的にせよ，ジョブのレベルアップが目的にせよ，ジョブを繰り返していると，ところどころで成長の限界に突き当たる。通常は経験値が表示される欄に赤い文字で「Level cap」と表示されたら要注意。この状態でいくらジョブを続けても，レベルはまったく上がらない。
　これを解除するためには，特定のクエストをこなせばよい。クエストの内容はそれぞれのジョブで採集できる「材料をいくつもってこい」といったシンプルなものがほとんどなので，クリアは難しくない。強いて気をつけるべきことを挙げるなら，採集した材料はあまり売り急ぎせず，ある程度手元に残しておいたほうがクエストが楽になる，ということだろうか。
　クエストをくれるのは，それぞれのジョブの「仲介人」だ。「○○をいくつ集めろ」などといったクエストをいくつも紹介してくれるので，それを請け負って達成すれば，お礼として材料費以上のお金がもらえる。ショップに売るよりずっと割がよいので，積極的に利用したい。

　一生懸命仕事をして，必死に馬の世話をして，レースでそれなりの成績を残すだけでは終わらないのがこのゲームだ。ダービーオーナーズクラブオンラインというゲーム世界を，もっと優雅に，もっと楽しく暮らしていくための目安として，「セレブランク」というものが用意されている。このランキングの上位を目指すのも，プレイの楽しみの一つとなる。
　「採集ジョブに就こう！」「自分の土地を買おう！」 「家を建てよう！」など，ランクごとに提示される条件を満たせば上がっていくのだが，ランクが上がるにつれて条件も上がってくるので，極めるのはなかなか困難だ。だが，そもそもセレブランクは「豪邸」を建てたり，素晴らしいファッションで着飾ったりと，自由に暮らしていくうちにアップするという性格のもの。がむしゃらに上げようとがんばるよりも，心に余裕を持ってのんびりと，生活そのものを楽しむほうが"セレブ"の名にふさわしいかもしれない。

　ゲーム内での生活要素を主体にしたセレブランクに対して，純粋に競走馬のオーナーとしての実力を測る「オーナーランク」という指標も用意されている。
　「愛馬で5着以内に入ること」とか「能力パラメータの合計を何百以上になるまで鍛えること」など，競走馬の育成とその成果に絞ったランキングで，当然ながら強い馬のオーナーほど高いレベルになる。逆に次々に条件をクリアして，このランクを上げていけば，愛馬のダービー制覇もそう遠い夢ではなくなるはずだ。

　さて，上述のような生活要素はひとまずおき，ひとたびサラブレッドのオーナーとなったからには，可能な限り多くの勝利を目指すのは当然のことだ。最初に与えられるサラブレッドで最低でも新馬・未勝利戦にはしっかりと勝ちきって，勝利の喜びを味わってみたいところ。ここでは少しだけそのコツを紹介しよう。

　ちなみにゲーム内のサラブレッドは，レースや調教，休養といった競馬に関係する動作を行うにつれて，少しずつ歳をとっていく。逆に，仮に競馬を一切無視し，サラブレッドをペットのようにして生活するだけなら，愛馬はいつまでも歳をとらず，引退に追い込まれることもない。だが，もちろんそれだけで満足する人はいないに違いない。馬も同じだろう。サラブレッドは走るためだけに生まれ，走ることこそ生きている証といえるのだから。

　初期の馬でレースに勝つためには，「調教→調教→……→調教→休憩→調教→……→調教→レース」というように，納得のいくまでじっくり調教に取り組むのが確実だ。調教方法については，芝，ダート，ウッドチップ，坂路，コーナーが用意されている。
　それぞれ目標とされるマウス捌きが異なり，そのタイミング次第で，調教の効果が大きく異なってくる。早めにコツをつかんで，効率の良い調教を行っていきたい。

実際の競馬と同じように，新馬・未勝利→条件馬→オープン馬→G1馬と，勝利を重ねるにつれ大きなレースに出走できるようになっていく。最大の夢はやはりダービー制覇だ

　納得のいく調教をこなしたら，いよいよレースに出走させよう。新馬戦や未勝利戦にチャレンジする場合，すべてのパラメータを最低でも20以上まで上げるか，どれか一つのパラメータを50くらいまで上げると，かなりいい勝負になる。そのレベルまでじっくりと鍛え上げ，満を持してレースに出走させてみよう。シングルプレイのゲームと違ってセーブ/ロードの繰り返しが利かない以上，勝負は常に一期一会。愛馬の状態，距離適性などもしっかりと考慮して，最適なレースに出走させたい。レース中，プレイヤーはジョッキーとなって，愛馬に，マウスの左ボタンで鞭をいれ，右ボタンで抑える指示を出せる。逃げ・先行・差し・追込みといった愛馬の脚質やレース展開によって，操作のタイミングはさまざまだ。いつでも悔いの残らないレースにしたい。
　競馬ゲームとしてのメイン要素であるレースシーンは見ごたえ十分。アーケード版の迫力をそのままPCの画面で楽しめる。解説やカメラワークも凝っていて，何度出走しても，展開に応じて違った演出を体験できる。

　愛馬の一生を長い目で見て，できるだけ強いレースに勝たせたいと思うならば，強い蹄鉄を装備させたり，能力がアップする餌をたくさん食べさせたりといった，調教以外にもさまざまなアプローチが必須となる。
　例えば「一回休息を取って，調教を2〜3本行い，レースに出走」というパターンを繰り返した場合，愛馬は一生でたったの10レースほどしか出走できない。その中でG1レースに勝つためには，序盤での負けは許されず，一刻も早くオープン馬となって，できるだけ多くの重賞レースに出走することが求められる。調教だけに夢中になって，無駄に年齢を重ねることはむしろ避けたい。
　目標がダービーとなるとさらに難しい。というのもダービーは年齢限定のレースだからだ。ある程度パラメータが上がるまで調教を繰り返していたら，ダービーの日にまだ未勝利馬だったということにもなりかねない。プレイを始めたばかりの人にはずっと先の話になるだろうが，ゲーム内でダービー馬を育てるためには，早熟傾向の馬を手がけたほうがよさそうである。

　そもそもサラブレッドとは造語で，語源は「徹底的に」「改良された」からきている。17世紀の初めから現代までの長い年月をかけて，より速く走る馬を作り出すため，速い馬の血筋が追求されてきた。インブリードやニックス配合といった言葉を聞いたことのある競馬ファンも多いことだろう。単純にいえば，強い父母から生まれた仔馬は，やはり強いことが期待でき，またその血筋の配合具合に相性もあるという考え方だ。
　本作品のなかでも，もちろん「サラブレッドは血で走る」。プレイヤーが鍛え上げた強いサラブレッドが引退したら，もう一頭の強いサラブレッドと種付けをして，一層強い仔馬の誕生を祈ろう。
　最初に与えられた馬が引退した後，2頭目以降の馬は「HTC」で購入するか，自ら生産して手に入れることになる。しかし，生産するには土地を買って厩舎を建てるなどしてセレブランクを上げる必要があり，いきなりは不可能だ。ジョブで稼いだお金で，なるべく強そうな仔馬を購入するのが現実的である。
　売られている仔馬の値段には，最低100万円から最高で2億円程度と，大きな幅がある。基本的には高い馬ほど潜在能力が高いはずなのだが，購入後の育て方やプレイヤーとの相性により，常に期待通りの結果が得られるとは限らない。筆者がそれぞれ2000万円の仔馬と6000万円の仔馬を購入してみたときも，実は前者のほうが活躍してくれたりした。血統を考えながら，値段にはあまりこだわらず，気に入った馬を選びたい。
　このゲームでは，一つのジョブに集中して，ひたすらクエストをこなしていけば，2億円は手の届かない金額ではない。1日2時間プレイしたとして，ほんの3，4日で貯められる。高額で売られている馬の実力を試してみたいというのなら，ひたすらジョブでお金を稼ぐのもアリだ。
　ゲームの性格上，レース賞金だけを資金としてプレイ可能になるのは，かなりやりこんでからになる。序盤はあせらず，セレブランクやオーナーランク，ジョブランクを上げ，さまざまなクエストをこなし，プレイヤー自らの"地力"を上げるのが，実はダービー制覇への一番の近道なのかもしれない。

　競馬がメインのゲームではあるが，馬と過ごすファンタジックな世界設定を特徴とする本作では，ダービー制覇といった大きな目標は，さまざまな要素が組み合わさって初めて実現する。
　オーソドックスな競馬ゲームでは，弱い馬である程度のレースに勝って賞金を稼ぎ，それを元手に少しずつ強い馬を育てていく，というのが一般的な流れだが，オーナーのみならず，騎手や調教師，厩務員や牧場職員の役割までこなし，RPG的要素も盛り込まれた本作では，そうしたさまざまなアプローチをフルに活用しつつ，勝利を目指すことになる。
　ダービーオーナーズクラブオンラインは，即物的な競馬ゲームとはまた違った「思い」や「ロマン」を楽しめる，奥の深いオンライン競馬シミュレーションゲームである。ダービー制覇は一朝一夕にできるものではない。のんびりと，じっくりと末永く楽しんでもらいたい。

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