― レビュー ―
愛らしい動物たちと直接触れ合える感覚が楽しい動物園経営シム
マイクロソフト ズータイクーン2
Text by 岩尾ゴワス
10th Dec. 2004

 

■需要と供給の仕組みをじっくり観察して商機をうかがおう

 

プレイヤーが動物園の園長となって,自分好みの動物を自分好みのレイアウトで配置していく。プレイするときにはお客さんに喜んでもらえるように園の儲けだけでなくデザイン的な見映えのよさにもこだわりたい

 「マイクロソフト ズー タイクーン 2」(以下,ズータイクーン2)は,2002年3月に発売された動物園経営シムの続編となるタイトル。続編といっても前作を知らないと遊べないということはなく,本作品単体で十二分に楽しめるので安心してほしい。前作の動物園経営の面白さはそのままに,システムとグラフィックスを大幅にバージョンアップしたタイトルと考えてよいだろう。

 

 プレイヤーが動物園の園長となり,飼育する動物をお客さんに公開しながら運営資金を集め,その資金を元にさらに園の動物や設備を揃えていくという,割とオーソドックスなテーマのこのゲーム。前作からの最大の進化は,30種類の動物と60種類を超えるオブジェ,さらにはお客さんまでがすべて3Dグラフィックス表示されるようになった点だ。ここで「ただそれだけ?」とツッコンではならない。なぜなら,ゲーム中で動物たちのユーモラスだがリアルな動きと鳴き声を間近に感じられることは,「動物への興味をより得やすくした」という点で大きな役割を果たしているからだ。実際,そのクオリティーの高さにはいいトシをした筆者も「かわゆいの〜ん」とメロメロになったほどで,お子さんのいるプレイヤーなら,ぜひ一緒に楽しんでほしいと感じたほどである。

 

 ちなみにズータイクーン2では,施設を作るときに使う「上からの視点」(メインで使う視点)のほかに,全体を眺める「概観マップ」,園の清掃や動物たちの世話をプレイヤーが直接行える「来園者視点」,カメラマンの視点で園と向き合う「フォトサファリ視点」の4つの視点が選べる。このなかでフル3D表示の恩恵を受けられるのは,動物たちと密接する「来園者視点」と「フォトサファリ視点」の二つだ。

 

動物を購入する場合,まず飼育スペースを柵で囲って確保する。そのあと目的の動物を施設内に配置すればよい。これらの操作はすべて「上からの視点」で行う。あらゆる操作が感覚的にすぐ理解できるのはありがたい 「概観マップ」にすると作った施設の配置状況などがひと目で分かる。「レイアウトは美しく」を心がけたい
「来園者視点」ではフル3D表示で施設や動物などを確認できる。動物の近くに立つと鳴き声や息づかいも分かる。ちなみにこの視点ではプレイヤーが園内の清掃をしたり,動物に直接触れて世話をしたりできるのだ 「フォトサファリ視点」は「来園者視点」と似ているが,Spaceキーを押すことで園内での撮影ができる

 

 

■お客の要望を満たして収益を上げよう


「動物園の状態」を見ると園のさまざまな情報が分かる。とくに「収入&支出」には園の経営に関わる項目が集約されているので,ここを見ると足りない部分やムダな部分が把握できて経営方針を決めやすい

 それではシステムの紹介に入ろう。ズータイクーン2でゲームを始める場合,まず「キャンペーンゲーム」と「チャレンジゲーム」,「フリーゲーム」の3種類からゲームスタイルが選べる。キャンペーンゲームはテーマに沿ったシナリオが楽しめるモードで,ゲームのチュートリアルも兼ねている。「ズータイクーン2チュートリアル」から「動物虐待の防止」くらいまでをプレイすれば,経営の基本的なノウハウは理解できるはずだ。「チャレンジゲーム」は41種類用意された動物園マップから好きなモノを選び,自分でスタート資金を選んで(最低資金は$5,000)動物園作りにチャレンジするモードである。チャレンジゲームでは最初から選べる動物の種類や設備などに制限があり,園の評判が上がるごとに少しずつ選択の幅が増えていくシステムになっているが,逆にそれらの制限が一切なく,いきなり自分の好きなように園を作ることができるのがフリーゲームだ。

 

 動物園の経営を円滑に行うコツは,いかにお客さんに喜んでもらえる園を作り,どれだけ園内でお金を落としてもらえるかにある。お客さんが喜んでお金を落とすポイントとしては下記の3つが重要だ。

  1. 動物の数が多く動物園の評判がよい→入園者が増えて入園料が稼げる
  2. 動物の飼育状態がよい→快適に過ごす動物を見たお客さんは多くの募金をくれる
  3. 園の施設が整っている→園内の飲食費や設備使用料も儲けになる

 これらを押さえたうえで動物の購入費や働くスタッフの給与,設備の維持費などをやりくりするのが本作の楽しみ。もちろん堅実な経営を目指すのが王道だが,ときには資金を貯めに貯めたうえで「ジャイアントパンダ」や「アフリカゾウ」などのように集客力の高い動物を入手してブレイクを狙うのも一興だ。

 

 なお,動物たちにとって快適な環境を作る場合は,施設内を動物の性質に合わせた生物群系(草原,サバンナ,低木帯,温帯林,熱帯雨林,ツンドラ,湿地帯,高山帯,亜寒帯樹林,砂漠の10種類)に変えたり,エサや獣舎なども適切なものを与える必要がある。どの動物にどの環境が必要かは「飼育員からのアドバイス」を呼び出すことで簡単に分かるので,別に丸暗記はしなくてもよい。このほかにも細かいテクニックを挙げていくとキリがないが,そのあたりは筆者入魂のプレイレポートである「野生のキングダム」(「こちら」)をご参照願えると幸いである。

 

ゲームの基本は「キャンペーンゲーム」で把握できる。チュートリアルとしての完成度が高く筆者的に好印象 最初から選べる動物や設備の数に制限がある「チャレンジゲーム」。いちばんやり甲斐があるゲームモードだ 制限が一切ない「フリーゲーム」では,いきなりこんな豪華なメンツを一堂に会することもできる
園を上手に経営するうえで動物の特性は重要なファクターだ。同じ生物群系の動物ならば,一つの施設に複数の種類を同時に配置してもOK。ただし肉食動物と草食動物を同じ施設に入れるのはやめておこう 動物に適した生物群系や設備が分からなくても「飼育員からのアドバイス」を見ればすべてOKな親切設計だ

 


■動物園の裏も表も体験できる秀作!


「チャレンジゲーム」では園の評判が上がるとゲートのグレードもアップしていく。このほかにも「キャンペーンゲーム」のシナリオをクリアすると新アイテムをゲットできるようになるなど射幸心をくすぐる要素も多い

 ズータイクーン2はマイクロソフトの自信がうかがえる作品である。それは3D表示された動物の細部までこだわったディティールや,園内で設備を配置するときの操作性のよさ,チュートリアルやヘルプの充実などといった部分にとくに感じられる。
 もちろん,ゲームをしばらくプレイしていると不満の一つや二つは出ないわけではない。例えば筆者がプレイしていたときでも,「動物を別の施設に移すときに複数の動物をまとめて動かしたい」とか「動物の一覧を表示するときにウインドウを拡大したい」とか「もうちょっと購入できる動物の数を増やしてほしい」といった不満もあった。ただ,これらについてはプレイヤーの環境がインターネットに接続できる場合,メインメニューの「ダウンロード」から更新プログラムや新しいゲームコンテンツ(動物も含む)などが得られる仕様になっているので,おそらく解消されるものだと思っている。

 

 数あるPCゲームのなかには,テーマがよくまた試みもユニークなのだが,プレイスタイルがマニアック(もしくは不親切)すぎて正当な評価を得られず,闇に消えるものも少なくない。それらPCゲーム群のなかで,ズータイクーン2はテーマ的にとっつきやすく,また操作性やゲームシステムの面も洗練されている点が大きな強みになっているように思う。
 経営者として悩み,飼育員/メンテナンス員として園内を整理し,お客として動物を眺めたり戯れたり……ゲームとしてのド派手さはないけれど,動物園の裏も表も楽しめてしまう本作。安心して楽しめるタイトルなので購入して損はありませんよ。

 

ズータイクーン2で動物達を3D表示にした意義は大きかったと思う。来園者視点やフォトサファリ視点で動物に近寄ったときにかわいい鳴き声が聞けたり,ときには動物用アイテムでじゃれる姿を見ることで動物たちへの愛着を一層感じさせてくれるからだ。とくに動物の子どもの姿は愛くるしさ満点で一見の価値アリ
上の2点は筆者がプレイしたある動物園の例だが,最初のさびしい状況から大きく発展したことが分かると思う。このように園が発展すればするほど愛着が湧いて,やめられなくなるところが経営系SLGの醍醐味といえる メインメニューの「ダウンロード」では更新プログラムや新コンテンツが得られる。実に心憎い配慮だ

 

 

タイトル マイクロソフト ズータイクーン2
発売元 マイクロソフト
発売日 2004/12/10
価格 6800円(税別)
動作環境 Windows 98SE/Me/2000/XP,Pentium4/1.4GHz以上(PentiumIII/1GHz以上必須),メモリ 256MB以上,HDD空き容量 インストール時600MB以上/実行時1GB以上,VRAM64MB以上搭載したDirectX9.0b対応ビデオカード
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