■SWATチームを率いて,数々の凶悪事件を解決しよう
リアル系の特殊部隊アクションとして今も根強い人気を持つ"SWATシリーズ"に,待望の最新作が登場した。前作から引き継いだゲーム性に,武器やガジェットの増加,ルールの変更などを加え,リアリティと戦略性をさらに高めている。SWATチームのリーダーとして危険な犯罪現場に踏み込み,犯人逮捕,人質救出などを確実かつ迅速にこなすのだ |
前作にあたる「SWAT3」(なんと前世紀の作品)は,分隊ものの3Dアクションとして,SWATシリーズ最大のブレイク作となった。ちなみに初代SWATは実写を多用したアクションシミュレーション風アドベンチャー(意味がよく分からないが)で,続く「SWAT2」(こちらは見下ろし型の2Dアクション)ともども,そこそこ評判になって日本語版も出た。残念ながら私はどちらも未プレイだが,第3作には大変お世話になった。事件の舞台の一つとなるロサンゼルスのコンベンションセンターなどは,目をつぶっても好きなところへ行けるほどにゲームをやり込んだのだ。その後,E3で本物のコンベンションセンターへ行ったとき,知っている構造とかなり違うのに驚き,「ここは偽のコンベンションセンターかも知れない」と思ったほどである。うそだが。
当然,必ずや登場するであろう続編への期待も大きかったのだが,次回作としてアナウンスされた「SWAT:Urban Justice」(以下,UJ)をめぐるゴタゴタ話を聞くにつけ,半ばあきらめていたのも事実。ところが果報は寝て待てというか,昨年,開発元のSierra Entertainmentから,UJの開発キャンセルと,新作製作中の報告があった。そしてついに2005年4月,見事に"SWATシリーズ"は復活した。しかもその内容は,カジュアルゲーマーを狙ったUJとはうって変わり,前作の甘くないゲーム性をほぼそのまま引き継いだ,硬骨の特殊部隊ものだったのである。やるもんだなあ。というわけで,さっそくプレイしてみよう。
現場となるのは,ありふれたアパートやオフィス。生活感溢れるグラフィックスがゲームのリアリティを増す | 単純な粗暴犯から,このような猟奇っぽい事件まで,事件の幅は広い。幸い,被害者はまだ殺されてはいない | 鍵のかかったドアはピッキングするか,このように爆破して開ける。ちゃんと顔を背ける隊員が芸が細かい |
士気の低い犯人は怒鳴りつけてやるだけですぐに投降する。だが反撃するバカも多く,一瞬の判断が求められる | オプティワンドを使って,曲がり角の向こうを確認。気が焦っても,一歩一歩確実に進んでいくことが必要なのだ | 捜査の確実を期するためには,犯人のみならず,人質も全員ひざまずかせて手錠をかけなければならない |
■警察官は,ただ撃てばいい軍の特殊部隊ほど甘くない
電気ショックを加えるティーザースタンガン,低致死性ショットガンなど,現在本当に使われている人道兵器や装備品が,そのまま出てくるのも本作の興味深いところだ。こうした武器を使いこなさないと,とてもじゃないが高得点はマークできない。ガス,フラッシュなどは各隊員とも数発しか持つことができず,それらの使用には,的確な判断が必要 |
プレイヤーが4人の部下を率いて突入,犯人逮捕を目指すことになる現場は,例えばガソリンスタンドのくっついたコンビニとか,自動車修理工場とか,アメリカ人にはお馴染みの場所ばかりだ。グラフィックスは確かに前作よりは進歩しているものの,2005年作品としては普通のレベル。しかし日常的な場所が突然,理不尽な犯罪の現場になった,なんというか「日常と非日常の狭間」みたいなムードが大変良く演出されていて,画面全体に迫力がある。薄汚れた街路や,無造作に横たわる被害者など,まるで本物の犯罪現場に足を踏み入れたような雰囲気だ(行ったことはないが)。
薄暗い廊下の突き当たり,「あの扉の向こうに銃を持った凶悪犯人がいるのかいないのか」といった,まるでホラー映画のような緊迫感が常にある。とはいえ,出てくるのはモンスターではなく人間なのだから,こっちは立派な国家権力だし銃もあるし,対処のしようはいくらでもあるんじゃないの? と思ったあなた,いいツッコミです。3に続く本作の最もユニークな,そして面白い部分は「撃てばいいってもんじゃない」というところだ。
親切なチュートリアルをやると「警察官は人の命を守る存在」ということを幾度となく聞かされる。いかに相手が凶悪犯でも,「法執行官」である警官は犯人逮捕を優先し,射撃は最後の手段。勝手に「天に代わって成敗」などできないのだ。ドアが突然開いて犯人が飛び出してきても,まず大声で威嚇して投降を促さなければならない。発砲できるのは,犯人がこちらに向かって銃を構えているか,人質が危険に晒されたときなどに限られ,それ以外の状況では,プレイヤーはともかく,訓練を受けた部下達はまず発砲してくれない。
「それは知ってるよ」と,前作の経験者は思うところだろう。「どうせ建前でしょ」と。いくら犯人の人命尊重といっても目撃者がいるわけでないし,味方を倒されるとムカついて,すでに投降している犯人に向かってよく銃を乱射したものさ。オレも昔はワルだったなあ,なんてね。私のことだが。しかし今回,そのようなプレイスタイルはシステム的に難しくなった。
4では,ミッションが終了するとデブリーフィング(反省会)があり,そこで事件処理の内容を逐一細かく採点されてしまう。犯人の逮捕者数/重傷者数/殺害数など,いくつもの項目で調べられ,100点満点で採点される。犯人を殺せば殺すほど減点される仕組みで,とくに無警告発砲などの警官として許されない殺害行為は,大きな減点対象となる。そしてイージーモード以外の各難度で点数がある基準を満たさない場合,次のミッションには進めないのだ。当然ながら,本人死亡および人質死亡の場合,ミッションは即失敗。
部下を全員倒され,自分も全身に被弾,フラフラになりながらなんとかミッションを終わらせても,結果は無情の15点,「はい,やり直し」なんてことになると,思わず「お偉いさんは現場の苦労をな〜んにも分かってないんだ!」と,酒くらってフテ寝したくなる。
正直,これは大変だ。前作と同様,犯人および人質の初期配置は毎回ランダムで変更されるから,「さっきはこの部屋に犯人が3人いたから,フラッシュを使おう」といった作戦は通用せず(これがまたリプレイ性を高めているのではあるが),毎回毎回,部屋ごとに一歩ずつ慎重に捜査を進めなければならない。
ペッパーボール・ガンや,ゴム弾を装填したショットガンなど,本作で新規導入された非殺傷兵器はかなり有効だが,AIで行動する部下が勝手に犯人を射殺してしまっては無意味だ。だからといって全員がペッパーボール・ガンでは,犯人がガスマスク着用だった場合に手も足も出ないし,ううーむ。と,今回は武器の選択にもけっこう神経を使い,そこがまた楽しいところでもある。
ペッパー弾をバシバシ当てるが,犯人はむせかえりながらも,なかなか銃を手放そうとしない。どうすべきか? | 低致死性のショットガンは,無警告で当てても減点対象にならない。背後を駆け抜ける人質に当たっても平気だ | などと油断していたら,犯人がいきなり銃口を人質に向けて発砲してしまった。撃ちやがったな,この人でなし! |
5人のSWAT隊員とは別に,狙撃手の視点も表示できる。照準を合わせてトリガーを引くのはプレイヤーの仕事 | 実は一番困るのが,なかなかひざまずかない人質。こういうときにはペッパースプレーをシュー! ざまあみろ | 突入前のブリーフィングでは,事件に関するさまざまな情報を得られる。ただ,分からないことも多いので要注意 |
■特殊部隊好きなら大満足間違いなしの1本
敵も味方もAIは優秀で,それがゲームの持つリアリティの中核といってよい。とくに部下達は,なるべくマニュアルに沿った立ち位置を取ろうとするので,突入前にプレイヤーが変な場所にいると「そこどいてください,サー」などと,ちょっとイライラした声で言ってくる。「あ,すいません」とモニターに謝っちゃう筆者は隊長合格? |
できることは多いが,インタフェースは改善され,本作の操作は見かけほど難しくない。また全体的に,緊張感を漂わせつつスローペースでゲームが進むため,キーを探してあたふたする場面は少ないだろう。こちらのAIもさらに利口になり,命令を連発しなくても,多少は自律的に行動してくれるし,それがまたなんともいえずカッコよい。「全員,生きて帰してやるからな」と思わず胸に誓う隊長であった。
最大16人まで参加できるマルチプレイもチームベースとなっていて,犯人との激しい撃ち合いが楽しめる「バリケーディド・サスペクツ」,要人の警護(犯人側は拉致)を目指す「VIPエスコート」,爆弾を処理する(あるいはさせない)「ラピッド・ディプロイメント」の三つが用意されている。そのほか仲間4人とシングル用ミッションに挑む「Co-op」があり,これがまた相当面白い。シングルをプレイし終わったら,ぜひこちらもお試しいただきたい。
いろいろな方向から考えても,現在,特殊部隊アクションとして最高レベルの完成度を持つ,この「SWAT4」。撃ちまくりトリガーハッピーを期待してはいけないが,リアル系を好むゲーマーならツボにハマること間違いなしだ。社会正義と遵法精神に則って,今夜も凶悪犯人どもをどしどし逮捕し,どんどん刑務所に送り込んでやろう。
このように犯人が銃から完全に手を離すまで,油断は禁物。床に置くフリして撃ち返してきたこともあるのだ | 負傷した被害者を発見した場合,ちゃんと本部に連絡しないと減点される。見逃しのないように気をつけたまえ | 窓から室内を覗き込むと,ちょっとドキッとするような生々しい犯罪現場が目に入ってきた。犯人はどこにいる? |
アサルトライフルと防弾ベストで完全武装の犯人達。その数も多い。たった5人では不安になるが仕方ないのだ | 柱の陰から犯人が。ダメージは比較的食いやすく,ヘッドショット一発でミッション失敗だ。ちくしょうめ | ミッションは終わったが,3点足りなくて次へ進めないの図。投降した犯人を二人も撃ってしまったのが原因だ |