■拡張パック第一弾はアメリカンキャンパスライフだ
最初の拡張パックのテーマに選ばれたのは大学だ。初めて親元を離れた十代の若者達が集い,恋や勉強やスポーツやクラブ活動やアルバイトやストリーキングに一生懸命な青春を過ごすのだ |
同時に私は「ザ・シムズ2」の大ファンでもあるので,もしかしたら制作元であるマクシス社のプロデューサー,天才ゲームクリエイターのウィル・ライト氏は,私のためにこのキャンパスライフを作ってくれたのではないか,という雰囲気さえあるのだが,一面識もないので,たぶん誤解だろう。
いうまでもないことだが,本作は世界的に大ヒット中の「ザ・シムズ2」(レビュー記事は「こちら」参照)の拡張パック第一弾。インストールすると,町に大学を作れるようになり,そこを舞台としてシム人達に「恋に勉強に大忙し」の青春を送らせられるという寸法だ。とはいえ,ただ単に町や建物,アイテム類を増やしただけでなく,ゲームシステムにも細かい変更が加えられ,本編とはちょっと違った味わいのゲームになっている。
ちなみに,拡張パック第二弾もすでにアナウンスされており,内容はグッとアダルトな「ナイトライフ」だそうな。これまたアダルトさには自信のある私にピッタリで,もしかしたらウィル・ライト氏は常に私のために作ってくれるのではないかと思ったが,まあ,たぶん誤解だろう。
前作「シムピープル」も,拡張パックの多さでは業界ナンバーワンだったので,今後の展開が非常に楽しみ……って,ちょっと気が早いか。なにはともあれ,まずはこのキャンパスライフからやっつけることにしよう。ゴー,クリムゾン!(※1)
※1……ハーバード大学の応援の掛け声
まずは寮に入る。衣装だんすとベッドしかないが,大学生活1日めはここからスタートだ。緊張するのである | 何をしていいのか分からなかったため,とりあえず食堂で歌って踊ってみたところ,人気者になってしまった | 大学生活に必要なもの,それはかわいいガールフレンドだ。カリスマレベルを上げるためにも友達は必要 |
続いて構内を探検する。ここはシム州立タワー。最上階にバスユニットが置いてある,不思議なタワーだ | 学生会館にはビリヤード台などもある。さまざまなハイテクガジェットを購入できるキオスクも見える | キャンパスラウンジでバンドの練習をするのも青春だ。演奏で,はした金を稼ぐことも可能かもしれない |
■やってきたのは,知の殿堂,象牙の塔,大学だ!
寮生活は楽しい。ましてこの寮は男女混合なのだ。ちょっとショッキングな写真だが,これはただ壁が見えていないだけなので,お父さんお母さんも安心。奨学金が貯まれば私有住宅への引越しも可能 |
それらを,あらかじめ用意された三つの町に設立してもいいし,自分で作ったご近所画面に置いても結構。ただ,例えばベロナービルにシム州立大学を設立しても,ベロナービルのどこかに大学が建つわけではなく,マップは別。単にご近所的につながりがあるだけ,という感じになる。
※2……主に金持ちの子弟が一般教養を学ぶ,日本にはあまり似たもののない大学。男子校,女子校である場合が多い
というわけで,私はベロナービルにシム州立大学を建ててみた。私の通っているカリフォルニア州立大学はやたらだだっ広くて,クラスの移動だけでげっそり疲れるが,シム州立大学はこぢんまりとした小粋な大学である。ちょっと通ってみたい。
シム人を大学生として入学させるには,「ご近所画面に住んでいる十代のシム人のリストから選ぶ」「ご近所画面の世帯を大学へ移動させる」「カタログから選ぶ」,そして「新しい学生を作成する」などいろいろあるが,まずは作成画面から一人作ってみることにした。
私の分身となる"マツモト"は,ちょっと小太り色黒のメガネのティーン。大学へ入れるのは"十代のシム"となっており,そのへん「40過ぎて学生やっている私の立場はどうなる」という気はするが,まあ仕方ないことであろう。ちくしょう。
新入生は,とりあえず学生寮に入ることになる。英語で言うと,ドミトリーですな。一人一部屋とちょっと贅沢だが,バス・トイレはもちろん共同。食事はまかないのおばさんが来て作ってくれるので,いちいち心配をする必要はなく,ありがたい。
ところで,キャンパスライフの学生寮は,驚いたことに男女混合だ。別棟という大学が多いのに,シムシティはなかなかリベラルである。女子学生のご両親はちょっと心配じゃないだろうか。
さて,学生の本分はもちろん勉学だ。いろんな専攻を選べるのだが,マツモトには経済学を学ばせることにした。本当は私と同じコンピュータサイエンスにしたかったのだが,そんなのないのである。なお,ゲームを進めるうえでの専攻の違いは,必要になるスキルの違いとなる。
大学は4年制で,一学期が前期と後期に分かれる,いわゆるセメスター制。だが,アメリカの大学はよく「入るの簡単,出るの大変」といわれるが,まったくその通り。新たに加えられた「成績メーター」が一定基準を満たしていないと,たちまち進級保留になり,何度も落第していると,そのうち退学になってしまう。いやほんと,これって他人事じゃないよ。
そのため,学生の生活は非常に忙しい。本編では「さーて,次は何をしようかな」という場面が(とくに貧乏な独身時代には)ときどきあったが,キャンパスライフのシム人達は,時間に追い立てられる毎日だ。スキルを上げ,学期末レポートを書き(これがまたやたら時間がかかる),課題をこなし,学習をし,恐ろしい学期末試験に備えなければならない。
私自身,課題をいくつも抱えているので,「なんでゲームでまで?」という気持ちもあるが,もちろん用便や娯楽など,日々の暮らしもちゃんとこなしていかなくてはならない。
寮にはさまざまな設備があらかじめ用意してあり,本編のように「給料を貯めてアイテムを購入する」という必要がないため,出ていくお金はほとんどない。また,構内にはスポーツジム,カフェテリア,図書館などの設備もあり,寮にないもの(例えば運動器具)も,たいていはこれら施設に用意されている。とはいえ,そんな施設に行ってるゆとりはほとんどないだろう。一日なんて本当,あっという間に経っちゃうのだ。
果たしてマツモトは,ちゃんと卒業できるのだろうか? ていうか,本物のマツモトもちゃんと卒業できるのだろうか? え,学期末テストまであと8時間? うっそー。
グリークハウスへの引っ越しを検討。だがハウスに入るには,時間内に一定条件をクリアしなければならない | しかし,見事に失敗。人間的魅力に欠けることを今さらながらに思い知ったので,スキルアップに余念がない | 大学といえばチアガール。とはいえ,いつでもどこでもなんでも応援する,かなり変なお姉ちゃんである |
学期末レポートは,時間がかかり,楽しさレベルが急降下する難儀な仕事だが,成績に与える効果は甚大 | たまにストリーカーが出没するが,かまわないほうがよい。ストリーキングなんて時代遅れじゃないの? | 新しい遊び,枕叩き。アメリカではポピュラーなんだろうか? 私の大学でやっている人は見たことないが |
■カリスマレベルを上げて,他人に命令を下せ!
一生懸命勉強しても,知の峰の頂(いただき)は遥かな高みにある。遊んでばっかりいたら,進級保留になり,頭のねじが一本飛んでしまった。その後,どこからともかく医者がやってきて治療してくれた |
だが,ご存じのように「友達作り」はもっとも時間のかかる作業の一つ。スキルポイントの最大値を上げるのも,また時間をやり繰りして行わなければならないのだ。しかもカリスマポイントは使うと減る,という謎めいた設定だ。
というわけで,本編「ザ・シムズ2」はプレイヤーとシム人達のインタラクトを楽しむ,まさに「人生シミュレーション」というゲーム性だったが,このキャンパスライフでは,その目標もより明確で,しかも時間が限られているため,やや異なる風合いのゲームに仕上がっている。
もちろん,これは私が"ちゃんとやろう"としたため,そうなったのであり,「おまえみたいなヘボいやつはひどい目に遭わせてやる! うははははは」という心構えでゲームに望めば,また違った雰囲気になるだろう。それでも,それなりにゲームがちゃんと進んでいくところに,シムシリーズの懐の深さと,よく出来ているなあ感と,面白さがある。
以上,足早に説明してきたが,それでもまだまだ書ききれない新機軸もたくさんあり,また私自身分からないことも多い(「死の淵からよみがえる」願望なんて,どうやって叶えてやればいいのさ?)。また,いくつかのイベントは未消化な印象を受けたし,一画面にたくさんのシム人がそれなりの意思を持って登場するため,低スペックのPCではちょっとキツいだろう。
それでも,あなたが「ザ・シムズ2」を持っているなら,これは必携。「この機会に2本まとめて」というのもオススメだ。泣いて笑ってしんみり出来るゲームなんか,そんなにあるもんじゃないだろう。
さあ,あなたのシム人に,二度と戻ることのない,きらめくような青春の日々を過ごさせてあげよう!(筆者は戻ってきたが)
心を入れ替えて,さらに勉学に邁進する。にしても,シャワー室で課題をやることはないんじゃないかと思う | 店員さんには,あまりいい思い出はないのだが,カリスマレベルを上げるために友達作りもしなくては | 3年次には,このように個人の願望を変更できる。ロマンス願望はいろいろと面倒なので,知識願望に交換だ |
ついに優秀な成績で大学を卒業。たいへんでした。にしても,夜中の3時までテストをやる大学があるかね | そして卒業パーティ。途中でシャワーを浴びたらガウンを脱いでしまった。ねえ,そんなに本気ならなくても | 卒業すると,二度と大学には戻れない。彼らの顔に浮かぶのは,社会に出る晴れがましさと,一抹の寂しさ |