― レビュー ―
異色のリアル系特殊部隊アクションシリーズ最新作
SWAT4
Text by 松本隆一
2005年04月25日

 

■SWATチームを率いて,数々の凶悪事件を解決しよう

 

リアル系の特殊部隊アクションとして今も根強い人気を持つ"SWATシリーズ"に,待望の最新作が登場した。前作から引き継いだゲーム性に,武器やガジェットの増加,ルールの変更などを加え,リアリティと戦略性をさらに高めている。SWATチームのリーダーとして危険な犯罪現場に踏み込み,犯人逮捕,人質救出などを確実かつ迅速にこなすのだ
 アメリカには,警官とともに事件の現場にカメラがズカズカ入りこんで,まさに犯人が逮捕されるところとか,暴れているヘンなおじさんを取り押さえるところなどを見せる番組がいくつもあって,良識ある人の眉をひそめさせているが,筆者は大好きだ。普段はとても苦手な存在だが,こういう番組を見ていると,つくづく「おまわりさんは大変だなあ」と思う。もしあなたが,そんな苦労の一端でも体験してみたいなら,ここによいタイトルがある。それが今回紹介する「SWAT4」なのだ,という流れなんですが,どうですか?

 前作にあたる「SWAT3」(なんと前世紀の作品)は,分隊ものの3Dアクションとして,SWATシリーズ最大のブレイク作となった。ちなみに初代SWATは実写を多用したアクションシミュレーション風アドベンチャー(意味がよく分からないが)で,続く「SWAT2」(こちらは見下ろし型の2Dアクション)ともども,そこそこ評判になって日本語版も出た。残念ながら私はどちらも未プレイだが,第3作には大変お世話になった。事件の舞台の一つとなるロサンゼルスのコンベンションセンターなどは,目をつぶっても好きなところへ行けるほどにゲームをやり込んだのだ。その後,E3で本物のコンベンションセンターへ行ったとき,知っている構造とかなり違うのに驚き,「ここは偽のコンベンションセンターかも知れない」と思ったほどである。うそだが。

 当然,必ずや登場するであろう続編への期待も大きかったのだが,次回作としてアナウンスされた「SWAT:Urban Justice」(以下,UJ)をめぐるゴタゴタ話を聞くにつけ,半ばあきらめていたのも事実。ところが果報は寝て待てというか,昨年,開発元のSierra Entertainmentから,UJの開発キャンセルと,新作製作中の報告があった。そしてついに2005年4月,見事に"SWATシリーズ"は復活した。しかもその内容は,カジュアルゲーマーを狙ったUJとはうって変わり,前作の甘くないゲーム性をほぼそのまま引き継いだ,硬骨の特殊部隊ものだったのである。やるもんだなあ。というわけで,さっそくプレイしてみよう。

 

現場となるのは,ありふれたアパートやオフィス。生活感溢れるグラフィックスがゲームのリアリティを増す 単純な粗暴犯から,このような猟奇っぽい事件まで,事件の幅は広い。幸い,被害者はまだ殺されてはいない 鍵のかかったドアはピッキングするか,このように爆破して開ける。ちゃんと顔を背ける隊員が芸が細かい

 

士気の低い犯人は怒鳴りつけてやるだけですぐに投降する。だが反撃するバカも多く,一瞬の判断が求められる オプティワンドを使って,曲がり角の向こうを確認。気が焦っても,一歩一歩確実に進んでいくことが必要なのだ 捜査の確実を期するためには,犯人のみならず,人質も全員ひざまずかせて手錠をかけなければならない

 

 

■警察官は,ただ撃てばいい軍の特殊部隊ほど甘くない


電気ショックを加えるティーザースタンガン,低致死性ショットガンなど,現在本当に使われている人道兵器や装備品が,そのまま出てくるのも本作の興味深いところだ。こうした武器を使いこなさないと,とてもじゃないが高得点はマークできない。ガス,フラッシュなどは各隊員とも数発しか持つことができず,それらの使用には,的確な判断が必要
 本物のSWAT部隊は,もともとロス市警で発足したのが始まりで,これまでのSWATシリーズもロスを舞台としていたのだが,第4作はアメリカのどこか架空の都市が選ばれている。もっとも,事件のほとんどは室内で起きるので,何州だろうとあまり関係ないといえばないかもしれない。
 プレイヤーが4人の部下を率いて突入,犯人逮捕を目指すことになる現場は,例えばガソリンスタンドのくっついたコンビニとか,自動車修理工場とか,アメリカ人にはお馴染みの場所ばかりだ。グラフィックスは確かに前作よりは進歩しているものの,2005年作品としては普通のレベル。しかし日常的な場所が突然,理不尽な犯罪の現場になった,なんというか「日常と非日常の狭間」みたいなムードが大変良く演出されていて,画面全体に迫力がある。薄汚れた街路や,無造作に横たわる被害者など,まるで本物の犯罪現場に足を踏み入れたような雰囲気だ(行ったことはないが)。

 薄暗い廊下の突き当たり,「あの扉の向こうに銃を持った凶悪犯人がいるのかいないのか」といった,まるでホラー映画のような緊迫感が常にある。とはいえ,出てくるのはモンスターではなく人間なのだから,こっちは立派な国家権力だし銃もあるし,対処のしようはいくらでもあるんじゃないの? と思ったあなた,いいツッコミです。3に続く本作の最もユニークな,そして面白い部分は「撃てばいいってもんじゃない」というところだ。

 親切なチュートリアルをやると「警察官は人の命を守る存在」ということを幾度となく聞かされる。いかに相手が凶悪犯でも,「法執行官」である警官は犯人逮捕を優先し,射撃は最後の手段。勝手に「天に代わって成敗」などできないのだ。ドアが突然開いて犯人が飛び出してきても,まず大声で威嚇して投降を促さなければならない。発砲できるのは,犯人がこちらに向かって銃を構えているか,人質が危険に晒されたときなどに限られ,それ以外の状況では,プレイヤーはともかく,訓練を受けた部下達はまず発砲してくれない。
 「それは知ってるよ」と,前作の経験者は思うところだろう。「どうせ建前でしょ」と。いくら犯人の人命尊重といっても目撃者がいるわけでないし,味方を倒されるとムカついて,すでに投降している犯人に向かってよく銃を乱射したものさ。オレも昔はワルだったなあ,なんてね。私のことだが。しかし今回,そのようなプレイスタイルはシステム的に難しくなった。

 4では,ミッションが終了するとデブリーフィング(反省会)があり,そこで事件処理の内容を逐一細かく採点されてしまう。犯人の逮捕者数/重傷者数/殺害数など,いくつもの項目で調べられ,100点満点で採点される。犯人を殺せば殺すほど減点される仕組みで,とくに無警告発砲などの警官として許されない殺害行為は,大きな減点対象となる。そしてイージーモード以外の各難度で点数がある基準を満たさない場合,次のミッションには進めないのだ。当然ながら,本人死亡および人質死亡の場合,ミッションは即失敗。
 部下を全員倒され,自分も全身に被弾,フラフラになりながらなんとかミッションを終わらせても,結果は無情の15点,「はい,やり直し」なんてことになると,思わず「お偉いさんは現場の苦労をな〜んにも分かってないんだ!」と,酒くらってフテ寝したくなる。

 正直,これは大変だ。前作と同様,犯人および人質の初期配置は毎回ランダムで変更されるから,「さっきはこの部屋に犯人が3人いたから,フラッシュを使おう」といった作戦は通用せず(これがまたリプレイ性を高めているのではあるが),毎回毎回,部屋ごとに一歩ずつ慎重に捜査を進めなければならない。
 ペッパーボール・ガンや,ゴム弾を装填したショットガンなど,本作で新規導入された非殺傷兵器はかなり有効だが,AIで行動する部下が勝手に犯人を射殺してしまっては無意味だ。だからといって全員がペッパーボール・ガンでは,犯人がガスマスク着用だった場合に手も足も出ないし,ううーむ。と,今回は武器の選択にもけっこう神経を使い,そこがまた楽しいところでもある。

 

ペッパー弾をバシバシ当てるが,犯人はむせかえりながらも,なかなか銃を手放そうとしない。どうすべきか? 低致死性のショットガンは,無警告で当てても減点対象にならない。背後を駆け抜ける人質に当たっても平気だ などと油断していたら,犯人がいきなり銃口を人質に向けて発砲してしまった。撃ちやがったな,この人でなし!

 

5人のSWAT隊員とは別に,狙撃手の視点も表示できる。照準を合わせてトリガーを引くのはプレイヤーの仕事 実は一番困るのが,なかなかひざまずかない人質。こういうときにはペッパースプレーをシュー! ざまあみろ 突入前のブリーフィングでは,事件に関するさまざまな情報を得られる。ただ,分からないことも多いので要注意

 


■特殊部隊好きなら大満足間違いなしの1本


敵も味方もAIは優秀で,それがゲームの持つリアリティの中核といってよい。とくに部下達は,なるべくマニュアルに沿った立ち位置を取ろうとするので,突入前にプレイヤーが変な場所にいると「そこどいてください,サー」などと,ちょっとイライラした声で言ってくる。「あ,すいません」とモニターに謝っちゃう筆者は隊長合格?
 しっかし,本当に満点なんか取れるのかね? とも思う。 というのも,本作の敵AIはずいぶん頭がよくなり,投降するフリをして撃ち返す,走って遠くに逃げる,物陰に隠れるなど,いやらしいことを平気でしてくるのだ。いくら銃を突きつけて「投降しろ!」と叫んでも,構わずガンガン撃ってくるクレイジーな奴らもいて,こんなのどうやって逮捕していいのやらだ。……だが待てよ,あっちの階段を使って背後に回ればどうなるだろう? それともブルーとレッドの2班を別々の扉から突入させてみたら? 狙撃班を使ってみるとか? などと考え始めると,もう気分はすっかりSWAT隊長。あっという間に正義の術中にはまり,凶悪犯を逮捕せずにはいられない体になってしまうはずだ。私はそうなったので,もうやめられない。

 できることは多いが,インタフェースは改善され,本作の操作は見かけほど難しくない。また全体的に,緊張感を漂わせつつスローペースでゲームが進むため,キーを探してあたふたする場面は少ないだろう。こちらのAIもさらに利口になり,命令を連発しなくても,多少は自律的に行動してくれるし,それがまたなんともいえずカッコよい。「全員,生きて帰してやるからな」と思わず胸に誓う隊長であった。

 最大16人まで参加できるマルチプレイもチームベースとなっていて,犯人との激しい撃ち合いが楽しめる「バリケーディド・サスペクツ」,要人の警護(犯人側は拉致)を目指す「VIPエスコート」,爆弾を処理する(あるいはさせない)「ラピッド・ディプロイメント」の三つが用意されている。そのほか仲間4人とシングル用ミッションに挑む「Co-op」があり,これがまた相当面白い。シングルをプレイし終わったら,ぜひこちらもお試しいただきたい。

 いろいろな方向から考えても,現在,特殊部隊アクションとして最高レベルの完成度を持つ,この「SWAT4」。撃ちまくりトリガーハッピーを期待してはいけないが,リアル系を好むゲーマーならツボにハマること間違いなしだ。社会正義と遵法精神に則って,今夜も凶悪犯人どもをどしどし逮捕し,どんどん刑務所に送り込んでやろう。

 

このように犯人が銃から完全に手を離すまで,油断は禁物。床に置くフリして撃ち返してきたこともあるのだ 負傷した被害者を発見した場合,ちゃんと本部に連絡しないと減点される。見逃しのないように気をつけたまえ 窓から室内を覗き込むと,ちょっとドキッとするような生々しい犯罪現場が目に入ってきた。犯人はどこにいる?

 

アサルトライフルと防弾ベストで完全武装の犯人達。その数も多い。たった5人では不安になるが仕方ないのだ 柱の陰から犯人が。ダメージは比較的食いやすく,ヘッドショット一発でミッション失敗だ。ちくしょうめ ミッションは終わったが,3点足りなくて次へ進めないの図。投降した犯人を二人も撃ってしまったのが原因だ

 

タイトル SWAT4 日本語版
開発元 Irrational Games 発売元 ライブドア
発売日 2005/08/05 価格 7980円(税込)
 
動作環境 Windows Me/2000/XP,PentiumIII/1GHz以上(Pentium4/2.4GHz以上推奨),メモリ 512MB以上(1GB以上推奨),HDD空き容量 2GB以上,VRAM 64MB以上(128MB以上推奨)のビデオカード,DirectX 9以降

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